「コンクール出場団体あれやこれや:出張版2014」(その13)

 

 

 

 

 

<観客賞のお知らせ>


今年で3回目になる観客賞。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2013/12/06/091645

行うのは「室内合唱の部」「混声合唱の部」の2部門です。
多くの方の投票をお待ちしています。


参加資格:「室内合唱の部」と「混声合唱の部」、
     それぞれ全団体を聴いていること。


投票方法は3つあります。


1)投票用紙を私、文吾からもらう。
  この投票方法は私の知人ばかりですから説明不要ですね。

 




2)ツイッターによる投票

投票方法:ご自分のツイッターアカウントで

     「室内合唱の部」なら
     ハッシュタグ #室内合唱14 を付けて
     22日室内合唱の部終演(予定16:43)から
     17:30までに
     良かった2団体を書いてツイート。

     「混声合唱の部」なら
     ハッシュタグ #混声合唱14 を付けて
     23日混声合唱の部終演(予定17:51)から
     18:40までに
     良かった2団体を書いてツイート。

     その際、各団体の後に感想を書いていただけると
     とても嬉しいです。
     1団体だけの投票でも結構ですよ。
     (3団体以上を書かれると困ってしまいます・・・)

     ※昨年、ハッシュタグを間違えた方が
     何人かいらっしゃいました。
     1文字でも間違うと捕捉できないので
     正確にお願いします!



例:Musica●● 団員さん同士の自発的なアンサンブルが良かった!
  ▲▲シンガーズ 力強い歌声に感動しました。 #室内合唱14 




そして今年から新しく決めたのは


3)メールによる投票

投票方法:私のメールアドレスへ
     bungo0618*yahoo.co.jp
     (↑ *を@に替えて下さい)
     良かった2団体を書いて送って下さい。

     件名は「観客賞」で。
     締め切りの時間は
     ツイッターでの投票と同じです。




いかがでしょうか?
発表は後日、このブログ、
そして23日の「史上かつてない2次会」で発表したいと思います。
みなさんのご協力あっての観客賞。
投票をよろしくお願いします!


 



今日は長年出場されている3団体をご紹介します。





 

 





9.愛知県・中部支部代表

合唱団ノース・エコー

(66名・4年連続出場・47回大会以来17回目の出場)




ぜん 素晴らしいですよ、ノースさんは!
   特にサンドストレームを続けるようになってから。


山本 うん、凄みが出てきたよね!


昨年のサンドストレームも良かったです。


山本 良かった!
   自分は金賞だと思ったもん!


ぜん 最近は密度が増した分、
   パッションが出てきた気がする。
   精度が高くて、録音に耐えられる演奏。
   それって凄いことだよね。


山本 とにかく安定感があるのが素晴らしい!
   なんか巨大戦艦みたいになってきたね。


そんな巨大戦艦ノースさんの演奏曲は
課題曲はG2 Nachtlied(Max Reger)
自由曲はLaudamus te(Sven-David Sandström)



そんなわけで今年も自由曲がサンドストレーム!
選択した曲について団員M園さんにお聞きしました。


 

課題曲に関しては、ドイツ語らしい発音を
ドイツへ留学に行っていた人に模範を示してもらいながら、
深い響きに乗せる練習をしています。
それとともに、「ハーモニー」誌の記事に触発されて
Petrus Herbertの元のコラールの歌詞を手に入れて
6連全体でどんなことを歌っていたのか調べてみたり
Regerのこの曲の歌詞が元の曲から少し変わっているのは
どうしてかと想像してみたり
いろんなことをしながら、

曲の世界を探る努力をしてきています。



今回自由曲に取り上げたサンドストレームの“Laudamus te”では
構成のおもしろさを感じていただければと思っています。

f-mollの冒頭では、歌詞が“Laudamus te”のみですが、
b-mollに転調したところでは
歌詞に“Benedicimus te”が付け加わり、
es-mollになったところでは“Adoramus te”、
as-mollのところでは“Glorificamus te”、
と詩句が順に追加されます。
その間、
クレッシェンド&アチェレランドしながら盛り上がった曲調は
クライマックスに達したところで
初めて全パートが同じ言葉をそろって歌います。

このクライマックスを境に、
調性が突如♯系のcis-mollになるとともに、
ポリフォニーからホモフォニーへの転換があり、
4つの詩句も逆順となり、
かつ“Glorificamus te”から順に1つずつ減っていき、
最後は再び“Laudamus te”だけが歌われて、
静かに終わりを迎えます。

個人的には、このクライマックスのところの
“特異点”みたいな感じ(突き抜け感?)を

楽しんでもらえたら、と思っているのです。

 

 

ほー! 転調とともに語句が増えていき、
クライマックスでのホモフォニーへの転換、
そして語句が減っていく・・・
面白そうですね!

