クール シェンヌ第18回演奏会のお知らせ

 



「珠玉のハーモニー」CDでも大トリとして、一番最後に収録されたクール シェンヌさん。
12月末に第18回となる演奏会を開催されるということ。





クール シェンヌ第18回演奏会

日時:2020.12.27(日)
15:00開演(14:00開場)

場所:DMG MORIやまと郡山城ホール

 

 

チケット料金:一般 2,000円 学生 1,000円
 http://chene.jp/ticket.html

(チケットはPassMarketでの「QRコードチケット」のみの販売で、紙のチケットや当日券の販売はございません)




【演奏曲目】
※演奏曲目は変更の可能性があります

Komm, Jesu, komm BWV 229 J.S.Bach
Warum ist das Licht gegeben dem Mühseligen Op.74-1 J.Brahms
Friede auf Erden Op.13 A.Schönberg
Nänie Op.82 J.Brahms
くちびるに歌を(混声合唱とピアノのための「くちびるに歌を」から) 信長貴富

主催:クール シェンヌ http://chene.jp/



バッハ、ブラームスのモテット、「哀悼歌」、そしてシェーンベルク「地上の平和」に信長「くちびる」。
まさに王道を行く印象の選曲です。

さらにクール シェンヌFacebookでは演奏曲の紹介も!
確かにこの記事を読んでから演奏会へ伺うとより楽しめそうです。



《カウントダウン企画~演奏曲のご紹介~【その(1)】》
今回から、シェンヌが第18回演奏会で演奏します曲のご紹介をして参ります。
曲の背景を知ってから演奏を聴いて頂くと更にお楽しみ頂けるかも!

 

 



コロナウイルス対策としてもチケットをはじめ、考えうる限りの対策を考えておられるようです。


【新型コロナウイルス対策について】
 クールシェンヌでは、政府及び地方自治体の方針を踏まえ、全日本合唱連盟、及びホールのガイドラインに沿うとともに、最大限の感染予防と拡大防止のための対策を実施した上で主催公演を開催しております。ご来場を予定されているお客様におかれましては、「マスク着用・咳エチケット」「こまめな手洗い・手指消毒」「物理的身体的距離の確保(最低1メートル)」などご留意いただきますようお願いいたします。
 ホールまで足をお運びくださるお客様に安心して演奏会をお聴きいただけるよう、細心の注意と対策を講じた上で、厳重な安全確保に努めます。何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

《お客様へのお願い》
1.新型コロナウイルス感染症を示唆する発熱や咳などの症状がある方はご来場をお控えください。
2.「マスク着用」にてご入場、ご鑑賞をお願いいたします。
3.「物理的身体的距離(最低1メートル)」を保っていただきますようご協力をお願いいたします。
4.感染者が発生した場合、チケットご購入者様の個人情報は、必要に応じて保健所等の公的機関へ提供させていただきます。


《会場での感染症対策について》
ご来場を予定されているお客様にはご不便をお掛けいたしますが、感染予防のため、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
1.ご来場時の混雑緩和のため、開演1時間前から開場いたします。
2.非接触型の体温計でホール入口にて計測いたしますのでご協力をお願いいたします。お早目のご来場をお願いいたします。
※計測の結果、平熱と比べて高い発熱があることが計測された方や37.5度以上の発熱があった方は、ご入場をお断りいたします。あらかじめご了承のほどお願い申し上げます。
3.プログラムの手渡しは行いません。
※所定の場所からご自身でお持ちください。
4.スタッフは全員、マスクを着用いたします。
※主催者のチケット窓口、受付でお客様と接するスタッフは、マスクを着用してご案内と対応をさせていただきます。
5.客席、ホワイエ等でのご歓談、お客様同士の近距離での会話はお控えくださいますようお願いいたします。
6.「ブラボー」などの掛け声は禁止とさせていただきます。
7.終演後は、アナウンスに従って退出していただけますようご協力をお願いいたします。退場時は密集しないよう、物理的身体的距離を考慮し、適度な距離(最低1メートル) を保ってご退場ください。
8.終演後の団員によるロビーでのご挨拶は行いませんのでご了承願います。
9.団員および団へのプレゼントや差し入れの受け取りは辞退させていただき、会場での預かりブースは設置いたしません。


※チケット購入後やむを得ずキャンセルする場合は、お手数ですが問い合わせ先(藤下)までお問い合わせください。
TEL : 080-2514-0207
FAX : 0744-46-4372
MAIL : webmaster@chene.jp

 

 

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いろいろあった今年を締めくくる意味でも、シェンヌさんの演奏会へ行き、合唱の本質と魅力を味わうのも良いかもしれません。
良い演奏会になることを願っています!

