観客賞スポットライト 混声合唱部門 最終回

 

なばなの里光のトンネル(桑名市)
提供:三重フォトギャラリー

 

 

 

津市の土曜日の天気予報は曇時々晴。
日曜日は雨時々曇だそうです。
折りたたみ傘が必要かも?

 


三重県の合唱団:ヴォーカルアンサンブル《EST》指揮者の向井先生もすべての団体を聴かれるそうです。良いホールだなぁ。

 

全国大会を支えてくださる三重県のみなさま、どうかよろしくお願いします!


10月27日から連載してきたこの企画も今日が最終回。
混声合唱部門、最後の2団体をご紹介します。

 

11.奈良県・関西支部代表

クール シェンヌ

https://twitter.com/choeur_chene

(混声38名・3年ぶりの出場・第50回大会以来20回目の出場)


2019年の観客賞では混声合唱部門、第1位。

 

課題曲G1、先唱から素晴らしくて!
フレーズの絡みも優れ、
音楽が順番に立ち昇ってきて
非常にポリフォニックに聞こえて
良かったですね。


自由曲の1曲目
Robert Schumann作曲
「Vier Doppelchörige Gesänge,
 Op. 141(4つの二重合唱曲op.141)」より
「3.Zuversicht(確かな期待)」は
二重合唱でも、
どちらの合唱も重厚でムラが無かった!


「4.Talisman(護符)」は
響きがヨーロッパ系の合唱団のような響き。
音の成り立ちが乱れないじゃないですか。
だからとても安心して聴ける。
シェンヌは気持ち良く聴けて
変なことしない!という
絶対の安心感があるから。


本当に素晴らしい!!
いつも思うのですが、作品そのもの、
楽譜の音そのものが持つ色彩を
しっかり引き出して実際の声として
聴き手に伝えてくれている気がします。
課題曲はもちろん自由曲も素敵でした。

……と、非常に好評でした。
「観客賞1位がシェンヌだということは日本の合唱界は『本物』を求めているということだよね」などという感想も。

 

統括マネージャーの山氏@安芸さんからメッセージをいただいています。

 

2020年はコロナでコンクール自体が中止、2021年は全国へは出場出来なかったので、こちらへの原稿も3年振りになりますね。
お久しぶりです、クール シェンヌです。
2019年の全国大会が地元の京都開催だったこともあり、県外遠征は今回が初体験となる学生団員も多く、この3年での団員の入れ替わりを感じました。
今回のオンステ人数は38名。内、学生団員は12名というフレッシュな構成でシェンヌの音楽をお届けします!

《課題曲》
課題曲は例年G1の選択が多いシェンヌとしては、2014年の「Nachtlied(M.Reger)」以来のG2となります。
Es ist verrathen(もうバレてるよ)は、E.ガイベルが作者不詳のスペインの詩をドイツ語に訳したものに、R.シューマンが曲をつけたもので、スペイン特有の3/4拍子で1拍目に強いアクセントがくる「ボレロ」のリズムを思わせる書法で書かれています。
本来カルテットの曲なため合唱で表現するのは非常に難しいのですが、今回は少しでも曲のあるべき姿へ近づく為に「カルテット×9組」のオーダーを作ってステージに配置。
各カルテット内でアンサンブルにチャレンジしています!
それぞれがソリストとして演じることが出来るでしょうか?実際の演奏をお楽しみに♪

《自由曲》
今回の自由曲は、昨年2021年にも自由曲に選曲したA.シェーンベルクの名作Friede auf Erden(地上の平和)。
昨年に引き続いての選曲というのはコンクールでは先ずあり得ないのでしょうが、「こんな時代だからこそ、この曲を全国の皆さんに聞いてもらいたい!」との想いで2年連続の選曲となりました。

