150人の『若者たち』 東西四連配信を聴こう!

 

 

 

関西学院グリークラブ

慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団

同志社グリークラブ

早稲田大学グリークラブ

 

東西四大学の男声合唱団が1年ごとに開催する通称「東西四連」。

今年は6月22日18時からすみだトリフォニーホールで行われたのですが、有り難くもライブ配信があり聴くことが出来ました。

 

※1週間のアーカイブ付き:6/28(土)まで購入可能(?)

 

 

 

■関西学院グリークラブ(32人)は広瀬康夫先生の指揮でシェーファー「Magic Songs」

練られた男声合唱の倍音が、呪術的な力を増しているような。

ただ、シェーファーの作品に限らず、こういう「演奏効果」を全面に出す曲が説得力を生む、生まないの違いは何か?

「音さがしの本」にもあったように、自分の身体と音の関係性、さまざまな音へ自身の記憶と感情を繋げる想像力の深さなのだろうか?

流麗さを重んじケレン味を抑える、良く練習を積んだ演奏でした。

 

 

■早稲田大学グリークラブ(46人)には驚いた!相澤直人先生の指揮で「夢の意味」。作曲家:上田真樹先生ご本人のピアノ。

ここ数年の印象とは違いフレーズの歌い込みが深く感じられる!ハーモニーの精度の高さや柔らかさ、弱音の表現も優れ、ところどころに優雅さが香る様は別団体のよう。

それでも最後はワセグリらしさが爆発!夢の世界から全身全霊で生きる意味を問う熱演!

これぞ大学男声を聴く、合唱の意味だよね~、と。

 

 

■同志社グリークラブ(37人)は多田武彦「雪と花火」を伊東恵司さんの指揮で。

「芥子と葉」からアタッカで入る最終曲の「花火」、触れそうに近いはずなのに遠い花火のような想い人。

そのかすかな煌めきに似たもの、尊い「わかいこころの孔雀球」を宿す同グリメンバーに重ねたのでしょうか。

伊東さんの眼差しは消えていく花火を見つめ、そして心の裡にそっと閉じ込めるようでした。

 

 

■慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団(35人)佐藤正浩先生の指揮で、福永陽一郎編曲「R・シュトラウス歌曲集」を。

(プログラムが公開されていないため演奏曲不明、残念です)

※6/27追記
1.「Heimliche Auffouderung(ひそやかな誘い)」 
2.「Wiegenlied(子守歌)」
3.「Cacilie(ツェツィーリエ)」 
4.「Morgen!(明日には!)」
5.「Fruhlingsfeier(春の祝祭)」


1990年第39回東西四連と同じ選曲、曲順のようでした

https://youtu.be/Pp9nsWoXaAg

 

素晴らしい!個々の歌唱の実力と合唱のバランスの見事さ。

華やか、ロマンティックな響き、若者らしい真摯さ……ワグネルが歌い奏でる様々な感情を、鮮やかに彩る前田勝則先生のピアノ。

この作品を何度もワグネルで取り上げた故・畑中良輔先生は「合唱を通じて世界の音楽に眼をひらいてほしい」と仰ったそうですが、まさに聴く自分もシュトラウスの歌曲という魅力的な世界に耳を啓かれた思いでした。

一時も気を逸らさせることなく、繰り広げられる世界に夢中になり。

最後の一音が鳴らされた後、思わず画面に拍手!いやぁ圧倒的でしたね・・・

 

 

合同合唱は信長貴富編曲「若者たち」昭和歌謡に見る4つの群像

 

 

アメリカがイランを爆撃し第三次世界大戦の始まりか、そんな緊迫した空気が漂う中で、150人の若者たちが歌う高石友也の「拝啓大統領殿」は、胸に深く染み入りました。

 

この「若者たち」の間に同じ信長先生作曲の「Fragments-特攻隊戦死者の手記による-」を挟んだ慶應ワグネル2年前のステージ。

 

2年前に聴いたときも当ブログで「すべての合唱を愛する人へ全力でお勧めします!」と書きましたが、ふたたび強くお勧めします。

 

アンコールは谷川俊太郎氏への追悼か、木下牧子先生作曲の「春に」

そして伊東恵司さん詩、信長貴富先生作曲の「響け、彼方へ」でした。

 

1952年に始まり、関東・関西の名門大学男声合唱団が一堂に会し、70年以上の歴史を重ねてきた「東西四連」。

今年の東西四連もその歴史と今を響かせ合い、各団体の音楽に込められた想いと緻密なアンサンブル、そして合同演奏の熱に触れると、男声合唱という文化の豊かさと奥行きを、あらためて実感させられます。

アーカイブ配信は6月28日(土)まで視聴可能とのこと(※購入要確認)。

この熱演をぜひ体験していただきたいと思います。