観客賞スポットライト 混声合唱部門 その1




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岡山シンフォニーホール ©岡山県観光連盟





今日から混声合唱部門の出場団体をご紹介します。

同声合唱部門が終了した13:02から14:05まで昼食休憩と審査集計。
14:05から朝日作曲賞表彰の後、14:25から混声合唱部門の始まりです。

 


全部門お勧めですが、やはり大会の華と言えばこの混声合唱部門。
出場団体は前回の16団体から10団体へ減ってしまったものの、いずれ劣らぬ声の饗宴です!
今回は3団体をご紹介。

 

 

 


最初の団体は良い意味で「日本人らしくない」こちらの団体。

 


1.三重県・中部支部代表

Vocal Enesemble《EST》

(26名・2大会連続出場・第54大会以来14回目の出場)


海外での演奏経験も豊富なESTさん。
そのためか、日本人の枠を越えるような演奏が記憶に残る団体です。
一昨年の感想では

 


課題曲、音楽の運び方が良かったです。
ESTってなんかもう彼らにしか無いオーラみたいなのが!

自由曲:「Epithalame(祝婚歌)」
これほど幅広い表現を眉間にシワ寄せるんじゃなく
「俺たちは楽しんでやってるんだ!!」
そんな雰囲気が凄く伝わってきました。
メッチャ楽しかった!

カラフルな愛の世界を冒険しているようで楽しかった!

ESTは美しいサウンドが耳に残ります。
明るさも暗さも綺麗に描いていて、作品の空気感に包まれました。

ワールドワイドの音楽を醸していました。

 


……という感想がありました。

ESTさん、今回の演奏曲は
課題曲G2 O salutaris  Hostia(Gioachino  Rossini 曲)
自由曲:「O Tod,wie bitter bist du(おお死よ、汝はなんと苦きことか)」(「Drei Motetten  op. 110-3」(3つのモテット)」より)(Max Reger 曲)

後期ロマン派から近代へ向かおうとする時のマックス・レーガー。
複雑な和音進行から後半に救われるような美しさが印象的な作品です。


団員のNodaさんからメッセージをいただきました。

 


昨年から今年、合唱界はコロナ禍に揺れました。
当団も昨年の4月から対面練習中止に追い込まれました。
8月からは広い会場で距離を取りながら練習を再開しましたが、再開してみると団員を取り巻く状況は劇的に変化していました。
コロナに対する意識は、軽く考える人から深刻に考える人まで千差万別で、それが団員間に亀裂を生じさせたのです。
また団員一人一人を取り巻く環境も様々で、たとえ本人は練習に参加したくても、家族や職場・地域の理解や協力が得られない団員も少なからずありました。
そんな状況下で再開後の練習に結集した仲間は半数以下でした。
11月に予定されていた定期演奏会も断念せざるを得ませんでした。
2021年に入っても感染予防に十分過ぎるほど注意をしつつ練習を続けてきましたが、今年夏の第5波の到来で2度目の対面練習中止となりました。
9月の中部コンクールは録音審査となり、対面練習が不十分のまま録音に臨みましたが、全国大会に選出されたのは団員一同驚きでした。
しかし一堂に会して思い切り歌えない期間が長かった分、一人一人の合唱への思いは強まりました。
今私達にできる最善を尽くし、参加できない仲間の思いも力にして、目の前の音楽に真摯に対峙したいと思っています。

さて私達はこれまでコンクールでは近現代の曲を中心に選曲し、ロマン派の曲を取り上げたことがありませんでした。
今回は課題曲にロッシーニを選んだこともあり、指揮者の提案でロマン派に挑戦することになりました。
曲目はマックス・レーガーのモテット「O Tod, wie bitter bist du」です。
詩は旧約聖書シラ書から取られ、満ち足りた者にも恵まれない者にも等しくやってくる「死」について、深く洞察しています。
前半~中盤は死の苦しさを繰り返される「bitter」という単語と重厚で複雑な和声で表現し、終盤は一転して死の心地よさを繰り返される「wohl」という単語と天に昇るような明るい和声で表現しています。

コロナ禍以前のような演奏はできないかもしれませんが、今の《EST》の思いを乗せた演奏になればと思っています。

 

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三重県大会のものということ。


Nodaさん、ありがとうございました。
このコロナ禍、各合唱団の厳しい現状を知り、聴いているだけの自分には言葉を無くしてしまうことも多いのですが。
それでも如何に未来の演奏へ繋いでいくか?という強い意志の顕れも知ることができました。
今回のNodaさんのメッセージもそのようなものだと思います。

苦しみが反転し、救いへと変化していく「O Tod, wie bitter bist du」。
コロナ禍でESTさんに与えられた苦しみ、そしてそこから生まれる歌への強い思い。
課題曲のロッシーニと、自由曲のレーガー。
最初に「日本人の合唱の枠を越えた」とESTさんを表現しましたが、今回もコンクールの枠を越えた、演奏会の1ステージのような充実感をもたらしていただけると期待しております。





続いて福岡からこちらの団体です。

 


2.福岡県・九州支部代表

混声合唱団うたうたい


(38名・第66回大会以来8年連続出場)

同声合唱部門、大阪からのメンズ・ウィードさんと同じ高嶋昌二先生を指揮者に抱く結成13年目の団体。
一昨年の座談会では


自由曲:「世の中には途法も無い仁もあるものぢや」より
千原作品にピッタリの声とキャラクターだったと思う。

各部の歌い分け、スピード感だったり、軽やかさもあって良かったな。

高嶋先生の巧さが光ってたね。
特にコミカルな部分など自分が笑っちゃうんじゃなく、
「観客を笑わせる」ための方法論。

 

