観客賞スポットライト 混声合唱部門 その2

 



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札幌駅




混声合唱部門のご紹介の続き!
…なのですが、以前Kitaraホールへの行き方をご指南して下さった札幌在住のケンゴさんから「札幌での服装について」のツイートです。

 

  

 


そうなんです!
札幌の室内は非常に暖かい場合が多いんです!

凍えた体を早く温めるには、高温じゃなきゃいけない。
暖房器具周りだけが暖かく、端になると冷えてしまうので高温を保つ必要がある。
…などと理由はいろいろあるようですが、とにかく暖かい!

前々回の札幌全国大会、ケンゴさんツイートのように「モコモコのセーターに、中も厚手トックリのみ」の女性が、暖かい練習会場で、暑くて汗をかくも服を脱げずに困っている…という姿を見ました。
薄い服を用意する、重ね着での保温やイヤマフ、ネックウォーマーなどを使用するのがお勧めですね。

それにしても全国大会時、雪は降るんでしょうか。
北海道の雪はサラサラしているので、雪が降った方が傘が要らずありがたいんですけどね。



それでは出場団体のご紹介を始めましょう。
名古屋から、選曲にこだわりのある団体と言えば?


 

 



3.愛知県・中部支部代表

合唱団ノース・エコー

 

(71名・8年連続出場・第47回大会以来21回目の出場)



近年はスウェーデンの作曲家Sven-David Sandströmの作品を多く演奏されている合唱団ノース・エコーさん。
昨年の座談会では


課題曲G2のプーランク、
最後の「O dulcis」から祈りが感じられました。

静けさと言うか…敬虔な印象が良く出ていた気が。

自由曲も1曲目は同じプーランクの
「Exultate Deo」だったけど
雰囲気を鮮やかに変えてたね。

最後はお得意、
サンドストレムの「A New Song of Love」。
アタッカで演奏したのが印象良かった!

サンドストレム特有の和音もしっかり!

テノールの旋律の歌い方が良かったな。
おとなしめのソプラノもこの曲では前に出てきて。

男声と女声が交唱で高め合っていくのが良かった。

やっぱりサンドストレムを長年やり続けた
説得力がありましたね。

 

http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/03/31/144324



さてノースさん、今回の選曲は?
団員のM園さんからメッセージをいただきました。

 


今回で3度目となる札幌Kitaraで私たち合唱団ノース・エコーが歌う曲は、課題曲G2のシューベルト“Chor der Engel”自由曲としてサンドストレムの“The Lord’s Prayer”、そしてランスタッドの“Alleluia”です。

練習を進める中で、3つの曲のイメージをそれぞれキーワードで表現し、発表しあう場面がありました。
各人各様のイメージから共通するものを抽出し、関連付けていくと、こんな風にまとめられました。
“Chor der Engel”=暗く重い世界に一筋の希望の光を感じる
“The Lord’s Prayer”=天上の神に捧げる日常の静かな祈り
“Alleluia”=感謝、歓喜、躍動して神を賛美する

“Chor der Engel”は、ゲーテの戯曲「ファウスト」第1部の冒頭「夜」の場面。数々の学問を究めたファウスト博士でしたが、結局何一つ分かったとは言えない、と絶望し、毒杯を仰ごうとしたその時、復活祭の朝を告げる鐘の音とともに聞こえてきたのが「天使たちの合唱」。
これを聞いてファウストは死を思いとどまることになります。

“The Lord’s Prayer”(主の祈り)は、キリストが弟子に祈り方を尋ねられ、「こう祈りなさい」と自ら語った祈りの言葉(マタイ6:9-13、ルカ11:2-4)。
「天にましますわれらの父よ」で始まるこの祈りは、キリスト者でなくとも聞いたり読んだりしたことがあるかもしれません。
サンドストレムのサウンドはお手のもの?

“Alleluia”(ハレルヤ)の歌詞はこの“Alleluia”(神をほめたたえよ)1語のみですが、躍動感のあるリズミカルな部分や、一転してレガートな長いフレーズを重ねて分厚いハーモニーを作るところもあり、神への様々な形の賛美を見ることができます。
神の救済に喜びが満ちあふれたら「時間よ、止まれ」の境地に至るでしょうか。

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昨年の全国大会での写真ということ。



おお、やはり今回もサンドストレムを選曲されているんですね!
「サンドストレムのサウンドはお手のもの?」と書かれるだけあって、今回も説得力強い演奏が聴けるのでしょうか。
さらにランスタッドの「Alleluia」は昨年、埼玉県のscatola di voceさんも演奏されていましたね。
ハンドクラップもあるリズミカルな部分から、中間部にはM園さんが記されたように「レガートな長いフレーズを重ねて分厚いハーモニー」を美しく聴かせ、ふたたび華やかに盛り上がる作品。
それぞれタイプの違った3曲をどのように歌い分け、聴かせてくれるか?
とても楽しみです。

さらに


【速報】合唱団ノース・エコー演奏会、コーラス・コレクションXVII 開催決定
 日時:2019年6月22日(土) 16時開演
 場所:愛知県芸術劇場コンサートホール
 曲目未定、ステージ構成未定。何が飛び出すやら。
 ホームページ(http://www.north-echo.gr.jp)、
 ツイッター(https://twitter.com/NorthEchoNagoya)、
 「ハーモニー」誌での発表をお見逃しなく!


