合唱団訪問記「宇都宮室内合唱団ジンガメル」さんの完結編です。
合唱団訪問記の再掲については前回の記事をご参照ください。
「合唱団訪問記」
第1回「宇都宮室内合唱団ジンガメル」さん。
<その2>
うーむ。栗山先生、さすがにお疲れのようだ。
早速、長机を半円状に、指揮者を囲むように並べる。
曲はモンティヴェルディの「アリアンナの嘆き」
見学だけのつもりだったのが、パートを聞かれ
ベースパートの方に呼ばれ、団員と団員の間に挟まれる!
しかも楽譜を隣の人が見せてくれる!!
う~、これって「歌え!」…ちゅーことですかい?
ノースでも、今まで入っていたどの合唱団でも
初回の見学者には歌わせないよなあ(笑)。
でも、これってフレンドリーな印象でいいかも~。
栗山先生のお話は、
まずベルギーを始めとするヨーロッパの話にはじまって。
バロック音楽の話。
「バロックは若いうちからやらないとダメだね。
よくあるでしょう。バッハとかで
『ヨヒョヒョヒョヒョオ~~』
↑ヴィブラートのメリスマ(笑)
とかやってるの。
あんなの聞いてると、『バロック、何がいいんだ?!』って
気になるよねェ」
「だから今、学生たちにはバロックやらせてるの。
ホント、若いうちから、やらないとダメなんだよね。
僕も年とってから勉強はじめたから、相当苦労した」
曲の指揮を始めると、
先生の今まで疲れて見える雰囲気が一転して
『しゃん!』となる。(サスガ!!)
そういう言葉は御本人、一言もしゃべらなかったけど、
栗山先生の音楽って
「音楽の推進力」をスゴク感じさせる。
その場にとどまらずに、
前に、前に音楽が進むエネルギー、と言うのかな。
指揮もそうだけど、団員に欲求するものも、それがビンビン伝わってくる。
よく言われていたのが、イン・テンポ、と言うことと
次のフレーズに持って行く、「つなぎかた」。
1つのフレーズを「収めすぎない」、と言えばいいか。
練習の後半は、リズムを叩き、
指定のテンポを指示して終了!
きっと、これからの合宿などで、内容を詰めていくのだろう。
毎週練習に来られない、と言う事で
「音楽の設計図」を団員に理解させようとする姿が興味深かった。
練習の間に
「合唱指揮者に向いている職業」の話題で、
栗山節が炸裂した事もあって(笑)、とても
刺激的で印象深い練習だった。
(すいません!内容は自主規制でっす!!)
いやー。18時から練習がはじまって、21時近くになるまで
ほとんど休憩ナシ!
しかも休憩後の練習は10分で終わるし(笑)。
(休憩中は、ベルギーでの写真を女性団員に見せる栗山先生…)
音楽監督はもちろんスゴイけど、
団員のマジメにひたむきに音楽へ取り組む姿勢が、
「あ~、やっぱり良い団なんだなあ」と感じましたね。
(団員には、学生も多いけど、教員の方も多いそうだ)
6/9の演奏会は残念ながら聴けなかったけど、
その次の日の栃木県合唱祭でも、
「北極星の子守歌」(ジンガメルさんの委嘱作品である!)を
隅々まで神経の行き届いた演奏で感動させてくれたし。
宇都宮、という東京からやや離れた都市でも
こんなに立派に文化を発信している合唱団があるんだなあ、と
改めて感心させられた文吾でした!
<余談ですが・・・>
練習後、一緒に帰る事になった男性団員が。
これが何と、札幌出身の同年代の人で(笑)。
駅前の居酒屋で色々話を聞いたのだが。
団員のMさんは
合唱は中学の時に助っ人で合唱部の手伝いをやったぐらいで、
高校、大学ともにラグビーなどのスポーツをやっていた
バリバリ体育会系の人、だったのだが。
就職で札幌から、ここ宇都宮に転勤になり、
近所にある、というだけで
宇都宮大学の合唱団の演奏会を「たまたま」聴いたところ。
「!」
・・・と思ったMさんは、
同じ指揮者が振る一般合唱団
「宇都宮室内合唱団ジンガメル」に
ほとんど合唱未経験で入ってしまう。
「もう、あれから7年になりますよ。
中学の時の音楽の先生に伝えたいなあ。
『いま、合唱団に入ってるんです!』って。オドロクだろうなあ~」
そう言って笑うMさんの顔を見ながら
(いい話だなあ・・・)と思った。
自分の合唱のキッカケとなった
幼なじみの女の子の中学生の時の顔を思い浮かべた。
ビールのジョッキを傾けると、しみじみ美味かった。
(おわり)
(追記)
「宇都宮室内合唱団ジンガメル」さんは、2002年の8月、
北海道の釧路と札幌に演奏旅行をされた。
演奏旅行終了後、団員のMさんから、こんなメールを頂いた。(抜粋)
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初めて文吾さん とお話しされたときに話したこと、
何気に言ったことですが、
その後の合唱団訪問記に書かれたことで、
私自身の心の中に残っていて、
そして今回の演奏会でそのことが実現致しました。
中学校の合唱部でお世話になった先生に連絡が取れて、
二人のうち、お一人には(札幌での公演に)聴きに来て頂けたことです。
その先生は校長先生までされて引退されておりました。
もう一人の先生はご結婚をされて今は主婦をする傍ら、
ピアノを教えたりしているそうで、
当日はどうしても来られず花束を贈って頂けました。
来場者は確かに少なかったのですが、文豪の部屋掲示板での
Ken5さんの感想のように、
少なかったこと以上に価値のあるものを私たち演奏する側も、
演奏を聴いて頂いた側にも得られたのではないかと思えました。
「出会いって本当に素敵だな」と感じた今回の演奏旅行でした。
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贈られた花束には
「バレー部のMくんですね」
・・・と中学生時代を覚えている旨のメッセージが
お祝いの言葉と一緒に添えられていたそうです。
Mさんの感じたように、出会いとは素敵で、
本当に素晴らしいものだと、
私も思います。