観客賞 混声合唱部門 その3




それでは観客賞混声合唱部門、
同率第1位の団体。
最初にご紹介する団体は




CANTUS ANIMAE(61名)




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【課題曲G2:Auf dem See】

躍動している音楽!


一同 そうそう!と同意の声。


自由を感じましたね。


ベースの音色が良かったです。


自由曲ぐらいの熱意で取り組んだような、
それぐらいの説得力がありました。


引き込まれる演奏でした。


なんか本当にやり散らかして…。


一同 「やり散らかして」(笑)。


「The CA」という演奏でした!



【自由曲:ブラームス「ドイツ・レクエイム」から
   「2.人はみな草のごとく」】

凄かった! 圧巻!の声が次々と。


指揮者の力だけでは
あそこまで絶対に持っていけない。
ブラームスのドイツ・レクエイムをやるんだ、
という前に、
イチからブラームスやドイツ音楽を
団員一人一人が勉強してるんじゃないかな。


団員のみなさんに、
音楽への深い理解と集中力がなければ
あれほどの演奏にはなりませんよね。


それはやっぱり、あの人たちは凄いから。
合唱の変態の域に達しているかも・・・。


一同 「合唱変態」(笑)。


「神戸牛サーロインステーキ3枚大盛り!」みたいな。


神戸牛なんだ(笑)。


非常に高級なものを詰め込まされているような…
プレミアムな食べ放題!な感じがしました!!




《文吾の感想》

課題曲は深い音色から軽やかなものまで自在に。
さらにテンポもやりたい放題!
そしてそこまで崩してもなお、
底にはリズムが打たれていたのが凄い。
最後のテノールの延ばす音のデクレッシェンドに
追憶、切なさを感じさせ。
そう、この曲は悲恋なんだよ!
と納得の気持ちが湧き起こりました。

自由曲も団員さん個々人の表現は
留まることを知らず。
名曲ゆえ、過去の名演とどうしても比較し、
弱音の表現が、ハーモニーの精妙さが…など
つい漏れてしまうことがあることはあるのですが、
ピアノ2台と奏でられる合唱が、
オーケストラのそれと比べて、
なんと親密に、小気味好く温かく伝わってくるのか。
ピアノ4手版のドイツ・レクイエムの良さを
新たに教えられた気がする演奏でした。

2015年を「ドイツ・イヤー」とし、
ブラームスだけではなく、
様々なドイツ音楽に触れ、
さらにマンスリーコンサートでは
ドイツ・レクイエム全曲を演奏されたCA。
培ったそれらの集大成が
この日の演奏に現れていたのは間違いありません。

ブラームス自身が手紙に書いたという
「ドイツ・レクイエムを、
 いつでも人間のレクイエムと言い換えても良い」という言葉。
その「人間のレクイエム」が
本当に納得できた演奏でした。



ここで観客賞第1位を受賞されたということで
団内指揮者のH鹿さんから
メッセージをいただいております。



合唱を愛してやまない方々からの
投票での受賞ということで、
本当に光栄に思います。
昨年は、自由曲が「愛の園」、
今年は「ドイツレクイエム」。
歌い手も「なんて選曲なんだ」と思いますが、
「今歌いたい曲」ということにこだわると
こうなってしまうのでしょうね。

ドイツレクイエムは、
素材(一人一人の声や技量)が
とことん問われるということを日々痛感しました。
メンデルスゾーンは、
一貫して音律にこだわって練習しました
(本番でできたかは ?ですが)。

一般の合唱団にはメンバーの交代は
避けられないことだと思いますが、
CAでは幸いなことに、
昨年のコンクール後に入団したメンバーが、
Sop8人 Alto5人いました。
合唱団が一つの声になるには
それなりに時間がかかるものですが、
今年は創団以来初めて
雨森先生によるパート練習が行われました。
その中で何をやったかというと、
お互いの声を聞きあうことと並び順の調整でした。
課題曲の4小節ほどを繰り返し歌い、
誰と誰をとなりにするか、
実際に並びを変えていくのです。
この人の声に合わせなさいというのは簡単ですが、
そうはしません。
神経質にならずに、楽に歌うように。
声をブレンドさせるようにと。
今の持ち声でブレンドしやすい人の
組み合わせにするということを
ひたすら行ったのでした。

そんなこんなで例年以上の苦戦が続きました。
当日練習になって、
大分音楽のイメージを
掘り下げることができたのですが、
雨森先生が仰ったのは
「ここまでで75%、残りの25%は
  個々人が主体的に音楽しないと」という言葉。
最後は、バラバラに並んで歌ったり
小グループになって歌ったりしたのでした。

本番、一人一人が音楽して、その集合体として
一つの音楽が実現できたのだとしたら、
そしてそれが聞き手の皆さんに届いたのだとしたら、
こんな嬉しいことはありません。




H鹿さん、ありがとうございました。

雨森先生のパート練習、
非常に興味深く読ませていただきました。
いわゆる突出した声の持ち主には「抑えろ!」
という指示が多いと思いますが、
それとは真逆のやり方は、
とても示唆に富むものでした。

「聞く」力、その訓練方法は
歌う方法ほど重視されていませんね。
今のCAほどの人数になると他の団体は、
個性を抑えて平坦な表現になるか、
または野放図にそれぞれ勝手に
出すだけになりがちです。

「お互いの声を聴き合うこと」
「個々人が主体的に音楽すること」

音楽をする上でとても重要なことですが、
なかなか本当の意味で追求し続けるのは
難しいことです。
その困難に挑戦し続けるCAの演奏を
これからも楽しみにしたいと思います。




(観客賞 混声合唱部門 最終回へ続く)