宝塚国際室内合唱コンクール感想 その1

審査結果はこちら。
http://takarazuka-c.jp/page0231.html


ルネサンス・バロック部門>
8団体が出場。
朝10時からの開始ということでソプラノが本調子ではない団体が多く、
実力団体でも「あれっ?」と思うことがしばしば。
コンディション作りって難しいですねえー。


地方大会で聞くような
「ぽりふぉにー、ってナニ?」みたいな団体は全くなく
(指揮者が4拍子振っちゃうとか!)
どの団体も基礎やその様式を理解している印象です。


今回の上位団体の演奏と、私の勝手な好みで
「良いルネサンス・バロックの演奏とはなんだろう?」と考えると
以下の要件を満たしているような。



●各パートの絡み合いと変化


他のパートを聴いて
「では私(のパート)はこう歌おう!」と変化し、
さらにそれを聴いた他のパートが変化し、
相互作用による、今生きている今の音楽。
それがポリフォニーの魅力と思うのですが
上位団体は出来ている団体が多い。


逆に指揮者が目の前に存在しないのに、
「この演奏は今の音楽を聴かずに
本番前の練習で指揮者さんに言われたことを
そのままやってるのかなー」という印象の団体も。
 

良い印象の団体はメンバー同士が今の音楽を聴いている、
というのも感じ取れるし(アイコンタクトなどももちろん)
さらに聴いた後の変化を、
その場で歌によって表せるというのは
練習によって試行錯誤し、
表現の幅を広げているのではと推察します。




●音楽の推進力とフレーズの力点


これは「オマエわかってんの?」と言われてもしょうがない
あやふやな感想なんですけど
やっぱり私の好きな団体は音楽に推進力、
どこへ向かっているかというのを意識させる「ドライブ感」があるな、と。
過去に某K先生からルネサンスポリフォニーの指導を受けた際、
「歩きながら旋律を歌う」というものに
「ほーう…」と納得いったことがあるんですが
今歌っているフレーズが、どこへ向かっているのか
高揚か、下降か、停滞か、あるいは緊張か、弛緩か…
それらを意識して「こういう音楽をしたい」と感じ取れる演奏が、
やっぱり好みですねえ。


関連して、フレーズに力点が効果的な場所にあると
演奏が非常に生きたものになりますね。
自分の今歌っている旋律がどういうものかわかっていない、
だらーっと平坦に流すだけ、の演奏では
やはり聴いていてツマラナイ。


…とはいうものの
「では推進力を付けるには?」
「フレーズの力点はどこに?」と具体的な指導になると
私も黙っちゃうしか無いので・・・勉強します。



入賞団体の勝手で簡単な感想を。
(宝塚は全日本と違い、出場団体全てに賞が贈られないので
 比較して、賞に大変価値があります)




銅賞
Men's Vocal Ensemble“寺漢”(広島県・男声20名)
Josquin des PrezとVictoriaの曲を演奏。
各声部が良くコントロール、
整備されていて非常に聴きやすい。
バリトンは響きの集め方がちょっと粗かったかな?)
ただ、Victoriaは私の好みからすると
音楽に熱さがもっと欲しいかも。
寺漢は近・現代部門でも出場されていましたが
静かな、緩和の音楽はその整備された声で印象が良い反面、
本来なら盛り上がる部分、緊張の音楽にエネルギーがやや不足。
全体な音楽の流れとして、私には平坦な印象になってしまいました。
これみよがしなメリハリではなく、
抑えた表現の中に美を見出す指揮者さん(団体)なのでしょうか?


それでも、トップテナーのファルセットと言い、
少人数の男声でこの安定感、クリアなサウンドは素晴らしいもの。
どちらかというと情熱的な演奏を好む私の偏見なだけで
繊細、静謐な美を求める方には肌が合うはず。
今後に大きく期待してしまう団体です。




銀賞
TWILIGHT BELLS(大阪府・混声11名)
Lassus、Bachを演奏。
ソプラノが午前中のためか、声が残念!
ただ男声は素晴らしく、全体にその良いリズム、躍動感は
Bach(「Lobert den Herrn,alle Heiden」)にも
反映されていました。
割合、近視眼的な短い音楽を連ねる演奏という印象なので、
大きい流れでドラマを感じさせて欲しい気もしましたが、
でも、この人数でこの曲ってスゴイですよね。




金賞
Chamber Choir Clinics仙台(宮城県・混声19名)
Monteverdiのマドリガルを3曲演奏。
やや「指揮者へ向かって歌う」雰囲気があり、
アンサンブルとして、この曲を演奏する行為として、
どうなのか・・・という疑問はでましたが
指揮者:早川幹夫先生独特の緊張感、
表現の細やかさは大変良いものでした。




同じく金賞
安積合唱協会(福島・混声17名)
Vaet、Tallisの曲を演奏。
素晴らしい!
この部門で個人的にダントツの1位!


それぞれのパートの発声が
非常に高度で整備されているだけではなく
先に述べた音楽の推進力、
お互いに聴き合い、表現する「今」の音楽。
そして演奏することの喜びに満ちた熱さ、と
私にとって大変好みの音楽でした。


安積合唱協会は初出場、
そしてこの部門だけの出場だったんですが
他の部門での演奏も聴いてみたいほどでした。
次の日の上位入賞者による特別演奏会も聴いてみたかったですね。
どんな演奏、何を演奏したんでしょう?



金賞団体は宮城・福島という
東日本大震災の爪痕が残る地域からの出場。
練習もままならないであろう中から、
これだけの演奏をされたことに参加したメンバーの
歌を愛する心が伝わってきました。



(続きます)