宝塚国際室内合唱コンクール感想 その7


しばらく間が空いておりました。
10月からは仕事もかなりヒマになるようなので
もう少し更新頻度も上がるかと。
瀬戸内国際芸術祭の続きも書きたい…。




銀賞
アコール《EST》(三重・20名)


ESTの女声メンバーで結成された団体。
指揮はもちろん向井正雄先生。


BarberのThe Virgin Martyrs
LinkokaのThe Joikuなど3曲を演奏。
硬質で力強い音が押せ押せ!とばかりに響きます。
その押しの強さにちょっと気圧された感じになってしまい
女声らしさ、女声合唱である意味とは?
…なーんてことも考えてしまいましたが
民族色も感じさせ、楽しい振り付けもある、
さすがに表現力豊かな演奏でした。




金賞は4団体、出演順に。
フォークロア部門にも出演した
Choir UrFU(ロシア・20名)


ChilcottのA Little Jazz Massから。
RachmaninovのSpring Water op.14 No.11など
4曲を演奏。


やはりこの指揮者、団体のJazzセンスは凄い!
リズム感が借り物じゃないし、
わざとらしくない体の動きから発せられるものの説得力。
見た目の良さ、楽しさと相まって
「コンクール」というのを忘れさせてくれる団体でした。




愛知高等学校(愛知・20名)
指揮は吉田稔先生。


1曲目はKaraiのViragsirato


20名の女子高生から放たれる高い音圧と、豊潤な声の量。
そして凝縮された空気を感じさせるような演奏への集中度。


吐く息、ソロの使い方やフレーズの入りなどから受ける印象では
2年前に聴いた時も思いましたが

http://d.hatena.ne.jp/bungo618/20110813/1313202288


「一瞬たりとも聴く側の興味を逸らさず、
 惹きつける音楽の凄い構成力とドラマ性」を
今回も感じることに。
「ここぞ!」という時の声、良い意味でのハッタリ、ケレン味
実に効果的で、さらに構成力を感じさせます。


緊迫した空気にステージへ目が釘付けになりながら
次々と繰り広げられる音楽のドラマに
「うぉー、次はどうなるんだ?!」と
ワクワク、ドキドキの時間でした。


2曲目のミニワンカではしゃがむような動きの数々が
また演奏に影響を与え、様々な水の表情を感じさせてくれました。
お見事!




The Cygnus Vocal Octet(東京・8名)


Mocnik、Nystedtの現代作品2曲を演奏。
このステージでは上手側女声4、下手側男声4のオーソドックスな並び。
軽やかな音楽の運び方が印象的。
さらにアイコンタクト、呼吸でそのテンポ、フレーズの入りを決めるような。


音楽はことさらメリハリをつけることなく、
このグループの世界から飛び出ることもなく、
やや小体な印象もありましたが
自分たちの限界を見据え、その中で上質な音楽を創り上げる姿勢。
現代作品2曲を完璧に手中のものとしていました。




Guangdong Experimental High School Choir(中国・20名)


1曲目はMark Wingesという作曲家の「Magic Strings」。
3つの合唱グループに分かれ・・・そして・・・。
へー! 合唱のコンクールでピアノの内部奏法を使う曲なんて
初めて聴きましたよ!!
後の団体で使うピアノのことを考えて
この団体を最後の出番にしたのかなあ…?と邪推(笑)。
私にはこの作品でピアノの音と合唱との絡みが
理解できたとは言い難いのですが・・・。


2曲目はLojze Lebicという作曲家の「Zima」という作品。
速いテンポを見事にこなし、発声も上質、音量も豊か。
この曲、なんつーか、いわゆる合唱の現代曲で
「あるある」的な要素を連ねたような作品でして・・・。
speaking chorasやハーモニーからいきなりユニゾンになったり
ソリストの使い方とか、言葉を断続的に唱和したり。
んー、あるある!
難易度もかなり高い曲なのですが
この団体はずっと高いテンションでこなしていました。


技巧的には非常に優れていたと思うんですが
演奏する曲が私には受け入れ難かったのと
「そういやハーモニーは?」という印象もあったんですね。
(美しくなくても)響きで世界を作る要素が無かったような。
ほとんどイチャモンで申し訳ありませんが。


コンクールって、演奏の評価って難しいなあ、と
改めて思う団体でした。



結果は3位が愛知高等学校。
2位がThe Cygnus Vocal Octet。
1位がGuangdong Experimental High School Choir。


私個人の印象に残った団体は
等身大の感情の動きを繊細に伝え
胸を「キュンキュン」ときめかせてくれた
「安積合唱協会」


演奏のみならず見た目のパフォーマンスも優れ
「ワクワク」させてくれた
「Choir UrFU」


密度の高い優れた表現力とメリハリのあるドラマ性で
「ドキドキ」させてくれた
「愛知高等学校」


この3団体が印象に残りましたね。
コンクールの結果は結果でもちろん尊重はしますが
短い言葉で表せるような強い印象を与えてくれた団体に
心からの感謝を!



(次回、最終回で全体の感想を)