観客賞スポットライト 室内合唱部門 その3

 

 

 

室内合唱部門に出場の、地元・岡山の倉敷少年少女合唱団さん。
こんな動画を公開してくれています。

岡山に来てもシンフォニーホールまでの道が分からないかも? 今年は来たくても岡山に来れない? そんな皆様!360度VR動画で当団の団員と一緒に会場まで行きましょう!盛り上がれ全国大会!

 

 

団員さんに案内され、岡山シンフォニーホールまでの360度VR動画!
岡山駅からシンフォニーホールまでは路面電車やバス、「ももちゃり」というレンタルサイクルもあるんですが。
なんと約17分かかる徒歩とは!さすが若いな~~(笑)。


それでも岡山の風景を見ながら、ゆっくり歩くのは楽しいもの。
全国大会前のイメージトレーニング(?)として、ぜひ!

 

 

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鷲羽山・瀬戸大橋 ©岡山県観光連盟



室内合唱部門、15:12から約20分間の休憩後。
15:35から室内合唱部門の後半です。


今回は女声合唱団2団体をご紹介。
最初は石川県から初出場のこちらの団体です!

 



6.石川県・中部支部代表

女声アンサンブルTONICA

https://mobile.twitter.com/TONICA_ishikawa

(女声12名・初出場

 


初出場おめでとうございます!
「TONICA」という団名の由来、そしてどのような団体なのでしょうか?
指揮者:稲垣潤一先生からメッセージをいただきました。

 


TONICAのメンバーは、もともと中学校の合唱部員です。
中学で合唱を始めた私たちが、進学し社会へ出ても、またいつでも戻ってきて(時には仲間を連れて)歌える場所になればいいな…そんな願いを込めて、主和音「TONICA」を団名としました。

結成自体は5年前でしたが、活動はアンサンブルコンテストのみで、集まるのも5人程度でした。
ですが今年3月、母校の合唱部が演奏会を開き、私たちはゲストとして出演することに。
そのために15名ほどが集まりました。

音を取ってサラッと歌い始めたとき、「え?!サウンドが変わっている!」
メンバーのそれぞれが、進学した先で新たな仲間と音楽を楽しんだり、素敵な指導者に出会って学びを深めたりして、音楽が少し成長していたのです。
演奏会、このまま終わってしまうのはもったいない!と勢いづき、初めてコンクールにも出場、様々の幸運が重なって、なんと岡山まで行くことになってしまいました。

 

なるほど!主和音の『TONIC』 CHORD!
良い団名ですね~。

TONICAさんの今回の演奏曲は
課題曲F1 O sacrum convivium(Tomas Luis de Victoria 曲)
自由曲 「あげます」(女声合唱とピアノのための「四つの愛のかたち」より)(谷川俊太郎 詩、三善晃 曲)
「月の光 その二」(「月夜三唱」より)(中原中也 詩、三善晃 曲)

愛らしい雰囲気の「あげます」と、細やかな音楽に亡き子への思いがあふれる「月の光」の自由曲。
どういう理由で選曲されたのでしょう?

 


中学時代は「オデコ」や「ドジ」「狐」といった童声合唱の大曲に挑戦しましたが、せっかく(ちょっぴりですが)大人になったのですから、大人っぽい歌も歌ってみたい!
そんな思いから選んだのが、今回の2曲です。
飛び道具も派手さもないこれらの曲。
私たちにとっては大きなチャレンジです。
美しい美しい美しいこの2曲。
シンプルに見えて、本当にシンプルなんです。
「えいっ」「やぁっ」「ドン!(足)」「落っこちろっ!」は得意なんですが、美しいメロディを歌うのはとっても苦手。
全国の舞台でどんな演奏になるやら。
覚悟を決めて(笑)歌います。

「あげます」の音楽は初恋の甘酸っぱさ。
曲の中にまさに等身大の自分たちがいます。
また、「月の光」で歌われるのは、子を失った中也の悲しみです。
柔らかな月の光に照らされる「チルシス」と「アマント」、そして亡くなった子の幻影。
「悲しいと口に出せない悲しさ」のようなものが、柔らかで美しい音楽の中に隠されている気がしてなりません。
主和音は終わりの和音ですが、またそこから新しい音楽が生まれる始まりの和音でもあります。
この舞台が終わりではもちろんなく、メンバーそれぞれが学び、得たものを持ち寄ったりしながら、次の新しいカデンツを作っていけたらな、と思っています。

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稲垣先生、ありがとうございました。

>「ドン!(足)」「落っこちろっ!」は得意

「中学生のコンクール自由曲あるある」で笑ってしまいました(笑)。
同じ三善先生の作品でも、大人になり歌ってみたい作品が違うものになるのは良いですね。

美しい美しい美しい、と3回繰り返されることから、稲垣先生がこの2曲に惚れ込んでいることがわかります。
「あげます」はあげるのが恋人への初めてのキスと判明するのが最後。
「月の光」も中也の亡き子を詠んだことがわかるのは終わり。
直接的な感情を抑えたあとに、秘めた感情を吐露するものは、大人の表現と言えるかも。


