観客賞スポットライト 同声合唱の部 その3

 

 

七里御浜ふれあいビーチ(御浜町)
提供:三重フォトギャラリー

 

 

今回は3団体をご紹介します。
最初の団体は常連の少年少女合唱団!

 

 

6.北海道・北海道支部代表

HBC少年少女合唱団シニアクラス
(女声41名・9大会連続出場・第57回大会から10回目の出場)


HBCは北海道放送株式会社(Hokkaido Broadcasting Co.,Ltd.)の略称。
1957年に前身のHBC児童合唱団。
1965年に中学生を加えたHBC少年少女合唱団を創立。
今回出場されるシニアクラスは中学生と高校生のメンバーとのこと。


昨年の座談会では

 

課題曲F2:La  Fedeは
立派な声で朗々と歌うアプローチで
この団体に合っていたのでは。


自由曲:Kim André Arnesen
Ubi caritas et amorは
音の厚みがあって
やっぱり北の大地の演奏!
スケールの大きい感じがしましたね。

……という感想がありました。

 

HBCさんの今回の演奏曲は

●課題曲
F4 定点観測
三角みづ紀 詩 
宮本正太郎 曲

●自由曲
Winter Sun (冬の太陽)
詩 Malca Janice Litovitz
作曲 Don Macdonald

Ave Generosa
作曲 Ola Gjeilo

自然に生きる全てのもの、冬の太陽を美しく讃えた「Winter Sun」。
そしてノルウェーの作曲家:イェイロの傑作「Ave Generosa」!
この曲大好きなんですよ~。
哀調を帯びた異国感ある旋律からの精妙な変化、静謐な祈りの表出。

毎回、コンクール向けとは言えない選曲で楽しませてくれるHBCさん。
今回のステージにも期待です!

 

 

 

続いては昨年、観客賞第1位のこちらの男声合唱団!

 


7.大阪府・関西支部代表

メンズ・ウィード
(男声32名・4大会連続出場・第49回大会より7回目の出場)


指揮者は混声合唱部門で「混声合唱団 うたうたい」も振られる高嶋昌二先生。
淀川工科高等学校グリークラブOBの方々が中心の団体です。

昨年の感想では

 

課題曲M3のコンポジション、
クラシックないわゆるグリー調で
旋律をどっしり歌ってくれて。
気合いに満ち満ちインパクトガーン!って
カマす感じの。
聴いていくうちに
往年の淀工の雰囲気を思い出して
「キタキタキターッ!!」


自由曲1曲目:信長貴富
「ひとりぼっち」。
やはり語り口が上手いですよね。
コロナの状況で歌う、
歌い手さんの深い共感と
聴く側の心が通じ合った感が。


2曲目の「ワクワク」
コンクールらしくない選曲だけど
本当に自分たちが楽しんで
歌っていたのが好印象でした。


この曲を高嶋先生の曲作りで
演奏されたら間違いないのは
聴く前からわかっていたけれど、
それでも一音目から感情を揺さぶられた。
詩の言葉一つ一つが聴き手の心を掴む。
この曲を演奏してくださってありがとうございます、
というひたすら感謝の気持ち。

……と、自由曲はいわゆるコンクール向けではない作品を、実に丁寧に「いま歌うべき作品」と演奏され、堂々の観客賞第1位。

 

今回のウィードさんの選曲は

●課題曲
M4 花と画家
谷川俊太郎 詩 
上田真樹 曲

●自由曲
「3.落下傘」
(「感傷的な三つの奏鳴曲」から)
金子光晴 詩
高嶋みどり 作曲


課題曲の「花と画家」は4番目に出場のWAKAGE NO ITARIさんと聴き比べが楽しみですね。
自由曲の「落下傘」は名曲としてよく知られた作品です。


団員さんからメッセージをいただきました。

 

府立淀川工科高等学校グリークラブの卒業生が主体の合唱団 メンズ・ウィードです。
今年も、現役高校生4人と共に関西コンクールに挑戦し全国大会に推薦していただき、一同大変嬉しく思っています。

大阪府合唱祭に参加した時の写真です。
淀工グリーとメンズ・ウィード合同で参加し『フニクリフニクラ』を一部『鬼のパンツ』に替歌して高校生に鬼になって踊ってもらった後の写真です、とのこと。

 

昨年のコンクールの後、いくつかの曲を並べて軽く譜読みを始めました。そこに並んでいたのは人類の普遍的な願いである『平和』への祈りを込めて書かれた曲ばかりでした。
その中から選んだのは『落下傘』
メンズ・ウィードと淀工グリーの歴史(大した歴史ではありませんが…)を振り返ると、数々の平和を祈る曲を取り上げ、その度に戦争や争いの歴史と向き合い、『平和』を祈り、歌ってきました。
私も28年前、高校3年生の時、この『落下傘』を通じて、漠然とですが、平和の尊さを学びました。
今の現役高校生や若いメンバー達にも『平和』への想いを持って歌ってもらいたいとの想いから、練習を始めました。
そして、練習を始めて少し経った時…
世界情勢の大きな変化により、私たちがこの曲を演奏する意味はより大きなものになりました。

私たちが歌うくらいでは何も変わらないかもしれません。それでも『平和』を祈り私たちは歌います。

「昨年1月の淀工グリー定期演奏会のリハーサル風景です。
感染拡大の為、現役高校生が1人も舞台に立てなくなり、メンズ・ウィードのみで開催した悔しい演奏会でした」

 

ありがとうございました。
淀工グリーさんとの合同演奏は単にOBだから、だけではない強い繋がりを感じさせます。
団員さんも高校生の時に歌われた「落下傘」。
時を経て、現役の淀工グリーさんたちと歌うことで生まれる、新たな強い想いがあるのでしょう。


