観客賞スポットライト 同声合唱部門 その3

 

 

 

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井倉洞 ©岡山県観光連盟

 

 

 

 

11:27から11:50まで約20分の休憩後、同声合唱部門の後半です。

後半最初の団体は、仙台からこちらの男声合唱団の出場です。



6.宮城県・東北支部代表

合唱団Pálinka

https://mobile.twitter.com/choruspalinka

(男声31名・23年ぶりの出場・第50回大会から3回目の出場)


合唱団Pálinkaさん……「パリンカ」?
オールド合唱ファンには聞き覚えのある名詞です。
指揮者:千葉敏行先生からメッセージをいただきました。

 


NHK朝ドラ「おかえりモネ」の舞台宮城から、「カムカムエヴリバディ」の岡山へやってまいりました、合唱団パリンカです。
杜の都仙台より23年ぶりに全国大会の舞台に戻ってまいりました。
平成2年団結成、初めて歌った曲が「パリンカ」。
パリンカはハンガリーの地酒。
酒と歌をこよなく愛する男声たち(含女性)でしたが、コロナ禍で「飲み会」を開けず、ときどき練習会場も失い、団員は半減、財政逼迫・・・隠れキリシタンのように細々と合唱を続けてきました。
6月に何とか開催した演奏会や昨年から積み重ねてきた感染予防対策を高く評価していただき、新しい団員も加わりました。

 

そうですそうです小山章三先生の男声合唱曲「パリンカ」。
杏や桜んぼを醸して造るハンガリーの地酒 パリンカよ~♪」、この年の全日本合唱コンクールの課題曲でもあったんですね。


>「カムカムエヴリバディ」
大正時代の岡山を舞台にしているという朝ドラ。

(・・・もうすぐ舞台が大阪へ移りそうですが)


パリンカさんの演奏曲は
課題曲M3 Ⅰ(合唱のためのコンポジション 第6番「男声合唱のためのコンポジション」から)(間宮芳生 曲)
自由曲:「俵積み唄」(男声合唱とピアノのための四つの日本民謡「北へ」から)(松下耕 曲)

 


今回演奏する「俵積み唄」は、疾走感溢れるピアノ・ソロ,ジャズのテンションコードと,日本民謡の魂が見事に交錯した作品です。
震災前の仙台市立八軒中学校の熱演が懐かしく思います。
松下耕先生のお許しを得て、創団30周年の祝い唄として演奏しました。
閉塞感漂うコロナ禍。
爽快感のある演奏をお届けしたいと思い選曲しました。
数々の困難を乗り越えたパリンカの奇跡的な演奏、どうぞお聴きください。

常任指揮者 千葉敏行

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千葉先生、ありがとうございました。
地方出身者で岡山在住の身として、パリンカさんは仙台で委嘱初演や客演指揮を呼ばれるなど、とても意欲的な活動をされていることに敬意を抱いていました。

23年ぶりの全国出場、パリンカさん創団30周年、そして2年ぶりに開催できた全国大会。
県こそ違えど同じ東北の唄。
どうか力一杯「祝い歌」を奏でていただきたいです!

 





続いては観客賞では上位常連、岡山の向かいうどん県からこちらの女声合唱団です。

 


7.香川県・四国支部代表

monosso

https://twitter.com/monosso_kagawa

(女声33名・5大会連続出場)



団名の「ものっそ」とは讃岐弁で「とても」の意味。

一昨年は観客賞同声合唱の部で第2位。

 


課題曲F3「飛翔―白鷺」monossoさんの繊細かつ意思の強いpに身震いしました。

自由曲:新実徳英「はくちょう」音響が非常に考えられて幻想性を増していました。

同声のなかで表現が圧倒的でした。
高校の全国での木下牧子先生の言葉をお借りすると、音響より音楽をしていたように感じます。


……などと大変好評でした。


monossoさんの演奏曲は
課題曲F1 O sacrum convivium(Tomas Luis de Victoria)
自由曲:「約束」(淵上毛錢の詩による女声合唱組曲「約束」より)(瑞慶覧 尚子 曲)

monosso指揮者:山本啓之さんからメッセージをいただいています。

 


今年の演奏曲はコロナ禍が始まる前に選曲しましたが、その後いろいろなものが中止になり、monossoの活動も止まったり......なんとも、もどかしい状況になりました。

課題曲
ルネサンスポリフォニーを歌うことで、音楽に内在するものを咀嚼し伝える事で広がるものを、monossoに実直に学んでほしいと思い選びました。

自由曲
生と死の狭間でも生きたいと願う思いを綴った淵上毛錢の詩、そしてそれらの中から瑞慶覧先生がいくつかの詩を選び、音楽として形を作られた『約束』。 
この作品の中にあるテーマはやはり若い歌い手にしっかり歌ってもらいたいと思っての選曲でした。

どちらの曲にも祈りの精神が備わっていると思いますが、この一年数ヶ月の時間の中で、人の命、生きるということ、人との関わりや歌うことなど、多くのことを考えさせられ、未だにそれは続いているようにも思います。

今回の演奏は、それらを未来にどう繋げていくのかの一つの答えにできたらなと思っています。

 

 

山本さん、ありがとうございました。
病床から旺盛に詩を創り、水俣文化の後押しをし、35歳の若さで亡くなった淵上毛錢。
その詩作品からはもちろんですが、生き方の姿勢からも山本さんが記される「人の命、生きるということ、人との関わりや歌うこと」を考えさせられます。

組曲「約束」は五つの作品から成り立っていますが最終曲の「約束」だけがピアノとの協奏。
monossoと言えば名ピアニスト酒井信先生のピアノにも注目です。

団員さんからもメッセージをいただいています。

 


月イチ練習、四国を中心に各地から集まる団員。
monossoの特徴も、コロナ禍においては悩みの種となりました。 
練習中止や参加制限など、考えたくないことを考え、正解がない問題に向き合い続けなければいけない。
「やめてしまえば話が早いけど、”どうやったらやめないでいられるか” を一番大事に考えよう!」と、なんとか進んできた日々でした。
他の合唱団も同じだったと思います。

県大会は一般部門の開催なし、支部大会は録音審査、一度もステージを踏まないまま全国大会に臨みます。
戸惑いもありますが、やっとお客様に聴いていただける!という喜びの気持ちも、またいっぱいです。 
文化の灯を消すまいと力を尽くしてくださった全ての皆様に感謝いたします。

特別なシーズンになりましたが、目指すものはいつもと変わりません。
「私たちが歌うことで、お客様が楽曲の魅力を再発見し、さらに好きになってもらえますように!」

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2019年の全国大会、本番直前に撮影とのこと。

 


団員さん、ありがとうございました。
「正解がない問題に向き合い続けなければいけない」。
昨日までは良かったものが今日になって変わっている、またはその逆。
monossoさんだけではなく、他のみなさんにも共感できる言葉なのではないでしょうか。
それでも、演奏するという行為の基本に返ること。

「私たちが歌うことで、お客様が楽曲の魅力を再発見し、さらに好きになってもらえますように!」

楽曲を繋がりとして、演奏者と聴衆が結びつくこと。
一聴衆として、強く願わないではいられません。
山本さん、monossoさんの目指すものが、新しい未来に繋がるものになりますように。



(明日に続きます)