観客賞スポットライト 室内合唱の部 その3

 

 

星合町のコスモス畑(松阪市)
提供:三重フォトギャラリー

 

 

今回は女声合唱団を3団体ご紹介します。

 

 

 

5.東京都・東京都代表

女声合唱団 ゆめの缶詰

https://twitter.com/yumecan_choir

(女声23名・2年連続出場)

 

昨年、鮮烈なデビューを飾られたゆめ缶さん。

  

全体に大人の魅力と可憐さが同居している印象。
自由曲は土田豊貴「夕暮-女声合唱とピアノのための-」
相澤直人「夕暮れ」と時刻で揃えられ。
ピアノとの絡み合いもとても優れていて。
山場へ向かって盛り上がる、
構成、ドラマの作り方も非常に上質でした。


室内合唱の部で断トツに好きだった。
課題曲は強弱やアクセントからリズム、音価に至るまで
音楽表現のあらゆる要素が詩表現と密接に結びついていて、
その音である意味を納得させてくれる演奏。
自由曲も対照的な2曲の描き分け、
言葉を味わう歌い口に魅了された。

 

……と非常に好評でした。

 

演奏もそうでしたが、プログラミングにも指揮者:相澤直人先生のセンスが感じられます。
今回は何の曲を選ばれたのか?
代表の阿久津さんからメッセージをいただきました。

 

こんにちは!女声合唱団 ゆめの缶詰です。

昨年に続き、今年も全国の舞台で歌えることを、団員一同とても楽しみにしております。
私達のキーワードは『曲が喜ぶ演奏』。ぜひたくさんの皆さまにお聴きいただき、曲の魅力をお伝えしたいと思っています。

課題曲は「定点観測」(宮本正太郎)。
朝日作曲賞に選ばれたこの曲をどうしても歌いたいと選曲しました。
どこか胸がキュッとなるような切なさや熱さ、葛藤を感じられるような、エネルギー溢れる音楽。若さを感じる曲かと思えば、人生の移ろいや美しさ、若きを懐かしむ描写も感じます。鮮やかなピアノと歌の掛け合いにより、温度や情景が浮かんでくるような、とても素敵な曲です。

自由曲は「子守唄・子守唄よ」(土田英介)。
指揮者がいつかチャレンジしたいと思っていた隠れた名曲。女声合唱でしか表現し得ない、2人の詩人による「子守唄」の世界です。
冒頭は、立原道造のひたすらに優しく美しい母親の子守唄。
中盤、中原中也の詩に入ると、深くあたたかな愛に抱かれたその声はどうなっていくのだろう、消えはしないだろうかと、疑問や祈りを呈します。
終盤は、その2つの詩が同時に折り重なり、大きなクライマックスを迎え、「ー淋しい人の世の中に それを聴くのは誰だろう」と、ひとつの問いかけを印象的に残して締めくくられます。

これらを、ゆめ缶の持ち味である“豊かな音色とグラデーションの音楽”で表現したいと思います!三重でも、ライブ配信でも!お楽しみいただけたら幸いです。

最後になりますが、写真は本番前後の恒例イベント「自撮り」です!全員で画角に入るためのワチャワチャ感が毎回楽しいひとときとなっています。
ゆるい雰囲気ながらも、表現には拘りを持つ、ゆめ缶をどうぞよろしくお願いいたします!

 

阿久津さん、ありがとうございました。
そうそう!F4「定点観測」を作曲された宮本正太郎先生は、同じ相澤直人先生を指揮者に擁する「あい混声合唱団さん」の団員とか!
先日の高校の部でも多くの名演を聴くことが出来ましたが、ゆめ缶さんなら大人の香りを漂わせる、高校生とはまた違った素敵な演奏をしていただけると期待しています。

自由曲の土田英介先生の作品はなかなか耳にすることが少ないかもしれません。
(なんと11月26日[土]、東京混声合唱団第259回定期演奏会にて土田先生の新作委嘱作品の発表が!)

