観客賞スポットライト 同声部門 その2

 



同声部門のご紹介、続きです。


今回のスポットライト!
昨年、同声部門で金賞1位の団体!








6.東京都・東京都代表

合唱団お江戸コラリアーず

(男声82名・第62回大会から8年連続出場)




東京に越してきた
「なにわコラリアーズ」のメンバー中心に
1998年に設立されたが、
現在残っている団員は少ないそう。


通称:おえコラさん、昨年の観客賞は2位。
自由曲:信長貴富先生作曲の
「飛ぶものへの打電」が2人の打楽器奏者、
そして用意された打楽器がもの凄い数で!



観客賞座談会では


いや、もう、あのパーカッションには
特別賞を差し上げたい(笑)。
目が釘付け!


課題曲もそうでしたが、
自由曲も魅力を引き出して「良い曲!」
と思わせる演奏でしたね。


自分の辞書には無い感じの演奏!


…凄いものを聴かせていただきました。

などと。
私は地元の男子大学生数人が身を乗り出して
聴いていたのが印象に残っています。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2016/01/11/194914



おえコラさん、今年の課題曲は
M2 Fölszállott a páva 
(Ady Endre 詩/Kodály Zoltán 曲)

自由曲は今年も信長貴富先生の
「無伴奏男声合唱のための Credo」

これは今年のおえコラさん第15回演奏会
「信長貴富作品展 vol.2 ~錯綜する時代~」
委嘱初演された作品。


団員さんからパンフレットに寄稿されたインタビューを
送っていただきました。

 


■委嘱作品 「無伴奏男声合唱のためのCredo」について


― 典礼文を扱うのは初めてでしょうか。


信長 以前、片山みゆき先生が指揮する団体で、
グレゴリオ聖歌に近いものを扱ったので、
初めてではありません。

私は信仰を持っておらず、
典礼文を素材としてしか見られないため、
これまで宗教的テキストを使っての作曲は
ほとんどして来ませんでした。
しかし、「信じたい」と思うことは
宗教を抜きにしても人類共通なのかな、
という所を拠り所に立ち向かっていこうと思いました。


― どのようなイメージを持って、
曲を書かれたのでしょうか。


信長 音の塊がスタッカートで上昇していく、
言葉の断片が目の前に迫ってくる、という
映像的なイメージが最初にありました。
Credoというテキストで
どのような音楽を書くか苦心していた時に、
スタッカートで上昇する音像の閃きがあったのです。


― あるフレーズが来たら、
気付いたら過ぎ去っていくように感じました。
スピード感を感じますね。


信長 言葉が消費されていくと
曲目解説にも書きましたが、
一度言ったことは戻らないように書きました。
まぁ、これは何と言うか、
「ニコニコ動画」のような…。
文字が無機質に目の前を通過していくような
視覚的なイメージといえばいいでしょうか。


― 信長さん、「ニコニコ動画」を
見ていらっしゃるんですね(笑)。
― テキストからも離れて、
音のイメージで書かれていると思って良いですか。


信長 前半は個々の言葉の意味を
説明していくということよりも、
視覚的なイメージ、
音像が動いていくイメージで書いていますね。
ただ、”Crucifixus”の箇所のように、
意味に引っ張られる箇所もでてきます。
書いていると、言葉にどうしても
引力を感じる部分もありまして。


― 音の配置はオーソドックスな作品と
評されているようですが、音形の関係ですか。


信長 そうですね。
はっきりとした音階があり、無調ではない。
音選びの狙いは最初に決めて取り組みましたね。


― 他の作品にも見られるのですが、
教会旋法なども曲に織り込んでいらっしゃいます。
何か狙いがあるのでしょうか。


信長 調性から離れて書く場合、
何かしらのシステム、
例えば旋法を基本に置くなどしないと、
ア・カペラの合唱は形が作りづらいと思います。
邦楽器が日本の旋法でないと
楽器が鳴らないことと似ていて、
声は五度に落ち着きたがる感じています。


― お江戸コラリアーずが委嘱するオリジナル作品は、
パート分けが多いという印象があります。


信長 やはり人数が多いからね。
それを利用しない手はないと思って。
ただ、書き方は迷いました。
どうやったら歌いやすいのか、
どのように音を移していくのか、
例えば群にしてしまった方が良いのか考えました。
本当に混乱したのだけど、
今回はパートの中で声部を分ける形で確定させました。


― どのパートとどのパートが
繋がっているか分かりやすいように、
12色の色鉛筆を買いにいきました(笑)。

 

 

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おえコラ団員さん談
「体幹を鍛える系の体操だったはずです。
 いろんな体の鍛え方を調べては
 いろいろ試してくれるやつでして」





自由曲の音源を聴かせていただいたところ、
「Credo!!!」とフォルテッシモで始まり、
張り詰めた高いテンションが続きます。
「Credo」という単語が
「音の塊がスタッカートで上昇していく、
 言葉の断片が目の前に迫ってくる」
という信長先生の言葉通り、
エコーに聞こえたり。
「Credo」という言葉への想いが変容していくよう。

インタビューの通り、スピード感がある、
一瞬も聞き逃せないインパクト抜群の作品です!
今年のおえコラさんも必聴ですよ!!