鶴岡土曜会混声合唱団第69回定期演奏会のお知らせ



「珠玉のハーモニー」Vol.10にも収録された鶴岡土曜会混声合唱団さん。
作品に対する真摯な姿勢が魅力の団体です。

当ブログでも「作品そのものが立ちあがる 鶴岡土曜会混声合唱団さん」として記事にしています。




毎年、全国大会の前後に演奏会を開催される団体なのですが、今年は全国大会は無いものの、11月28日(土) に第69回定期演奏会を開催されるそうです。

 


鶴岡土曜会混声合唱団第69回定期演奏会

日時:2020年11月28日(土) 
開場 18:15
開演 19:00

会場:荘銀タクト鶴岡

 


1ステ:「Sicut cervus」や「O vos omnes」など、ヨーロッパの宗教曲
2ステ:「水のいのち」全曲
3ステ:「ジグザグな屋根の下で」など、信長先生の作品を中心に といった内容の予定です。

 

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フライヤーを読むとさまざまな感染症対策に加え、「過去2週間以内に感染拡大地域への訪問歴のある方は、ご来場をお控えください」とされていますので、なかなか「多くの方に来て欲しい演奏会です」とは書けないのですが。
それでも、考えうる対策をしっかりされた上で、前へ進もうとされる鶴岡土曜会混声合唱団のみなさんを応援します!

 

 

2つの演奏会のお知らせ

 




このコロナ禍でも感染に十分注意しながら演奏会を開催する団体があります。
どちらもライブ配信、そしてアーカイブ(録画)が観れる、私のような地方在住には嬉しい演奏会。




東京混声合唱団第253回定期演奏会

2020年10月24日(土)


開場14:30 開演:15:00


会場:東京文化会館小ホール


三ツ橋敬子先生の指揮の東京混声を聴くのは初めてなのがまず楽しみだし。
信長貴富先生新編曲のフォーレ・レクイエムも楽しみだし。
そして林光「黒い歌」!!
これ、今でも耳を惹きつける魅力がある名曲だと思うんですが、アマチュアには相当難易度が高い曲なんですよ・・・。
プロフェッショナルが余裕を見せる演奏を期待しちゃいます。

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こちらも配信チケット1500円。
アーカイブは1週間だそうです。

 

 

↓ のツイートに購入方法が詳しく。

 

 

 

ふたつめは和歌山県で意欲的な活動をされている

 

アンサンブル・ミカニエ第13回定期演奏会

2020年10月25日(日)

 

開場16:30 開演17:00

会場:ザ・フェニックスホール


指揮者に伊東恵司さん、阪本健悟さん。

さらにピアニストに千原英喜先生、松本望先生。

委嘱初演も行うという豪華な演奏会!


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4Kカメラ5台で本格ライブ配信とのこと。

 

mikanier.stores.jp

チケット1500円は ↑のHPから購入できるようです。


どちらの演奏会も実際に伺うこと、ライブ配信視聴も難しいのですが、アーカイブを楽しませていただきます!

 

 

 

歌のある空間を求めて 千葉大学合唱団さん





1987年の冬、全国大会上位入賞団体の番組がNHKラジオで放送された。
初めて聴く名、「千葉大学合唱団」。

衝撃だった。
単純な技術の巧拙とは違う次元、大げさに言えば、そこに世界があった。
「夜のうた」という題、暗闇の底から祈るような、目を閉じた瞬間ふっと香水を嗅ぐような。
高みに向かうと思えばたゆたい、ひそやかに、そしてときに華やかに奏でられるピアノと絡む合唱。
変幻自在に繰り広げられるフランス音楽に、どこか大人の匂いも感じ。

「こんな合唱曲があるのか!」と札幌の高校生は驚き、何度も繰り返し聴き込んだ。
千葉大学合唱団、栗山文昭の名前は、そこで刻み込まれた。


今回、この「珠玉のハーモニー」企画が「平成(+α)の大学職場一般部門」となっているのは、私が「どうしても昭和の千葉大学合唱団の演奏を入れて欲しい!」とワガママを言ったからである。
それが無かったらブレーンさんも「平成!」と(+α)無しで銘打てたわけである。
ブレーン担当者:原さんへのメールで「私は最低、87年の千葉大学の自由曲が残れば良いので!それさえ残っていれば、あとはぜんぱくさん推しの演奏ばかりでも文句は言いません!」とまで書いた。
(その後、ぜんぱくさん推しの演奏に文句はさんざん言った。ごめんなさい)


