観客賞スポットライト 室内合唱の部 その1

 

 

 

積田神社 (三重県名張市)
提供:三重フォトギャラリー

 


昨日までは大学ユース部門へ出場の団体をご紹介していました。
今回から24名以下の室内合唱部門をご紹介します。

 

毎回同じことを書きますが・・・大学ユースのみなさん、そりゃ伊勢神宮を観光したい気持ちもわかります!
だけど室内合唱部門は人数が少なめなため、個々の「これがやりたいんだ!」という想いが強く伝わってくる部門です。
選曲の幅広さを感じたり、社会人になっても合唱を続けることの喜びが伝わる団体もあったりするので、大学ユースのみなさんにもぜひ聴いて欲しいんです。
ちなみに今回は38年ぶり、他には大学合唱団の仲間が創団し、18年ぶりの全国出場団体が登場します。
ぜひ演奏から、続けることの意味と強さを感じて欲しいと思うんですよ。

 

 

三重県総合文化センター大ホール Photo by Nodaさん

 

 



今年の全国大会は三重県・津市で三重県総合文化センターにて11月19日、20日に行われます。
ちなみに三重県津市での全国大会、大学職場一般の部は2003年(平成15年)以来、19年振り。

 

 

それでは始めましょう!
13:50から始まる2022年室内合唱部門全国大会。
各支部から10団体、はじめましての団体さんは3団体。
そしてものすごくお久しぶりの団体さんも何団体か。

 

 


今回は「はじめまして」の女声合唱団からです。

 

 

 

1.愛知県・中部支部代表

エシュコル

(女声19名・初出場


初出場おめでとうございます!


昨年、エシュコルさんの愛知県大会の配信を聴かせていただいたのですが、団員さんそれぞれの個性と意志が感じられ、とても良い演奏だったのを憶えております。
指揮者:小原恒久先生との深い信頼関係も感じられて。
さて、今回のエシュコルさんの選曲は?

 

●課題曲
F1 Quam pulchra es
作曲:John Dunstable 

●自由曲
「あけぼの」「春は来ぬ」
(無伴奏女声合唱のための「春二題」より)
作詩:島崎藤村
作曲:木下牧子

幻想的な響きと、躍動感ある対照的な2曲。
どのような意図で選曲されたのでしょう?
エシュコル団員さんからメッセージをいただいております。

 


愛知県名古屋市を中心に活動している女声合唱団、エシュコルです。
コンクールや県合唱祭への参加のほか、教会や福祉施設でのコンサート等、精力的に活動しています。
メンバーの職業は様々で、年齢層は大学一年生から還暦過ぎまでととても幅広いです!
指揮者含め和気藹々。楽しいこととおしゃべりが大好きな、賑やかな合唱団です。

団名の『エシュコル』は『わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である』という聖書の言葉から、いつまでもみんなで繫がっていましょう、という気持ちで「ぶどう」という言葉を選びました。また、旧約聖書には「ぶどう」が豊穣の象徴として使われていることもあり、「ぶどう」のヘブライ語『エシュコル』を団の名称としました。

 

おお、「エシュコル」という名前は何だろう?……と思っていたので有り難いです。
「和気藹々」という言葉から、ぶどうの粒が隣り合って仲睦まじくしている様子を想像してしまいました。

 

結成は1997年8月。
2007年、結成して10年の節目に、愛知県合唱コンクールに初めて出場しました。
以降、毎年コンクールに出場してきましたが、私たちにとって全国大会は、夢、憧れ、悲願、そのような言葉でしか表せないほど遠い存在でした。
コンクールに挑戦し続けること十数年目の今年、やっと、その舞台に立つ機会をいただくことができました。

今回演奏する自由曲「春二題」は、難易度の高いア・カペラの曲ですが、小アンサンブルでの演奏こそ、より自由な音楽表現が可能であると考え選曲しました。
また、詩の持つ世界観が、単に春を迎える喜びと美しい情景を表すだけでなく、人それぞれの人生、混沌とした世界情勢の中での「春」が早く訪れるよう願いを込めて演奏する所存です。

初めての全国大会に浮足立っていますが、雰囲気に負けないよう私たちの音楽を演奏したいと思います。
三重の地で、みなさまにお会いできますことを楽しみにしています!

