THREE in Sapporo 感想 最終回


3rd Stageはガイア、SYC,アテネオの合同ステージ。
3曲とも過去、そして今日のTHREEのために作曲された作品。


Different Parts
作曲:GP Eleria


ヴェラスコ氏の指揮で。
共通のリズムがそれぞれ奏で続けられた後
声が重なり、ホモフォニックになった箇所で背筋が震えた。
合唱団の塊が一瞬倍増したような感覚。
力強く、ポピュラリティもある良い作品。
それを活かすヴェラスコ氏の手腕も感じさせた演奏。



Aeterna lux, Divinitas
IV.Qui finis et exordium
V.Qui cuncta solus efficis
作曲:Americ GOH


ジェニファー氏の指揮で。
先ほどのヴェラスコ氏の見事なソロから。
緊張感あふれる現代曲。
こういうハッタリが無い曲でも惹きつけられるのが
この3団体の水準の高さを証明。



Hoc est praceptum meum
作曲:松下 耕


3団体の個性を活かすためか、
並びは混じり合わず、それぞれの合唱団ごとの配置。
同じ歌詞をラテン語・英語・日本語それぞれの合唱団が歌う。
異なる言語の、しかし同じ意味を持つ歌が交じり合い、
最終的に雄大なひとつの歌になるというコンセプトに感じ入る。
テキストは「ヨハネによる福音書」からだそうだが
最後の
「May our love and bond last forever.」
(私たちの友情が永遠に続きますように)は
松下先生の想いによって加えられたそう。



最後のステージは
Songs from the North and the South と題された
THREE3団体+公募メンバーによる合同ステージ。




(写真提供:三好草平さん)



出演団体すべてに加え公募メンバー70名を併せた
300余名による大合唱。
ステージだけでは足らずキタラP席が埋まるほど。



Hymn To Freedom
作曲:Oscar Peterson 編曲:Paul Read


オスカー・ピーターソンのジャズ曲を編曲して。
ジェニファー氏の指揮、
そしてここで初めて松本望さんのピアノが加わる。
曲に合った優しく楽しい雰囲気。



続いて


信じる
作詞:谷川 俊太郎 作曲:松下 耕


もちろん松下耕先生の指揮で。
松本望さんピアノ前奏が圧倒的な存在感!
この名曲、日本語で気持ちが入ったのか、
人数のためだけではない充実した音が鳴る。
男声の「信じることでよみがえるいのち」の
「いのち」の音に寄り添うように始まったピアノの間奏は
輝く音が立ち昇っていくような煌きを見せ、
つづく「葉末の露がきらめく朝に」からのフレーズには
より良い世界へ向けた300人を超える歌い手それぞれの
「信じる」というメッセージが込められているようで、
徐々に目へこみ上げるものが。



Better World
作曲:Ryan Cayabyab 編曲:GP Eleria


第1回THREEのために編曲・初演された3群合唱の
THREEのテーマソングだそう。
指揮はヴェラスコ氏。


さまざまな衣装、住んでいる地、国籍も違う各人が目の前に広がり。
まるで色さまざまな美しいモザイクを見るよう。
時にリズミカルな箇所は各人の生命が沸き立つよう。
そんな個人の集合が、ひたむきに、そして高らかに、
愛と希望を歌い、訴える姿に、
言葉だけではないメッセージが強く強く伝わる。
気持の良いクライマックス!





