全国大会同声部門の座談会とまとめ

 
 
間が空いてしまいました・・・。
 
さて、投票は集めなかったのですが
観客賞の番外編として
同声部門で人気が高かった団体について
山本さんとの対談をまとめてみました。

 

《お江戸コラリアーず》

山本 おえコラさんも良かったよね~。
   朝一の演奏なのに客席も6割ぐらい埋まっていたし。
   おえコラさんは大変やったろうけど
   そのおかげでこの同声部門が
   いっぱいのお客さんに聴いてもらっているね。
 
 
 
言い方は本当に悪いけど「最高の客寄せパンダ」でしたね!



山本 それにしても・・・いやあ、本当、泣いた。



泣けましたね、
「Fragments -特攻隊戦死者の手記による-」
 


おえコラ団員Iさん(以下Iさんと略します)
それは曲の力が・・・。



それはそうかもしれないんだけどさ!(笑)
でもやっぱり演奏も良かったと思うよ。



Iさん コンクールでは、時間制限のため
   信長先生にご了承いただき短縮版を使いました。
   最初に指揮者の山脇から案を出して、
   実際に練習に来ていただいて
   音を確認していただいてから決めたのですが、
   合唱を聴かせる場所が減ってしまって(笑)。



山本 合唱曲だけど合唱の部分が少ない曲やね(笑)。



Iさん 和音を鳴らすのが3箇所ぐらいしか無いという・・・。



山本 そこは泣きポイント(笑)。
   今日のおえコラさんの演奏、
   全然合唱を聴かない人にも聴いて欲しかった!



あ~・・・同感です。



山本 いわゆる「合唱シロウト」さんが聴いても
   良さが分からん演奏と違って
   おえコラさんのこの曲はちゃんと話が伝わるし、
   何が言いたかったかも分かるし。
   こういう曲を合唱界にいない人へ
   これから伝えていく、アピールしていくとか、
   そのリーダーとしておえコラさんが存在する使命もあるんかな、
   という気もしてるよ。



そうですね。
おえコラさんの今回の演奏は
単なる「合唱」というのではなく演出も付いた
シアターピースという印象でした。
そういう要素がアピールする力は強いですよね。



Iさん 演奏会では、演出家に動きを付けてもらい
   照明付きでやってました。
   そのとき注意していたのは、
   ただ決められた動きをするのではなく、
   一人一人が自分の意志で動いていることを忘れないように、
   ということでした。

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Photo by A.Yamaguchi

 
 

演奏会の照明付きのステージも見てみたかったなあ~。
始まりから山台の上の2人以外はみんな背を向けていたり
母親への想いを切々と歌うソリストの動きとかね…。



山本 Fragmentsみたいな曲はそういう感情へ訴える部分が
   鼻についたりする場合もあるわけ。
   ここが危ないところで、
   この曲を全力で演奏したら
   ちゃんちゃらおかしく聞こえてしまう可能性もある。

   そこがいわゆる「匙加減」で
   今日聴いていたら、それ以上行くと
   「おまえら茶化してんのか?」
   そんな印象になる可能性もあったよね。

   全力で「うわーッ!」と演奏したら
   子供に聞こえちゃう。
   本当の子供が「うわーッ!」というのは
   凄く伝わるんやけど
   いい大人がそれをやっちゃうと
   「ガキかよ…」という印象で
   この物語が全然違う世界になってしまう。

   ずっとシリアスに聞こえさせるために
   どこで止めるかが一番大事なポイントやな、と
   思って聴いていた。

   そこで指揮者の山脇さんが絶妙の匙加減で
   「これ以上行ったらヤバイぞ」というところで
   止めていた。
   自分はあれを「余裕」と思ったね。
   そういうところがいろんな面でクリアできていて
   コンクール的にも評価される演奏となっていたし
   「…じーん」となった(笑)。



つまり・・・泣けた、と(笑)。



山本 うん(笑)。



おえコラさんのFragmentsの演奏、
死が迫る特攻隊員の心情、戦時下の緊迫感と
残していく家族への情感あふれる旋律の対比など
確かに曲としての説得力ももちろんあったと思いますが、
やはりその曲を活かすような山本さんの言われる「匙加減」、
そしておえコラさんの表現力が
聴く者の感情に強く訴えたのだと思います。

演奏後、指揮者の山脇さんにお会いしたので興奮して
「短縮版じゃないオリジナルを演奏会で再演しないんですか?
 今度こそ聴きに行きます!」と言ってしまいました(笑)。
団員さんの一部には
「…当分やりたくない・・・」という声もあるとか。
その気持ちもわかるような。
聞く側にも演奏者にも
心に強く響き、残る作品なのでしょうね。



団員IさんからはFragmentsの資料として
いろいろなものを送っていただいたり、
紹介していただきました。
 
 
 
(Iさんより)
 
