観客賞スポットライト 同声合唱の部 その1

 

ともやま公園(桐垣展望台)(志摩市)
提供:三重フォトギャラリー

 

昨日までは室内部門へ出場の団体をご紹介していました。
今日から20日(日曜日)午前10時から開会式の後、10:10から同声合唱部門の始まりです。


ここで伝統(?)の #全国で朝カツ推進運動 について。
同声合唱部門2番目に出場のmonossoさんよりアピールしていただきましょう、どうぞ!

 

 

そうなんです、朝10時10分に本番であれば、どれだけ早く起き、早朝に練習場所を借り、眠気と寒さに耐えなければいけないか!
そこまでして向かった朝イチの会場は、お客さんが少ないことが多く・・・。

1日目、人数が減ったのに二重合唱へ挑む都留文科大学合唱団さん。
そして今日ご紹介する男声合唱団 Le Terreさんは全国大会初出場。
同じ合唱を愛する者として、朝イチ出場の団体に心意気で応えてあげたいじゃないですか!
そんなわけで2日目の同声部門も聴き所いっぱい!遅刻厳禁でお願いします!!

朝カツ推進運動創始者(?)の島根:女声合唱団フィオーリさんからも。

朝1番から会場で良質な演奏を聴き、沢山の拍手を送りませんか(^^)??

同声合唱部門は女声合唱と男声合唱の部門。
年代の幅が広いのが特徴で、少年少女合唱団からベテランの団体まで。
同じ課題曲が全く違うように聞こえるのも面白いですね。
さらに大学ユース部門で少なくなっている男声合唱に比べ、同声では昨年と同じ数の4団体ものタイプの違った男声合唱団が出場されているのが嬉しいことです。


今年の全国大会は三重県・津市の三重県総合文化センターにて行われます。
ちなみに三重県津市での全国大会、大学職場一般の部は2003年(平成15年)以来、19年振り。

三重県総合文化センター 広場より大ホール中ホール Photo by Nodaさん

 

それでは始めましょう!
2022年同声合唱部門全国大会。
各支部から11団体、はじめましての団体さんは3団体。

 

 


最初の団体は初出場の男声合唱団です!

 


1.埼玉県・関東支部代表
男声合唱団 Le Terre
(男声27名・初出場


初出場おめでとうございます!
なんとも特徴的な団名のこの団体。

YouTubeでLe Terreさんの「青いメッセージ」を聴かせていただいたのですが、高い歌唱力と確かな音楽性が感じられ、何度も聴いたこの名曲から新しい魅力が引き出されることに大変惹かれるものがありました。

 

Le Terre・・・ん? 青いメッセージ……ごびらっふの独白・・・るてぇる??

団代表さんと団内指揮者さんからメッセージをいただきました。

 

【Le Terreについて】
男声合唱団Le Terre(るてえる)は埼玉県立浦和高等学校グリークラブ(以下浦高グリー)OB合唱団として、2015年に発足しました。
指揮者には同校元教諭で顧問を務めた小野瀨照夫先生を迎えました。

特徴的な団名には3つの意味を込めています。
古今東西の曲に挑戦する意気込みから、フランス語で「地球」を意味する「La Terre」
小野瀨照夫先生の「てる」
男声合唱作品『ごびらっふの独白』から、「幸福」を意味する「るてぇる」

特に③の『ごびらっふの独白』は、浦高グリーがコンクールの自由曲として2度、すなわち6代に渡って挑戦した思い入れの深い曲で、今年3月に開催した第1回演奏会でも披露しました。

 

おお!草野心平の蛙語「るてぇる」が関係しているとは思いましたが、まさかトリプルミーニングとは!
名門:浦和高等学校グリークラブのご活躍はよく知られているところですね。

Le Terreさんの演奏曲は

●課題曲
M3  平林
落語「平林」より 作曲 大中 恩 

●自由曲 
「那須与一」(平家物語による「男声合唱のためのエチュード」より)
作曲:千原英喜

これらの曲はどのような経緯で選ばれたのでしょうか?

