2012年に読んだノンフィクションベスト10(7位〜)


ノンフィクション(エッセイ・インタビューなど含む)の
「2012年に読んだベスト10」。
今回は7位から4位まで。




第7位
内田樹「日本辺境論」

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

地勢的な意味においてだけではなく、
日本人とは何か?という問いに
「日本人とは辺境人である」という答えから始まる日本人論。


他国の評判を常に気にする。
範はいつも外にある。
国民全体に浸透した「学び」の精神性等々。
非常に刺激的で面白いし、膝を叩く箇所も多数あるのだけど、
たぶん、いや絶対自分は
本書の内容の10分の1も理解していないだろうな、とも思う。
(…自分がバカなことをしみじみ自覚するのは
 このトシになるとけっこう辛いものです…)
自分の基礎教養の無さを再確認する本でもありました。
あと、村上春樹のエッセイ風な語り口は、
世代的なものなんでしょうかね?


内田樹先生の言葉では
「呪いの時代に」と題された
このネット世界への提言について
非常に共感しました。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/28694


他者の記号化と
「高すぎる自己評価と
 低すぎる外部評価の落差を埋めるため」の呪いの言葉。
そんな呪いの時代を生き延びるための「祝福」とは。


「呪い」ではなく「祝福」をしながら生きたいものです。





第6位
高橋秀実「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー  

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー

週に1回3時間しかグラウンドを使えない、
超進学校の開成高校硬式野球部が取った常識破りの方法とは…。
東京都大会でもベスト16に進んだことのある
開成高校野球部のルポルタージュ。


高橋秀実氏の著作だけあって、
さまざまな考察とトボけた味が絶妙に絡み合い、
宇宙人みたいな(失礼)開成高野球部の面々が、
なんとも親しみやすい存在に思えてくる不思議。
東大大学院卒で開成高保健体育教師の
(開成、そんな先生ばかりなの?!)
青木監督語録も興味深い。
野球に全く詳しくない自分でも、
超攻撃野球を選んだ青木監督の戦略は頷ける。
野球好きにはもっと楽しめる作品なのではないかな。
「頭が良すぎて自分自身も客観的に見てしまう」
「運動を知性でコントロールしようとする」
開成高野球部員の描き方も笑えてしまった!






第5位
内澤旬子「飼い喰い 三匹の豚とわたし」

飼い喰い――三匹の豚とわたし

飼い喰い――三匹の豚とわたし

ブログに書いた過去の感想はコチラ。
http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20120530/1338366371



銀の匙」「飼い喰い」作者の対談が載っている
週刊ポスト2012年10月12日号の古雑誌も取り寄せてしまいました。
3ページだけですが面白かったですよ。







第4位
高野秀行「未来国家ブータン

未来国家ブータン

未来国家ブータン

表向きは生物資源の調査だが実際は雪男の存在を確認するため!
「世界でいちばん幸せな国」の秘密を解き明かす
エンターテインメント・ノンフィクション。


高野氏の他の著作と同じように筆致は軽いが、
なかなか考えさせられるノンフィクション。
ブータンはGNH(国民総幸福量)が
世界1として注目をされているが、
その実態は国民の自発性を尊重しつつ
(国家が)「明確に指導すること」、
つまり巧みな補完システムにあるのでは、と。
その結果、何をするにも方向性と優先順位が決められていて、
自由は少ないが無理をあまり感じないので、
個人に責任がなく、葛藤がない。
だから自分の意志の選択、
決断による迷い、悩み、後悔、不幸が存在しない。
それゆえブータン人は世界で一番幸福なのだ、と。


この「幸福の方法」を先進国で実行するにはかなり難しい。
例えば半鎖国状態にし、職業選択やネットを制限すれば
3世代後の人間は幸福を感じられるかもしれないが…。
「自由な不幸」と「不自由な幸福」だったら
おそらくほとんどの人は「自由な不幸」を選ぶだろう。
なぜなら既に「不自由」を知ってしまったのだから。


他にも「生物多様性」に関してや
(牛一頭殺すのも蠅一匹殺すのも同じ痛み!)、
小国が大国に呑まれないよう世界へアピールする方策など、
様々な面で興味深い本でした。
そして結局雪男は見つかったのか?それは本書で・・・ふふふ。




(第3位からは次回に)