晩秋の北海道庁 Photo by まやさん
室内合唱部門。
続いては地元・札幌の合唱団の登場です!
5.北海道・北海道支部代表
ウィスティリア アンサンブル
(女声21名・2年連続の出場・60回大会から9度目の出場)
藤岡直美先生が指導された枝幸、岩見沢、札幌の中学校OGの合同団体。
今年で結成18年目、以前は「枝幸ジュニア合唱団」という団名でした。
その声は北海道の雪を思わせるクリスタル・ヴォイス。
昨年の座談会では
声の均質性と美しさが印象に残っています。
課題曲のラッススは美しさの中に切なさが感じられました。
自由曲の松下耕先生の「うたおり」は
説得力がありましたね。
改めてこの曲の良さを感じさせる演奏でした。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/03/03/143411
ウィステリアさん、今年の課題曲はF1 Ego flos campi(Jacob Clemens non Papa 曲)
自由曲は信長貴富先生作曲:アイヌ歌謡による無伴奏女声合唱集「神さま、飛び立つよ」より
1.イノンノ イタク [祝詞]
7.イフンナ [子守唄]
8.サケカラ ウポポ [酒造り歌]
おお、この曲は3年前にウィステリアさんが委嘱され、長崎の全国大会で披露された曲!
(その時は2.カムイ ホプニ ナ [神さま、飛び立つよ]も演奏されていました)
当時、北海道支部大会を聴かれたken5さんによると
最先端の「攻めた」信長作品、だということ。
決してフワッとした(旧枝幸ジュニアの)イメージで当て書きされたりはしてないです。
アイヌをテーマにした曲は古今東西・混声男声と様々ありますが、そのどれとも違う。
「アイヌ歌謡」というモチーフはあれど、フルコンタクトのノブナガ現代曲として聴かれるべき。
長崎大会で聴いた時にはリズムの面白さがある曲、また哀調を帯びた曲、音の重なりが幻想的だったり、各曲それぞれに特徴があった記憶があります。
当時のプログラムを転載いたしましょう。
北海道の大会で、地元の合唱団によるアイヌ民謡をモチーフにした曲を聴く・・・これも全国大会の醍醐味!
続いては個々人の意志が生きている演奏をされる団体です。
6.徳島県・四国支部代表
Serenitatis Ensemble
(混声22名・3年連続出場・第65回大会から4回目の出場)
結成が2005年の「セレアン」とも呼ばれるSerenitatis Ensemble。
Serenitatis (セレニターティス) には、ラテン語で「晴れやかな」「穏やかな」という意味があるそうです。
昨年の感想では
課題曲は力強さがありました。
熱かったね!
自由曲は面白い曲選ぶな~と。
音響も面白く感じました。
ちょっと無い世界。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2017/11/08/211909
…と自由曲に湯浅譲二先生の作品を演奏し、非常に個々が生きた主体的な演奏をされていました。
セレアンさんの今年の課題曲はG1 Agnus Dei(「Mass for Four Voices」から)(William Byrd 曲)
自由曲は西村朗作曲:無伴奏混声合唱のための「死にたまふ母」より「4.かぎろひの」。
斉藤茂吉の、母を亡くした時の哀切な短歌に作曲された終曲。
ドラマ性高いこの作品を、セレアンさんなら心に迫る演奏をして下さるでしょう。
22分の休憩後、この団体は絶対聴かなければ!
毎年観客賞で大人気の団体です!!
7.長野県・中部支部代表
合唱団まい
(混声23名・10年連続出場・第49回大会から16回目の出場)
昨年のメール感想では
モンテヴェルディの「泣き」の入った熱演が心に残りました。
室内合唱だということを感じさせてくれた団体の中で、
最も共感した演奏です。
座談会では
素晴らしかった!
最高ですよ!
