この久保辺りの(「新開」という呼び名らしい)飲み屋街は
古き昭和の香りを漂わせる店が多く、歩くだけでも楽しい。
また店と店との間に、思いがけず寺院があったりして。
・・・こういうところが歴史と奥行きを感じさせる。
さて次は(まだ行くのかよ!)
「A−Train」というジャズバー。
店に入るとジャニーズ系の若いハンサムがお出迎え。
このにーちゃんは手伝いのようでマスターは別に。
そのマスターも若く20代後半? 半円のカウンターは満席だ。
なので横のグランドピアノの蓋がテーブルとなった別席へひとり。ぽつーん。
ほう、この店はウイスキーに力を入れているよう。
シングルモルトの説明にかなり力が入っている。
・・・しかし敢えてカクテルを注文。
やがて届いたカクテルを楽しみ、そろそろ帰ろうかな。
と、振り返りふと天井の辺りを見ると…なんじゃこりゃー!
枝雀。枝雀のCDジャケットが壁と天井の間にびっしり。
唖然としていると注文を取りに来たマスターと目が合い
落語、好きなんですか?と思わず訊いてしまう。
「ええ、ええ」とマスター嬉しそうに笑い、
店内の隅に案内する。
・・・隅に置いてある本棚には枝雀だけではなく、
他の噺家のCD・DVDがぎっしり!
これは、私なんか及びもつかないマニア、それも超・落語マニアだ!!
「初代 桂春團治(1878生〜1934没)のCDがなんと1000円で
売っていてですね、買ってはみたんですが
録音レベルが低すぎて最大音量でも聴こえづらいこと!」と苦笑し
「で、営業後にその春團治のCDを流しながら片付けしてたら
店の前を通ったお客さんがいたんでしょうね。次の日
『昨日、えらくガラの悪い客がいたようだな!』…って」
(春團治は独特のダミ声とマンガ的な表現で有名)
エピソードが、まんま、落語です。
そして、「どうぞ」と
「サライ」の志ん生特集や落語を特集した雑誌を何冊か差し出す。
「このサライはねー、入手するのが大変だったんですよ〜」
・・・マスター、あんた凄いよ!
ところで満員の客なのに私ばっかり相手してていいのかな?
おお、もう終電が近くなった。
帰り際マスターに
今度来た時、春團治のCDかけてよ。と言ったら困った顔で
「いやウチ、“いちおう” ジャズバーですし」
そうでした。
最初の尾道ラーメンはともかく、
4店とも店の広さだけではない
奥行きと深さを持っている店ばかりだった。
いいねー、尾道。街も、店も、そして人も!
またいつか!!
駅へ向かう帰り道。
海向こうの造船所のクレーンは夜になるとライトアップされる。
・・・これで帰りの列車、倉敷で降りるところを
間違って“新”倉敷で降りなきゃとても良い旅行だったのになあ・・・。
(タクシー代で、大阪へ行ったのとほぼ同じ交通費に)
やっぱ2時間睡眠でアルコール入れちゃダメだわ!
(おわり)