合唱団お江戸コラリアーず第11回演奏会「お江戸の新世界」感想2



3stage Sea Shanties


「Sea Shanties」とは船乗りの労働歌のことで
かつては大学男声合唱団のレパートリーのひとつだったのだが
最近はそうでもないのだとか。


指揮は村田雅之さんに替わり。
暗闇の中で客席も使った立ち位置の「Shenandoah」が美しく響く。
(暗いせいで指揮が見にくかったのかリズムのズレが残念…。
 スポットかペンライトなどで工夫があれば?)


続いて「High Barbary」「Sailing,Sailing」「Whup!Jamboree」。
今までの発声とはやや違いグリー調の懐かしい響きに。
そして村田さんの音楽も山脇さんと違い
細やかな表情付けに重点を置くものだった。


懐かしい響きと書いたがそれでも往年の大学グリーとは明らかに違った発声。
さらに現代的な味付けである村田さんの音楽のため、
「新しき革袋に古い酒を入れる」印象で大変楽しめた。
特に2曲目の「High Barbary」は盛り上がりも◎!


最終曲の「The Drunken Sailor」は私が聴き慣れた編曲ではなく
ロバート・スント氏のもの。
(プログラムでは「スンド」表記だけど「スント」じゃなかったっけ?)
酔っぱらいたち本人が歌い、テンションが徐々に上がってくような
面白い演奏と編曲でこれまた良いステージのクライマックス!



「男声合唱の新しいレパートリーを開拓」と
活動テーマに謳っていた関西のなにわコラリアーズもここ数年は
20年以上前の邦人男声合唱の名曲を演奏するようになっている。
縮小化し、レパートリーが変化してきている今の大学男声合唱団が
なにコラ、おえコラのこのような選曲・演奏で
温故知新を感じてくれれば嬉しいなあ。





4stage 三善晃 男声合唱とピアノ(四手)のための「遊星ひとつ」
指揮はふたたび山脇さんに戻り・・・。


う、うーん、このステージは・・・ごめんなさい。
実は私、この曲あまり得意じゃないんですよね。


終曲などは明るく速いテンポで演奏される生命感あふれる曲なのだけど
その明るさやエネルギーの奥に潜む、
孤独から生まれる希求や望み等と私には感じられなかった。


1階席で聴いていたため音に呑まれてしまった、というのもあるかなあ…。
これは私の反省です。
もうちょっと客観的に聴ける位置などを考えるべきだったのかも。
熱演でこの難曲を良くまとめていたとは思うんですけどね。


斎木ユリさんのピアノが実に楽しそうで・・・。
「伝説の合唱ピアニスト」を目の当たりにして
嬉しい経験でありました(笑)。




アンコールは信長貴富「木」。
そして「日本のSea Shanties」である
「斎太郎節」の編曲者竹花秀昭氏が新しく編曲し直した
「大漁唄い込み」を。



音楽的なクライマックスが長くなり盛り上がる盛り上がる!!



さて、この演奏会全体を振り返って。
最初に「爽やかで明るく若い男声」と書いたが
過去に何団体か聴いたアメリカのグリークラブのような印象を受けた。


宝塚で海外団体と日本団体を比べて聴いたり、
他、海外合唱団の演奏会を訪れて最近思うのだが
日本人合唱団の演奏のほとんどは
曲と演奏にある種の精神性と、
1フレーズに細かく意味、多義性を求める傾向があるのでは?
その結果密度の濃い集中度の高い演奏になるが
どうしても響きは暗めに、
そして音楽本来の姿から離れることにもなりかねない。


おえコラの声、響きは
そんな「日本人合唱」から遠いように思われる。
すなわち、余計な緊張感を聴くものへ与えず、
等身大の感覚でのびやかに作品をそのまま歌う、ような。


もちろんその歌う姿勢が耳慣れた邦人作品では違和感が大きかったり。
(昨年のコンクール課題曲:高田三郎の「冬・風蓮湖」などは特に…)
繊細なニュアンスが重要な曲では
出来ていない印象を強く受けるのかもしれないが・・・。


それでも2・3ステージでの好演を思うに
「新しい発声・姿勢で歌う強み」を充分感じられた。
「爽やかで明るく響く発声で
 余計な緊張感を与えず、等身大の感覚でのびやかに歌う」団体。
こんな団体にふさわしい曲はたくさんあるはずだ。


さらに、これから期待したいのは
過去の名曲をおえコラらしい捉え方によって
新しい魅力を創造して欲しいということ。
これはなかなか難しいことかもしれないが
そういう可能性を期待させてしまう団体だということ。


全4ステージのうち2ステージは辛口になって申し訳なかったが
個人として期待を持っている団体なので。



打ち上げにて指揮者:山脇さんの
「1日で憶えたことは1日で忘れる」との発言。
時には練習に20人しか集まらないという男声合唱団の厳しさもあり、
考えさせられた。
そして「自分(山脇さん)の言うことは聴くな!」との発言も。
(あれ?「信じるな!」…だっけ?)


指揮者と団員が全く対等の立場で音楽を創り上げるという姿勢。
(ちなみにおえコラ内では「山脇先生」と呼ばれず
 「山脇さん」もしくは「山脇!」と呼び捨てである…)
長い時間をかけて身に付く音楽技術がこれから磨き上げられれば、
おえコラはもっともっと魅力的で独創的な団体となるだろう。



おえコラのこれからに期待してます!