なにわコラリアーズ 第19回演奏会感想 その1



13.5.3(金)14:00 いずみホール
なにわコラリアーズ 第19回演奏会(昼の部)


昼と夜の部2回公演という驚くべき今回のなにコラ公演。


昼の部は当時体調があまり良くなかったため
行こうかどうか迷っていたのだが
5月晴天のあまりの美しさ、
体調も絶好調、
神戸中華街の小さな店の昼飯が相変わらずウマかったり、
気分も良かったので行くことにしたのだ。


昼の部はさすがに並ぶ人も少なく、
開場時間を過ぎて当日券を買い、
座席指定券と交換しても下手側後方の好みの席を取ることができた。



第1ステージは
男声合唱組曲「尾崎喜八の詩から」


昼の部だけがこの組曲を聴ける。
タダタケの作品としては地味な部類だと思うが
自分の中では多作なタダタケ作品で5つ作品を挙げるとしたら
この「尾崎喜八」が入るほど好きな作品なので。


昼のなにコラは56人ほどだろうか。


最初の「冬野」から、自分がイメージするこの曲のテンポより
やや遅めに進めていく印象。


クレッシェンドも直接的、急速ではない。
テンポ、感情ともブロックで分けられるだけではなく、
聴かせどころはしっかり細やかなグラデーションを聴かせる。


ただ昼という時間帯もあったが
(夜にはそれほど思わなかったので)
テナー系と比べ、バリトン、ベースのバランス、
歌への積極性の乏しさがやや気になったかな。


それにしてもトップテナー:K原さんの歌は上手い。
「春愁」のソロはかなり長めの、そして神経を遣うもので
夜の部ではさすがのK原さんと言えども
立ち上がりが不調な箇所がいくつもあったのだけど
そりゃこんなソロを昼からやっていたら疲れるよな・・・。
おまけに「青いメッセージ」もその後で歌っているんだし。



「若草の…」からのたっぷりした、
万感の思いが込もったクレッシエンドが特に良かった。
さらに最終曲の「かけす」が名演!
「山国の空のあんな高いところを」の
「あんな…」の、その箇所だけで、温かさに泣けてしまう!
ホモフォニックからハーモニーへ分かれる美しさ。男声合唱の魅力の粋。


現在、邦人合唱として広く歌われる作品の詩は
やわらかでやさしくて
口当たりが良いようなものばかり選ばれているような気がする。
もちろん、作曲のし易さや、演奏側の要求も関係するし、
表面上は易しくても内容は奥深い詩だってたくさんあるのは承知だが、
この尾崎喜八の詩群のように一見とっつきにくいが、
格調高く、味わい深い詩も良いものだな・・・と久しぶりに触れ、思う。
「春愁」のように老境へ入った感慨を歌う詩は、
この曲と詩を知った学生の頃には
「そういうものなのかな…」と思うことしかできなかったが
あれから数十年経って、少しはその心境に近づき、
詩も、曲も、ようやく、ようやく身に入りはじめたような。


尾崎喜八伊藤整八木重吉・・・その他たくさんの詩人の作品は
多田武彦氏が作曲された作品から扉が開いた。
多感な頃に知った名詩が、いま合唱という形によって
また新たな味わいを持って愉しめるのは嬉しいことだ。


なにわコラリアーズの演奏、
かつての若い頃はやや届かなかった心が
今こうしてゆるやかな音楽の枠の中で、
それぞれの詩情と人生を噛みしめ、味わいながら、
歌ってくれているような気がした…。




(つづきます)