「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2012」(その3)

※この記事は2012年富山での全日本合唱コンクール
全国大会へ出場される一般団体を紹介しております。



「富山オーバード・ホール」で画像検索していると
良い画像を発見!
そういうわけでブログ「おで様流」さまから
http://odesamaryu.exblog.jp/
転載許可を快くいただきました。
おで様、ありがとうございました。






ホールの中も素敵な雰囲気で
椅子もすごく座り心地が良いそう。






ロビーにはまるで美術館のように、
さまざまなオブジェが飾られているそうなんで
こちらも楽しみですね!



さて、今日は女声合唱2団体をご紹介します。





5.北海道・北海道支部代表

ウィスティリア アンサンブル 
(女声14人・3年連続出場・60回大会から4度目の出場)



藤岡直美先生が指導された
枝幸、岩見沢、札幌の中学校OGの
合同団体であるウィスティリア アンサンブル。
以前は「枝幸ジュニア合唱団」という団名で
コンクールへ出場されていました。
B部門での出場だった枝幸ジュニア合唱団から数えると
今年で7回目の出場。
昨年の紹介では
「離れたそれぞれの地域で練習し、
 月2回の合同練習を継続されている」と書きましたが
今もその練習を続けておられるのでしょうか。
富山という、昨年の青森より遠方になったためかもしれませんが
昨年より団員さんが3人減ったことに、ちょっと心配。


昨年の演奏は、まず黒ドレスでの登場に「おおっ!」と(笑)。
「枝幸ジュニア」からオトナになったんだね〜と感慨深く…。
課題曲F1は北海道の真冬の冷気を連想させるような
整った透明な声は健在。
ホモフォニックの部分で
空へ声を飛ばすような発声、イメージが良く。
自由曲は信長先生編曲の奄美の島唄3曲。
やはり透明な響きで、
音の精度、統一感、整ったフレーズが○でした。


今年の演奏曲は課題曲F1
Thomas Weelks 作曲「In black mourn I」
自由曲は蓬莱泰三作詞/鈴木輝昭作曲 
女声合唱とピアノのための組曲「獅子の子幻想」から
1、都の春 4、ゆき


新潟県の角兵衛獅子を題材にした
鈴木輝昭作品としては強く心情へ訴える印象の作品。
鈴木輝昭先生は

獅子の子の心理的ドラマは、
時として極限的な音像を生む。
その全てを包括して、
純粋に音楽的世界を構築していくことが
作曲家に与えられた課題だった。


と、この曲について記されています。
(鈴木輝昭作品集「女声合唱の響演」CDパンフレットより)


貧困のため親に売られた幼子が
角兵衛獅子の修行の辛さ、
降りしきる雪の中、望郷と母への強い想いを歌います。


北海道大会を聴いたKen5さんブログ「雪の降る前」の感想では

鈴のように良く鳴る。
課題曲のWeelksはしっとりと。
自由曲「獅子の子幻想」は、
鈴木輝昭のウェットな部分が前面に出る。


とのこと。
昨年は信長貴富先生編曲の奄美島唄を鳴り物入りで。
そして今年は鈴木輝昭先生のウェットな作品、と
端正で冷たい美しさが特徴であった
ウィスティリアの今までの殻を破ろうとしているのかもしれませんね。


14人という今大会、
全部門で最少人数のウィスティリア アンサンブル。
どうか団員さんそれぞれの音が輝くことを願って。







6.神奈川県・関東支部代表
マルベリー・クワイア
(女声18人・4年連続出場・45回大会から9回目の出場)



マルベリー・クワイアは最初に出演された
マルベリー・チェンバークワイアの女声部です。


昨年の演奏は課題曲F1を整った雑味がない声、
感情を抑えめた音楽ですが、非常に技術が高く、
とにかく発声が素晴らしい。
自由曲はヴァリエーション豊かな3曲。
1曲目は土俗的な発声、2曲目は少人数で2群に。
速いテンポなのに発声もバランスも崩れず。
遠くから近くから様々な声による表現が軽やかに伝わってくる。
3曲目も早口言葉が、
巧みなジャグリングを目の前で見せられるよう。
発声技術の高さ、そしてそれを押し付けない軽やかさ、と
段違いの水準に驚いた印象でした。


今年の選曲は何を?と毎年楽しみなこの団体。
それではお呼びしましょう、春子さーん!