「夜のうた(Le chant de la nuit)Op.120」は、1870年フランス生まれの作曲家:Florent Schmitt(フローラン・シュミット)が1951年に作曲された作品。
副題に「Ode à Frédéric Chopin,op.120(フリードリック ショパンに寄すオード)」と付けられたように、ショパン没後100年を記念して作曲されたものであり、ショパン:ノクターン第13番ハ短調Op.48-1からの引用が随所に認められる。

作詩はあの有名な哲学者:Frédéric Nietzsche(フリードリヒ・ニーチェ)の言葉を、伝記作家:Guy de Pourtalès(ギー・ド・プルタレス)がフランス語へ訳したもの。
フランス語に堪能ではない自分には意味がつかめず。


「珠玉のハーモニー」発売をきっかけに合唱団響団員:高田さんから当時、千葉大学合唱団に在団されていた方をご紹介していただいた。
高田さんに多大なる感謝を!

元・千葉大学合唱団員「ちよ」さんによると、この詩はニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」第2部の冒頭なのだという。



夜はきた。すべてのほとばしる泉はいまその声を高めて語る。わたしの魂もまた、ほとばしる泉である。
夜はきた。すべての愛する者の歌はいまようやく目ざめる。わたしの魂もまた愛する者の歌である。
鎮まることのない、鎮めることもできないものが、わたしのなかにあって、声をあげようとする。愛したい、とはげしく求める念がわたしのなかにあって、それ自身が愛のことばとなる。わたしは光なのだ。夜であればいいのに! この身が光を放ち、光をめぐらしているということ、これが私の孤独なのだ。

(「ツァラトゥストラはこう言った」より 氷上英廣 訳)



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※ちよさんから、当時の対訳・発音資料もお送りいただきました。



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この曲を想うと、艶やかで真っ暗な夜の闇と銀色のしぶきをほとばしらせている噴水が脳裏に浮かびます。
歌詞がフランス語。
その発音が難しくてとても苦労しました。
特に覚えているのがJaillisantes (噴出する)という単語。
フランス語特有の鼻にかかる鼻母音、空気を含ませた摩擦音とともに発音する半母音。
それを噴水のイメージで。
やってもやってもOKがもらえなくて・・・。

フランス語をご指導くださったのは、当時千葉大で一般教養のフランス語を担当していたガブリエル=メランベルジェ先生。
たまたまお願いして来ていただいたのですが、実は音楽にとても理解があり、歌って美しく聞こえるフランス語を根気よくご指導くださる、私達には大正解の先生でした。
栗山先生ともすっかり意気投合して、その後合唱団OMPでもご指導いただきました。

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同じく、当時在団されていた中嶋美穂さんによると


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フランス語には初挑戦で、メランベルジェ先生にいらしていただいてフランス語の特訓をしました。
メラン先生のパワフルかつ笑いの絶えないレッスンで、私達はフランス語の作品がますます好きになりました。
栗山先生もフランス語が千葉大に合っていると思われたのでしょう。
その後も数年間はフランス語の作品が続いたと記憶しています。
ニーチェの詩は難解で、シュミットの音楽も夜のように正体無い感じで、初めはとっつきにくかった印象があります。
栗山先生からは、(もともとよく言われていたのですが)「お前らはみんなグンゼのパンツを履いている!」と揶揄され、表現の稚拙さを思い知らされながら悪戦苦闘したことを覚えています。
ピアノの田中瑤子先生が見るに見かねて、私達4年生を呼んで、優しくかつ厳しい言葉で𠮟咤し励ましてくださいました。
瑤子先生が真摯に不甲斐ない若者達と向かい合ってくださったことに感謝しています。

* * * * * * * * * *


「グンゼのパンツ」!
なるほど、演奏から当時感じた「大人の匂い」は栗山先生のこういう言葉からもわかります。
そして名ピアニスト:田中瑤子先生のエピソード。
中嶋さんが語られたように、団員さんへ対し、厳しくも優しいお人柄が感じられますが。
ふたたび、ちよさんによると



* * * * * * * * * *

瑤子先生。
そうなんです、叱咤激励、容赦なく(笑)。
学生にとっては、実はちょっと怖い。
でもとっても可愛らしい一面もあり、、、。
私たちにとっても、栗山先生にとっても単にピアニストにとどまらない大きな存在だったと思います。


千葉大は、当時ぐんぐん力をつけていましたが、吉村信良先生率いる王者、京都産業大学グリークラブさんに一歩及ばず長らく銀賞に甘んじていました。
東京(関東)で開かれる40回記念大会。
大会実行委員長は我らが栗山先生。
ピアニストに田中瑤子先生を擁し、いつにもまして、今年こそはという思いが強かったと思います。
そんな中で、大会前日、実行委員長で多忙を極めた栗山先生が倒れ、東京医科大へ救急搬送されたのです。
先生の容態はどうなのか。
栗山先生の代わりに学指揮が振ることになるかも。
最後の仕上げとなるべき練習が終始不安で落ち着かないまま終了しました。

