観客賞座談会・同声合唱の部 その4

 





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鞍馬寺
Photo by sanographix http://photo.sanographix.net/








今回から観客賞・同声合唱部門で第5位に入らなかったものの、印象的な演奏をされた団体の感想を出演順に記していきます。


 

 

 

 

 

 

 



女声合唱団フィオーリ
https://twitter.com/chor_fiori

 

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(女声30名)


 



文 課題曲F4「その木々は緑」、
  まず平林知子先生のピアノが良かった!

A 本当に!
 緩急が良かったですね。
 それに合わせたように
 合唱もフレーズの緩急が絶妙で。

 大人の落ち着きがあったと思うんですよ。
  始まりから気合に満ち満ちて
  「その!木々はっ!!み・ど・りッ!!」
  とかじゃなく(笑)、
  微笑んで、自分の言葉で「…緑ですね」と
  口に出してから徐々に気持ちが入っていく。

A うん、大人の女性のチャーミングさ。
 魅力的なものがこの課題曲に出ていたな~。
 後半の53小節目からのソプラノ、
 「何ひとつ持たないのに
 じーんとしてしまって。

文 自由曲:信長貴富
  「そうそうと花は燃えよ」、
  フィオーリさんの委嘱作品ですが、
  凄い曲でしたね!

B 平林先生の地鳴りのような低音から
 華麗な前奏に繋がって
 一心に集中した合唱に、「お~!」

A とにかくもう、この曲を伝えたい!
 そんな想いがあふれていたね。

 本当に!
  実は聴く前までは
  もっとメロディアスな楽曲と
  思っていたんですよ。
  実際聴いてみると、
  リズム的な部分や
  音響効果的な箇所が
  割合強く印象に残りました。

C 本来15分の曲のショートバージョンだから
 その影響があるのかも?

 そうかもね。
  もちろんそれが悪かったわけじゃなく、
  リズムも命の鼓動を思わせたり、
  この作品に深みを加えていた。

B 後半の旋律に心が動きました。
 「ひぐらしは泣け」の抒情や
 最後の「そうそうと」と
 繰り返すところなんかもう!

 あれは良かったよね!

C フィオーリさんって
 声作りがしっかりしてるなあと感じますね。
 しかも「良い声」が目的になってるのではなく、
 それが土台となって表現作りがなされていて。
 だから今回の課題曲と自由曲のように
 異なる作品も自然に
 歌い分けられているなと思いました。

  ……ちょっと語って良いですか?

ABC どうぞ(笑)。

 金丸桝一氏の詩を
  聴く前に読んでいたんですけど、
  詩の前半は森羅万象を並べて
  「なぜ命令形?」と
  疑問に思っていたんですね。

B 「そうそうと花は燃えよ
   そうそうと境界は繁くあれ
   そうそうと蛇たち蛙たち
   そうそうと水は流れよ
   そうそうと苔むしわたれ
   そうそうと境界でありつづけよ」?

 でも、今日のフィオーリさんの演奏を聴いて
  納得が行ったというか。
  「自分はこう生きる!」という強い決意、
  あらゆるものを自分へ取り込んだ上で
  「自分を取り巻くすべてのものと、
   いっしょに生きていく!」
  だから「そうそうと花は燃えよ」。
  命令形だけど、
  その芯には自分の強い決意、意思がある。
  ・・・などと、勝手に解釈して勝手に納得してました。

A 信長さん、最近作る曲作る曲、
 凄い曲ばかりな印象(笑)。

 力入ってますよね(笑)。
  「そうそうと花は燃えよ」も
  「作曲人生の重要な場面で
   いつか手がけてみたいと願っていた詩」
  …だそうですし。

B 合唱界全体を俯瞰して
 「今、必要な曲は?」という視点から
 作品が作られている気がしますね。

 大作にふさわしい、
  本当に力のこもった演奏でした。
  広く歌われるようになって欲しいし、
  本来のバージョンも聴いてみたい!