ノースさんなら数々の転調も、
クライマックスのホモフォニーもビシッ!と決めて
M園さんが言うところの“特異点”を
聴く側にじゅうぶん味わせてくれるでしょう。
楽しみです!





ここで指揮者の長谷順二先生へ
「コンクール思い出の名演奏」をお聞きしました。


 

「思い出の全日本合唱コンクール名演奏:長谷順二先生」


「思い出に残る名演奏」ということですが、
昔の話ですので具体的な曲の印象というのは忘れましたし、
演奏に対してコメントを言える感覚も無かった頃の話です。

1980年地元名古屋市民会館で開催された
第33回全日本合唱コンクールにおいて、
一般部門の後半が、出てくる団体、出てくる団体全てが
非常に味のある演奏ばかりで驚いたことを覚えています。

私自身それまで高校の合唱にはかかわっていたものの、
大人の一般の合唱団は殆ど知らなく、
こんな演奏が大人は出来るのかということを知らしめられました。
その数年後から名古屋市立北高校のOB合唱団にかかわり、
現在の合唱団ノース・エコーに繋がっています。
参考までにその大会の合唱団名を記しておきます。
F.M.C.混声合唱団、合唱団OMP、豊中混声合唱団、
合唱団京都エコー、神戸中央合唱団、以上出演順です。
ちなみに京都エコーは連続20年金賞の最初の年でした。

 

 
長谷先生、ありがとうございました。

やはり最初に聴かれた年というのは印象に残るものなのですね…。
どの団体も非常に味のある団体だったという
先生のご発言に共感しました。
それから高校生だけではない、
OB合唱団に関わるようになったというのも
その時の演奏体験が何かのきっかけになられたのでしょうか。
1団体だけではなく、
5団体を挙げられたのが何と言うか長谷先生”らしい”と
思ってしまいました。



ふたたびM園さんへ
聴かれる人へ何か伝えたいことは…と尋ねたところ。


 

ノース・エコーは今年、創立30周年を迎えました。
その間ずっとコンクールには出場し続けているのですが、
(全国大会で私たちが歌った
 外国作品を集めたCDが絶賛発売中です!)
「北欧の合唱曲なら」とか
「サンドストレームと言えば」という言葉に続けて
私たちの名前を思い起こしていただけるようになってきたことを
本当にうれしく思っています。
ずっと一つのことに取り組むことの大切さと、
それができる幸せとをかみしめながら、
高松のステージに向かいます。

よろしくお願いいたします。

 

 
M園さん、ありがとうございました!



>ずっと一つのことに取り組むことの大切さと、
>それができる幸せとをかみしめながら、

最初のぜんぱくさん、山本さんとの会話でも
触れられていましたが、
一つのことを続けることによって生まれる
ノースさんの演奏の凄みや安定感。
ずっと続けることが難しいからこそ
大切な、価値のあるものだと思います。

あ。言及されている「外国作品を集めたCD」

 

 

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「合唱団ノース・エコー創立30周年記念CD
 北欧の合唱作品 全日本合唱コンクール全国大会ライブより」

…詳しくは ↑一番上の団名からノース・エコーさんHPへどうぞ!


今年もずっと続けてきた
ノースさんのサンドストレームに期待しています!



 

 

 

 

 



続いては大阪から、あの団体さんの登場です。


 

 

 

 

 

 



10.大阪府・関西支部代表

淀川混声合唱団
(75名・4年連続出場・57回大会以来8回目の出場)





淀混さんが初出場の2004年愛媛大会、
デュブラ「Salve Regina」のサウンドの美しさが
印象に残ってます。
聴いているうちに心が澄んでいくような気がしたんですよ。


山本 去年、全国コンクールを全部聴いて、
   改めて混声合唱部門の凄さに
   ビックリしたんですよ。
   こんな凄いところなんだ・・・と。
   淀混さんとか、まさにそういう団体でしょう。


ぜん 淀混さんの演奏は、音楽の風通しの良さが抜群!
   印象に残ってる演奏はいくつかあるけれど、
   2009年札幌大会の千原先生「牡丹圏」とか
   2012年富山大会
   「Agnus Dei = 空海・真言・絶唱」とか、
   風通しが良いという特徴を超えて
   音楽が迫ってくるようで、本当にビックリした。
   まさに渾身の音楽!という感じ。

   それと、ピッチャーが北川さんなんだよね~。
   毎回密かに楽しみにしていたりして・・・。


作曲家:北川昇さんがピッチャー(ピッチパイプ吹き)なのは
贅沢ですよね(笑)。



淀川混声合唱団さんの演奏曲は
課題曲はG3 夜もすがら(千原英喜)
自由曲は「廃墟から」より
「第一章 絶え間なく流れてゆく」
(原民喜:詩 信長貴富:作曲)


