大変お待たせいたしました。
観客賞の座談会、大学ユースの部をお届けします。
観客賞とは…?
7年前から当ブログで始めた観客賞。
各部門の、全団体を聴かれた方の投票で決定する賞です。
この観客賞の意義を説明しますと。
音楽のプロフェッショナルたる審査員による順位、賞の決定は、それぞれ真剣に誠実に演奏へ向かわれ出された結果であり、尊重すべきだと思います。
しかし、
「傷はあったが凄く良かった!」
「コンクールに向いてない選曲はわかるけど涙があふれた!」
…などという声を多く聞いていた自分は、
「観客による投票を行ったら 演奏への新しい価値観が生まれるのではないか?」と考えました。
さらに「この団体が銅賞だったから私は投票する!」…のような判官贔屓を無くすため、投票は審査結果前に締め切っています。
ツイッター、メールで約40票が集まりました。
ご投票していただいたみなさま、感想を送っていただいたみなさまに深く感謝いたします。
有志4人はロームシアター京都から近い、とある居酒屋へ。
私、文吾が司会となって座談会の開始です。
観客賞:大学ユース部門。
(混声144名)
A この人数で課題曲G1を!(笑)
B たぶんこの曲の演奏歴史上、世界一なんじゃ?(笑)
A それは知らないけど…。
あの人数でG1というのは本当に奇蹟なんじゃないかと。
どうしても重くなっちゃったり、
ピッチがバラけたりしそうなのに、
人数が多くなることで出てくる欠点が全然なかった。
C 目をつぶっていたらあの人数には聞こえなかった。
良い意味でね。
B メモに「軽い」と書いてあって。
我ながら144名の団体に
どういう形容詞を使っているのか?って。
文吾(以下「文」)
「クライネス」という団名にふさわしい(笑)。
「gratia」の「a」に明るい響きがあるのが
こだわりを感じて。
暗く熱く一色で塗りつぶしちゃう演奏が多い中で
「お!」と思いました。
A 4つの線が聴こえてきました、本当に。
文 流れが良かったですね。
指揮の岩本先生、さすがというか。
C 流れ…良過ぎてあっという間に終わった気が(笑)。
文 「時間を忘れるくらい良かった」と(笑)。
進み方が自然に聞こえてきたのが本当に素晴らしい。
自由曲のペンデレツキ「Agnus Dei」も
大きな流れの中で感情が繊細に表現されていて。
A 私は観客賞の一票はクライネスに入れたんですけど。
文 じゃあもっと語って下さいよ!(笑)
A はい(笑)。
ペンデレツキはこの団体にピッタリ!
作品をしっかり表現していて、
歌うのに適していたなあと。
B 「Peccata」!のフォルテッシモから
ベースが入るところなんて
音色といい、歌い方といい、とても良かった。
文 そうそう! ゾクゾクしたね。
A クラスターで「カッ!」と切り方が最高だった!
あんなデッドなホールで
クラスターの後に残響が聴こえてきたのは
本当に凄いと思う。
課題曲と180度違って、
人数の強みを全面に出していた感じ。
B そうですね、歌い分けがね。
A 人数が少ないと
クラスターの音がデコボコしがちだけど
「全部の音、聞こえてるやん!」
均質だし、熱さを失っていなかった。
文 岩本先生の良い所は
音楽をブロックごとに置いていくんじゃなく、
構成と流れを意識しているんですよね。
「次はあの音楽があるんだろうな~」
そういう予定調和的なものじゃなく、
演奏していくうちに音楽が変化していく感があって。
A うん、そういうところだったり、
ただ合わせるだけじゃなく、
人間っぽいところが聴こえてきたりとか。
・・・いや、自分は観客賞に入れたのもそうだけど、
「もしかしたら1位かも?!」と期待してたんですが。
ツイッター、メールでの感想です。
ペンデレツキでの声の発し方好きだった、最高だった
大人数でも雑にならず丁寧かつダイナミックな演奏のクライネス。
自分たちの出来ることの中でベストを尽くしていることが分かる演奏で非常に好感が持てました。
クライネスは私の中で抜群に良かったです。
特に自由曲では、大人数を生かした壮大さや力強さと、それと鮮やかな対比を見せる繊細さや静謐さ、レンジの広い表現が実に見事でした。
第4位
混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ
(混声123名)
B 毎年言ってるけどピアノが良かった!
小見山純一先生のピアノ、さすがです。
一同 うんうん
A 課題曲G4はバランスが良くて。
この曲、とても難しいと思うんだけど
そういう難しさをまったく感じさせない。
文 すーっと表現が身体に入る気がしましたね。
A そう!
ややもすればピアノと歌が全然合わず、
事故が起こりそうな曲なんだけど。
B 自分も楽譜を見ながら聴いてましたけど
そんな事故はまったくありませんでした。
C 楽譜見ながら聴いてたの?!
B なにか?
C …熱心で素晴らしいですね(笑)。
A 1パートだけの箇所が
ちゃんと聞こえて欲しい所で出てくるとか。
そういう各ポイントが全部クリアできて、
上手く処理されていました。
全国大会はこの課題曲を
高校の部でも聴いたけど
一番スッキリした演奏だったかなあ。
文 自由曲のカライ「De profundis」。
こちらも難曲だと思いますが
ポイントを押さえた演奏で。
B 全体の構成を考えた演奏だったよね。
ここまで盛り上がって、ハイここで爆発!みたいな。
C 演出家か!(笑)
B いや、悪い意味じゃなくてね(笑)。
伊東さんは名プロデューサーだなぁ、と。
シュプレヒコールも迫力あったし。
狂ったように笑った後で
ビシッと協和音とか上手かったな。
ダイナミクスの変化も良かったしね。
A 男声71人、女声49人というバランスで、
ややベースに人数が、い過ぎた感が…。
文 い過ぎた?!
A 最初の「De profundis」も
あんまり「淵」って感じじゃなくて
「もっと出るよー余裕だよー」と
聞こえたのがちょっと気になったかな。
片手うちわで歌っているというか。
C 「お! 淵だ淵だ!」(笑)
B 観光じゃないんだから(笑)。
そうかなぁ?
ああいう余裕あるベース、
自分は良かったけどな。
A そのかわり、
女声はがんばっていた印象があった!
文 やっぱり全体的に「外さない」んですよ。
1曲を通して、ここが足りなかったとか、
ここが過剰というのがほとんどない。
そういう全体を俯瞰する伊東さんの視点と
それにしっかり応えるグランツェのみなさんが
上手く噛み合った演奏でしたね。
ツイッター、メールでの感想です。
雪の一音目が鳴った瞬間から雪の世界にワープしたような感じがした。
自由曲は自分まで闇の中でもがきながら救いを求めてる錯覚に陥るくらい表現力凄かった。
自由曲圧倒されました🎵
10団体の中で唯一「うるさい!」と思った団体。
ホールを使えていた印象を受けました。
今までのグランツェって大人数ゆえの粗、たとえばフレージングがやや粗いのが気になっていたのですが、今回そうした点がとても改善されてました。
グランツェの曲への深い共感
カライを共感を持って歌っているのが伝わった。
極限からの叫びが心に響いた。
De profundisの全体像がめちゃくちゃ見渡せてる演奏とダイナミクスのある大迫力の演奏でカッコいい
(第3位の感想に続きます)