中部支部大会直前の練習の様子とのこと。

 

 

ありがとうございました。
結成から25年、コンクールに参加されてから15年とは全国出場の喜びもひとしおでしょう。
自由曲の「春は来ぬ」、文字通り春が来た喜びをリズミックな旋律に乗せ歌われる作品ですが、エシュコル団員さんはこう続けられます。

人それぞれの人生、混沌とした世界情勢の中での「春」が早く訪れるよう願いを込めて演奏する所存です。

本当に。
この暗い世相へ光が差すように、エシュコルのみなさんの演奏が喜びや願いを重ね、華やかにホールを染めていただきたいと願っています。

 

 

 

続いても初めましての混声合唱団です。

 

 


2.福島県・東北支部代表

花凜歌
(混声24名・初出場


初出場おめでとうございます!

花凜歌さんの演奏はYouTubeで聴かせていただいたのですが、「旅立ちの日に」「春よ来い」など愛唱曲、ポピュラー曲の編曲にも、音楽と歌い方に優れたセンスを感じさせ、また若々しい歌声が演奏をさらに輝かせていて、とても惹きつけられました。

 

主宰・指揮者の上村誠一先生からメッセージをいただきました。
(上村先生は大学ユース部門を除くと、おそらく最年少指揮者です!)
まず団の成り立ちと「花凜歌(かりんか)」という団名から。

 

2015年に「郡山高校D」として男声2人の重唱で、福島県声楽アンサンブルコンテストに出場し、高等学校部門1位を受賞。それをきっかけに当時から親交のあった会津高校のメンバーを加え、男声3人のアンサンブルとして「花凜歌」が発足。
団名は、各校のモットーである「輝透(かりんとう・郡山)」・「心の(会津)」から1文字ずつ、そして結成時に歌った〈(周藤諭)〉の3文字からなります。

 


ほうほう、団発足時のメンバーの出身校名や演奏曲から一文字ずつの「花凜歌」という団名。
それぞれの思い出を大切にされたからこその団名という印象を受けます。

今回の花凜歌さんのご選曲。

●課題曲
G2 Es ist verrathen
Robert Schumann 曲

●自由曲
「前へ」
作詩作曲:佐藤賢太郎

「地球へのピクニック」(「地球へのバラード」より)
詩:谷川俊太郎
作曲:三善晃

未来への希望を感じさせる自由曲の2曲。
こちらはどのような理由で選ばれたのでしょう?

 

〈地球へのピクニック〉は混声として活動し始めた頃から団で挑戦したいと思っており、ついに時が満ちたと感じたため。元々〈前へ〉ではなく他の曲を自由曲として演奏する予定だったが、YouTubeでCombinir di Coristaの演奏を聴いた時に「これだ...!」と天から光が差し、速攻で曲を変更した。
どちらも今後も歌い継いでいきたい良い曲、素晴らしい曲なので聴いてください。

 


そして花凜歌さんの活動は今回をもって5年間休止されるそうです。
上村先生、いったいなぜ?

 

指揮者が来年度より留学準備のため来年2月の演奏会を最後に5年の活動休止に入る。それが決まったのは県大会の出場申込が済んだ後だったが、練習を重ねていく中で、「音楽の終わりがあなたとの別れではない」(〈前へ〉の歌詞)、「ここでただいまを云い続けよう ここへ何度も帰つて来よう」(〈地球へのピクニック〉の歌詞)という歌詞が今の自分たちの想いに重なり、県大会・東北大会と演奏中に涙を流す団員の姿が見られた。

 花凜歌としてコンクールに挑戦するのは今回が一区切りになる予定ではあるが、私たちにとっての「ここ(花凜歌)」をそれぞれの心の中で守り続け、5年後に皆でただいまを言うときに語り合える素敵な想い出にしたい。

 

 

上村先生、ありがとうございました。
「前へ」「地球へのピクニック」の選曲が、上村先生の留学準備と5年間の活動休止というご事情と重なり、とても心に伝わるものがありました。
さまざまな思いがこもった活動休止前の最後の全国大会。
 花凜歌さんの若々しい声と優れた音楽性にももちろん期待していますが、それ以上に全国大会を思い出の場所として帰ってくる「ここ」にしようとする思いに打たれました。
団員みなさんの歌と仲間を愛する心が、どうか5年後の未来にも繋がる力になりますように。

 

 

(次回に続きます)