2年前までは外部からのメンバーもいたのですが、
今は17名全員が小田原少年少女合唱隊のOGです。
全国大会には14回目の出場です。


課題曲はF1です。
自由曲はハンガリーフィンランドの現代合唱曲を組みました。



1. Karácsony,Fekete Glória
(クリスマス、黒いグローリア)

 作詩:Laszlo Nagy (1925-1978)
 作曲: Miklós Kocsár (1933- )
ハンガリー合唱界の巨匠ミクローシュ・コチャールが
2005年に作曲した作品です。
作詩のラースロー・ナジは、
20世紀ハンガリーを代表する詩人です。


1956年10月、ハンガリーでは、ソ連の圧制に苦しむ民衆が
自由を求めて立ち上がりました。
しかし、投入されたソ連軍の大部隊に武力制圧され
数千人のハンガリー人が殺害され、
20万人が西へ亡命しました。
日本ではハンガリー動乱と呼ばれている1956年革命です。
以来、ハンガリーでは
1956年革命を公に語ることが30年以上も禁止され、
民衆が自由をやっと手に入れたのは
1989年になってからでした。
この詩は、革命直後の1956年12月に書かれたものです。


「魂が安らかになることはない、ああ悲しい天使。
 恐怖で刈り込まれた、血のにおいのついたクリスマスツリー。
 白リン弾の記憶は、
 地獄の新しい輪のようにジュージューと音をたてる。
 街は炎の薔薇に渦をまき、
 線香花火のように火の粉が降りかかる。
 星に届くかのような死のクリスマスツリーに、
 血に染まった丸い飾りがキラキラ光る。
 私の目は痛みに共鳴する。
 死者の額に栄光あれ。グローリア」



2. 『Primitive Music(原始的な音楽)』より
 The Ritual Dance(儀式の舞踏)
 ヴォカリーズ、 作曲:Jukka Linkola(1955- )

 
2曲目は、重い内容の1曲目とはガラッと変わって
昨年に引き続き、
組曲『原始的な音楽』から、第4曲を歌います。
フィンランドのタピオラ・クワイアのために
1998年に書かれました。
作曲のリンコラはシベリウス音楽院でピアノを専攻。
アメリカのバークリー音楽学校で
ジャズを教えたこともあります。
器楽曲、劇音楽、合唱曲と多作で
その作風には、ジャズや、
様々な国の民族音楽の影響が見られます。


ヴォカリーズの歌詞は、日本人の私たちにとっては
風変わりな響きのものが多いのですが、
下手をすると
「ドゥダッダ、ドゥダドゥダ」は「・・・ぐだぐだ」に
「ヤケマレアケザケ」は「・・・やけ酒」に聞こえてしまい
練習中に大笑いすることも、しばしばです。
最大で10声部に分かれます。


来年から始まる部門編成のコンクール改革については?
という私の問いに対しては

コンクールの部門再編について。


マルベリーが初めて全日本のコンクールに出た1986年は
一般Aには16名以上という最低人数の規定がありました。
当時、ぎりぎりの16名だったのですが、
長野の全国大会当日、メンバーの一人が風邪で高熱を出し、
それでも本番にのらないと失格になってしまうので、
フーフー言いながら頑張って歌ったこともありました。
新たに設けられる室内合唱の部は、6〜24名とのこと。
どんな感じになるのでしょう。
来年が楽しみです。

春子さん、今回もありがとうございました!
写真も送ってくださったことに感謝です。




関東大会時の写真ということ。




「クリスマス」という言葉からは連想できない、
ハンガリー動乱という重いテーマ。
そして対照的なヴォカリーズと、
マルベリー・クワイア、
今回もさまざまな表現の魅力を伝えてくれそうです。
楽しみ!




(明日に続きます)