自分の思う合唱、音楽演奏の、
「何が楽しいのか」を聴かせてくれて
とても嬉しかった。
「書いてある曲を演奏している」んじゃなくって
「自分たちが語っている」かのように
音楽が成立しているんですよ。
まいのみなさんが多様な過去を体験しているからこそ
雪積もるまぶしい朝の輝かしさから未来を見据えられる。
そんなことを感じさせた、
すべてにおいて大人の演奏でした。
http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/01/22/215820
まいさんの今年の課題曲はG1 Agnus Dei(「Mass for Four Voices」から)(William Byrd 曲)
さて、自由曲は?
まい団員さんからメッセージをいただきました。
合唱団まいは、本年の自由曲として、寺山修司 詩、信長貴富作曲 混声合唱によるうたの劇場『不完全な死体』より「歌曲」「不完全な死体」、そして、混声合唱(または重唱)とピアノのための「ヒスイ」の三曲を演奏させていただきます。
いずれも重唱や少人数で歌うことを念頭に書かれ、各パートの美しい旋律や言葉の語り口が際立っているのが特徴で、「うたの劇場」の名のとおり役者が掛け合うようにたくさんのソロが登場します。
演奏するにあたり、私たちは、ひとりひとりが役者になり思い切り表現した結果生まれる、はっきりと「個」の見えるアンサンブルを目指し日々精進してまいりました。
寺山修司は俳人、歌人、詩人、演劇実験室「天井桟敷」を率いる劇作家であり演出家、映画監督。
他にも実に様々な顔を持つ言葉の魔術師でした。
ぼくは不完全な死体として生まれ
何十年かかけて
完全な死体になるのである
不完全な死体。
寺山修司は、胸を刺すこのモチーフをさまざまな作品の中に繰り返し登場させています。
いつか来る「そのとき」を見据え、無限の想像力のその先を目指してひた走る。
そんな寺山修司の人生を貫いた言葉であるように思います。
なみだを遠い草原に
ヒスイをきみのてのひらに
「遠い草原」は一体どこだろう。
飛び立つような華やかなピアノ伴奏で始まるこの美しい旋律を歌うたびに、私たちはそれぞれの遠い草原に思いを馳せます。
本の中に、答えはない。
寺山修司の言葉と信長貴富の音楽が出会うことで生まれたヒスイが歌われたとき、その歌に出会った私たちひとりひとり中に生まれる無数の草原。
それこそが、何よりも尊いと思うのです。
寺山修司の「言葉の宝石」が、信長貴富の音楽に出会い新たな輝きを帯びる。
その輝きを求める私たちの歌声が皆様に「音楽の宝石」として届く。
そんな幸せを夢見ながら、合唱団まいは歌わせていただきます。
今年の3月、戸塚区民文化センターさくらプラザ ホールで行われた「CANTUS ANIMAE with 合唱団まい アンサンブルの響演 」の際、楽屋裏で撮影されたもの。
言葉の魔術師、錬金術師と評された寺山修司を表すような詩情あふれるメッセージ。
団員さん、ありがとうございました。
さらに今回の自由曲の「歌曲」「不完全な死体」の入った組曲、混声合唱によるうたの劇場『不完全な死体』は、2019年10月19日(土)長野市芸術館リサイタルホールにて全曲演奏予定。
また混声合唱部門へ出場される、同じ雨森文也先生が指揮のCANTUS ANIMAEさんも来年2月2日のThe 22nd Concertで、この「不完全な死体」全曲を演奏されるそう。
雨森先生、かなりこの曲に惚れこんでおられるようです!
混声合唱によるうたの劇場『不完全な死体』はパナムジカHPによると
寺山の詩や戯曲の台詞などをテキストにし、「寺山修司の肖像」を立ち現せることをもくろんだ意欲作です。
サブタイトルの「うたの劇場」は、歌を舞台芸術の中で相対化する意図が込められて付けられています。
47歳の短い生涯を駆け抜けた寺山修司の人生を、多角的な面から取り上げた作品のようですね。
信長先生の意欲作、さらに生きて積み重ねてきたものがそのまま歌になったような、まい団員さんの個々の表現。
なかなか聴くことが無い「ヒスイ」のピアノ伴奏版と併せて、今回のステージも期待大です。
「音楽の宝石」は私たちのてのひらに届くでしょうか?
(明日に続きます)