そんな私たちに向かって瑤子先生がおっしゃいました。
「栗山先生は大丈夫。きっと来ます。でも、万一来られないとしても 私達だけでがんばりましょう。」
いつも、静かに陰で支えてくださっていた瑤子先生が、この時は前に出て私たちを奮い立たせてくださいました。
その言葉がとても心強くありがたかったことを覚えています。

本番当日。
栗山先生は奇跡的にいらっしゃいました。
一緒に舞台に立てているというだけで幸せ。
多分満足のいく演奏ができたと思うのですが、私の記憶の中ではなぜか前日のことばかりで・・・。

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あの演奏にそんなエピソードがあったとは!
ブレーンさんHPの1987年第40回大会のプログラムによれば。


栗山先生は大学の部:千葉大学合唱団さんの他に、次の日の一般の部A部門で「宇都宮ジンガメルアカデミー」さん、一般の部B部門で「合唱団OMP」さんと計3団体にご出場。
その上、大会の実行委員長を務められたのでしたら、さぞかし激務だったことでしょう。
ちなみに宇都宮ジンガメルアカデミーさんは20秒オーバーで失格。
OMPさんはコンクール大賞を受賞されました。
コンクール大賞も当時にしかない賞ですね。
当時は高校部門も同じ場所での連日開催だったので、高校・大学・職場・一般の全部門でもっとも優れた団体へ贈られる賞でした。


ちよさんのお話はこう続きます。


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そして、また金には手が届きませんでした。
でもそんなことは小さなことですね。
千葉大が初めて金賞を受賞するのは、その3年後です。

 

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※パートリーダーさんのお言葉。
演奏へ懸ける意気込みが伝わってきます。
「当時はガリ版を切って輪転機で刷って作ってました」とのこと。
団員数は80人から90人くらいだったそう。




ひとつおまけ。
瑤子先生が大会を通じての(サプライズの?)特別賞「フレデリック・ショパン賞」を受賞されました。
瑤子先生は一般の部B部門でコンクール大賞を受賞した合唱団OMPでも弾いていらっしゃいます。
(実は私もこの時、OMPの一員で出演しました)
その時の賞の名前が OMPの演奏した「海」ではなく、千葉大の「夜のうた」に由来している(と思われる)ことがちょっと誇らしかったりして・・・。

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当時は金賞団体が1団体だけだったのですよね。
さらにそんな特別賞があったとは。
ピアニストにも光を与える賞、再開すれば良いのになあ。

ちよさん、中嶋さん、大変貴重なエピソードを本当にありがとうございました。


いま改めて「夜のうた」楽譜を眺めながら聴くと、自在なテンポ感と、ぜんぱくさんが書かれたように、栗山先生の優れた構成力と音楽性が感じられます。
その音楽の説得力、音楽だけではなく大学生の年齢を超え「大人」を匂わせる世界に、33年前と変わらず心が震えました。


千葉大学合唱団さんとはその後、「本家マザーグースのうた」CDを回数が忘れるほど聴き返し。
(黒テントの役者さんが出演されたこのCDは、音楽劇としても実に楽しく秀逸なもの。現在も十分聴く価値があるCDだと思います)
音楽監督の座を栗山先生から佐藤洋人先生に譲られての現在は、YouTubeで演奏を楽しませていただいています。

 

 



千葉大学合唱団さんは演奏にも影響されましたが、栗山先生のお言葉も心に強く残っていて。
この記事の題「歌のある空間を求めて」は1988年ハーモニー誌春号で、千葉大学合唱団さんを取材された記事のものを使わせていただきました。


記事中の栗山先生のお言葉。


「たとえば好きな子の家に電話をしたとして、いくら待っても相手が出ないとする。
 その取り上げられなかった受話器と、どこかにいる相手との間にある空間、そこに歌があるんだよ。
 そういう歌のある空間を一人一人が持ってもらいたいんだな」


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携帯電話が普及した今、栗山先生の言葉は力を失ってしまったか? いや、そんなことは決して無いはず。
1987年、ラジオから録音したカセットテープに手書きで「夜のうた 千葉大学合唱団」と記してから33年。
今、手元にはその団体と曲名が、活字で記されたCDがある。
この感慨と喜びは到底伝えきれない。

札幌と千葉、1987年と2020年という離れた空間と時間。
栗山先生が仰られたように、確かにそこには「歌」があったと思う。
想いかえせばそれは、とても幸せなものだったと。



 