【演奏曲目について】
創団7年目にして初出場となる今回のコンクールでは、課題曲・自由曲ともに和風テイストの演奏を披露します。
課題曲「平林」は、古典落語の名作・平林に、西洋音楽的な和声とメロディーを与えた作品です。原作の落語からは非常に短いフレーズのみの抜粋となっており、その分音楽的な進行がストーリーの展開を助ける構成となっています。私たちLe Terreの演奏では、小野瀨照夫先生のこだわりが詰まった、遊び心満載の表現にご注目ください。
自由曲「那須与一」は、平家物語に登場する弓の名人・与一を主人公に据えた、ドラマ風のエチュードです。与一が扇を射るエピソードで有名な、屋島の戦いがその舞台となっています。平家物語をはじめとした数々の古典がコラージュ的に配置され、千原作品らしい世界観が展開されます。コーダには明治時代の尋常小学校歌『那須与一』が挿入され、明治らしい素朴で古拙な響きとともに幕を閉じます。ストーリーと連動するダイナミックなコード進行と、男声合唱ならではの語り口調によって、屋島の戦いの様子が眼前に浮かびあがるような、大変聴いていて面白い楽曲かとおもいます。ぜひお楽しみください!

【コンクールに向けて意気込み】
関東大会の演奏直後、小野瀨先生が団員に向けてこんなことを伝えました。
「みんな高校生の頃とは違い、大人の余裕が出てきて、私も楽しかった。こんな活動を続けられたらいいね。」(要約)
懸命にコンクールに向き合ってきた高校時代があるからこそ、こうして余裕を持った演奏ができるようになってきたように思います。

トップバッターとして、皆様の目を一瞬で覚ますような演奏をお約束いたします。

どうぞお楽しみください!

関東支部大会の演奏後に撮影ということ。

 

団代表さん、団内指揮者さんありがとうございました。
課題曲の平林も自由曲の那須与一も少しコミカルな部分がある曲の取り合わせ。
しかし、いただいたメッセージからはそれだけで終わらせない、こだわりの表現、劇的な物語の迫真性や抒情も伝えてくれそうで実に楽しみです。

小野瀨先生のお言葉から、かつての高校生たちの成長に目を細められるお顔が見えるよう。
「皆様の目を一瞬で覚ます」「お楽しみください!」という言葉にも、浦高グリーさんから続く、巧さだけではない男声合唱の魅力を指向する姿が伺えて嬉しいですね。

よぅし、Le Terreのみなさん、20日の切り込み隊長は任せました!
初出場のステージ、思いっきりカマしてください!期待してます!!

 

 

続いてはうどんの国から人気の女声合唱団です。

 

2.香川県・四国支部代表

monosso

https://twitter.com/monosso_kagawa

(女声36名・6大会連続出場)


讃岐弁で「とても」の意味を持つ団名のmonossoさん。
昨年の観客賞では第3位。
常に観客賞では上位に入賞する人気の女声合唱団です。

 

課題曲F1、O sacrum conviviumの
最初から曲のイメージが豊かに伝わってくる。
指揮の山本啓之さんの得意なところですよね。


自由曲:瑞慶覧尚子「約束」は
言葉のニュアンスを伝える面でピカイチ!
ソプラノの「ていねいに生きて行くんだ」
そこに泣きそうになったし、
「刹那」という言葉にドキッとした。


課題曲は透き通った三声の絡み合いが美しく、
特にアルトの柔らかで深みある支えが心地好い。
自由曲は詩人の思いを繊細な歌声で切々と表現、
輝かしくもそっと寄り添う
ピアノの音色も相俟って心に沁みる演奏でした。
言葉が「聞こえる」のではなく
「伝わってくる」演奏で心を打たれました。

……と大変好評でした。

 

monossoさんの今年の演奏曲は

●課題曲
F2 Lied(「3 Gedichte」から)
Emanuel von Geibel 詩 
Robert Schumann 曲

●自由曲
「オンディーヌ」
吉原幸子 詩 
木下牧子 作曲

課題曲F2のLiedは三重大会の全団体でmonossoさんだけの演奏。
木下先生の女声版「オンディーヌ」は混声版の後、1994年に女声合唱団るふらんさんの委嘱により初演された作品。
指揮者・山本啓之さんと団員さんからメッセージを送っていただきました。

