東京旅行記 その1「新宿・ベルク」

そんなわけで6月17日からの3日間、東京へ行ってきました。




飛行機はJAL。
羽田空港に着いてすぐ
目当ての川村記念美術館へ行こうと思ったのだけど
どうせ品川で乗り換えることを考え新宿へ向かう。



新宿東口から左へ歩いて15秒、ベルク。
15坪の小さな店。


好きなブログの書き手2人が
前からこの店をたいそう褒めていたので気になっていた。
そして最近店主のこの本を読んだのが決定打。


新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには? (P-Vine BOOks)

新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには? (P-Vine BOOks)



コーヒー、ビール、ワイン、日本酒などの飲み物、
パン、ベーコン、ソーセージ、野菜などの食べ物への姿勢はもちろん、
徹底している哲学になんてカッコイイ店だ!本だ!…と興奮。


接客を仕事とする人はもちろん、
人との係わり合いが仕事に含まれる人は是非とも読むべき本。


「店へ飲食物の持ち込みをする」という
最低の客への対応ひとつにとっても唸らせる。
その姿勢と哲学は大資本、大勢に流されずに立ち向かうもの
それも肩を怒らせたものではなくどこかに飄々とした空気があるのも良い。
読後に仕事をすること、生きることに何かしらの勇気を与えてくれる本。


これは是非とも行かねば!と思って願いがかなった。
午前9時半。
東口を出て、有料トイレを過ぎると蕎麦の出汁の匂いがぷんとする。
立食い蕎麦店の向かいにベルクはある。





店先に表示されているメニュー。・・・多いなあ。


入って飲み物で少し悩む。
でも好きなビール「エーデルピルス」(¥409)がある!
小腹が減ってるので何か食べたいところだ。
ソーセージ等は数分時間がかかるということで
すぐ出てくるという「ポーク・アスピック」(¥493)を。




ベルクはセルフサービスの店。
トータス松本を20歳ほど若くしたイケメンから
エーデルピルスを受け取り、その後にポーク・アスピックも。




うわ、予想以上にそれぞれのテーブルの間隔が狭く、
そのテーブル自体もごく小さい。
向かいに席はあるけれど
2人がそれぞれトレイを置いたらはみ出てしまいそう。


左隣はかっこいいおねーさんが文庫本を読みながらコーヒーを。
右隣は50代の女性が携帯をいじりながらアイスコーヒー。
・・・この時間帯じゃアルコールを飲む人いないのかなあ、と
思っていると生ハムが乗った皿を右手に、
生ビールを左手に持った老紳士が目の前を通っていく。
そうでなくっちゃ!


さて、エーデルピルスを・・・うーん、美味い!
グラスもキチンと洗って乾燥させているようで
飲んだ後の泡がちゃんと輪になって残る。
そしてポーク・アスピックを・・・おお、これも!
カリッと焼いて熱々のトーストに乗った豚肉、クリームが舌の上で溶ける。
いや、ホント美味しいよ、コレ。


「こだわりのナントカ」は宣伝文句として飽きるほど目にするけど
これはそのこだわりがちゃんと味として伝わる商品。
美味しいお酒に美味しい食べ物。
東京に来た緊張感がたちまちほどけていくのが分かる。








さらにラップサンド(キッパー・ヘリング
スモークした鰊と野菜のピクルスのサンドイッチ・¥367)と
日替わりの個性的な味の生ビールを頼み、店を眺める。
性別、年齢、おそらく職業もさまざまな人々が立ち寄り、
それぞれ好みの飲み物、食べ物を楽しみ、去っていく。


その多様性とスピード、まさに東京・新宿という街を象徴しているような。
しかし、それが心地良い。




↑の写真だけはベルクの本からの転載。
この店の雰囲気を伝える写真。



ベルクは現在、ルミネビル(JR東日本グループ)から
立ち退きを迫られている。
新しい短期契約に応じないとなんと1000万の家賃値上げ。


ファッションビルとしてベルクがふさわしくない、というのが
ルミネ側の主張らしいのだけど
この場所で40年、この業務形態で20年続いたベルクは
あんまりこういう言葉は使いたくないけど
「文化」という言葉が似合う店。
無くして欲しくないなあ・・・。


かつての「美味しんぼ」方式でドイツのお偉いさんを
「美味しいソーセージがあるんですよ」とベルクへ連れてきて
「こんなファストフードのような店に?」と訝しげにされた後
実際食べてもらって「!」となる様子を取材するというのはどうだ?!


・・・ドイツのお偉いさんにツテがある人募集。



ベルクHP
http://www.berg.jp/index.htm


ベルク応援ブログ
LOVE! BERG! 〜ビア&カフェ「ベルク」を応援しよう〜
http://ameblo.jp/love-berg?sess=e520fb64abc14163d05e563d5d7289eb



そうそう。知性ってなんだ、頭の良さってなんだ、と
時々考える私にとって
ベルクの本の「色眼鏡を外したい」と題された章で、
著者の井野氏が記した文には「お!」と感じた。引こう。

(前略)私たち人間は、何らかの色眼鏡をかけなければ、
お互いのことが見れません。
でも、色眼鏡を完全に外すことはできなくても、
色眼鏡をかけ直さざるをえない瞬間ってあるじゃないですか。
それが人生の醍醐味のような気がするのです。(中略)
 色眼鏡をかけ直す瞬間。
「かけ直す」とあえていうのは、
外したつもりでも、別の色眼鏡をかけているからです。
どんな色眼鏡をかけて見られようと、
そこからはみ出るのが人間です。
 だから見る方も、
色眼鏡を「かけ直さざるを得ない」瞬間があるのです。
知性って、知識があるとか勉強ができるということではなくて、
そのようにものの見方を変えたり変えさせたりすることだと思うのです。
(後略)




エスプレッソ(¥210)もホント旨い。
東京にまた来たときにはまずベルクに寄るつもり。
だから、だから無くなりませんように!!