5年ぶりの原田慶太楼氏&東京混声合唱団の配信、めっちゃ良かったんです!
歌い手と客席を奮い立たせる全身での指揮は、画面越しでも熱量が伝わってきました。
アーカイブが3月15日まであるのでご視聴を強くお勧めします。
ちなみに5年前の原田慶太楼氏&東京混声合唱団時には「東混コン・コン・コンサートは絶対聴くべき!」という記事を書いております。
東京混声合唱団第270回定期演奏会
2026年2月27日(金)19:00開演(18:15開場)杉並公会堂大ホール
前半は邦人作品を並べて。
《牛になる事は―夏目漱石の書簡による―》
作詞:夏目漱石 作曲:小田実結子
こちらは1年以上先ですが…
— 小田実結子 Miyuko Oda (@composer_miyuko) 2024年12月19日
2026年2月27日(金)東京混声合唱団第270回定演にて《牛になる事はー夏目漱石の書簡によるー》を取り上げていただきます。松山東高校コーラス部からの委嘱作品。久々の再演楽しみです。指揮は原田慶太楼さん。杉並公会堂にて。YouTubeで初演公開中。https://t.co/pqZKZ0ErIl https://t.co/7oVeTLxzA7 pic.twitter.com/PgWHwzUcLo
5分に満たない小品ながら、深い味わいを持つ無伴奏混声作品。
49歳の漱石が24歳の芥川龍之介に宛てた書簡をテキストとし、年長者として助言したいが説教臭くなりたくない。
その絶妙な距離感を、漱石特有のユーモアで包み込んだ内容が面白い。
「馬では無く、牛になる事はどうしても必要。根気強く死ぬ迄押すのです。人間を押すのです……」
人生の真実を語りながら、決して重くならない。
小田実結子氏の作品は、この漱石の軽妙さと温かみを音楽化していました。
続いて三宅悠太「二つの理由」
新川和江の春の喜びを謳う詩「数えつくせない / この春ひらくつぼみの一りん一りんを」
ソプラノソリストの歌が合唱に受け継がれ、伸びやかに明るく広がっていく。
2曲目の谷川俊太郎詩「私が歌う理由」は、どうしても三善晃先生の同名曲を思い出してしまうが、落ち着いたテンポで別の世界を確立。
武満徹の「うた」も思わせる落ち着いたテンポで、原田氏のセンスも働き、スキャットやリズミカルな箇所が洒脱に響いていました。
続いての 混声合唱のための3つの禱歌《闇のなかの灯》 [2022年度東混委嘱作品]
作詩:村上昭夫 作曲:信長貴富
コロナ禍が酷いときに生まれた作品。
教会での賛美歌のような素朴な祈りのような歌。
それらのささやかな祈りや一粒の涙が3曲目の「ふと涙がこぼれる」で、一粒一粒の重さが一気に結実する
3曲目はコンクール自由曲としてもよく選ばれる作品だが、短縮版では無く、約7分のオリジナルだったのも有り難い。
この前半の邦人曲ステージ、原田氏の指揮は歌い手をリラックスさせながら適度な緊張を保ち、美しいカンタービレを引き出していた。
さらにどこか団員の間に「やってやろう!」というチャレンジングな空気が漂っているのも印象的。
配信という視聴環境のためか前半は丁寧でやや抑制された仕上がり、5年前の演奏会と比べると「東混の平常運転」の感じ。
しかしその予想は、後半で見事に覆される。
初見の方は後半から視聴するのも良いかもしれない。(アーカイブ配信はこういう時に良いですよね)

《Old American Songs》の3曲は、アメリカ民謡や労働歌を、同じくアメリカの作曲家:Aaron Coplandが編曲したもの。
このステージから、突き抜けるような明るさが!
〈THE BOATMEN’S DANCE〉
ミズーリ川の船頭の歌が元というこの作品は、労働歌としての力強さとリズミカルな歌の切り替わり。
〈SIMPLE GIFTS〉
シェーカー教徒の賛歌は軽やかに美しく。
〈I BOUGHT ME A CAT〉
猫、アヒル、ガチョウ、牛……と東混団員さんの鳴きマネとリズムの軽妙さが楽しい作品。
芸達者なソリストさんのモノマネに会場が沸きました!
アメリカの躍動、祈り、そしてユーモアという3つの表情を見せる選曲でしたね。
そしてお待ちかね、《黒人霊歌》のステージ。
黒人霊歌より
〈Soon Ah Will Be Done〉編曲:W. Dawson
〈My Soul’s Been Anchored in the Lord〉編曲:M. Hogan
〈Ain’-a That Good News!〉編曲:W. Dawson
〈Ezekiel Saw de Wheel〉編曲:W. Dawson
〈Ev’ry Time I Feel The Spirit〉編曲:W. Dawson
〈Deep River〉編曲:M. Hogan
〈The Battle of Jericho〉編曲:M. Hogan
このステージの感想は多くを書きません。
ぜひ、アーカイブを視聴し、1曲ごとに起こる熱い拍手と客席の熱狂を体験してほしい。
2曲目が終わった時点で客席があまりに盛り上がるものだから、原田氏が客席に
「……まだ準備体操したようなもんですから」と声かけをするほど(笑)
決めごとじゃ無い、生き生きとした、聴いている自分も動いてしまいそうなリズム。
一転、「Spirituals」と表されているのも納得の、魂そのものがぶつかってくるような熱さ。
原田慶太楼氏は〈The Battle of Jericho〉の前に、こんな話をされていた。
「僕は19歳でアメリカのジョージア州の大学に入ったら、100マイル四方にアジア人が自分しかいないような環境で。
そこでゴスペルの教会に通うようになって、賛美歌も歌いました。
黒人霊歌というと黒人の人たちの音楽というイメージが強いかもしれませんが、僕はそうは思っていません。誰が歌ってもいい曲だと思うんです。言葉がわからなくても、そこに込められているメッセージやハーモニーは、ちゃんと心に触れてくる。
歌詞の中には、平和だったり愛だったり、神様からの美しい贈り物みたいなものが入っているんじゃないかなと思うんです。
日本で英語の曲を歌うと『何をやっているんだろう』と思われるリスクもある。でも、その中には煌めきや気付きがあるし、美しいメロディを聴きながら、誰かの思い出につながる瞬間もある。そういうものを感じてもらえたら嬉しいですね。」
前述の
歌い手をリラックスさせながら適度に緊張を保ち、美しいカンタービレを引き出していた。
さらに、どこか「やってやろう!」というチャレンジングな空気が団員の間に流れている。
その空気が最も純粋に表れたのが、この黒人霊歌のステージだった。
アメリカの大学に通ったことがあり、今もアメリカ在住の原田氏には、まさに身体に染み込んだ音楽なのだろう。
優れた指揮者が振ると、東混が東混じゃなくなる……いや、違うな。
東混のポテンシャルが、ここまで引き出されるのか!と驚かされる演奏会だった。
アーカイブは3月15日まで、黒人霊歌のステージだけでも、ぜひ体験してほしい。
ホント強くお勧めしますよ!
演奏会の最後にもう一つ、忘れられない場面があった。
団員の佐々木武彦氏が定年退職とのことで、何度も丁寧に礼を重ねる姿にホロリ。
長年のご活躍、本当にお疲れ様でした。
さて、東混事務局さん!
原田慶太楼氏が人気指揮者なのは理解してますが、次回の共演は5年後とかじゃなく、ぜひもう少し早めにお願いします!