そうぶんの竹あかり 2022年のテーマは「天と地 つながって」(津市)
三重県総合文化センターにて開催される竹あかりのライトアップ。
毎年11月に開催され、竹あかりの和の美しい光景を楽しめる。
提供:三重フォトギャラリー
今日は3団体をご紹介します。
「コンクールにケンカを売る」と聞くと物騒ですが、その真相は?
8.愛媛県・四国支部代表
(混声23名・第67回大会から8大会連続出場)
アイ・シー・コラーレ、通称いよコラさん。
昨年の感想では
課題曲G3
うたをうたうのはわすれても、
転調時の都度、音色を変えていた。
F-durに上がった時に光が射すような。
凄く感銘を受けました。
ソフトな声の課題曲から
自由曲1曲目のモチニク
「Christus est natus
(キリストはお生まれになった)」で
カーン!と声の出し方を変えて。
そこからアタッカで
自由曲2曲目:イェイロ
「The Ground(地上の祈り)」。
音楽のイメージは豊富だし、
「志」を常に感じさせる演奏。
自分はいよコラさんに投票しました。
というのは、
ちょっと泣いてしまったんですね。
コンクールで「The Ground」は
あまり演奏しない曲だし、
いろいろ中止になった企画の
残念な気持ちが癒やされた気がして。
……と好評でした。
いよコラさんの今回の演奏曲は
●課題曲
G4 智慧の湖
高橋元吉 詩
根岸宏輔 曲
●自由曲
「Ave maris stella 花も花なれ、人も人なれ」
曲:千原 英喜
「Ave verum corpus(めでたしまことの御体)」
曲:Wolfgang Amadeus Mozart
いよコラ指揮者・村上先生が別の場所で言われるには「激エモ選曲!」。
特に自由曲の2曲目は、作曲家・新実徳英先生のご発言。
「極論を言うと、ぼくの中で最高の合唱音楽を仮に2つ挙げるなら、モーツァルトの『Ave verum corpus』とフォーレの『ラシーヌの賛歌(ジャン・ラシーヌ頌)』。この2曲を本当に素晴らしく演奏してくれたら、間違いなく金賞」を思い出させます。
指揮者:村上信介先生からメッセージをいただきました。
課題曲から自由曲までの一連の流れとして、「智慧」と「祈り」をテーマに選曲しました。
課題曲G4「智慧の湖」の表題にもある「智慧」とは、仏教用語で相対世界に向かう働きの『智』と、悟りを導く精神作用の『慧』を意味し、物事をありのままに把握し、真理を見極める認識力を指します。「空」をテーマにした4作品による組曲の終曲ということもあり、この曲のクライマックスは高い空の向こうにある理想の世界に向かう喜びが溢れています。
自由曲1曲目「Ave maris stella 花も花なれ、人も人なれ」のテキストに使われる「般若心経」の「般若」とは、仏教用語であり、全ての事物や道理を明らかに見抜く深い「智慧」のことを意味します。課題曲で歌われる「智慧」からの一貫性を感じつつ、Ave maris stellaによる西洋の祈り、細川ガラシャの凛とした強さと和の香り、群衆の祈りといった様々な要素が混じり合い、宇宙的な祈りの世界が展開されます。
自由曲の2曲目はモーツァルトの「Ave verum corpus」。言わずと知れた名曲です。課題曲から自由曲1曲目までに連綿と描かれる祈りを昇華させ、全世界に通じる祈りの世界を歌いたい。今現実に戦禍に苦しむ人々がいる中で、せめて精一杯の平和を願い、普遍的な祈りを捧げたい、そのような思いからこの曲を選曲しました。
新実先生がかつてコンクールの講評で話されたお言葉は存じ上げていますが、コンクールでこの曲を歌うのはチャレンジングを通り越して無謀なことかもしれません。実際に、県大会や四国大会を終えた後も、多くの方から「なんでこの曲を選んだの?」と言われました。それでも、だからこそ、この曲を今、若い団体が取り上げることに意味があると思っています。小手先の技術では逃げも隠れもできない曲です。コンクールにケンカを売りに行くようなことをして、返り討ちに遭うかもしれません。それでも戦え若者よ!という思いでコンクールの舞台に臨みたいと思います。
10/16(日)に、MODOKIやmonossoの指揮者である山さんこと山本啓之先生にレッスンいただいた際の写真です。燃えるような音楽で、あっという間の4時間でした。
山さんには、審査員を務められた愛媛県大会の後にも、「コンクールでこの作品を取り上げるということは、審査員をはじめ各方面にケンカを売りに行っているのと同じ。ケンカを売ったからには、ボコボコにしに行って勝ちに行ってほしい。」という温かいメッセージもいただいています。
村上先生、ありがとうございました。
「コンクールにケンカを売りに行く」!