この「廃墟から」は
2007年岡崎高等学校コーラス部・岡崎混声合唱団の委嘱作品。


出版譜の前書きから信長貴富先生のメッセージを引用しましょう。

 

第一章 絶え間なく流れてゆく  
原爆詩人として知られる
原民喜(1905-1951)の散文(「夏の花」・「鎮魂歌」)と
詩集(「原爆小景」・「魔のひととき」)から抜粋し、
テキストとした。
曲名は「鎮魂歌」の冒頭の一文
「美しい言葉や念想が殆ど絶え間なく流れてゆく。」
から採ったもので、
作曲の着想は主にこの「鎮魂歌」の文体から得ている。
私は「鎮魂歌」について、フラッシュバック
(強い心的外傷を受けた後、その記憶が鮮明に思い出されたり、
夢に現れる現象)を文章化したものではないかと想像している。
作曲はその心理現象を追体験する行為だった。
被爆から6年後、原民喜は自殺している。
被爆体験は彼に文学者としての覚醒をもたらしたと言えるが、
同時に人間への絶望を決定づけるものでもあった。
原民喜の言葉、そして無数の死者の言葉を聞き取ることが、
いま生かされている私が
表現者としてできることなのだろうと思う。

 

広島被爆者の母を持つ信長先生が作曲した
原爆投下後の惨状と哀切な鎮魂歌。
過去の記憶が現在のものとして甦るフラッシュバック。


この曲を委嘱された岡崎混声合唱団さんが
2012年に富山での全国大会で再演されたのですが
弱声の美しさと緊張感。
レクイエムとしての哀切さと説得力がある名演奏でした。



今、この曲を選ばれたのは何故か。
指揮者の伊東恵司さんにお聞きしました。


 

信長先生、千原先生というのは
淀川混声合唱団が常に取り上げてきている作曲家ですが、
信長先生の渾身の作品とは一度向き合っておきたかったのです。
「廃墟から」には、それまでに様々な手法を試しつつ、
いよいよという覚悟でこの作品に挑まれた
信長先生の魂を感じます。

 

 
確かに「渾身の作品」と表わすのが正しい作品です。
今まで数々の信長先生の作品を演奏されてきた
淀川混声さんが、その渾身の作品と向き合う…
期待してしまいます。


続けて、この全国大会に対する目標などがありましたら…



たくさんの方に準備していただいている晴れの舞台。
張り切って一生懸命、そしてさわやかに演奏したいと思います。

 

 

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今年の演奏会リハーサル時の全体写真ということ。
客演指揮の清水敬一先生もご一緒に写っておられます。

 

 


伊東さん、ありがとうございました。
昨年のペンデレツキ「Agnus Dei」では
力強さと説得力とともに、
ぜんぱくさんの言われる「音楽の風通しの良さ」があり、
同じ曲の他団体の演奏とは違う印象に、
音楽の不思議さを感じた覚えがあります。

今年の淀川混声さんの演奏も、
岡崎混声さんとはまた違った曲の魅力を
存分に伝えてくれるのではないでしょうか。




さて、Vineさんの記事では
「コンクール思い出の名演奏」を語っていただいたのですが、
今回はコンクール、合唱界への伊東さんからのご提言です。
ぜひお読みください。


 

他方で、制度については何度も言ってきていることですが、
合唱連盟のコンクールスタイルは
本当にもう変えたほうが良いと思っています。
例えば、1年生の素人を一生懸命鍛え上げて
一人前にしていく大学カルチャーの中での大学合唱団と、
実態として歌える人材に声をかけて集めたら
わりと良い音が鳴る可能性のあるユース合唱とを
一緒にするビジョンは何なのでしょうか?
グローバリズムの中でユースというカテゴリーを
強化したいというビジョンがあるならば、
ジュニアからの連動やスキルアップのプロセスや仕組み、
活躍のさせ方についても議論があったうえで
連盟の活動の中でサポートや
奨励していく仕組みが出来たら良いと思うのですが、
コンクールの部門をひっつけることが
何かの活性化に繋がっているとは思いにくいです。

また、せっかく出来た室内合唱ですが、
大きな人数のカテゴリーを
同じ2000人規模のホールで行なうと
意義が薄れるのではないでしょうか?
課題曲を変えたり、
ホールサイズを変えるのも一つの方法かと思いますし、
福島のアンコンのようなものを一つの聖地にしてしまって、
連盟としては手放し分業するのも一つかと思うのです。

手っ取り早く言うと、一般部門については、
ジャンル別のコンクールに切り替えたほうが
良いのではないでしょうか?
大学部門の育成については、
大学がひしめいている東京圏や関西圏の事情と
各県に一つある国公立大学を中心にした
地方の若者カルチャーの事情を一緒にするのではなく、
より豊かな実りに結びつく施策を
考えたほうが良いのではないでしょうか?