   
特攻隊関連の資料は沢山あり、
団員はそれぞれいくつか映画を見たり
本を読んだりしていたようです。
あと、指揮者の山脇含め、知覧の特攻平和会館に
団員の何人かが伺いました。

知覧特攻平和会館HP(※開くと音が出ます)
Fragmentsで使われている特攻隊員による詩も
このHP内に掲載されています。
 
“あんまり緑が美しい
今日これから 
死にに行くことすら 
忘れてしまいそうだ 
真っ青な空 
ぽかんと浮かぶ白い雲 
6月の知覧は 
もう蝉(せみ)の声がして 
夏を思わせる“
 

零戦 ~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争~ 前編
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2013050761SA000/
零戦 ~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争~ 後編
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2013050727SC000/
※NHKオンデマンドでお金がかかります


http://www.youtube.com/watch?v=HtHiN7xWR-I
えぐい映像もあるのでご注意を。
52分くらいから、「Kamikaze」についての映像もあります。
最初の方の平和きわまりない映像との対比が・・・。
歴史的資料上のことのように思えていたものが、
カラーで見ると本当にあったことで、
自分らと変わらない人たちに遭ったことだというのが身に染みます。
 

www.youtube.com(2013年お江戸コラリアーず演奏会より)

 
 
Iさん、ありがとうございました。
以下は話題に出た数団体を・・・。



山本 続く《徳島男声合唱団「響」》もがんばったと思うよ!
   やはり自由曲の「阿波」はさすが「阿波」やったね。



故郷の歌としての誇りや説得力が伝わって来ましたね。



山本 とっても素敵な演奏やった。

   続いての《HBC少年少女合唱団》
   毛色が全く違って良かったもんね。
   純な音で。



本当に!
こんなに上手かったのか!とビックリしました(笑)。
指揮者は名門:札幌旭丘高校の大木秀一先生だったんですけど
定年を迎えられてこの合唱団にも
力を多く注げるようになったからでしょうか。
心が洗われるような綺麗な音と音楽で
しかも自由曲がホルストとシュトローバッハの
「Ave Maria」というコンクールらしくない選曲も
魅力でしたね。



山本 《合唱団Le Grazie》も自由曲が良かった!



三善先生の「五つの唄」から
「にくしみ」「紺屋のおろく」はさすが大人の女声合唱団、
そんな思いを抱かせる演奏でしたね。



山本 《HIKARI BRILLANTE》も泣けたねー。



本当に。
…なんで泣けたんでしょうね?
自由曲の「うまれたて」がもう・・・。
(女声・ジュニアのための合唱曲「まりになれ、心」より。
 詩:工藤直子 作曲:平田あゆみ)



山本 出ました、雨森先生の猫パンチ!

 

(笑)。
(「うまれたて」は生まれたての子猫を見つめる詩)

高校生らしい、それは雨森文也先生がカテゴライズした
女子高校生としての視点かもしれないけど、
それでもまっすぐに心からの共感で
生まれたての子猫の目を通し、
世界の新しさが輝くように目の前で広がっていく・・・。
いやあ、あんなに明るい曲調なのに
本当にボロ泣きをしてしまいました。
 
 

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すごく久しぶりにCDも買ってしまったり(笑)。



山本 同声部門、素晴らしかった。
   やっぱり色々な選曲、演奏を聴けたから。
   凄いバラエティだよね。
   だから聴くのが非常に楽しかったよ。



そうですね!
コンクールらしからぬ、というとヘンですが
合唱祭や演奏会の1ステージのような選曲が多い印象でした。
もちろんコンクール曲として真正面から向かっていた団体も
それはそれで良かったです。



山本 これだけジャンルの違うものを並べられたら
   審査員は大変やろうね(笑)。
   …実は聴く前には少し不安もあったんやけど
   今回、実際に同声部門を聴いて希望、望みを見たかな。



同感です。



山本 部門編成でこれからこの全日本合唱コンクールも
   色々変わってくるかな・・・そんな未来を感じたよ。





《全体のまとめとして》

さて山本さん、この2日間聴衆として
全国大会を聴かれたわけですがいかがでしたか?



山本 聴くのも大変だね、やっぱり。
   ちょっと反省しました・・・。



わかってくれましたか!(笑)



山本 審査員を頼まれると
   朝から晩まで演奏を聴くんやけど
   その時はやっぱり「仕事」として
   凄く集中して聴く。
   自分なりの結果を出さんといかんしね。

   でも「聴くだけ」ってのは・・・
   だからこそ良い演奏をしないといかんのや!(笑)



そうですよ!(笑)



山本 聴いているお客さんのためにも
   良い演奏をしないということは
   非常に辛い行為やな、と。



観客賞の意義が高まってきました(笑)。



山本 でも・・・二度と聴かん!(笑)



いやいや(笑)。
また演奏会でMODOKIさんが
コンクール出場しない時に、
そう、5年後ぐらいにまた対談をお願いしますよ!



山本 …えー(笑)。

 


(おわり)