【指揮者 山本より】
課題曲については、ドイツリートはいつかmonossoもやらなければならない作品と思ってましたので、シューマンの作品が選ばれた今年、迷わず選びました。 
重唱の作品なので、一人一人が歌に向き合うということにチャレンジしたいと思っていました。
オンディーヌについては、以前ひなまつりジョイントコンサートの合同演奏で多くのメンバーは歌ったことがあったのですが、その時からいつかはmonosso単独でもやりたいなと思っていました。 
結成からの時間も経ってきた今、実はもう歌ったことがある人が少ないという感じにもなってきたので、今回チャレンジしようと思い選曲しました。

今回の2曲はどちらも恋をテーマにした歌です。 
恋を失い心を失う、というガイベルの詩と、恋ゆえに我を失う、という吉原幸子さんの詩。 
シューマンと木下牧子先生がそれぞれ音に魂を込めて作曲された作品に、比較的若いmonossoのメンバーが挑む事で、今までにない歌声が聞こえたらと思っています。 
やはり作品は演奏者を育ててくれます。
人の情念が音に乗り移るそのさまを聞いてもらえたらと思ってます。

今年はもっとコロナの影響がない状況で活動できると思っていましたが、まだまだそんなことはありませんでした。 
それでも少しだけ明かりが差し込んできているとも思いますので、指揮者、ピアニスト、今のmonossoの全身全霊で演奏したいと思います。


【団員より】 
指揮者の言葉にもあったように今年も試練の続くシーズンとなりましたが、困難な状況においても良い音楽を追求することを諦めず、進化を遂げておられる合唱団が日本中(きっと世界中)にあり、勇気づけられます。 
私たちもそうありたい、そうなりたい!と、ちょいちょい転びそうになりながらも歩みを止めずにやってこられました。
いつも応援してくださる方にはもちろん、私たちの演奏を初めて聴いてくださる方にも「monossoいい!この曲いい!」と思っていただけるような演奏をしたいです。

画像は今年の香川県大会の日のもの。
珍しく指揮者・ピアニストと一緒に写っているところと、やけに立体感のある並びがお気に入りのショットです、……とのこと。

 

山本さん、団員さん、ありがとうございました。

>オンディーヌについては、以前ひなまつりジョイントコンサートの合同演奏で多くのメンバーは歌ったことがあった

おお、3年前のジョイントコンサートは私も感想を書いています。

あの「オンディーヌ」は合同合唱とは思えないほどの良い演奏でしたね。


>やはり作品は演奏者を育ててくれます。
>人の情念が音に乗り移るそのさまを聞いてもらえたらと思ってます。

山本さんのmonossoのみなさんへの期待が伝わるようです。
吉原幸子さんの詩は難解ですが、何度も読んでいるうちに純粋について、人間の本質について考えさせます。
その奥深さ、繊細さを見事に音にされた木下先生の世界をどれほど表現していただけるか。

団員さんの言葉。
>困難な状況においても良い音楽を追求することを諦めず、進化を遂げておられる合唱団が日本中(きっと世界中)にあり、勇気づけられます。 

さて、偶然にもひなまつりジョイントコンサートで一緒だった「VOCI BRILLANTI」さんが次の出演です。
monossoさんツイッター では

「盟友ブリちゃん@Brillanti0202❤️

ステージに、置き土産として覇気を残して去ろうと思ってます。」とのこと。


伝えよう!と思った演奏は、演奏者が思う以上に聴いた人の心に響き、大きな力を生むことを知っています。

多くの合唱団から力をもらい勇気づけられたmonossoさんの演奏が、また多くの人たちへの更なる力になりますように。

 


そして、monossoさんの盟友が3年ぶりに登場です。


3.愛知県・中部支部代表

VOCI BRILLANTI
(女声22名・3年ぶりの出場・第63回大会から8回目の出場)


3年前の感想では

課題曲F4「その木々は緑」、
ブリランティの持ち味を存分に聴かせたね。
ピアニストの白鳥先生のテンポの緩急が
作為的じゃなく、本当に自然で。
それに歌い手が良い影響を受けていたのかなと。


自由曲は木下牧子
女声合唱曲「オンディーヌ」。
この演奏には痺れました!
ヴォカリーズにゾクゾク。
ソロ、パートソロ、合唱。
それぞれに個性があったんですよ。
「あー、ソロでしか、合唱でしか、
 この表現はできないな!」
そういう説得力がありました。