ツイッター、メールの感想です。

 

柔らかな音色が課題曲にあってる 
信長の委嘱作はメリハリのある演奏

 

フィオーリさんはまず課題曲「その木々は緑」がとても素敵でした!
大人の声のイメージが強いフィオーリさんに果たして合うのだろうか…と思っていましたが、第一声から透明感ある瑞々しい歌声に魅了されました。
自由曲「そうそうと花は燃えよ」も、8分ちょっとの演奏時間に壮大な作品世界と強いメッセージが溢れんばかりに表現され、その訴求力に心打たれました。
ノーカット版も聴いてみたくなりますね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

HBC少年少女合唱団シニアクラス

(女声55名)


 



文 自由曲1曲目のKim André Arnesen
  「Even when He is silent」、
  少年少女が歌うことでの
  魅力を感じましたね。

A やっぱり安定しているし、
 声の均質性もあるから
 ハーモニーが凄い決まるよね。

B 2度や密集和音が美しく響いていました。

文 2曲目のLevente Gyöngyösi
  「Laudate Dominum」、
  これも沸き立つリズムが楽しかった。

C 指揮の大木先生が
 右足でリズムを取っていたのが
 チャーミングでした!

AB文 (笑)。

 

ツイッター、メールの感想です。

 

中高生らしい明るいサウンド 
曲の緩急を問わずいい発声が持続している

 

 

 

 

 

 

 

 

 




メンズ・ウィード

(男声37名)



 昨年よりかなり良かったですね!

ABC うんうん!

文 課題曲M4「物語」
  最初の語り口が優れていました。

B 10、16小節「戀の」なんて
  各音符にテヌートなんですけど
  工夫して、その語感が伝わってくる。
  ピアノ表記なのに「夜ふけ」の強調、
  「休んで」の優しい歌い方とか、
  さすが「言葉の魔術師」!

 「お!」と思ったのは
  繰り返しで音は同じだけど
  詩は違う箇所で、
  パートのバランスを変えていたんだよね。
  最初の「戀の」はテノール主体で甘く。
  2回目の「罪の」はベースを強めに出させて、
  「罪」のニュアンスを感じさせる。
  「ニクイなー!」って(笑)。

ABC さすが!(笑)

文 自由曲:三善晃作曲 
  二群の男声合唱とピアノのための
  「路標のうた」
  気合が入ってましたね!

B 言葉にこだわって
 三善先生の音楽を止めるんじゃなく、
 ちゃんと音楽の求める流れが
 あったのが良かったです。

 「思いおもいに散らばりながら」の
  軽やかなテンポ感とかね。
  言葉が要点になるところは
  しっかり発語していて、
  それも良かった。

A 文吾さんがブログ記事に書いたエピソード、
  プロフィールにも書かれていたけど
  27年前、仙台の全国大会で乗った仲間が
  この曲を演奏した3週間後に
  白血病で亡くなられたと。
  その時と同じ指揮者とピアニスト……。
  そういう理由があるから
  気持ちが入っているのもわかった。

 

 

B 37名で2群合唱というのは
 やはり少し無理があったし、
 あちこち傷はあったんですけど
 「そんなのどうでもいいよ!」

 「大事なものをしっかり伝えるんだ」
  それが非常に伝わって来た演奏でしたね。
  感じるものがありました。




メール、ツイッターの感想です。

 

この2曲をこの団で聴けただけで満足 
一つ一つの言葉に説得力がある 
時々トップが硬いのはご愛嬌

 

他団体の人数や音圧に対して、男声合唱が奏でられる優しさのようなものが満溢れていました。

 

音楽の流れ、表現、曲のつながりなど、大人ならではの表現という感じがした。表現したいことが伝わってくる音楽。音は表現の手段ということを思い出させてくれる演奏。

 

 

 


(同声合唱部門感想、続きます)