千葉大学合唱団さんの演奏は「珠玉のハーモニーVol.6」に収録されています。

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www.brain-shop.net

お詫びと「全国大会思い出の座談会」

 

 


本日、千葉大学合唱団さんの記事を上げる予定だったのですが、申し訳ございません。
どうしても間に合わず・・・。
10月18日に上げられるよう、精一杯努めます。

今回は「珠玉のハーモニー」企画に関連して当ブログで6年前に行った、ぜんぱくさん、MODOKI指揮者:山本さん、私による全国大会思い出の座談会をご紹介します。
全3回。後の「珠玉のハーモニー」収録曲にも関わる発言が多いものです。
時代の流れや、各人の合唱演奏に対する見方の違いを楽しんでいただければ、と思います。

 

 



「初めての全国大会」



「泣けてしまった演奏」



「時代の流れによる選曲の変化」

 

合唱界のアイドル 枝幸ジュニア合唱団



合唱界のアイドルって言えば?
いや、冬月みぃなさんという人もいるけど、個人じゃなく、団体だったら?


いたんです、そういう団体が。
その名も「枝幸ジュニア合唱団」。

かつて全国大会の会場で知人の女性が言いました。

 「…なんかさあ、枝幸ジュニアが出てきたり、
  演奏終わって席に戻ったりすると、
  周りのオジサンたち騒ぐんだよねえ、ざわざわっと!」

・・・はい、騒いではいないけど、ついつい目が行ってしまったオジサンのひとりです。


なぜアイドルと呼ぶにふさわしいか?
オジサンおねえさんばかりの一般の団体に混じって、下が中学生から上は高校生までという年代の若さもあるし。
北海道の北部、人口8千人の枝幸(えさし)町からやってきた少女たちの、一生懸命で健気な姿が理由かもしれません。

 

 

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2002年びわ湖ホールでの全国大会。
この年の文部科学大臣賞(1位)を受賞されたのは、68名のGaia Philharmonic Choirさん。
枝幸ジュニアさんと同じ「珠玉のハーモニーVol.7」に収録されています。
凄まじい、と表現するしかない圧倒的な迫力のS.Barber「Agnus Dei」。
審査員の浅井敬壹先生は「音楽はこれほど人に感動を与えるのかという、言葉にならない驚きを感じる演奏」。
関屋晋先生は「ぼくのメモにはただ「スゲエ」と書いてある(笑)。ぼくはもうコンクールに出るとは思わないけど、これに抜かれたままでは死ねないね(笑)」とまで言わせた演奏でした。

Gaiaさんを聴いてしまった後ではどの団体もかすんでしまう…と思わせるもの。
その4つ後の出番。
黒のジャンパースカートの33名、一般Bグループで最少人数の少女たちが、Gaiaさんの印象に勝るとも劣らないものを与えたのです。


課題曲F2のコダーイから一点の曇りもない清楚でクリスタルな声。
自然で広がりもあり、しかもとても高い位置で響き。
乱れのないピッチとパート間の音程感覚の良さ。

そして収録されている自由曲のJ.Busto「Magnificat」。
優れたアンサンブル感。
旋律、特にグレゴリアン・チャントの流麗さは驚くばかりです。
てらいのない、清冽な美しい音楽。
いま見返したところ、感想メモには大きく「ステキ!」って書いていて。


隣に座っていた女性は聴き終わって大きく拍手した後

「…ヨーロッパの高原にいるみたい・・・」

と感じ入った声でつぶやいていました。
北海道の初夏のように爽やかな季節。
心地良い風に吹かれた瞬間を思わせる、掛け値なしに素晴らしい演奏。
枝幸ジュニアさんはこの大会で金賞第3位を受賞されたのですが、第2位はあの「なにわコラリアーズさん」だったので、その評価の高さもわかっていただけるでしょうか。

なにわコラリアーズ指揮者:伊東恵司さんは、当ブログ2014年、全国大会での名演奏をひとつ選んでいただく企画「思い出の全日本合唱コンクール名演奏」でこう答えられていました。
(「前略」の部分も非常に示唆に富み、素晴らしい内容なのですが、リンク先でご確認お願いします)

 


「思い出の全日本合唱コンクール名演奏:伊東恵司先生」


(前略)
しかし、文吾さんのせっかくの企画ですので
斜に構えず、謙虚に1演奏を選びます。
「びわ湖ホール」でのコンクールです。
客席で「枝幸ジュニア合唱団」の演奏を聞いて
目が覚めました(笑)。
コンクール的にぎらぎらした感じでなく、
その美しさ、純粋さ、やさしさに逆に度肝を抜かれました。
私はそのまま終演後に自分に与えられたメダルももらわず、
初対面になる指揮者の藤岡直美先生のもとに
不審者のように駆け寄り(本当に人ごみをすり抜けて走った)、
いきなり「ぜひ私に練習見学をさせてください」と言いました。
ちょうどジュニアの指導を始めていたあたりでもありましたが、
不意打ちを食らったような名演奏なのでした。
それから10数年。
藤岡先生とその子どもたち(だったレディー+後輩)のために
こんな曲が出来ています。

 http://www.panamusica.co.jp/ja/product/16562/

 