団員さんからは


毎回共演者の方に助けられております。
去年の『打電』なんて最たるもの。
今回はどちらもアカペラということで、
自力の無さがばれる状況ですが、
がんばります!

 

…とのことでした。
自分たちが委嘱した新曲を
広く多くの人に問うという面で
コンクール、そして全国大会というのは良い場所。

昨年の身を乗り出し、目を輝かせ
おえコラさんの演奏を聴いていた大学生のように、
今年も合唱の新しい魅力を
伝えていただきたいと思います。







20分の休憩後、
若者とベテランが合わさった妙味の男声が!




 

 



7.大阪府・関西支部代表

大阪メールクワィアー

(男声50名・第68回大会から2年連続出場)




20数名ほどの大阪経済大学グリークラブさんが
大阪メールクワィアーさんの中に入っている団体だそう。

この団体の注目すべき点は、
1931年生まれという
今年も全日本合唱コンクール全国大会で
間違いなく最高齢の指揮者:須賀敬一先生の存在でしょう。


昨年の観客賞座談会でも

 


指揮者の須賀敬一先生が
ステージに登場された時の拍手が!


凄かったね!


さすが、「指揮者が憧れる指揮者」だなぁ、と。


背中が語る指揮でしたね〜。

…などと。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2016/01/12/202907



大阪メールクワィアーさん、
今年の課題曲はM3 松よ(「三つの時刻」から)
(丸山 薫 詩/三善 晃 曲)

自由曲は髙田三郎作曲
「ヨハネによる福音」より
「初めにみことばがあった」

髙田三郎先生のスペシャリストでもある
須賀敬一先生の編曲。
力強く、敬虔な信仰を思わせる音楽です。


昨年も自由曲は髙田先生の作品を演奏されたのですが

高田三郎作品を構成する要素を
絶対『外さない』演奏で
非常に説得力がありました。

派手さは無いものの、
わかる人にはわかる、
高田三郎作品が好きで良かった・・・
そんな演奏でしたね。

などという感想を残していました。
全国大会で高田三郎作品を聴ける貴重な機会。
楽しみです!






続いては本州最北端からの女声合唱団。



 



8.青森県・東北支部代表

うとう女声合唱団

(女声31名・第66回大会から4年連続の出場)


ぜんぱくさんの3年前のブログ記事によると
http://talk21self2.blog111.fc2.com/blog-entry-1798.html
 

 

 「うとう」とは漢字で「善知鳥」と書くそうです。
青森市はその昔、
「善知鳥村(うとうむら)」と呼ばれていたとの事。
詳しい解説のあるwebサイトがありましたので、
リンクを貼っておきます。
コチラです↓

善知鳥神社

 

 



初出場時にはブラームス、
そしてヒンデミットやレーガー、
メンデルスゾーンという
自由曲に海外の名曲を選択されてきました。


今年のうとう女声合唱団さんの課題曲は
F4 木のように(「悲しみの意味」から) 
(星野富弘 詩/なかにしあかね 曲)

自由曲はエストニアの作曲家Arvo Pärt
「Zwei Beter(祈る二人)」


ペルトらしい深い精神性も感じさせる
5分ほどのドイツ語作品。
テキストは「ルカによる福音書」の
ファリサイ派の人と徴税人を意味しているそう。

・・・渋い!
ペルトの研ぎ澄まされた響きを
どう表現していただけるか、期待しております。







続いては高校の若き実力OG合唱団。







9.神奈川県・関東支部代表

La Pura Fuente

(女声27名・第66回大会から3年連続出場)

 

 



La Pura Fuenteとはスペイン語で「清い泉」とのこと。
神奈川県の合唱名門校、
清泉女学院の卒業生さんが2010年に作られた団体。


昨年の観客賞座談会では

 

 

 力強く直線的な声がカッコイイ!


良く整えられていましたね〜。


みんなキレイだった・・・。
(ため息混じりに。ちなみに発言者は女性)


一同(笑)。


立ち方が良いんですよ!


そう、立ち姿が美人!
ちゃんと立っているかどうかで
歌が上手いか下手かわかるからね。
だから良い立ち方をマスターしてるのでは。


良く練習されているのがわかる、
硬質で力強い発声は会場を満たしていました。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2016/01/10/192220

 

 



La Pura Fuenteさん、
今年の課題曲はF4 木のように(「悲しみの意味」から)

自由曲はハンガリーの作曲家Levente Gyöngyösi
「Parvulus natus est nobis
(そのみどりごは我らのために生まれたり)」
「Alleluia(主をほめ讃えよ)」


昨年に続き、ジェンジェシの作品。
緊張感ある音楽からAlleluiaが入る箇所ではリズミカルに。
2曲目はボンゴも入り、さらに明るく華やかに。

La Pura Fuenteさん、昨年もボンゴ、
それとタンバリン、手拍子を使う曲でした。
若い団体の雰囲気にボンゴの響きが合っていましたね。
今年も会場を沸かせてもらえるのでしょうか。








今回のスポットライトPart2。
初出場の女声合唱団です!