昨年の観客賞第1位への団員さんからのメッセージの一部。

 

僕らは現役高校生がいるから活動しています。
彼らが一緒に歌ってくれているからあの素晴らしい舞台で楽しく歌うことが出来たのだと深く感謝しています。

 

歌う意味、合唱を続ける意味は、合唱団や人それぞれ理由はあるのでしょうが、その理由の中でも、非常に強く訴えかけるものだと感じました。

「落下傘」は金子光晴が戦時下に書かれた反戦詩。
変拍子があふれる緊張感に満ちた難曲ですが、どこか音画的なピアノと中間部の故郷:日本を歌った美しくも皮相な箇所。
そして日本の行く末を神に祈る最後…と印象に残る曲です。

現役の淀工グリーさんとOBの方たち。
世代を越えて訴える平和への思いを、強く歌い上げていただきたいと思います。

 

 


続いては人気も実力も高い女声合唱団の登場です。

 

8.神奈川県・関東支部代表

La Pura Fuente
(女声34名・第66回大会から8大会連続出場)

La Pura Fuenteとはスペイン語で「清い泉」とのこと。
神奈川県の合唱名門校、清泉女学院の卒業生さんが2010年に作られた団体。
全日本では5大会連続金賞、昨年の観客賞座談会でも第2位と実力・人気の団体です。

 

課題曲F3 夜来香、
メリハリがとてもありました。
マスクしてるのに
日本語も凄く明瞭に聞こえて。
しかもパートに抜けが無く
音楽に説得力もあり。


自由曲1曲目、デュブラ
「Laudate…(讃えよ…)」。
わりあい単純な作品なんだけど
流麗だし、フレーズを長く取り、
さらに自然な明るさと優しさを
感じさせる。
旋律が上手く歌え、
さらに音楽的な深さも。
真の実力をたくわえている団体。


2曲目のプラウリニュシュ
「VAKARDZIESMAS(夕べの歌)」も
インパクトありましたね~。
演出が浮かず、
歌をさらに引き立てる理想の形。
本当に良かったですよ!


Fuenteさんのなにが凄いって、
発声と踊りと言葉がちゃんと結びついてたから
バルト音楽に最適な音楽作りをしてた事なのよね。
高校の時から求めてた表現の最適解を
目の当たりにした気分。

……と非常に好評でした。

 

団員さんからメッセージをいただいています。

 

皆さまこんにちは、La Pura Fuenteです!
全国大会の地、三重で歌えることを幸せに思います!

今年の課題曲ではF4「定点観測」を選びました!
抒情的で美しい旋律の揺らめき、詩が紡ぐ物語と色彩感を味わいながら、大切な人と過ごす一瞬の輝きをお届けできるように歌いたいと思います。

自由曲では、どちらも平和を切に願う祈りが込められていながら、ベクトルの異なった宗教曲2曲を選びました。
1曲目のAve Regina Caelorumは、ラトヴィアの作曲家DUBRA, Rihardsの作品です。
「めでたし天の女王」と訳されるように、聖母マリアに神への取り次ぎを願います。優美さと力強さを併せ持つ、アカペラでのホモフォニックな響き、甘美な旋律と和声を通じて、慈愛に満ちた力強い祈りをお届けできるよう演奏したいと思います。

2曲目のDa pacem Domineは、厚い信仰を持ち、数々の宗教曲で知られるハンガリーの作曲家Levente Gyöngyösiによる作品です。
1曲目とは打って変わってfpのついたクラスターから始まり、音響的にも衝撃が走る和声の上に、グレゴリオ聖歌を彷彿とさせる旋法的なメロディーが乗せられます。旋律はパートや調性を渡り歩き、繰り返されたり変奏されながら徐々に熱を帯び「主よ、平和を与えたまえ」の主題でタムタムが加わり、熱烈な祈りを歌う音楽の火蓋が切られます。激しく、時にリズミカル!そして切実に噛み締めるように、平和を祈る楽曲です。

コロナウイルスも未だ衰えない中でウクライナ戦争が勃発し、不安なニュースは絶えません。全国大会では、ウクライナの人々に思いを馳せ、衣装にも国旗を想起させる青を取り入れました。

聴いていただく方に愛と希望の光が降り注ぎますよう、祈りを込めて歌います。

 

ありがとうございました。

課題曲の「定点観測」はラプーラさん独特の「大人の香り」がする演奏を期待してしまいます。
昨年も演奏されたDubraの「Ave Regina caelorum II(めでたし天の女王)」は優しく切ない旋律、それでもときおり強い想いが湧き上がるような。
まさにラプーラさんの旋律を上手く歌う特長が発揮されそう。
そしてGyöngyösi「Da pacem Domine(主よ、平和を与えたまえ)」、タムタムを伴う激しい曲!
どこか民族的なリズムも感じさせるこの作品。
ラプーラさんは過去にヴァイオリンやボンゴとの協演もありましたが、優れた演出と共に楽器が浮かず、いつも合唱と一体化した強い説得力で聴かせてくれるんですよね。

>全国大会では、ウクライナの人々に思いを馳せ、衣装にも国旗を想起させる青を取り入れました。

今回のお写真ではわからないのですが、これは本番でのお楽しみですね。
倉敷少年少女合唱団さんの青黄のタスキと同じように、歌はもちろん、衣装にも平和の祈りが込められたラプーラさんのステージ。
課題曲の日本語作品、ベクトルの異なった宗教曲2曲と、女声合唱の幅広さ、可能性を示していただけるものになることでしょう。

 


(次回に続きます)