声楽アンサンブルコンテスト全国大会配信感想・本戦

そして≪3月19日 本選≫の感想。

以下、本選を観た時のツイッターの感想をまとめてみました。
(アーカイブを視聴しなかったので、言及していない団体があります。
 団体への敬称も付けたり付けなかったり。
 また個人の勝手な感想をご容赦ください)

配信視聴者には当日のプログラムがわからないという状況。
 現地にいらっしゃる方々にプログラム画像を送っていただきました。感謝!
 できれば運営様、次回は配信視聴者にもご配慮いただければ幸いです)

 

 

トップバッターは奈良の畝傍高校。
朝10時なのにとんでもない音の鳴りと正確さ!
ペトル・エベンは運動性高く、大田桜子「桜の院」は日本的情緒の説得力。


季(とき)の音、ラインベルガーはまた高校生と違った豊潤な音があふれ出す。
ポジティヴオルガンとの相性も良いなあ。
静謐さと動的なものの対照。
ソリストも良く「音楽」を聴かせてくれた印象。


会津高校、ラインベルガーは主体的に、個々人が独唱者として音楽に関わっているのが伝わってくる。
(腕の大きな振りは気になるけど……)
熱い歌から、澄んだ印象になるのが素敵。
メンデルスゾーンの小品をこういう場で選曲できるのが良いなあ。
課題曲、ちょっと懐かしい。


郡山第一中はポジティヴオルガンとのラインベルガー。
心が洗われるとはこういうことか……。
演奏のどこにもハッタリや大きく見せることが無く、ただひたすらに美しい。
小針先生さすがでございます。
Benedictusの冒頭には涙腺が。


《EST》シンガーズ、大人であることの利点は何かと考えて、ESTさんの演奏からは「表現のパレットの多彩さ」が思いついた。
過去の幅広い演奏曲の経験から紡ぎ出される音の豊かさ。
それにウィテカーという選曲は最適だと思った。
声のリミットを上手く外せるということも含めて、これこそ大人の合唱!
山下祐加「ありがとうの花束」は選曲にちょっとだけ違和感だったかな。
これもまた大人としての幅かもしれないけれど。


不来方高は Josquin des Présで不意に涙が。
この曲の緊張が青春の刹那の輝きに重なったのだと思う。
モンテヴェルディも表現力豊かに。
思い返せば数十年前、最初に聴いたときの清楚な雰囲気な女声合唱から、ここまで印象が変わった団体は一般でも無いのでは。
校名は変えないで欲しいなあ。


ルックスエテルナ、ちょっと予選から緊張が緩んでしまったかな。
でも前に全日本の感想で出たように大人が15世紀、ルネサンス期の音楽を本気で追求しているというのは凄く良い趣味だと思うんですよね。
後半はリラックスが味になり、ルックスエテルナでしか出せない魅力が。


青森・沖舘中。
素晴らしいな、9人と思えない。
信長「なみだうた」、特に最終曲に洒落じゃないほど涙が・・・。


郡山第七中。
静謐な、午後の静かな部屋で雪の降る音を聴いているような空間。
高嶋みどり「露営のともしび」をこうも巧く歌われると、かつて一世を風靡した老練な演歌歌手の名曲を、天才少女があどけなくしかし美しく歌うような、別の魅力が出て。
三宅悠太「子守唄」でいかん、また涙が・・・


豊田市少年少女グレイス。
良い意味での弛緩が演奏に。
中高の常連校では「一音集中!」が目標になり、過度な緊張はそれが魅力でもあって。
しかし作品を通して緩急は必要だし、作品が求める以上のことをしてはいけないと思う。
その辺がこの団体は自然で心地良い。
選曲含め一番「コンサート」感がありました。

 


《審査員による順位について》

これ、そういう困った層がいるのも確かだけど、審査員が自分の審査結果や基準に言及しないのも一因のような。
上位数団体だけでも「なぜこの団体に高評価を付けたか」を審査員がちゃんと説明してくれれば、少しは減る気もします。

若い時なんて「自分の考えが絶対!」と思っているから、自分の基準と違う審査員の陰謀説等を唱えたりするけど(笑)。

昔、ずっとコンクールの審査基準が自分と合わないし、ハーモニー誌の演奏会評も合わないな~という先生がいらっしゃって。
ある日その先生たちのブログを見たら「他の審査員と自分の結果が違いすぎる。辛い」と書かれていて。
そして合わないと思いながらも、その先生の他の演奏会評をしばらく経って読み返すと、若いときの自分では気づかなかった音楽の側面に言及されていたり。
ご専門の分野からすると、なるほどこういう演奏には厳しくなってしまうのかなあと推測するようにもなったことがあり。


もちろん音楽の専門家だから全て言われたことを伏して敬うべし!とまでは言わないけど。
それでも専門家が長年学ばれてきたことや、音楽で大事に思われるのはそれぞれ違うということは、大切にしなければならないんじゃないかなあ。
自分と意見が違う人は、その意見の成り立ち、理由を学べるチャンスですよ!