言葉は過激ですがこの曲を選ばれた理由はとても真っ当で尊いものと思いました。
新実徳英先生のこのご発言では他に「どうしてもコンクールでは演奏効果が重視されますが、効果を超えた本当の音楽の深みへみんなが到達する、あるいはそれを目標として一里塚を刻んでいく、そういうものになったら本当にすごいですね。」とも。
課題曲から自由曲1曲目までに連綿と描かれる祈りを昇華させ、全世界に通じる祈りの世界を歌いたい。
コンクールへ向かう理由は合唱団・人それぞれですが、いよコラさん、村上先生のように「祈りの世界を歌いたい」という理由から、モーツァルトを選ぶという行為も、このコンクールが演奏効果を重視するだけではないことを証明しているようで嬉しいですね。
山本さんの温かい(?)メッセージに乗って私も。
「いよコラ、村上先生! 行ってボコって勝ちに行けッ!!」
〇宣伝事項:
来年4月30日(日)に、香川県のレグザムホールで
「四国ジョイントコンサートPalette~四国合唱遍路道~」
を開催します!
四国四県から8団体が集結しての大規模なジョイントコンサートとなります。
○香川:monosso、JADE
○徳島:Serenitatis Ensemble、forma
○高知:混声合唱団Pange、Dios Anthos Choir
○愛媛:Chorsal《コールサル》、I.C.Chorale
今回、全国大会に出場されるmonossoさん、コールサルさんもご一緒されます。
合同ステージは、新旧の名曲たちを各団体の指揮者が1曲ずつ振る予定です。
四国の団体も頑張っていますので、ぜひ気に掛けていただければと思います!
このジョイントコンサートの詳細は、またフライヤーなど出来次第このブログでお知らせしたいと思います。
Chorsal《コールサル》指揮者:ぜんぱくさんが「四国の合唱人は、コンクールでのライバルと言うより『仲間』」と仰っていましたが、このように四国支部大会で競った団体がジョイントコンサートを企画というのは、本当にそうなんだなあ、と感じてしまいますね。
村上先生がモーツァルトを選んだのも、そんな土壌があったからなのかも。
良いジョイントコンサートになりますことを。
続いては毎年、現代音楽を選曲される団体の登場です。
9.宮城県・東北支部代表
(混声47名・23大会連続出場・第2回大会以来39回目の出場)
グリーン・ウッド・ハーモニー(GWH)さん、毎年課題曲にG1、自由曲に海外の現代曲を選ばれる印象です。
昨年の感想では
課題曲G1のシュッツも
ドイツ語の発音が
さすがだと思ったし。
パートが揃ってシュッツらしい熱もあり、
先が気になるというか興味が持続する演奏。
自由曲のレーガー
「Palmsonntagmorgen
(枝の主日)」も
軽やかなところは本当に軽やかに。
メリスマ、良かったですね。
フーガに華やかさもあった。
2曲目の
「Der Mensch lebt und bestehet
(人の生きる時は短く)」は
構成から考えられた弱声の美しさ。
GWHさんはp,ppを
ちゃんと緊張感を持って
キッチリ美しく作っているなぁと。
全体的に音楽の運びが
素晴らしいと思いましたね
……と、とても好評でした。
GWHさんの今回の演奏曲は
●課題曲
G1 Gaude virgo, mater Christi
Josquin des Prez 曲
●自由曲
Aus den Psalmen Davids(ダヴィデの詩篇)より「Exaltabo te, Domine(主よ、あなたを崇めます)」
Missa Brevisより「Kyrie」「Gloria」
Krzysztof Penderecki 曲
団員の瀬成田さんからメッセージをいただきました。
昨年の全国大会の翌日に、長年当団を指導してくださっていた今井邦男先生がお亡くなりになりました。新しい指揮者に、20年近くボイストレーナーとしてご指導いただいている田中豊輝先生を迎えることができました。東北大会に向けては、悔いのないよう練習に取り組み、十分に自分たちの力を発揮でき満足していましたが、望外に全国大会に出場できることとなり団員一同大変嬉しく思っております。
課題曲は当団が長年取り組んでいるポリフォニーを選びました。ジョスカンは今井先生とも何度も演奏しましたが、毎回その魅力に惹きつけられています。
自由曲のペンデレツキ、KyrieとGloriaは団員で意見を出し合いながら選曲しました。そこに12音音楽のExaltabo te, Domineの組み合わせを田中先生が提案してくださいました。
Exaltabo te, Domineはペンデレツキ が1958年25歳の時に作曲された12音音楽です。12音音楽でありながらもそのメロディーは美しく、不協和音の後に調性音楽の三和音を聴くこともできます。
ミサ・ブレビスからKyrieとGloriaは2012年79歳の作品で、ライプツィヒの聖トーマス教会で全曲が初演されています。Kyrieは静かな大地で人々が口々に祈りを唱え、それが一瞬の絶叫となり、また土着的な祈りとなるような雰囲気があります。
Gloriaは冒頭とフィナーレ直前に調性的な分散和音が変化する教会の鐘のような部分があり祝祭的ですが、人々の不安な祈りを示すような半音階的な部分もありドラマチックな曲です。ペンデレツキの生きたポーランドの隣国、ウクライナでの戦争が行われている今、もしペンデレツキが生きていたらどのような音楽を作っていただろうと思いを馳せ、平和を祈りながら歌います。
7月に開催された定期演奏会のものということ。
瀬成田さん、ありがとうございました。
長年、GWHさんを指揮され、音楽の魅力と奥深さを教えていただいた今井邦男先生に心から哀悼の意を表します。
自由曲はポーランドの作曲家:Krzysztof Pendereckiの作品。
不穏な雰囲気を漂わせる「Exaltabo te, Domine」から、ペンデレツキの神への熱い想いを感じさせるミサ曲。
同じ作曲家の作品と言えども、25歳と79歳という離れた年月故か、かなり異なる印象を受けます。
GWHさんは年代層が幅広いながら、こういった現代曲を指揮者に「やらされている」感は全く無く、それぞれ個人の自主的な意欲が伝わるのが素晴らしいですね。
瀬成田さんのメッセージからは今井先生の音楽を心に残しつつ、指揮を受け継がれた田中豊輝先生が、また新たなGWHさんの世界を拓こうとしているように感じます。
新しい平和な世界を祈る、新しい指揮者を擁したGWHさんの歌が、広く深く届きますように。
続いては混声合唱部門最大人数の登場です!