中学校から巣立った仲間が、さまざまな音楽を経て集まり、また新しい音楽を創っていく。
この岡山での初めての全国大会。
稲垣先生が書かれたように、美しい次へのカデンツに繋がる力となりますように。  




 

 

2団体目の女声合唱団は関東からこちらの団体です。

 




7.埼玉県・関東支部代表

La Mer
https://twitter.com/lamerchorus

(女声23名・2大会連続出場・第62回大会から3回目の出場)


前回の出場は10年ぶりだったLa Merさん。
今回は連続出場ということでめでたい!


前回の感想では


課題曲「その木々は緑」、大人のチャーミングさや良さが上手く入っていました。

自由曲の「春二題」より「春は来ぬ」はいくらでも器楽的に歌える曲だけど言葉のニュアンス、扱いも良くて、曲がさらに深まった感が。

伸びやかで明るい歌声、全員いきいきしてて好きな演奏でした。

 

……などという感想がありました。
団員さんからメッセージをいただいています。

 


私たちLa Merは指揮大竹教子先生、ピアノ桑子実千代先生のもと、浦和第一女子高校音楽部OGによって結成された合唱団です。
2019年大会に引き続き、今回で3回目の全国大会出場となります。

課題曲『F3 夜来香』
軽やかで鮮やかなピアノから始まるこの曲。
「素晴らしいおくりもの」である美しい夜来香を思い浮かべてもらえるように、爽やかに歌います。
練習時、副団長が夜来香の香りの入浴剤を持参してくれ、団員皆でその香りに触れたのですが……。
それが予想外の、どピンク色の液体になかなか強い香りだった為、皆の頭に「?」が浮かびました。
夜来香の花の香りを嗅いだことはありませんが、多分違いそうだということは直感で分かりました(笑)
気になる方は当団まで(笑)
皆様には我々の歌でどんな香りを感じていただけるでしょうか?

自由曲『淡いものに』
女声合唱の美しさをこれでもかと表現出来る曲ではないでしょうか。
女声の持つ優しさと強さ、儚さやしなやかさを歌います。
この曲は大竹先生、桑子先生が、1996年に浦和一女時代初めてタッグを組んだ曲です。
なんと、当時高校生でこの曲を歌っていた団員も今回のステージに立ちます。
合唱を始めた時に、まさかこんなに長く歌と付き合っていくとは思わなかったでしょう。
今こうしてこの曲にもう一度巡り合って歌えることを、運命だと思います。
観客の皆様には、日暮れから夜へ、また心象風景へ移り変わっていく2曲を楽しんでいただけましたら幸いです。

さて、今年ほど「参加すること」を目標にした年はありませんでした。
実は、県大会開催が発表されたとき、出場者を募ったところ希望者は5名のみ。
しかし数ヶ月経ち、蓋を開けてみれば、新団員も多数加入し(高校を卒業したばかりの団員もおり、とても若返ったLa Mer!)、23名の素晴らしいメンバーでの参加です。
普通に歌うことがまだまだ難しい状況の昨今。
新団員の中には、昨年出場するはずだった高校生最後の大会が中止になってしまい、辛い思いを経験した人もいます。
今年、このような状況の中、大会のために尽力してくださった関係者の皆様、そして聴いてくださる皆様に感謝の気持ちを込めて、「歌えることの喜び」を噛み締めながら、ステージを楽しみたいと思います。

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今年の9月、ホールでの練習後ということ。
関東大会の山梨までは行けない団員さんのご家族に聴いていただいたそうです。

 

 


団員さん、ありがとうございました。

「夜来香」、詩ではやさしい、「東洋ふうな香り」だそうですが入浴剤そんななんですか(笑)。
いや、La Merさんならきっと詩のイメージそのままに香る演奏をしてくれるはず!


>昨年出場するはずだった高校生最後の大会が中止

これは辛いですね・・・。
それでも卒業後の歌う場としてLa Merさんが存在すること、そして全国大会まで歌う機会があるのは喜ばしいことではないでしょうか。

「淡いものに」は詩人の村松英子さん18歳の時の作品。
「三つの夜想」の他の2曲と同じく、そのことばは三善晃先生の音楽と相まって、ハッとするほど新鮮でありながら、同時に老成したものを感じさせます。
高校生の時にこの曲を歌った団員さんが、高校を卒業されたばかりの団員さんと歌う。
合唱団というひとつのかたまり、生命体の中で、巡る感情と時間がきっと演奏に深さを加えてくれるはずです。



(明日に続きます)