私は、決して合唱連盟に反発して
自分で「コーラスめっせ」や
「アルティ声楽アンサンブルフェスティバル」や
指揮者協会の大学関連の各イベントを
立ち上げたわけではありません。
いろいろ試した上で、
合唱連盟のようなアソシエーションでなら
もっと効果的に企画していけることも
たくさんあると考えており、
合唱連盟の中で、議論しながら
より良い合唱の未来を構築していくことを
考えたいと思っています。
(今は子ども委員ですので、松下先生、戸崎先生らとともに、
児童合唱や育成世代における諸問題を考えたいと思っていますが。
今の意見はより具体的で建設的な意見に変えて表明し続け、
また諸先生方と話をしていきたいと思っているのです)

→参考http://www.yumemirusakananoabuku.jp/chorus/panf/messe.html
→参考http://www.yumemirusakananoabuku.jp/chorus/suggestion/21century.html

 

 










そして東北の雄、こちらの合唱団のご紹介です。







 

 




11.宮城県・東北支部代表

グリーン・ウッド・ハーモニー
(49名・16年連続出場・第2回大会以来32回目の出場)

 




ぜん あの大人数で恐るべきG1の演奏・・・。


G1の演奏では2004年愛媛大会での
モンティヴェルディ「波はささやき」が
本当に素晴らしかったです!


ぜん 自分は2006年熊本大会で聴いた…


山本 そう! ウェーベルン!!


ぜん 強烈でしたね、ウェーベルン
   「Entflieht auf leichten Kahnen」
  (軽やかな小舟に乗って逃れ出よ)

   G1ゲレーロの「Sancta Maria」の
   ポリフォニックなところが
   そのままウェーベルンに移って
   躍動して、滾っている!
   凄い演奏でした。



グリーン・ウッド・ハーモニーさん(以下GWHさん)
今年の演奏曲は
課題曲はG1 Salve Regina (Josquin des Pres)
自由曲はSe la mia morte brami(もしお前がわたしの死を望むなら)
Moro, lasso, al mio duolo(私は死ぬ、悲しみや苦しみゆえに)
(Carlo Gesualdo)




安定のG1。
そして自由曲。
ジェズアルドらしい音、揺れる感情、
不安定さの中に美しさを感じさせる名曲です!

この曲を演奏しようとした理由などを
団員のまーさんにお聞きしました。



 

自由曲をジェズアルドにした理由ですが
当初は別の作曲家のポリフォニーをやる予定でした。
その曲の時間の関係で、ふさわしい小曲として
ジェズアルドを何曲か歌ってみたら、
ジェズアルドの方が魅力的でGWHに合っている、と
今井先生が考えたためです。

ちなみに今年も先生による分析譜が出てます。
G1は第2版、ジェズアルドについてはなんと第3版まで!


ジェズアルドについては、なかなかなプロフィールだし
(不倫をしていた妻とその愛人を殺したとか…)
今回歌う曲は、2曲とも「死」を含むタイトルで
何ともシリアスな雰囲気ではありますが…

いずれの曲も、ルネッサンス時代の作品なのに
まるで現代曲であるかのような和音の流れなど、
歌えば歌うほど美しさを感じます。
そこが伝わるといいですね。

 

 

おおー、「あの」分析譜が第2版、第3版まで!

GWHさんは過去に難解な現代曲を選ばれたりもしていますが、
現代作品にも通じる音があるジェズアルド。
課題曲G1演奏の素晴らしさも考えるに、
これはかなりハマッている選曲と思って良いのかもしれません。


聴く人に伝えたいことが何かあれば…には

 

 

今年も発声を鍛えるべく、
ボイストレーナー田中先生による「天狗唱法」や、
今井先生による個人指導の「今井クリニック」などなど、
地道な努力を重ねているところです。

 

 
田中先生、昨年は「割り箸唱法」だったのですが
今度は「天狗唱法」?(笑)
いったいどんな唱法なんでしょう。
そして私も受けてみたい「今井クリニック」。
これらの練習の成果が楽しみですね。



 

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東北大会終了後の1枚ということ。



まーさん、ありがとうございました!

昨年のGWHさんが演奏されたラッススは
大人数とは思えないアンサンブルで
過去の名曲が現代に甦った印象を受けました。

今年のジェズアルドも地道な発声鍛錬、
そして今井邦男先生の素晴らしい音楽で、
きっと説得力ある演奏を聴かせてもらえると信じています。
楽しみにしています!








(明日に続きます)