……という感想がありました。


うたうたいさんの今回の演奏曲は
課題曲G3 うたをうたうのはわすれても(「うたをうたうのはわすれても」から)(岸田衿子 詩 津田 元 曲)
自由曲:「2.溢れひたす闇に」「3.浅き春に寄せて」(無伴奏混声合唱曲集「四つのソネット」より)(立原道造 詩、信長貴富 曲)

立原道造の若さゆえの苦悩が、信長先生のドラマティックな音楽で表された作品。
きっと詩と音の世界を十分に表出された演奏になることでしょう。

 

 




続いて愛媛県から若き指揮者率いる合唱団です。

 

 



3.愛媛県・四国支部代表

I.C.Chorale


https://twitter.com/iyo_kora

(19名・第67回大会から7大会連続出場)


アイ・シー・コラーレ、通称いよコラさん。

一昨年の感想では


課題曲G2は音楽の移り変わりに
軽やかさがありました。

「楽譜に書いてあるからしました」
じゃなく、気持ちが自然に高まって
音へ繋がっている気がしましたね。

自由曲:「春と修羅」
村上先生の挑戦の心が伝わってきた。

宮澤賢治の世界観も
ちゃんと表現していたと思う。

……という感想がありました。



いよコラ団員さんからは

演奏会等の予定は当面ありませんので、最近リニューアルしたいよコラの公式ホームページを宣伝させていただきます。
是非一度ご覧ください(^^)

とのことなので是非!

いよコラさん、今回の演奏曲は
課題曲G3 うたをうたうのはわすれても(「うたをうたうのはわすれても」から)(岸田衿子 詩、津田 元 曲)
自由曲:「Christus est natus」(Damijan Močnik 曲)
「The Ground」(Ola Gjeilo 曲)

緊張とスピード感、そして華やかなラスト「Christus est natus」。
合唱と弦楽オーケストラのための「Sunrise Mass」の最終楽章にあるコラールを元にした「The Ground」。
優しい旋律が大地に満ちる主の栄光と賛美を奏でます。

I.C.Chorale指揮者:村上信介先生からメッセージをいただきました。

 


今歌うべき歌を…との思いから選曲しました。

課題曲G3「うたをうたうのはわすれても」は、コロナ禍に苦しむ今の時世に重なるような言葉であり、今歌うべき歌だと感じています。
いよコラも、2020年3月に予定していた2nd Concertの無期限延期を余儀なくされ、対面練習も出来ない時期が続きました。
まさに「うたをうたうのはわすれて」いる時期がありましたが、それでも歌うことを諦めず、歌と共にあった日々を取り戻そうと奮闘しています。

自由曲はこの時世に演奏する作品として、歌う喜びを感じられるものや、大きな願いや祈りを込められる作品を取り上げたいと思い、神への喜びを歌い上げる「Christus est natus」と、大いなる地上のすべてに平和を祈る「The Ground」の2曲を選曲しました。
「Christus est natus」はキリストの誕生に対する喜びが徐々に高まり、G durのハーモニーで締めくくられますが、その残響(余韻)から平和への祈りが生まれるかのように、「The Ground」は同じG durのハーモニーから始まります。
「The Ground」の最後に歌われる「Dona nobis pacem(我々に平和を与えたまえ)」という言葉は、神への祈りに留まらず、今のコロナ禍に対する願いや、コロナ前の日々を取り戻そうとする我々合唱人の強い決意も込めて、歌いたいと思います。

新型コロナは本当に多くの団体に影響を与えました。
いよコラも例に漏れず、今年度も対面練習が再開できたのは6月から。
感染拡大の影響で8月からは再度対面練習の中止に追い込まれ、四国大会も録音審査となりました。
今回の全国大会は、2019年の京都での全国大会以来、丸2年振りの本番となります。
自分たちの演奏を聴いていただけることが本当に幸せです。
まだ練習に復帰できていない団員もいます。
今回の全国大会への出演人数は、コンクールでは過去最少となります。
まだまだコロナによる傷跡は多く残っていますが、それでも、自分たちが歌い続けることが誰かの力になると信じて、今出来る精一杯のものを届けたいと思います。

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「直近の本番の舞台である、2019年の京都での全国大会での集合写真です。最近は集合写真も撮っていないもので…。(村上先生)」とのこと。


村上先生、ありがとうございました。
G durからG durへ。
生誕の喜びから平和の祈りへ。
テキストの意味も、音楽も繋ぐステージですね。

しかし、2年前の全国大会が直近の本番というのは本当に厳しい。
集合写真も2019年の全国大会、「最近は集合写真も撮っていないもので…。」という村上先生の言葉。
それでも歌うことをずっと諦めず、そして今回の岡山全国。
2年ぶりに多くの観客を前にしての演奏はどんな気持ちになることでしょう。

>神への祈りに留まらず、今のコロナ禍に対する願いや、コロナ前の日々を取り戻そうとする我々合唱人の強い決意も込めて、歌いたいと思います。

合唱の灯を消さないために支えてきた多くの人たち。
村上先生、いよコラ団員さんも、もちろんその一人です。
いよコラさんの願いや強い決意へ、私も客席から思いを重ねたいと思います。



(明日へ続きます)