10.大阪府・関西支部代表
(混声75名・2年連続出場・第57回大会以来13回目の出場)
淀川混声合唱団、通称「よどこん」さん。
指揮者は、大学ユース部門に出場の混声合唱団名古屋大学コール・グランツェさん、室内合唱部門に出場のアンサンブルVineさんを指揮される伊東恵司さんです。
昨年の感想では
自由曲:ウィテカー
「Cloudburst(雷雨)」は
ドーン!と盛り上がって。
いままでの淀混さんの演奏で
最高にキテました!
合唱表現という面で
いろいろな要素を
キチンとクリアしていたのが
伊東さん、淀混さんらしいなぁと。
まとまりもあったし。
クライマックスのハーモニーって
雷光だと思うんだけど、
鮮烈だったし眩しかった。
あれだけ人数がいると
雨の音も豪雨って感じで
効果的だったよね。
……と、大変好評でした。
今回の淀川混声合唱団さんの演奏曲は
● 課題曲
G4 智慧の湖
高橋元吉 詩
根岸宏輔 曲
● 自由曲
Stabat Mater(inF)
György Orbán 曲
団員の村田さんからメッセージをいただきました。
こんにちは。よどこんこと淀川混声合唱団です。
一応大阪の合唱団ということになってはいるのですが、関西一円、さらには関東や東海などからも歌に取り憑かれた面々が集まり、楽しく活動しております。
望外にも2年連続で全国大会出演の機会をいただき、団員一同身が引き締まる思いでおります。昨年は自由曲としてエリック・ウィテカーのCloudburstを演奏し、晴れの国・岡山に大驟雨を現前させんとしました。
打って変わって、今年は厳粛な雰囲気に満ちたStabat Materでコンクールに挑むこととなり、音楽性の豊かさと祈りの言葉の説得力との両立を図るという難題に悪戦苦闘しています。叙景から叙事へ大きく舵を切ったよどこんの音楽を観客の皆様にもお楽しみいただけるよう、最後の最後まであがいていく覚悟です。打って変わってと言えば、ピアノ付きの課題曲を選んだのもよどこんとしては大きなチャレンジと言えるでしょう。ピアニストとのコラボレーションの愉しさを練習および舞台で味わうという、例年の秋とは違った経験を重ねられていることに、新鮮な喜びを感じています。
作品自体も、歌う度に愛着の増す素晴らしいものですので、その魅力を最大限にお伝えできるよう、表現を磨いてまいります。合唱を取り巻く状況が厳しさを増す中、昨年を上回る人数で出演できることはたいへん有り難いことです。そのことに感謝しつつ、三重の舞台を心ゆくまで楽しみ、さらなる成長への糧としたいと思います。
9月に開催された演奏会前の練習。
「写真は各団員、お気に入りステージの楽譜を持って写っております」とのこと。
村田さん、ありがとうございました。
ピアノ伴奏の公募課題曲「智慧の湖」はよどこんさんとしては大きなチャレンジなのですね。
そう言えば昨年はCloudburstでサンダーシートなど合唱では滅多に聴けない楽器と協演されていましたが、確かにコンクールの場でピアノ伴奏の曲は印象に無いかも。
それでも指揮者:伊東さんのご解釈とよどこんさんの演奏力で、これぞ決定版!というものを聴かせてもらえると期待しております。
ハンガリーの作曲家オルバーンの現代的な響きとリズム感を持つ「Stabat Mater(悲しみの聖母)」も、村田さんの「音楽性の豊かさと祈りの言葉の説得力との両立」「叙景から叙事へ大きく舵を切ったよどこんの音楽」と鋭い楽曲へのまなざしに惹きつけられました。
団員さんの「歌えば歌うほど表現を追求したくなる名曲」という声もあり、きっと強い説得力での演奏が聴けるのではと楽しみです。
75名と混声合唱部門だけではなく、この大会でも最大人数のよどこんさん。
しかし力で押し切るだけではなく、澄み切った繊細な表現も得意とされています。
課題曲、自由曲とも幅の広いダイナミクスから生まれる荘厳な表現に期待です!