それぞれの曲の世界に引き込まれ、
まさに曲の情景が見える演奏。
若く瑞々しいF4はまるで十八番。
そしてついに仕上がったオンディーヌの冒頭、
自分には水の精が見えました。
素敵でした。

……と、とても好評でした。

団員のみなさまからメッセージをいただいています。

 

みなさま、お久しぶりです!
愛知県岡崎市を拠点に活動している女声合唱団、VOCI BRILLANTIです。
3年ぶりに全国大会に出場できることを団員一同大変嬉しく思っております。

私達が今回演奏する曲は
課題曲 F3「寂庵の祈り」(詩:瀬戸内寂聴  作曲:千原英喜)
自由曲 無伴奏女声合唱のための「風のこだま・歌のゆくえ」より「風のような歌は」(作曲:信長貴富)です。

幸せなときには ありがとう」から始まる「寂庵の祈り」を歌うとき、私たちはいつも隣にいる団員と微笑みあって、幸せを感じてから歌っています。
2020年春、演奏会が中止となり、全国の合唱団の皆様と同じように、対面練習が出来ない苦しい時期がありました。

現在は、感染対策をしながら週1回の練習を行っています。コロナ禍でも、大好きな合唱を大好きなみんなと続けられることは本当に幸せで、かけがえのないことです。全国大会の舞台では、そんな幸せを噛み締めながら歌います。
そして、この曲には「地球のすべての人が 幸福で 平和で ありますように」という、瀬戸内寂聴さんの祈りが込められています。私たちも、争いのない平和な世界を強く願って歌います。

「風のような歌は」は、「放浪記」で有名な作家、林芙美子さんの詩をもとに作られた曲です。

2015年第15回ブダペスト国際合唱コンペティションで、当時光ヶ丘女子高校合唱部に所属していた団員は総合1位を受賞し、白鳥先生が優秀指揮者賞を受賞しました。その時のプログラムの1曲が、「風のこだま・歌のゆくえ」の2曲目である「月色の羽音」でした。思い入れのある曲集の1曲目も歌いたいという思いと、今年度の新入団員7人だけでなく、ずっとブリランティで歌っている団員も含め、一人ひとりが成長できる曲に挑戦しよう!という思いから、無伴奏で抒情的なこの曲を選びました。

この曲は、風が吹く様子を声で表現している「lololo」などのフレーズが沢山あります。その一つひとつがどこで吹いているどんな風なのか、音色や歌い方をどのようにしたいか、意見を出し合いました。
風はいつも私たちのそばで吹き流れ、見守ってくれています。全国大会では、私たちの歌が響き合い、風となって、会場で聴いてくださるみなさまをあたたかく包み込めるよう歌います。

9月に富山県魚津市にて行われた中部大会で撮影したものということ。


団員のみなさん、ありがとうございました。

課題曲「寂庵の祈り」が白鳥先生の弾き振りなんですね!
前回の感想でも触れましたが、白鳥先生のピアノの自然な緩急が、合唱へとても良い影響を与えられていると思うので、今回も楽しみです。
自由曲「風のような歌は」は2005年鹿児島女子高等学校音楽部の委嘱曲。
爽やかな旋律が気持ち良く流れると思いきや、音響・サウンド的な部分や、ときに深い叙情性を求められたり。
多面的な要素を含む作品ですが、幅広く優れた表現力をお持ちのブリランティさんなら、きっと素晴らしい演奏になることでしょう。

風はいつも私たちのそばで吹き流れ、見守ってくれています。
全国大会では、私たちの歌が響きあい風となって、会場で聴いてくださるみなさまをあたたかく包み込めるよう歌います。

激動の時代を生きた林芙美子氏が、どんな身分、状態の者にも吹く自由な風に歌を託したこの詩。
ブリランティさんのメッセージを読むと、本当にそんな「風のような歌」が優しくあたたかく吹いてくる気がしてきます。
「盟友」とブリランティさんを呼ぶmonossoさんの後の出番。
舞台袖とステージで繋がった心が、風のように歌う力となりますように。

 

 

(次回に続きます)