ほー、ノースさんは毎年演奏会を開催するわけじゃなく、およそ2年に1回開催するんですよね。
詳細がわかりしだい、このブログでも掲載したいと思います。

前回のコーラス・コレクションでもサンドストレムだけを集めたステージがあったノースさん。
来年のコンサートを見据えた、全国大会のサンドストレムに期待です!





続いてプロモーションは面白く、音楽は本格派?!な若き合唱団と言えば?

 

 

 

 

 



4.神奈川県・関東支部代表

合唱団やえ山組


(60名・2年連続出場)


指揮者は大学ユース部門で東京工業大学コールクライネスさんを振られる岩本達明先生。
男声部の団名が「広域指定合唱団 青山組」などとブッソウだったり。
公式ツイッターではこんなツイートも。

 

 

だ、「代紋」?!

しかし、そんな変わったプロモーション?を裏切るように、演奏は澄んだサウンドと高い音楽性を持つ団体です。

昨年の観客賞では初出場にして第5位と人気。
座談会では


課題曲のG2、一番良かった・・・。

自分も「一番きれいなプーランク!」って
メモに書いてました。

(他の参加者からも「良かった」など、口々に)

バランスがとても良く、
音響もクリアで和音の美しさが光って。

ひそやかにまろやかに、
ゆったりとしたテンポだけど推進力があって。
聴いていて心が洗われるようでした。

自由曲も良かったんですよ。
(プーランク「人間の顔」から4、6)

ちゃんと歌い分けができてましたよね。

フランス語の母音の響きが美しくたゆたって。
力感も自在に、和声もプーランクの透明さが
良く表れた演奏。

そして最後の三善先生「私が歌う理由」がまた!

オシャレだし、リズム、力感も良かったです。

最後の和音の歌い方も優れてましたね。

スタイリッシュに、
しかし音楽上の魅力は余すところなく伝え。
最後の和音で団員さんの想いが昇華されるようでした。

この曲の演奏では
どこも「盛り上げよう!」として
盛り上げ過ぎる団体が多い中、
さりげないんだけど
ちゃんとメッセージが伝わってきました。

 

http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/03/18/091212


やえ山組さん、今年の演奏曲は
課題曲G2 Chor der Engel (Johann Wolfgang von Goethe 詩/Franz Schubert 曲)
自由曲:Arnold Schönberg「Friede auf Erden(地上の平和)」

なんと「地上の平和」!
完全な無調音楽へ移る前のシェーンベルクが、後期ロマン主義との間で揺れ動いていた頃に作曲された作品。
1907年シェーンベルク33歳の時の作品で、後に「まだ人々の和解が可能であると信じていた頃の作品」とシェーンベルク自身が語ったように「平和あれ、この地上に!」と高らかに謳います。

歯ごたえのある和声が続くのも演奏を困難にしているのですが、特に終盤ソプラノを筆頭に高音域のフレーズが頻繁にあり、ある指揮者氏が言うには「なかなか平和が訪れてくれない曲」。
あまりの難曲ゆえ、初演は失敗に終わり、その後オーケストラ伴奏が付けられたというエピソードも。

過去に全国大会でもグリーン・ウッド・ハーモニーさんやクール シェンヌさんが演奏してきたこの曲。
60名と団員が倍増し、勢いに乗っているやえ山組さん。
どんな「平和」をこの札幌Kitaraホールにもたらしてくれるか、楽しみです!


 

 

 


次に、四国支部から若き指揮者の爽やかな若い団体と言えば?


 

 

 

 

 

 

 


5.愛媛県・四国支部代表

I.C.Chorale
 

(34名・第67回大会から5年連続出場)


大学ユース部門を除く一般部門で最年少27歳の指揮者:村上信介先生。
I.C.Choraleさんも創団5年目、平均年齢約24歳の若い団体です。

昨年は自由曲に松本望「天使のいる構図」を演奏し、念願の銀賞を獲得。
観客賞でも第7位で座談会では 

 

課題曲G2のSalve Regina、なんて熱いプーランク!