また、伊東さんからはみなづきみのり名義でこんな詩も贈られています。

「めっせーじ なおみ先生とたくさんの赤い頬へ」

 



アイドルにふさわしい、応援したくなる理由は、枝幸ジュニアさんの成り立ちにもあります。
2001年6月に結成した枝幸ジュニアさんの母体は、枝幸中学校の合唱部。
この町出身の藤岡直美先生が指揮者。
団員さんに「第二の母」と慕われる先生です。
次の年、2003年全国大会のプロフィールにはこんなことが書かれていました。

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一般B-13 枝幸ジュニア合唱団(北海道)

 今年4月、私たちの第二の母は
遠く岩見沢市に転勤となり、
枝幸中合唱部とともに
大きな不安を抱える日々が始まりました。
月1回の先生の指導日を目標に、
すべて自分たちで練習をしてきました。
夏休みは早朝アルバイト等をし、
枝幸中合唱部遠征や岩見沢に行き、
パワーをつけました。
私たちにはいつも応援してくれる父母会や
見守ってくれる町の方々がいます。
今日この舞台に立てることも含め、
すばらしい“時”を過ごせることに感謝し、
これからもがんばります。
人口7,000人の枝幸だからできたこと、
枝幸中卒業生の先生に出会えたこと、
千歳空港まで7時間かかるけれど、
私たちは町が好きです。
昨年とは一味違う成長した私たちをごらんください。


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枝幸ジュニアさんはこの年も見事金賞で、その表彰式でのエピソード。

金賞受賞団体は団員2人が指揮者の先生と壇上に並び、客席に向かって賞状とメダルを見せるのが常ですよね。
枝幸ジュニア:藤岡先生と団員さん2人も並びます。
職場や一般団体は、客席から「バンザーイ!」などと言うのですが。
客席の枝幸ジュニア団員さんたちは壇上へ向かい声を揃えて

「ありがとうございました!」

うんうん、これは去年と同じ。
グッドマナー!と思ったら言った後すぐに

「藤岡先生、大好きです!!」…と。

えっ、と驚く藤岡先生。
一瞬後に目が潤み、手を瞼のほうへ・・・
その姿を見ながら自分の目も、つい潤んでしまいました。

ちなみに北海道ローカルで枝幸ジュニアさんのドキュメンタリーが放送されて。
(ガリッと氏による感想ページ)


私も実家からビデオテープを送ってもらい、観ることが出来ました。
ビデオを観ながら、全国大会のあの表彰式を思い出し。
遠く離れていても繋がる絆、そして愛情というものに思いを馳せてしまう情景でした。

 

 

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枝幸ジュニアさんは平成17年に団名を「ウィステリア アンサンブル」と変え、今も全国大会の常連団体として活躍されています。
団員さんも枝幸町だけではなく、藤岡先生がそれぞれ教えられた岩見沢、札幌の元生徒さんもいらっしゃるそうです。

 

 

「ウィスティリア」とは、「藤の花」を意味し、指揮者 藤岡先生のもとで育った子どもたちの輪が、合唱を通して深く繋がり、末永く先生のもとで歌えますようにとの願いが込められている。
(東京国際合唱コンクール団体紹介ページより)
https://www.ticctokyo.icot.or.jp/Choir/96/jp

 

  

 

年月が経ち、少女から立派なレディに成長された元・枝幸ジュニアのみなさん。
ちなみに珠玉のハーモニーVol.6に収録されている、大谷短期大学輪声会さんの自由曲と同じなのですが、細かな違いはあるものの、その凛とした音に共通するものを感じた方が多いのでは。


実は指揮者の藤岡先生は輪声会さんで、宍戸悟朗先生の薫陶を受けられた方。
枝幸ジュニアさん、ウィステリア アンサンブルさんにも、藤岡先生の影響で教職を目指したり、地元の枝幸で社会人として合唱団に関わろうとする方がいらっしゃると聞きました。

 


宍戸先生から藤岡先生、そしてその教え子たちへ・・・。
優れた指導者が蒔いた合唱の種は、こうして育っているのです。



 

 

 


枝幸ジュニア合唱団さんの演奏は「珠玉のハーモニーVol.7」に収録されています。

 