 

 




10.香川県・四国支部代表

monosso

https://www.facebook.com/monosso.kagawa/

(女声34名・初出場)



monosso指揮者、混声合唱部門のMODOKI指揮者でもある
山本啓之さんにインタビューを受けていただきました。



初出場おめでとうございます!
なんでも結成してまだ1年経っていないとか。



「ありがとうございます。
 結成は去年の12月だね」



それで全国出場! 凄いですね。



「それは運が良かっただけ…」


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(高松の海に向かって。「もう一度 仲間と呼んでくれますか?!」)

 

 


まず、団名の「monosso(モノッソ)」の意味はなんですか?



「讃岐弁で『ものすごい』とか『いっぱい』とか
 とにかくエネルギッシュな言葉。
 いろいろ案は出たけど
 自分が出したのが採用されちゃったね。

 monossoは香川県のさまざまな高校の卒業生、
 合唱を止めていたかもしれない人の
 受け皿になればいいなと思っている。

 大阪や広島から一生懸命に来てる子もおるんやけど
 香川の地元の子たち、大学生が入って来てくれる。
 それが嬉しい」



なるほど・・・。
選曲についてお尋ねします。
課題曲はF1
「The Nightingale(Thomas Weelkes作曲)」ですが?



「高校の合唱しか知らない団員が多いので
 あまり演奏したことが無いという
 外国の作品をやろうかと」



全国大会ではmonossoさんだけの選曲ですが
可愛らしいマドリガルですよね。



「いや、演奏するとなると難しいのよ。
 上2声で軽くやっているのに対し
 アルトに芯が必要で。
 monossoではアルトに2人いる男声が力になってる」



意外な男声の力!(笑)
自由曲は信長貴富作曲
「不可思議のポルトレ」より
「伴奏」「明日」。

この作品、音楽もそうですが
詩が与謝野晶子という自立した女性の
非常に力強いものですね。



「これも三善晃先生のお言葉、
 『絶望を胎生としない愛を信じない』からの選曲。
 どんなことがあっても
 『明日』を目指していくんだ!…という。
 音楽も彼女らの今のサウンドに合っているかなと思って」



楽しみです!



「…と言ってもね、
 しょせんできたばかりの合唱団なので。
 練習も月に1回、日曜だけだし。

 そんな中で『行くぞコンクール!』だけじゃない、
 良い音楽をしようと。
 コンクールに出場すればmonossoがこんな団体で
 こんな活動をしていると知ってもらえるしね。
 それでできれば『こんな合唱団いいよね』と
 思ってもらいたい。

 まあ彼女たちは初めての全国大会でビビるだろうけど、
 これもライブだからね。
 命削ってがんばるつもり!」



がんばってください!
ところでこの「君たちの歌はずっとカルビだ!」って


どういう意味なんですか?(笑)





「(笑)。
 最初から最後までずっと脂身多めの歌じゃ飽きるやろ、って。
 やっぱり最初は塩タンから始まってハラミとかを挟み、
 ロースも突っ込んで・・・」



山本さんありがとうございました!
monosso全国大会初お披露目、
すべての味わいが出せることを願っております!








同声部門最後の団体は…こちらも初出場!








11.福岡県・九州支部代表

NHK福岡児童合唱団MIRAIシニア科

(女声69名・初出場)


 



初出場おめでとうございます!

NHK福岡児童合唱団MIRAIシニア科さんは
NHK福岡放送局開局75周年を記念して、
2005年4月に発足。
小学生から高校生まで総勢151名ですが、
今回は中学・高校生のシニア科で出場。


NHK福岡児童合唱団MIRAIシニア科さんの
課題曲はF3 じいちゃん(「まどさんの詩によるみっつのうた」から)
(まど・みちお 詩/松下 耕 曲)

自由曲は三善晃作曲
ピアノの無窮連禱による女声合唱曲「生きる」


へえ~、「生きる」!
私、この曲の演奏は高校生のを聴いたのが
一番若い団体の演奏で、
中学生も混じっている団体の演奏が
どういう風に聴こえるのか興味が湧きます。

谷川俊太郎氏が書かれた詩の
「生きているということ」と始まるこの曲が
おっさんの私とは
かなり違った実感として歌われることでしょう。


NHK福岡児童合唱団MIRAIさんは
合唱祭やクリスマスコンサートだけではなく、
過去に人形劇やオペラへの賛助出演もされているとか。

多彩な活動の結果が
今回、彩りを加えた演奏に繋がることを!






(同声部門のご紹介を終わり、
 明日からは混声部門のご紹介を始めます)