今までに無い激しさがありましたね。

内に秘める激情みたいな!
ひとつの想いで貫かれて。

Simple is Best!
出す音は熱く、
出さない音との差を付けていたのが良かったです。

自由曲の松本望先生「天使のいる構図」も
良かったですね。

まず女声の入りが良くて。
「Capriccio」ではアカペラ部分の「よろこびのかすかな」、
「Tempestoso」では「かごめかごめ」に、
ハッとさせられる美しさと表現の深さがあり。
全体にこの作品への共感が伝わる演奏でした。

今までは学生OB合唱団みたいだったけど、
今回はバケモノみたいな他の団体の中で
聴き劣りせず、違和感が無い演奏でした!

 

 メール投票では


自由曲は、あの難曲をしっかりと自分たちのものにされ、期待値を遥かに超える演奏でした。

 

http://bungo618.hatenablog.com/entry/2018/03/17/214329



さて、今回の選曲は?
指揮者:村上信介先生よりメッセージをいただきました。

 


今年は、全国各地で災害が相次ぎました。
西日本豪雨、台風襲来、そして、今年の全国大会開催地である北海道胆振東部地震。
まずは、各災害で被害に遭われました皆様に哀悼の意を表しますとともに、早期の復興を心よりお祈り申し上げます。

さて、改めまして皆さんこんにちは。
愛媛県の若手混声合唱団、I.C.Chorale、通称「いよコラ」です。
創団5年目にして5度目の全国大会の舞台に立たせていただく幸運を、本当にありがたく感じています。

今年の選曲とその理由について、簡単に紹介させていただきます。

◆課題曲:G3「まいまい」

今年も課題曲4曲を全て歌ってみた上で、団員の投票により選曲しました。
3年前に「知覧節」に取り組んだ時にも感じましたが、間宮作品は「古いはずなのに新しい」ということに尽きます。
譜読みを深めれば深めるほど、原曲である「神楽舞」へのリスペクトを持ちながら合唱曲に落とし込んでいることが実感できます。
民謡としての律動を意識しつつ、時には四股を踏んだり舞ったりしながら練習を展開しています。

楽譜に書いている音符を追うだけではなく、原曲と合唱曲のバランスをどのように表現していくか。
いよコラにしか出来ない「まいまい」の世界を歌い切りたいと思います。


◆自由曲:「混声合唱とピアノのための組曲 遠きものへ-」より
「Vocalise Ⅱ/海辺にて」(詩:長田 弘/曲:三宅 悠太)

今年の自由曲は三宅作品を演奏させていただきます。
選曲理由は端的に言えば、一目惚れ、いや一聴惚れです。
長田弘による、色彩感を持ったことばたちが、三宅悠太の描く陰影を持った音に乗って流れていきます。

 「海辺にて」の一節にこんなものがあります。

  - 悲しむ人よ、塵に口をつけよ。
    望みが見いだせるかもしれない
    ひとは悲しみを重荷にしてはいけない。 -


人は悲しむことのできる生物であるが、それ以上に、悲しみを受け止めること、耐えることのできる存在でもある。
長田弘の言葉は、今の日本社会に突き刺さってなりません。

詩も曲も本当に素晴らしい作品です。
是非、一人でも多くの方にこの作品を聴いていただきたく、またその魅力を余すことなく客席に届けることが出来れば幸いです。

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四国支部大会の本番直前に撮影されたものだそうです。



村上先生、ありがとうございました。
三宅悠太先生の作品が演奏されるのは、この全国大会の一般部門で初めてでは?
合唱界の次代を担う作曲家のひとりとして、優れた作品を発表されている方です。
この「Vocalise Ⅱ/海辺にて」も2年前に幕張総合高校合唱団さんにより委嘱初演された最近の作品。
「一聴惚れ」と村上先生が表したのも納得できるように、新鮮で言葉の流れを魅力的に捉えた響きが心を打ちます。

「人は悲しむことのできる生物であるが、それ以上に、悲しみを受け止めること、耐えることのできる存在でもある」

こちらのページで長田弘さんの詩「海辺にて」とその言葉について語られています。

 

風景を生きる


「人は悲しみから、自分を持ち堪える力を持っている」

 

同じ愛媛県代表の愛媛大学合唱団さんも、天災により7月の県大会が無くなったと記されていました。
いよコラさんの中にも被災された方がいらっしゃるかもしれません。
作曲者の三宅先生は「‘人は悲しみを重荷にしてはいけない’という強烈なメッセージに向け、音楽は拡大し開かれていきます」と書かれていますが、うわべの励ましではなく、音に、歌に、実感としての想いを込めて、「海辺にて」を演奏していただきたいと思います。

聴く者が、人は悲しみを受け止められ、望みを持てる存在として自覚できるように。

 

 

 

(明日に続きます)