しかし「子守唄・子守唄よ」、一度聴いてみると、「指揮者がいつかチャレンジしたいと思っていた隠れた名曲」という言葉に納得してしまう名曲です。

課題曲、自由曲、ともに合唱とピアノの繊細な絡み合い。
「豊かな音色とグラデーションの音楽」から、たくさんの画材でカラフルに描かれ、それでいて心の奥底に響くような演奏になるのは間違いありません。
今回も「ゆめの缶詰」を開くのがとても楽しみです。

 

 


続いて確固たる実力を示しつつある少年少女合唱団さんです。

 


6.岡山県・中国支部代表

倉敷少年少女合唱団

https://twitter.com/kurashiki_ss_g

(女声24名・4大会連続出場・第69回大会から5回目の出場)

 

 

昨年の演奏は

 

ソプラノからアルトまで、
声の同一性やハーモニーでは
室内部門で1位だったんじゃないかな。


自由曲Gustav Holst「Ave Maria」。
輝きと透明感のある歌声が
ホールの天井まで満たされていたようで
とても素敵だった。


松下耕「Ave Regina caelorum」
旋律の絡み合い、リズム、バランス、
すべて高水準でした。
音のぶつかりから解決も
実にクリアに聞こえてきて、
音楽の移り変わりも本当に鮮やかだった。

……と大変好評でした。

 

今年は何を演奏されるのでしょう?
指揮者:難波夕鼓先生よりメッセージをいただいています。

 

倉敷少年少女合唱団です!美しい白壁の街(文吾様のお膝元?!)岡山県倉敷市で、園児〜高校生等150名が在籍、声楽を基礎とした美しい発声を目指し活動しています。(全日本連盟誌ハーモニー秋号P.43「ジュニア合唱団を継続していく方法」に紹介頂いています。)

今年3月、コロナ後「初の県外遠征」として大変楽しみにしていた「アンコン全国大会」。気持ちは既に飛行機で大好きな福島に飛んでいましたが、直前の地震で中止となり涙。昨年は地元岡山での全国大会だった為、三重全国が決まった時は、新人8名含むメンバー大喜び!リーダー団員も新聞でやる気の嬉しい意気込み宣言(笑)!盛り上がっています!

・課題曲F3「寂庵の祈り」では、今現実に起きている戦争に思いを馳せ、歌詞の通り「全ての人が幸福で平和でありますように!」と願いを込め、県大会からウクライナカラーの青黄タスキを着けて演奏しています。
・無伴奏同声合唱のための 「梟月図」から「渡り鳥」(鈴木輝昭作曲)では、「生きているのではなく、生かされている」尊い命について、疾走感を持って幻想的な世界を表現できればと思います。
・Ave Maria (Franz Biebl作曲)では、歌詞の様「我ら罪人(人類)の為に、祈って下さい」と、再び「世界が平和であるよう」、思いを込めて演奏します!

実は先日、全国大会に備え、コロナ後初めてマスクを外して練習しました。2年半もの間、子ども達の歌う顔を見ることができていなかった為、これは表情の指導が大変なのでは、と危惧していました。ところが、現れたのは…満面の笑顔!「合唱団史上最高の表情」でした!マスク無しで歌えるのがよほど嬉しかったのでしょう。コロナに負けず、美しい合唱の灯をともして行きたいと思いました。子ども達も皆様からメッセージを頂け大変喜んでいます。これからも応援よろしくお願いします。

青黄タスキに平和の祈りを込めて

 


難波先生、ありがとうございました。
ハーモニー誌の記事も読ませていただきましたが、創設者の先生が亡くなられ10人台の団員数からここまで大きくなられたとは、さぞご苦労があったと推察します。

>直前の地震で中止となり涙。
>昨年は地元岡山での全国大会

おぉ、今回の三重全国大会が久しぶりの遠出の演奏旅行と言うわけですね。
団員のみなさん、ワクワクだろうなぁ(笑)。
中国大会での演奏を岡山シンフォニーホールで聴かせていただきましたが、均一の整った発声にまず唸り。
鈴木輝昭「渡り鳥」はリズムの軽やかさ、高水準の音響、エコーの表現など秀逸。
ビーブル「Ave Maria」はSoli.の美しさにうっとりし、「Sancta Maria」からは敬虔な祈りと気持ちが入った演奏に打たれました。
昨年のホルストと言い、倉敷さんは2曲目にコンクールらしくない名曲を選ぶことが多いのですが、それがとても心に響くと評判です。

難波先生のお言葉。
「2年半もの間、子ども達の歌う顔を見ることができていなかった為、これは表情の指導が大変なのでは、と危惧していました。」
うん、そりゃあ不安になりますよね・・・と思いながら読み進めたら。
マスクを外されたときの「合唱団史上最高の表情」!
津で見せていただくのがとても楽しみです。

 

 


女声合唱団3団体目は昨年のチャンピオン!