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(次回「●歌のある空間を求めて 千葉大学合唱団さん」 10月14日更新予定です

※大変申し訳ございません。

10月18日更新予定となります。

 

 

 

 

作品そのものが立ちあがる 鶴岡土曜会混声合唱団さん





2017年東京芸術劇場で行われた、第70回全日本合唱コンクール全国大会。

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東京芸術劇場





課題曲G3に三善晃先生の「子どもは……」が選ばれていたんですが、混声合唱部門、54名で出場される鶴岡土曜会混声合唱団さん(以下土曜会)の選曲に、少し驚きました。



土曜会さんの課題曲はG1 Adorna thalamum tuum, Sion

自由曲は谷川俊太郎詩・三善晃作曲
「五つの願い」より
「1.春だから」
「2.子どもは……」
「3.願い 一少女のプラカード」

ええっ?! 課題曲の「子どもは……」を自由曲に?


当時、代表の阿部さんに選曲の理由を答えていただいたところ。

 


課題曲をどれにするかという議論の前に
「自由曲では、この "子どもは……" を
 歌うことにしよう」と決まりました。
これを課題曲にしてしまうと、
自由曲の選曲がちょっと難しくなるかなというところ、
「あ、自由曲にしてしまえば
 『五つの願い』からあと何曲か歌えるし、
 課題曲で別のテイストを見せることができそうだ」と、
ストンと落ちた感じでした。

それぞれの曲の特徴を
どのように表現できるか悩んでいるうちに、
「子どもは……」のいわば「課題曲感」というものは、
少なくとも自分たちの中では薄れていきましたので、
聴いて下さる皆さんにも
そのあたりが違和感なく伝わると良いなあと思っています。

 


その年の観客賞の座談会で土曜会さんへの感想は。

 

 

そして自由曲ですよ。
三善晃先生の課題曲「子どもは……」
自由曲2曲目に持って行く!


この選曲は効いてましたね。


いや、聴く前までは正直
「どうなの?」だったけど…。


組曲で聴く理由が納得できたよね。


一同 うんうん。


組曲「五つの願い」の
1曲目「春だから」の明るさとリズムがあるから
2曲目「子どもは……」のテンポと曲想が生き、
そして「子どもは……」があるから
3曲目の「願い 一少女のプラカード」
すべての想いが結実する・・・。


もう「すいませんでした!」と思ったもん(笑)。
「子どもは……」を最初に課題曲として聴くのと
こんなに印象が違うのか!と。


そう、歌い上げる温かさが
より一層感じられました。


「願い 一少女のプラカード」の最初に
うるうる来た!


私もそうなんです。
生きていてほしいんです…
凄く丁寧に歌われて。


大人が集まって歌われることに意味のある演奏でしたね。
そういうところに泣けてしまう。

 

 

 

 

このように大変好評だった土曜会さんの演奏。
「珠玉のハーモニー」CD収録という機会に、土曜会指揮者:柿崎泰裕先生にご寄稿していただきました。




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鶴岡土曜会の「五つの願い」演奏雑感



今から30年ほど前のことですが、私は当時宮城県の中新田バッハホールを会場に行われていた合唱講習会「創る会」に参加していました。
その講習会は東京混声合唱団の田中信昭先生を講師に、会員の会費で先生が作曲家に委嘱して下さった曲を初演したり、先生が紹介して下さる新しい曲を歌うものでした。
その第1回演奏会で取り上げられたのが三善晃先生の「五つの願い」でしたが、憧れの三善先生の曲であったにもかかわらず、なぜか私はその組曲にあまり好ましい印象を受けなかった覚えがあります。


それから約四半世紀------ 2016年のコンクール全国大会を終えて直ぐに、私は「五つの願い」の楽譜を取り出し、“春だから”“子どもは……”“願い 一少女のプラカード”の3曲を2017年の自由曲候補として練習を始めていました。
そのような中、12月に翌年の課題曲が発表されると目を疑いました。
何とそこに“子どもは”が挙げられていたからです。
“子どもは”“願い”をセットで考えていた私は、少し迷いましたが、課題曲を自由曲にするという結論に達し、挑戦的なこのアイディアにワクワクしてきました。
あらためて楽譜を研究する日々となり、見る度に感動が深まっていったものの、“子どもは”には苦戦し、“願い”はさらに悪戦苦闘しました。
特に変拍子を自然な言葉遣いにすること、ゆっくりしたテンポの中に緊張感を持続させることに苦労しました。