 

 

《大人は中高生の合唱に「敵わない!」「泣いた!」だけで良いのだろうか?》

それにしても不来方、沖館、郡山第七の「涙腺刺激3団体」には参ったね。
素晴らしい!大肯定!は第一にあるけど、それでも大人として悔しいと思うのもあって。
「身長2メートル体重100キロのフルコン空手家に、一般人は勝てないでしょ。はい解散!」で終わらせるのは一般合唱愛好家としてどうなの?と。
もちろん筋力やスピード(音楽的基礎力)を高めるのは必要だけど、やはり2メートルには敵わないわけで。
じゃあ聴く人へ、他にアピールするのは何か?
自分たちだけの魅力はなんだろう?
これはコンクールに限らず、考えなければならないことなんでしょうね。

ESTさんの演奏の幅広さ、声の表現のリミットの上手い外し方。
ルックスエテルナさんの15世紀、ルネサンス期の音楽を長年追求されることから生み出される魅力。

一般合唱団が学生団体に敵うものは何だろう?
他に「なにわコラリアーズさんのような、演出付きのステージの洗練も学生団体には真似出来ないかも?」という意見もあり、なるほど、と。


それと同時に「泣けた!」という現象で、音楽を聴くことを放棄してしまっている自分にも反省。
アラを探すのでは無く、泣いてしまったがこの作品としてこの演奏はどうなの?と常に問う姿勢が大事なんだろうな。

 

 

 

 

清泉女学院。
耳を使った音の鳴りが素晴らしい団体。
配信でこれなんだから生で聴いていたらどれほどか(笑)。
Campanini「Sanctus」の躍動感。
ヤイロ「Northern Lights」の幻想的な音響。
Rold「Regina Coeli」の軽やかさと清純な魅力。
最初の横山潤子から通して、プログラミングに感心。


倉敷少年少女合唱団。
16人で3群最大12声部の鈴木輝昭作品を選ぶの頭おかしい(褒めてる)。
リズムを「渡り鳥」で発揮し、演奏の幅に広がりが。
そしてビーブル「Ave Maria」、Sancta Mariaへの輝き、そこまでの過程に思わず涙が(またか)。
個人的に金賞を差し上げます!


富山・砺波市立出町中。
こちらも9人とは思えない。
アンドリーセン、プーランク、音楽が真っ直ぐで好感を持ちます。
コチャール「CAT AND DOG」、可愛らしく楽しい曲をまさにそのように演奏。
この曲、聞き覚えがあるけどいつ聞いたんだっけなー。


岩手・黒沢尻北小学校。
最初から山男のヨーデル(若松正司編曲)という大技でノックアウト!
ヨーデルって小学生ができるものなの?!
そしてブリテンのドラマ性と展開に共感。
自分の音楽の好みが指揮の中野先生と気が合うのかな?
日本語で歌われるバルトークという懐かしいものも聴けて嬉しい。
この合唱団の団員さんは基礎から良い音楽を学ばれている気がします。


岩手・矢巾北中。
合唱だけじゃ無く礼儀作法なども徹底されているのかなあと勝手な印象。
Blochのミサ曲も真面目に誠実に。
Vincent d'Indy「Le bouquet de printemps」、良い曲で知れて良かった。
南部牛追歌は(おそらく)審査員・長谷川冴子先生のお父様編曲!


郡山高。
他の団体は圧倒されていたのに、郡山だけは聴き合い歌い合う、音楽の輪の中に入れてもらった気が。
ヴィクトリア、モンテヴェルディともに体温の熱さと自然な高揚がありました。
最後も愛唱曲の雰囲気があり素敵な時間。
彼ら彼女らはかけがえのない時間を生きているのだろうな、と長く画面に向かって拍手。


昨日のチーム江守さんもそうだったけど、全日本の配信とは違う横からのカメラアングルで、何度も岩岡ヒサエさんの名作合唱マンガ「オトノハコ」のラストの名シーンを思い出してしまって。

 

「ずっとこのメンバーで歌えたらいいのに」


……そんな想いが、とても伝わる大会でした。
1回は現地に行って聴いてみないとですね。



 

 

そして声楽アンサンブルコンテスト審査員・本山先生による本選出場団体への評。
基本的に肯定された上で、作品として成立するための具体的な要素を挙げられ、時にチクリと「いかがなものか」的に(京都人っぽく?)書かれる。
勉強になると同時に読み物として面白いです!

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