「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2012」(その9)

※この記事は2012年富山での全日本合唱コンクール
全国大会へ出場される一般団体を紹介しております



「参加はしないけど富山全国大会へ行く人の
 お目当てを教えて欲しい!」


知人に尋ねる企画第3回は
函館にお住まいのKen5さんからです。

あのブラームス、このブルックナー
聞きたい団は数あれど、注目はG4「受付」の団。
この曲稀に見るオイシイG4ではないかと思ってる。
特に合唱団ことのははあの高嶋昌二先生。
日本語を操ることにかけては魔術師級、
きっと受付も、嘉門達夫をも超える戦慄と失笑の渦に
客席を巻き込むか?とワクワク。


富山名物は意外な所で「昆布」!
富山県は昆布の消費量、全国一!
そのルーツは遠く蝦夷地まで結んだ
北前船にありました(以下略)。
今も北海道産の昆布を使った、
きときとのお魚の「昆布じめ」や、
手軽な所では県内はコンビニでも売っている(筈の)
とろろ昆布おにぎりなど。
ぜひ味わってみてほしいな。


残念ながら・・・前日に函館で、
畑中一映さん中心の若いメンバーによる
アンサンブルで本番が入り富山へは行けません!


来ないんですか?!
昨年同様、富山で一緒に飲むことを楽しみにしていたのに…。
それはともかく富山の食情報ありがとうございました。
昆布締めは名物のようなので是非食べてみたいですね〜。


さて、今日は2団体をご紹介します。
史上初めてでは?という形態で出場する団体と
初出場の団体です!




富山オーバードホール外観
(※建築写真集NOさまより転載)






5.大分県・九州支部代表
アンジェルス&ウイステリア
(混声62人・初出場
大分市民合唱団ウイステリアコールとしては
 2年ぶりの出場・37回大会以来24回目の出場)
(※リンクは大分市民合唱団ウイステリアコールHPのもの)



アンジェルス児童合唱団と
大分市民合唱団ウイステリアコールの合同団体である
アンジェルス&ウイステリア。
児童合唱団との合同団体が出場するのは
おそらくこの全日本合唱コンクール史上
初めてなのでは?


そんなアンジェルス&ウイステリアの課題曲はG1
自由曲は佐藤賢太郎作曲
「ウミガメの唄」より
「月夜の旅立ち」「白い奇跡」


佐藤賢太郎氏への委嘱曲であるこの自由曲。
選曲の理由と委嘱の経緯を指揮者の猿渡健司さんから
メッセージをいただきました。

選曲理由
今回の選曲については、第60回定期演奏会のために、
ケンピーこと佐藤賢太郎氏に新曲委嘱を行った、
2010年12月にすでに決まっていました(笑)
おそらく一般全団体の中で一番早く選曲していたと思います。
もっともその時点では果たして
どんな曲になるのか定かではありませんでしたが…(笑)
これまで2002年の第50回定期演奏会で
千原英喜氏に「マリア・オリエンタリス」を委嘱し、
その年から3年連続全国大会で演奏していますが、
今回も委嘱の条件の中に
コンクールの自由曲として使用することを明記していました。


勘違いして欲しくないのは
コンクール用」に書いてもらっているのではなく、
「コンクールでも使えるような曲」を
書いてもらっているということです。
理由としてウイステリアは
毎年6月に定期演奏会を行っているので、
7月のコンクール県予選までに
新たな曲を練習する余裕がないのです(笑)
よって、新曲をそのままコンクールに
持って行く方が都合が良いという、ごく単純な理由ですね。


また、全国大会一般の部は、近年順位を競い合うというより
色んな曲が聴ける豪華な演奏会になっていると
私は思っていますが、せっかく作ってもらったんだから、
多くの人に聴いてもらった方が嬉しいですもんね(笑)
そのためにはもちろん
一生懸命練習に励まなければいけませんし、
合唱団として大きなモチベーションとなり、
それが実力アップに繋がっていることも事実です。


ケンピーにはテーマに沿った詩作、
児童合唱と混声合唱の絶妙なコラボレーション、
そして、締め切り厳守など、
こちらの要望を全て取り入れた形で
完成してもらったことに本当に感謝しています。