Friede auf Erdenは、C.F.マイヤーが「ショアール・ファミリアンブラット」のクリスマス号に書いたクリスマスの詩にシェーンベルクが曲をつけたもので、詩の内容に合わせて大きく4段で構成されています。
第1段はキリスト教のクリスマス伝説にある平和のメッセージから始まり、第2段、第3段では、キリスト誕生後の世界史が戦争の時代であり、その中で正義と平和への希望が生き残ることが描かれ、最後の第4段で後世の平和が現実となることが描かれています。

曲は歌詞に合わせて、優しく調性的な箇所と、調性感が曖昧な表現主義的に、八分音符が激しく上下する荒々しく残忍な箇所とのはっきりとしたコントラストが特徴ですが、その中で何度も各段の最後には「Friede auf Erden」の言葉が歌われ、曲の理念を表します。
そして曲の最後の箇所では安定した調性に戻り、八分音符の上行音階で天への到達が表され、ffによるD-Dur(=神《Deus》を表す調)で曲は締めくくられます。

何度歌ってもその度に発見のあるこの曲。シェーンベルクが曲に込めた想いをシェンヌ団員一同表現できるように精一杯歌います♪

写真は、関西大会の後の記念写真。
皆の手の形は、「Chêneの"C"」です!

 

山氏さん、ありがとうございました。
課題曲の 「カルテット×9組」のオーダーを作ってステージに配置 に驚きました!
2番目に出場のGOUGEさんが草原の別れでパートをシャッフルした並びを予定しているそうですが、その目的とはまた違ったもので実に面白い。
「それぞれがソリストとして演じる」シェンヌのみなさんに注目ですね。

自由曲は「Friede auf Erden(地上の平和)」。
全国大会では過去に何団体も演奏された作品です。
1907年シェーンベルク33歳、シェーンベルク自身が語るには「まだ人々の和解が可能であると信じていた頃の作品」。
さらに完全な無調音楽へ移る以前、後期ロマン主義との間で揺れ動いていた頃に作曲された作品ということ。
山氏さんが書かれるように調性的な箇所と、調性感が曖昧な表現主義のコントラストを経て、フォルテッシモによるD-Durで「平和あれ、この地上に!」と高らかに謳われ、締めくくられます。
超難曲なのに、多くの団体が挑むのは和声、声楽的な難しさの奥に惹きつけて止まないもの、それはシェーンベルクの理想であったり、自身の音楽を確立させる前の熱い混沌が宿っているからかもしれません。
無調音楽の前、現代音楽としてのシェーンベルクか、それとも調性感のロマンチシズムを全面に出すか。
指揮者、合唱団によってこれほど印象が変わる作品も珍しい気が。

シェンヌさんはいつも作品に対して揺れず、王道を進もうとしています。
昨年と同じ作品をそれでも「こんな時代だからこそ、この曲を」と選ばれる強い想い。
平和を失う危うさを身近に感じるいま、シェンヌさんが精一杯に歌われる「平和あれ、この地上に!」をしっかり受け止めようと思います。

 

最後の団体は昨年もトリ!そして記念すべきキリ番というこの団体です!!


12.東京都・東京支部代表
Combinir di Corista

https://twitter.com/combinir

(混声38名・8大会連続出場・第61回大会から13回目の出場)


多様なレパートリー、すなわち「品揃え」にこだわり、コンビニエンスストアーにちなんで団名を「コンビーニ・ディ・コリスタ」とされた、通称コンビニさん。
昨年は指揮者の松村努先生が突然の不在というアクシデントにもかかわらず、混声合唱部門第1位の文部科学大臣賞(3大会連続)。
さらにカワイ賞、当ブログの観客賞混声部門第1位、全団体から選ばれる観客大賞も受賞。

 

課題曲G2 O salutaris Hostia、
正攻法でしたね。
ちょっと間を保つところも
指揮無しだけど
みなさんで共有して
全然ズレることなく。
場面転換も劇的で。
個人的にG2はこの演奏がベスト!