70回記念大会の年に全国大会へ進めたことは幸運でしたし、東北で評価されたことで、課題曲を自由曲にしたことに少し自信すらでてきました。
そして、アマチュアが舞台に立つことなど夢のまた夢である東京芸術劇場で歌うことができることに、私もメンバーも快い興奮を覚えていました。
コンクール本番のステージで課題曲を歌い始めた瞬間、響きの心地よさに気持ちが軽くなりました。
東北の片田舎のシャイな合唱団は、時として大きなホールに呑まれてしまいますが、この芸術劇場の響きは、私達を助けてくれるような感じがしました。
あとはただひたすら、三善先生の素晴らしい曲を丁寧に演奏することだけを心がけ、集中していました。
全てがうまくいったわけではありませんが、30年前に出会った「五つの願い」を演奏できたことに充実感がありました。


私は所用により、審査結果発表時は鶴岡へ向かう飛行機の中にいました。
庄内空港に着き、機内でスマホの電源を入れたらメールの嵐。
「金賞!」一緒にいた数名のメンバーに両手でを作り、伝えた時の彼らの驚愕の顔は、忘れられない良い思い出です。



鶴岡土曜会混声合唱団 指揮者 柿﨑泰裕

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柿﨑先生、「創る会」の思い出、本番と金賞受賞の興奮、そして「五つの願い」への想いを本当にありがとうございました。
なお、「あまり好ましい印象を受けなかった」ご印象から約四半世紀経ち、なぜ自由曲に選ばれるまで気に入られたのでしょうか?との問いには


「30年前は自分はまだ若く、”歌うのが難しい曲” という印象が強かった」
「その歌を、自分が理解していなかったから歌えなかった」とのことでした。
その後「いろんな三善作品を演奏してきて、もう一度楽譜をみてみたら、なぜかあらためて興味を持って…」というご心境だったそうです。
時間の経過によって変化される、柿崎先生の音楽へのご視点も興味深く感じました。


土曜会さんの演奏は、合唱団の個性よりは、「演奏する曲の個性」を大事にされるもの。
強い印象は残さないかもしれませんが、演奏から誠実さ、真摯さが染みてくるような団体です。

 

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※2017年当時お送りいただいた鶴岡土曜会混声合唱団さんの御写真



そしてこの演奏から2年後、2019年の京都全国大会、福島大学混声合唱団さんが自由曲に「五つの願い」から選曲されました。
なんとその選曲理由は

 


2年前の東北大会で鶴岡土曜会さんの「五つの願い」に感銘を受けた団員による提案により選曲されました。

 


……とのこと!



福島大さんの選曲、土曜会さんと「願い 一少女のプラカード」が重なる、大人から若者たちへのバトンという捉え方もできそうです。



土曜会さんの座談会での感想は他に、過去にこういうものが並びました。
いずれも、今回収録された「五つの願い」の演奏に通じるものがあります。

 


仲間と紡いだのが伝わる、
温かい音がしましたね。
染み込むようでした……。


「…俺は実直に畑を耕すんだ」。
そういうあったかい音がすると、
本当にほっとするんですよ。


奇をてらって何かやるんじゃなく
ナチュラルに演奏してるんだけど伝わってくる。
ある意味、演奏の理想型ですね。


良い意味で
「合唱団の存在感が薄い」んですよ。
キャラクター性がそんなに無い。
「あ〜、この演奏、(団体名)だなぁ」
とかじゃなくて、演奏する曲、
音楽そのものが立ち上がってくる。


市民合唱団的に歴史を重ねてきたんだろうなあ。
そんな雰囲気を感じさせる
「居てくれてありがとう」という
貴重な団体ですね。

 



最後に。
寄せられた観客のメッセージにはこういうものもありました。

 


土曜会は、無垢の美しさとでもいうか…作品そのものの音とことばをひたすら忠実に奏でることで、その訴求力を最大限に引き出しているように思います。
聴いているこちらも裸の心で受け止めたくなる、そんな演奏でした。

 



作品そのものの音とことば・・・。
柿崎先生が書かれたこと。
「ただひたすら、三善先生の素晴らしい曲を丁寧に演奏することだけを心がけ、集中していました。」


自分たちを前面に出さず、きめ細やかに誠実に作品の姿を彫琢する。
土曜会さんの姿勢が音楽そのものを立ち上げ。
感銘を受けて福島大さんが選曲されたように、未来へ繋がる演奏になったと思うのです。




鶴岡土曜会混声合唱団さんの演奏は「珠玉のハーモニーVol.10」に収録されています。

 

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9月28日発売されました!


一足早く郵便局にCDを取りに行った私はそのまま酒場へ。
CDを並べ、スパークリングワインで乾杯!!

 

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(次回「●合唱界のアイドル 枝幸ジュニア合唱団さん」 10月5日更新予定です)