この「ウミガメの唄」、
こちらのページで歌詞が読めると共に
http://www.wisemanproject.com/Text/Umigame-no-Uta.html
定期演奏会での演奏がすべて観ることができます。
YouTubeで公開されているので
こちらに貼っておきましょう。
良い意味で「コンクール自由曲」とは思えない
大変聴きやすくドラマ性がある曲です。


第三楽章「月夜の旅立ち」は、
卵からかえったウミガメの赤ちゃんの旅立ちの様子や気持ちを、
児童合唱が混声合唱に支えられながら元気に歌い上げます。
第四楽章「白い奇跡」は、旅立ちの後、
早朝の海岸を歩く人間の親子の会話を、
児童合唱と混声合唱が優しく歌います。


佐藤賢太郎氏
(初演時のプログラムノートより抜粋)

全国大会に対する意気込み(目標)は?との問いには

とにかく多くの皆さんにこの曲を聴いてもらいたい。
Youtubeにアップされている映像を
ご覧になっていただくことももちろん嬉しいのですが、
やはり生演奏を聴いていただきたい。
そして今さらながらですが、
コンクールには4年ぶりの登場となる
飯倉(2008年岡山大会以来です)率いる
アンジェルス&ウイステリアは初出場です。
出演者の年齢差がコンクール史上おそらく最大
(飯倉先生79歳、アンジェルス最年少7歳、
 その差は72歳!)の
演奏を楽しんでいただきたいと思うのです。


何を演奏で伝えたいでしょうか?という問いには

この曲のテーマである
「未来を担う子供たちに、
 平和で争いのない心豊かな世界を託したい。」、
ケンピーはものの見事に素敵な合唱曲に仕上げてくれました。
そこに描かれているのは、
自然の営みを優しい心で見つめる親子の姿・・・。
「またこようね」「そうだね」
渚に押し寄せる波の音が次第に遠ざかり、
白抜きでフェードアウトする
映画のワンシーンのような情景が
皆さんに伝わるような演奏をしたいと思います。
(プログラム掲載用団紹介より引用)


それからもうひとつは、
児童合唱と混声合唱がコラボしているその姿そのものです。
松川九州支部長がここ数年言い続けていることに、
「これからの合唱の発展のためには、
 子どもたちが合唱に興味を持ってもらう以外にない。
 それにはぜひ一般の合唱団にいる人は
 子どもたちと一緒に歌ったり聞いてもらったり、
 とにかく子どもたちと交流してもらいたい!」があります。
そのひとつの姿をコンクールの場で見ていただきたい!
ウイステリアからの新しい提案です。 


猿渡さん、ありがとうございました。
続いてコンクール改革について
AB部門分けの歴史とこれからのことも。

コンクールが現状の形となったのはいつ頃なのでしょうか。
それまで順位表彰だったのが、昭和45年埼玉大会より
金・銀・銅賞による表彰に変わったようです。
私がコンクールに初めて参加したのが
高校1年の1971年(昭和46年)、
ウイステリアとして参加したのは1974年(昭和49年)
その頃は、大学・職場・一般のカテゴリーで、
A・B部門の区分けは無かったと記憶しています。
ウイステリアの全国大会初出場が1984年(昭和59年)
この時にはすでにA・B部門の区分けがあったので、
この間にA・B部門新設となったようです。
(たぶん、1977年(昭和52年)
 東京大会(普門館)からか・・・?)