自由曲:三善晃
「やわらかいいのち三章」より
「2」「3」は
思春期の孤独や切迫感がひしひしと
伝わってきた。
「この曲の魅力を伝えます!」
そんな気迫さえ感じる演奏。
三善先生が聴かれていたら
嬉しかったんじゃないかな。


高校生になって初めて大学職場一般を聴いた。
コンビニもCAも、想像の遥か上を行く演奏だった。
曲が持ってる世界、
楽譜に書かれてる世界を飛び越えて
自分たちの世界を創って
聴き手を世界に引きずり込んでくる。
この世のものとは思えなかった。

……と「指揮者不在であの演奏はもはや伝説」とこの上ない賞賛。

 

コンビニ店員さんからメッセージをいただいています。

 

2日間のオオトリを拝命しましたCombinir di Corista、通称コンビニです。一年が経つのは早いもので、今年も全国大会の時分となりました。

2022年は久しぶりの定期演奏会に、Diamond Concert(松村先生が指揮する合唱団による合同演奏会、Verdi作曲"Requiem" 'Te deum'を演奏)と、濃い活動ができました。三重においてもコンビニの演奏をお楽しみ頂けましたら幸いです。

課題曲はG4「智慧の湖」を選びました。
一聴するとサラッとしすぎてしまうために、各団のテイストをより感じられる作品かと思います。コンビニでは情景描写を深めようと、店員プレゼンツ「『智慧の湖』展」を開催するなどの試みを...。
竹田城の雲海など現実的なものからAIが描く「智慧の湖」像まで、イメージが深まって仕上がりも上々です。もちろん、異なるリズム幅で'競演'するピアノも必聴の課題曲となっております。

自由曲には同時代を生きた2人の作曲家・Francis PoulencとFrank Martinのミサ曲より、第一曲'Kyrie'をそれぞれ演奏いたします。8分半を敢えて'Kyrie'のテキストのみで構成することで、サウンドスケープのように感じられることと存じます。

プーランクのKyrieは、フランスが誇る大家への挑戦(の第一歩)として選出いたしました。
'軽妙洒脱'と評される作風の通り、琉球音階にも通ずる五音音階での幕開けからメカニカルな旋律へとつながり、近代的なカテドラルを想起させます。フランスの遊び心に満ちた展開の連続をお楽しみください。

マルタンのKyrieは、最近のコンビニらしい叙情的な一面を魅せる作品です。
主旋律に多様な旋法が用いられるほか、序盤で鳴り続けるA音、クライマックスのFis音が通奏底音として機能し、古典的な教会の響きを作り出します。

三重県文化会館はよく響くそうですので、G4では超自然的な「智慧の湖」を、自由曲では教会に近い響きを感じて皆さんが二日間を終えられますよう頑張らせていただきます。

 

店員さん、ありがとうございました。
>店員プレゼンツ「『智慧の湖』展」 課題曲へのアプローチが面白いですね。
AIが描く「智慧の湖」像、なんて最新の流行に乗っていたり。

自由曲もプーランクとマルタンのKyrieというプログラミングが目を引き付けます。
こういう「表題は同じでも作曲家が違うステージ」は演奏会では割合見かけますが、コンクールではかなり難しい。
8分30秒に同テキストの2曲を盛り込み起伏を感じさせる選曲や、何より作品の歌い分けが至難の業。
さらに今回の選曲、どちらも名曲であり有名曲。つまり誤魔化しが効かない。
それでも「品揃え」にこだわるコンビニさんなら心配ご無用!
鮮やかに2つの作品の違い、店員さんが書かれるようにホールへ「近代的なカテドラルと古典的な教会の響き」を見事に現出させてくれることでしょう。

そうそう、余談ですが全日本合唱連盟ツイッターで。

 

「記念すべき6,000団体目の出演はCombinir di Corsita」!

