シェーファー「17の俳句」再演

 

 

来週行われる東京混声合唱団の定期演奏会。
公式ツイッターを見ると

 

 



おお、マリー・シェーファーの「17の俳句」!
合唱団うたおにさんの委嘱作品で
全国大会での演奏も鮮烈でした。

16年前、田中信昭先生が指揮される「創る会」でも聴き
感想も書いてHPに上げたのだけど
現在はサーバの関係で見られません…。

http://alpin.lolipop.jp/enso/ensoindex.htm


幸いに原稿を保存していた
管理人のyoshiから送ってもらいました。
「合唱団訪問記」と同じように一字一句変えず、
再UPします。


東京混声、聴ける方が羨ましい!
そしてどこかの合唱団で「17の俳句」再演を望みます!

 

 

 

 

 

 

演奏会感想第12回

 

 

演奏会感想の部屋

ちょっと遅くなりましたが、

以前掲示板に上がったネタをここでひとつ。。。

「第12回 創る会演奏会」


 2001年8月12日。
 「第12回 創る会」委嘱合唱作品初演演奏会、で
 東京の四谷区民ホールに行ってきました。

 「創る会」って、ご存じの方もいるかも知れませんね。
 札幌でも、声楽家とかの演奏で、作曲家に委嘱した新曲を
「創る会」で聴いたことがあります。

 今回は、創る会の委嘱、ではありませんが
三重県の合唱団「うたおに」の1997年の委嘱曲、
R.マリー・シェイファーの「17の俳句」の演奏。
(「うたおに」さんの生演奏、2年前のコンクールで聴いただけなので
 ちゃんと聴いてみたかった)

 今年の「創る会」委嘱初演曲
 猿谷紀郎:作曲、谷川俊太郎:作詞
 「地球の客」 ~混声合唱とチェロのための~

 昨年の委嘱曲の再演。
 西村朗:作曲、斎藤茂吉:短歌
 「死にたまふ母」 ~無伴奏混声合唱のための~

 ・・・というプログラム。

 「四谷」・・・ということで「四谷駅」で降りたんだけど
 「新宿御苑前」駅の方が、はるかに近かった…。
 慌ててタクシーに乗って(基本料金380円!)なんとか
開演の14時30分に間に合う。
 「四谷区民センター」の8階(だったっけな?)ということで
窓から地上の新宿御苑の緑が良く見える。
 今日の東京は32、3度。曇っているので蒸し暑い感じ。

 ホールに入る。キタラ小ホールをちょっと横に広くした感じかな。
 おおっ、生「西村朗」!!

 「ハーモニー」誌の座談会を読んできたばかりなので、
ちょっと感動(笑)
 …我ながらミーハーだねェ。でも中学生になってから音楽を始めて
あそこまでの曲を書けるのはスゴイよなあ。
 (「そよぐ幻影」のピアノ、とかね)


 席に着いて間もなく、舞台が暗くなる。
 団内指揮者の小柴信之氏は客席に譜面台を置いて、
譜面台に付けてある小さいライトの元、指揮をする。

 数年前の全国大会の録音で、この「うたおに」の
「17の俳句」の演奏を聴いた。
 金賞を受賞したときだが、聴いたときの感想は正直
 「上手いけど、(自分には)どーでもいいや」
 ・・・というものだった。その時は17の俳句、すべてを使わず、
抜粋、と言う形で演奏したそうなんだけど。


 真っ暗な中、客席後方から低いうなり声のような神秘的な男性の声が。
 よく聴くと、ある旋律をひとりづつ歌いながら、
徐々に、一歩づつ、ステージへ向かっているのだった。

 男声がステージ上にそろうと、舞台上手、下手から
女声たちがくるくる回りながら(笑)登場。
(2番目の俳句「涼風の曲がりくねって来たりけり [小林一茶]の
 “風”を表現しているようだ)

 さあ、そこからは音の洪水。
 会場いっぱいを使った素晴らしい音世界が広がった!