※文吾注:h-nodaさんからのコメントで
高校部門と一般部門にABが取り入れられたのは
1984年の第37回大阪大会からです。
という情報をいただきました。


それから約四半世紀の間、
同じカテゴリーの中でコンクールが行われてきたわけで、
そういう意味においては
今回非常に大きな改革になった感じがします。
しかし、例えばウイステリアにとってみれば、
これまでと参加の方向性が変わることがないため
特に問題はないのですが、
団体によっては3つのカテゴリーで出演可能となるため
(ユース・室内・同声)、
どのカテゴリーで参加するかについては、
その団体のコンクールに対する
ポリシーを問われることになりそうですね。
個人的に何らかの改革を行うことには賛成ですが、
今度の改革が成功するのか失敗するのかは、
その後の連盟の対処によると思います。
大会後に今回の改革について色んな角度から検証を行い、
フレキシブルに修正を加えていけば良いと思います。
特に若い人の意見を広く掬い(すくい)上げることが
大事だと思います。
あまりにも理事の方の構成が高齢化していますからね(笑)
「私の考えるコンクール像」みたいな
アンケートを取ってみても面白いかもしれません。

ありがとうございました。
四半世紀以上も続いたこのAB部門の改革、
これからどうなるか猿渡さんが書かれるように
「色んな角度から検証を行い、
 フレキシブルに修正を加えていけば良い」ですね。


団員のくさかさんから写真も送っていただきました。

とにかく アンジェルスのこどもたちを 
全員元気で連れて行きます。
ぜひ! かわいい子どもたちを観て いえ 聞いて下さい。

くさかさん、ありがとうございました。
ウイステリアは定期演奏会でのポピュラーステージも
ポピュラー曲と合唱の魅力を同時に
非常に質高く伝えてくれる団体です。
「若い人へ合唱に興味をもってもらうように…」との目的もあると
お聞きしました。
合唱の未来を見つめるウイステリアが企画した
児童合唱との素敵なコラボレーション。


「未来を担う子供たちに、
 平和で争いのない心豊かな世界を託したい。」
佐藤賢太郎氏そしてアンジェルス&ウイステリアの願いが
演奏に宿り、観客へ、
さらにはホールの外へ広がることを強く願います。











6.大阪府.関西支部代表
合唱団ことのは
(混声84人・初出場)



初出場おめでとうございます!


合唱団ことのはは高嶋昌二先生のもとに集まった方々の合唱団で、
「ことばを大切にした質の高い合唱を目指す」団体だそうです。
2009年に創立されたまだ若い団ですね。


高嶋昌二先生と言えば
淀川工業高校グリークラブの名前が思い浮かびます。
(現:淀川工科グリークラブ
そのOB合唱団メンズ・ウィードが
全国大会へ最後に出場されたのが第50回大会。
一般の部で高嶋先生の音楽を聴くのは
かなり久しぶりなので楽しみです。


課題曲はG4の「受付」
(「さよなら、ロレンス」より
 四元康祐:詩 森山至貴:作曲)


一般の部では唯一のG4。
海外でのサラリーマン経験を詩に活かした作品。
個人的に現代詩文庫の四元康祐詩集を持っているので
「コンピュータ時代のアンニュイとウィットと感性で
 日本では初めて出た詩人です」(大岡信)と評される
この詩人の作風を見事に合唱化した演奏を聴けるのが嬉しいです。



自由曲は金子光晴:詩 高嶋みどり:作曲
「感傷的な二つの奏鳴曲」より「落下傘」


戦時下に書かれた反戦詩。
変拍子があふれる緊張感に満ちた難曲ですが
どこか音画的なピアノと
中間部の故郷:日本を歌った美しくも皮相な箇所、
そして日本の行く末を神に祈る最後…と
強く印象に残る曲です。

当時はとにかくドラマツルギーのある、
スリリングな曲を書きたいという意志が強かった。


当時考えていたのが「時空間」というか、
時間がそのとおり経っていくという表現もしたいということ。
ひゅうん、と入って落下傘が落ちてくる状況みたいなものを、
自分なりの予想で。


(ハーモニー2000年秋号
 「新・日本の作曲家シリーズ7 高嶋みどり」より
 高嶋みどり氏ご自身の発言

2001年同志社混声合唱団こまくさが
高嶋昌二先生指揮、自由曲にこの曲を選び
全国大会へ出場したこともあるようです。


ニコニコ動画で視聴 落下傘 演奏:同志社混声合唱団こまくさ



Ken5さんが
「日本語を操ることにかけては魔術師級」と賞賛する
高嶋昌二先生。
団の目標である
「ことばを大切にした質の高い合唱」を期待したいですね。





(明日に続きます)