2日間のオオトリで、さらに6,000団体目とは・・・。
これがテーマパークだったらステージに上がった瞬間「金賞おめでとうございます!」とメダルを掛けられ終了してしまうところですね。
コンクールで良かった(?)。

2日目、最後の出場団体前の会場は高揚感に満ち、ある指揮者氏によると「まず、ステージへ出た時に高温で天ぷら揚げたような音が拍手でするんよ!ジャーッ!!って」だそうです。
一昨年は大会自体が中止。
昨年のコンビニさん入場時は突然の松村先生ご不在により、私個人はそんなに大きく手を叩けなかったんですよね。
でも、今年は3年ぶりに迎える松村先生とコンビニさんの全国大会のステージ。
津に集まったみなさん、松村先生とコンビニさんを3年分の大きな拍手で出迎えましょう!

 

 

<ありがとうございました>

これで大学ユース、室内合唱、同声合唱、混声合唱部門、全43団体のご紹介を終わります。

今回も本当に多くの方にお世話になりました。
すべての合唱団のみなさまにお礼を申し上げるのはもちろんですが、メッセージをご寄稿して下さった方、団員さんをご紹介して下さった方、お写真を送って下さった方、各支部大会の選曲を教えて下さった方・・・などなど。
もう一度この場で、お名前だけを記して、この連載を終わりにしたいと思います。

都留文科大学合唱団Nさん。中央大学混声合唱こだま会森永淳一先生、Iさん。北海道大学合唱団Oさん。混声合唱団名古屋大学コール・グランツェKさん。関西学院グリークラブ部長森さん、Sさん。ジュニア&ユースコーラス"Raw-Ore" Hさん。酢だこ中川さん。湘南ユースクワイアIさん。愛媛大学合唱団山中さん、Iさん。九大混声合唱団Oさん、寺田有吾先生。エシュコルAさん。花凜歌上村先生。合唱団みなまた一期崎先生。弥生奏幻舎"R"松岡君、まぐろ君。女声合唱団 ゆめの缶詰阿久津さん。倉敷少年少女合唱団難波先生。女声合唱団ソレイユIさん。コールサルぜんぱくさん、Hさん。アンサンブルVine藤森さん。AF合唱団Iさん、石橋先生。男声合唱団Le Terreツイッター担当者さん。monosso山本さん、Tさん。VOCI BRILLANTI Kさん(もとOさん)。合唱団WAKAGE NO ITARI真下先生、Sさん。mokuméAさん。メンズ・ウィードSさん。La Pura FuenteSさん。合唱団Pálinka千葉先生、ツイッター担当者さん。合唱団 Le Grazie森さん。女声合唱団コール・ビビッドIさん。混声合唱団うたうたいツイッター担当者さん、役員一同様。THE GOUGE平田先生、藤嶋さん。VOCE ARMONICA黒川先生。scatola di voce ツイッター担当者さん、団長さん。合唱団ある小田さん。あい混声合唱団Kさん、Oさん。岡崎混声合唱団HBrさん。I.C.Chorale村上先生。グリーン・ウッド・ハーモニー瀬成田さん。淀川混声合唱団村田さん、Yさん。クール シェンヌ山氏さん。Combinir di CoristaEさん。女声合唱団フィオーリ中の人さん。合唱団お江戸コラリアーずIさん。緑フラウエンコール中の人さん。Nodaさん。鯖くん。めぐみーとさん。細てつさん。ken5さん。全日本合唱連盟中の人さん。合唱倉庫さん。

お名前が漏れていたり間違えた方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません。(こっそりコメント等で教えてください!)

他にもこのブログにスターを付けて下さった方、読者になって下さった方、ツイッターで「いいね」やリツイートをして下さったみなさま、Facebookで「いいね!」やシェアして下さったみなさま、感想を寄せて下さったみなさま、そして、読んで下さったみなさまに心から感謝を申し上げます。
それではみなさん津で会いましょう!

ありがとうございました!

 


(観客賞スポットライト2022 おわり)