映画館で「この世界の片隅に」を観よう!

 

 

 

 

 

すいません、観客賞座談会をお待たせしているのですが
どうしても観ていただきたい映画があってブログを更新しました。


その映画は「この世界の片隅に」という作品。

11月21日にこの映画を観てからというもの
札幌にいる父親に小遣いを送り「観て!」と言い。
(ちなみに「傑作だ!」という感想をもらいました)
飲み屋でたまたま居合わせたお客さんと
「『この世界の片隅に』は素晴らしい!」と盛り上がり、
その店のマスターと、一緒に行った次の店のマスターに
1杯ずつ奢り「観て!」と勧めるほどのハマりっぷり。

そして12月頭に2回目のこの映画を鑑賞し、
どうしてもみなさまにお勧めしたいと思った次第なのです。


www.youtube.com

(予告編は海外版が好み)

 



話の筋は昭和9年、
広島に住む絵を描くことが好きな少女:浦野すずが
昭和18年2月から18歳で嫁入りし北條すずとなり
軍都:呉で暮らしていく物語。
「第2次世界大戦末期じゃん。暗いのでは?」
…と思われる方も多いかもしれない、「火垂るの墓」のように。
違うんです、基本、コメディなんです!


このブログでも7年前に原作を賞賛していまして。

bungo618.hatenablog.com

この作品の魅力を伝えるのは非常に難しいのですが、
70年前の広島、呉にタイムスリップできる。
そして、生きている「すずさん」に会える映画、と言えるでしょうか。
アニメ映画なのに? そうなんです!
アニメーションでも、そんな風に思わせてしまうポイントは3つあります。


ひとつは「この世界の片隅に」の監督:片渕須直氏の
徹底した取材っぷり。

東京から夜行バスで何度も何度も呉を訪れ、
当時の広島、呉を知る人に取材し、
原爆や空襲で失われた街並みはもちろん、
暮らしていた人々をも再現する徹底さ。

www.nhk.or.jp
↑ 記事中の「理髪店」のエピソードの凄さ!

さらにこんなツイートも。

 

製作費が足りなくなり、クラウドファンディングで募ったら
あっという間に予定額が集まったというのもポイントでしょうか。

さらに最初は全国で63館の上映だけだったのが

口コミで100館以上に広がったというのも。


ふたつめは、日本のアニメーションというのは
原画と原画の間をつなぐ「中割り」を省略して、
キレのある動きを追求してきたのですが
「この世界の片隅に」では、
執拗に中割りを入れてジワーっと動く部分を大事にしたそう。
キャラクターをゆったり動かすことで、
実写のようなリアリティを出していったという。



最後のみっつめは能年玲奈こと「のん」さんの演技!
「あまちゃん」のアキもかなりのハマり役だったのですが
この「すず」役も原作を読んで
のんさんが「絶対やりたい!」と言っただけあり、
「おぉ、すずさんがそこにいる…」と
思わせるほどのハマリっぷり。
「ええですね」「ありがとう」みたいな広島弁は
普段でも使うなどの努力もあったそう。
のんさんのコメディエンヌっぷりが
すずさんを実在の人物に感じさせる最後の1ピースとして
見事、ぴったり合いました。


かくして、この3つの要素から「北條すず」は実在する、と
観客に思わせる作品になったというわけです。
(ちなみに片渕監督によると、
 すずさんは91歳ご存命で
 広島カープを応援しているとか 笑)

 

それでも作品中、戦争の悲劇もあり、
後半30分はすすり泣く音がそこかしこに聞こえましたが
「泣ける映画」として広めて欲しくないんですよね。
この作品で息づく、日常の喜びや笑い、
そういったきらめきはスクリーンのこちら側の、
自分たちとも繋がっているのだ、と思わせる作品です。

だれかの人生を「泣ける人生」とたやすく言えないように、
スクリーンの向こうで生きている北條すずさんと、
その周囲の人たちを我がことのように感じてしまう作品です。
映画館を出た後に、日常の愛おしさから、風景が、人を見る目が、
少し変わってしまう作品です。



でも、まあ、泣けますよね・・・。凄く良くわかる。






あさイチ12月5日「この世界の片隅に」特集

youtu.be
↑ 4:16からの映画を観た女性。
目が潤んでいたので(これは…)と思ったら
「言い合いになりながら帰るシーンとか」
「みんなが仲良くできたらいいのにね、という言葉とか…」
そんな、観たことが無い人には
全然アピールとは思えない言葉で、
感極まって涙してしまう。
・・・わかる、わかるぞ!!
(ちなみにそれ、どちらもコミカルなシーンなのですよ!)



あと、日常を丁寧に描いた作品であると同時に、
喪失は、新たな獲得でもあるという、
生きることへの希望も描いている作品だと思うんですね。

そのうちDVDやブルーレイでも出るでしょうが
映画館で観る世界への没入感は比べ物にならないはず。
是非とも近くの映画館へ行ってすずさんに会いに行ってください!



 

 


そんなことを考えながらサントラ「この世界の片隅に」を聴くと

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「みぎてのうた」は最終話のモノローグから取られているのでした。
それに気付いて原作最終話
「しあはせの手紙」を読みながら聴いてみると…嗚咽。

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これは原作ファンであり
サントラを買った人間への特典かとも思いますが。
・・・すいません映画ではあまり泣かなかった自分が
この「みぎてのうた」を流し、原作を読む組み合わせでは、
何度も何度も息を詰まらせ、泣いてしまいます。

原作の本質を知りたい方は、ぜひどうぞ。