 ステージ、客席に別れて「うた」が呼応しあう、のももちろん
独唱、重唱、合唱、という分類が無意味に思えるほど多彩な音が、
本当にさまざまなイメージを持って、聴くものの耳に
立ち現れては消えてゆく。

 照明もそのイメージを増すのにとても効果を上げていて。
 「稲妻にこぼるる音や竹の露 [与謝蕪村]」では
稲妻を模した点滅などをはじめ、音楽と人の動きに合わせた光、など
『プロ』の仕事を見せてくれた。

 一番印象に残っているのが、団員全員が1つづつ持っている「提灯」で。
 電気仕掛けの「柄」のところで様々に光を変えられるそうなんだけど。

 「盆踊り太鼓手拍子鳴りやまず [奥 徳子]」の箇所はもちろん、
 会場が闇の中、独唱の男声が木遣り節を嫋々と響き渡らせ、
練り歩く「奉曳をなお盛り上げる木遣り歌 [野中正紀]」では
舞台袖に引いて、遠くで微かに点滅を繰り返す、という演出。

 まさに夏の夜の夢幻、という印象だった。

 夏の1日の早朝から、深夜までを17の俳句で表したこの曲。
 聴いているうちに、今この場所には存在しない、
記憶の底にある過去の風景が、次々と目の前に現れるような錯覚に、
何度もなんども陥った。


 再び、暗闇の中、最後の音が、静かに夜の闇の中に消えて行く。
 (「鐘の声水鳥の声夜はくらき [小林一茶]」)
 照明が点いた瞬間、大拍手!! いやー、いいステージだった。


 作品そのものの力も強く感じたが、演出を伴った
(作曲家本人の演出アイディアだそうだ)ステージがこれほど
効果を上げるものとは・・・。
 それは安定した男声(木遣り節、にはホント感心)が
支える「うたおに」の合唱のレヴェルの高さが造り上げたものでもある。
(アルトだけが、音程と声の整理がちょっと、ね・・・)


 後で団員の方と話をしたのだが、
 「(うたおに以外で)再演がなかなかされないんです・・・」と
コボしていた。

 作品の力と、観客に与える影響は計り知れない!
 ステージを録画したビデオは「うたおに」さんの元にあるし。

 どこかの合唱団の再演が是非とも聴きたいものだ!

 ・・・ただ、うたおにさん。残念だったのが
 「楽譜持ち」…ってコト。
 譜面を持って手拍子するとき、ってどうするか知ってる?
 …脇に挟んで、手を叩くんだよ。・・・非常に興ざめ。
 やっぱり(難しいだろうが)暗譜でやってほしかったなあ。


 猿谷紀郎:作曲、谷川俊太郎:作詞
 「地球の客」 ~混声合唱とチェロのための~

 田中信昭先生のお元気な姿を見れて良かった!
 演奏は・・・。男声は健闘していたが。(合唱は「創る会」)
 曲も・・・残念ながら、う~む、って印象。(ゴメンナサイ)


 西村朗:作曲、斎藤茂吉:短歌
 「死にたまふ母」 ~無伴奏混声合唱のための~
 (こちらの指揮も田中信昭先生)

 「うたおに」のメンバーが多数参加したのだろうか?
 このステージから人数も増え、演奏も安定したもの。

 「死にたまふ母」歌集、59首全ての短歌が使われ、
平行して違う短歌が同時に歌われる、という解説から
“カオス”的なものを予想していたが、予想よりもずーっと聴きやすく
それぞれの短歌の“言葉”と“想い”がとても良く伝わってきた。

 有名な「のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にいて足乳根の母は死にたまふなり」
音楽的にも、心情的にも“絶唱“…と呼ぶにふさわしい白熱した演奏、楽曲だった。

 西村作品にしては、難易度もそう高い方ではないようだし、
声部のディヴィジョンも、多くないよう。

 「公害」を扱った合唱作品を、例えば今の高校生が歌うのも
本当に価値があることなのかも知れないが、普遍的な
『母への想い』を謳い上げるこの作品。

 年代を越えて、数多くの人に演奏して欲しい、と思った。


 品のない言い方かもしれないが 「委嘱はバクチ」、という言葉があって。
 それは、どんな作品が出来るかわからないっ!、という
委嘱する側の(切実で悲壮な)意味合いがこもっているのだが。

 バクチは、賭けなきゃ始まらない。
 そしてその“目“も。

 今回の“バクチ”の結果は、なかなか良い目が出たような気がいたします。

 それにしても「今回はこんなに多くのお客さんに来ていただいて」
 …という、演奏後の田中先生のお言葉に
 「えっ?!」と会場を見回してしまったほどの入場者数。

 ・・・いったい、今までの中新田町での入場者数はどうだったんでしょう。


 ある程度の人が、お金がないと成立しない「委嘱」というバクチ。
 微力ながら、体が空いていれば「第13回」にも足を運びたい、
と思っております!


(2001.08.12)