 


7.佐賀県・九州支部代表

女声合唱団ソレイユ

https://www.facebook.com/soleilsaga/

(女声24名・16大会連続出場・第59回大会から16回目の出場)


ふいに背中を叩かれても音程が乱れないという噂のソレイユさま。
抜群の安定感と存在感からまさに「横綱相撲」と評されていたのですが。
さすがに麗しい女性の集まりに「横綱!」と連呼するのはアレだろう、と。
じゃあ例えば「皇后さま」ならふさわしいんじゃ?との声が。

そんなわけで昨年金賞1位、観客賞でも第1位のソレイユさまの演奏ですが

 

課題曲F3 夜来香 
フレーズも語感もキッチリ、ハイレベルで。
「樋口先生の言うとおり!」
じゃなく、先生のやりたいことを
みんな把握してそれぞれが納得し
歌っているという。


自由曲1曲目Gustav Ernesaks
「Sinu aknal tuvid (窓辺の鳩)」。
すっごいピアニッシモが
いちばん美しく、心に響いて。
最後の叙情的な箇所も
深く染みてくるようでした。

  
自由曲2曲目Florent SCHMITT
「Ⅴ.Gisvres-Conti
(ジーブル埠頭)」
フランス音楽らしいお洒落な音がとても魅力的だった。
あれだけ自由曲を自然に自国語の様に歌われると
投票してしまう!

……当然のことながらこの上なく好評でございました。

 

ソレイユさまの今年の演奏曲は

●課題曲
F4 定点観測 
作詩:三角みづ紀 作曲:宮本正太郎

●自由曲
「Japan impressions(印象日本)」から
 有明や 俳句:小林一茶
 春の野に 短歌:大伴家持
 稲妻や 俳句:松尾芭蕉
 谷水や 俳句:上島鬼貫
 作曲: uģis prauliņš(ウギス・プラウリンシュ)


ソレイユ団員さまからメッセージを承っております。

 

今年の自由曲はラトビアの作曲家、ロックミュージシャンでもあるプラウリンシュの「Japan Impressions (印象日本)」です。
この作品は、NHK東京児童合唱団の2018年北欧演奏旅行、そしてこの国の独立100年記念のために作曲されたものです。今回は全13曲の中から4曲を選びました。
この作品は、日本独自の文化である短歌、俳句をテキストに作曲されています。

下にその作品を紹介します。


有明や 雨の中より 鳴く雲雀  小林一茶

春の野に 霞たなびき うら悲し
     この夕かげに 鶯鳴くも  大伴家持

稲妻や 闇の方行く 五位の声  松尾芭蕉

谷水や 石も歌詠む 山桜  上島鬼貫


4曲それぞれに日本の原風景の美しさを、優美に時にメカニックに表現できたらと思います。
胡弓や鶯の声などをイメージした超絶技巧ソプラノソロ(アルトの私には到底歌えまへん)も必聴です。
コンクールということを忘れて、コンサートみたいに楽しんでもらえる時間にできたら幸いです!

最近のソレイユは、団員2人の出産ラッシュで幸せをもらっております。全国大会にその2人は参加しませんが、佐賀からの応援を胸にがんばります!いつかはソレイユチルドレン合唱団ができるかも!?それもひそかな楽しみです♪

昨年の「鹿児島県合唱振興基金・創立20周年の記念演奏会」にゲストとして。
くるみ割り人形を寸劇も交えながら演奏しました。
ソレイユの芸達者たちがはりきりました(笑)……そうです。

 


ソレイユ団員さま、ありがとうございました。
「ロックミュージシャンでもあるプラウリンシュ」、「印象日本」の参考になるかな……とお名前で検索したところ、MVが。

 

うぅむ最初こそ合唱なものの、やはりロックミュージシャンなだけあって、どんな曲になるか想像がつきません!
しかも今回の演奏曲は題材が小林一茶や松尾芭蕉の俳句や短歌!

「コンクールということを忘れて、コンサートみたいに楽しんでもらえる時間にできたら幸いです!」というお言葉から、肩の力を抜いて向き合うのが正解みたいですね。
実力は折り紙付きですから、ゆったり座席の背にもたれて聴かせていただきましょう。
「ソレイユさま・オンステージ」、どうかいつものように聴く者を魅了してください!

 

 


(次回に続きます)