ノンフィクション(エッセイ・インタビューなど含む)の
「2012年に読んだベスト10」。
今回は7位から4位まで。
第7位
内田樹「日本辺境論」

- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/11
- メディア: 新書
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日本人とは何か?という問いに
「日本人とは辺境人である」という答えから始まる日本人論。
他国の評判を常に気にする。
範はいつも外にある。
国民全体に浸透した「学び」の精神性等々。
非常に刺激的で面白いし、膝を叩く箇所も多数あるのだけど、
たぶん、いや絶対自分は
本書の内容の10分の1も理解していないだろうな、とも思う。
(…自分がバカなことをしみじみ自覚するのは
このトシになるとけっこう辛いものです…)
自分の基礎教養の無さを再確認する本でもありました。
あと、村上春樹のエッセイ風な語り口は、
世代的なものなんでしょうかね?
内田樹先生の言葉では
「呪いの時代に」と題された
このネット世界への提言について
非常に共感しました。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/28694
他者の記号化と
「高すぎる自己評価と
低すぎる外部評価の落差を埋めるため」の呪いの言葉。
そんな呪いの時代を生き延びるための「祝福」とは。
「呪い」ではなく「祝福」をしながら生きたいものです。
第6位
高橋秀実「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー

- 作者: 高橋秀実
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: 単行本
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超進学校の開成高校硬式野球部が取った常識破りの方法とは…。
東京都大会でもベスト16に進んだことのある
開成高校野球部のルポルタージュ。
高橋秀実氏の著作だけあって、
さまざまな考察とトボけた味が絶妙に絡み合い、
宇宙人みたいな(失礼)開成高野球部の面々が、
なんとも親しみやすい存在に思えてくる不思議。
東大大学院卒で開成高保健体育教師の
(開成、そんな先生ばかりなの?!)
青木監督語録も興味深い。
野球に全く詳しくない自分でも、
超攻撃野球を選んだ青木監督の戦略は頷ける。
野球好きにはもっと楽しめる作品なのではないかな。
「頭が良すぎて自分自身も客観的に見てしまう」
「運動を知性でコントロールしようとする」
開成高野球部員の描き方も笑えてしまった!
第5位
内澤旬子「飼い喰い 三匹の豚とわたし」

- 作者: 内澤旬子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/02/23
- メディア: 単行本
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http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20120530/1338366371
「銀の匙」「飼い喰い」作者の対談が載っている
週刊ポスト2012年10月12日号の古雑誌も取り寄せてしまいました。
3ページだけですが面白かったですよ。

- 作者: 高野秀行
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/03/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「世界でいちばん幸せな国」の秘密を解き明かす
エンターテインメント・ノンフィクション。
高野氏の他の著作と同じように筆致は軽いが、
なかなか考えさせられるノンフィクション。
ブータンはGNH(国民総幸福量)が
世界1として注目をされているが、
その実態は国民の自発性を尊重しつつ
(国家が)「明確に指導すること」、
つまり巧みな補完システムにあるのでは、と。
その結果、何をするにも方向性と優先順位が決められていて、
自由は少ないが無理をあまり感じないので、
個人に責任がなく、葛藤がない。
だから自分の意志の選択、
決断による迷い、悩み、後悔、不幸が存在しない。
それゆえブータン人は世界で一番幸福なのだ、と。
この「幸福の方法」を先進国で実行するにはかなり難しい。
例えば半鎖国状態にし、職業選択やネットを制限すれば
3世代後の人間は幸福を感じられるかもしれないが…。
「自由な不幸」と「不自由な幸福」だったら
おそらくほとんどの人は「自由な不幸」を選ぶだろう。
なぜなら既に「不自由」を知ってしまったのだから。
他にも「生物多様性」に関してや
(牛一頭殺すのも蠅一匹殺すのも同じ痛み!)、
小国が大国に呑まれないよう世界へアピールする方策など、
様々な面で興味深い本でした。
そして結局雪男は見つかったのか?それは本書で・・・ふふふ。
(第3位からは次回に)