4年前、THREE3団体だけ、松下先生指揮と違いはあれど
雰囲気は充分伝わる演奏と思います。






<演奏を聴き終えて>


とても有意義な、得るものが多い演奏会だった。
札幌の実力合唱団の演奏、
久しぶりに聴いたガイアの現在、
そしてSYC、アテネオという合唱団を知ることができた、
個性豊かな、高水準の良い演奏が聴けた、というのはもちろん、
「ジョイントコンサート」として新しい知見があったこと。


例えばガイア、SYC、アテネオの合同ステージの3rd Stage、
最終ステージではTHREEのために作曲され
3群の合唱団を活かした曲が何曲も演奏されていた。
作曲という面から「合同合唱」という考えを捉え直し、
結果それぞれの合唱団の個性が際立ち、
それでいて大合唱の醍醐味を味わうことができたように思う。


合同合唱というものはジョイントコンサートには不可欠だが
人数が多くなることで演奏する曲の選択肢が増える、
大合唱ならではの迫力、出演者の一体感という長所は認めるものの、
合唱団としての個性がぶつかり合うことによる表現の曖昧さ、
歌への責任が薄れる、練習不足というものが重なり、
演奏者が思うほどは価値を見出せない合同合唱が
少なくとも私には多かった。


しかし、この演奏会では前述の作曲面での考慮に加え、
充分に練習を積んだ演奏、
この演奏会の意義というものが
演奏者ひとりひとりにまで浸透していたため、
大変素晴らしい合同合唱となっていた。


松下先生の耕友会では夏に
「軽井沢合唱フェスティバル」という
内外の合唱団を招き、交流し合うというイヴェントがある。
(今年から秋開催の「軽井沢国際合唱フェスティバル」に変更)
http://karuizawa.koyukai.info/


参加されたいくつもの合唱団の指揮者・団員さんから、
耕友会のホスピタリティの高さと
イヴェントのすばらしさを耳にしてきた。
THREE演奏会で他の合唱団が演奏している時も
舞台袖で待つのではなく、
客席でしっかり演奏を聴くというのも
この軽井沢合唱フェスティバルの精神の現れかもしれない。



ネットで文章を上げるようになってから10年以上になるが
始めてからしばらく経った時
「自分の文章の個性とは何だろう?長所はあるのだろうか?」と
自問自答するようになった。
しかし、自分の内側だけへ問い、答えを出しても
それはあまり有効ではなく、次に書くものへ繋がらなかった。


他に優れた文章を書く人や、
個性豊かな合唱団の団員さんと知り合い、
文章や演奏を良いと感じていることを伝え、
実際にお会いしてお話を聞かせてもらうことで、
その方たちとの自分との違い、
言い換えれば自分の個性というものを
少しづつ意識できるようになり始めたように思う。



ガイアの単独ステージで
10年以上前に聴いた時とは良い意味で変わった印象があり、
それはTHREEの他団体との交流が理由のひとつかも、と書いたが
SYC、アテネオにとっても
ガイアと交流することで良く変化したものがおそらくあるのだろう。



他者と出逢い、他者の良さを認め、そして伝えることによって、
自分との違い、さらには
自分の個性を理解する。
その結果出た答えである「自分の良さ」こそ価値があるのでは。
つまり自分の個性を見出し輝かせるには
他者との交流が不可欠だと自分の経験から思う。


そしてこの札幌でのTHREE演奏会の成功も
松下耕先生が札幌の合唱団に対し、
そんな行為を積み上げてきたことの結果ではないだろうか。


単独ステージでは出演されていなかったが
公募合唱団には軽井沢合唱フェスティバルに過去出演された
ウィスティリア・アンサンブルの指揮者:藤岡直美先生と
団員さんの名前が記されていた。




THREEという演奏会は
他者の個性や良さを認め、そして伝え続けた結果、
自らの個性で
世界に広がるまぶしい輝きになった演奏会。


ガイア、SYC、アテネオはもちろん
札幌の5合唱団にも煌めく個性があった。
そしてあなたの、あなたの仲間たちにも
きっとかけがえのない個性、素晴しいものがある。
それを輝かせる始まりは
目の前のひとりを認め、
それを伝えることから始まるはず。


松下耕先生が伝え続けてきたように
自分にもできるかもしれない。


伝える。


まず、目の前のひとりへ。
あなたが感じた輝きを。







(おわり)