東混配信、信昭先生の「生きる」は必聴!

 

8月31日に「東混オールスターズ」という東京混声合唱団の演奏会がありまして。
東混ゆかりの指揮者8名が、指揮者それぞれの持ち味を存分に発揮された豪華な演奏会。
この配信がとても良かったんですよ!(配信販売は9月29日まで

<東混オールスターズ>アーカイブ配信について、好評につき配信期間を【9/30(月)まで】延長することが決定いたしました‼️……だそうです。

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特に田中信昭先生の指揮による三善晃「生きる」は、心の奥底まで響き、余韻が消えません。


◯山田茂先生指揮、荻久保和明「ゆめみる」はやっぱり良い曲。
初演の岩城宏之さんが「こんな美しい曲は久しぶりだね」と言ったエピソードを思い出します。
どのパートも歌い甲斐があり、美しい旋律を織り成して、聴きながら歌いそうに。
「讃歌に変えるまで」でテノール、バスと前に出る迫力に、おおっ。


◯大谷研二先生の、合唱団員と密に意思疎通を図るバッハの指揮にも感銘。
杖も椅子もスタイリッシュで流石。
いまの東混の新しさと魅力は山田和樹先生の功績はもちろんだけど、それは大谷先生の台座があったからだよなぁ……と。


◯髙谷光信先生指揮、首藤健太郎先生編曲のM.スコーリク「メロディー」も良かったな。
こういう、やや大時代的な、切ない美しさに満ちた曲をもっと聴きたいと思いました。
ウクライナを想う髙谷氏の熱い指揮に、さらに熱い歌で応えた東混さすが!


バーミンガム在住:山田和樹先生のリモート指揮による柴田南雄「追分節考」、ソリストの歌唱、関一郎氏の尺八の説得力、会場の響きが相まって不思議に新鮮に聞こえました。
山田先生は「柴田先生はリモート合唱を予見していたのでは?」と語られていましたが、その言葉に説得力が。
やはり次代に残すべき名曲ですよね。


◯キハラ良尚先生指揮の篠崎正嗣:無伴奏混声合唱のためのことばあそび「トラと信長/竹垣」 
美しい旋律の前振りから、どうかしてるんじゃないかという早口言葉の畳み掛け!
ソリスト女性の演技に「ヒューッ!」と思わず口笛が笑。
これこそ(いろんな意味で)プロにしか演奏できない作品で良かった!
実演を拝見できて感謝!
初演は音楽樹さんだけど……


そして、大トリに田中信昭先生ご登場。
ステージから指揮台へのジャンプ!で全て持って行かれました。
三善晃「生きる」、前奏はやや速めのテンポかなと感じましたが、合唱が入ると納得。
「のどがかわく」「木もれ陽がまぶしい」「ピカソ」「ヨハン・シュトラウス」
・・・いま自分を取り巻く「生」が、突き刺さるように。
96歳全力の「生きる」……気づくと泣いていて。


「生きる」谷川俊太郎(本人朗読?)

アンコールは他の指揮の方々もステージに揃い、田中先生の指揮で「赤とんぼ」を。

終演後、なんだかたまらず夕闇迫る外へ飛び出してしまいました。
歩きながら「生きる」という言葉、そして8月終わりの日から、覚和歌子氏の詩、信長貴富氏が作曲された童声合唱とピアノのための「リフレイン」の 「素晴らしき人生」について、という作品を思い出し。

「素晴らしき人生」について、は夏休みが終わる1週間前、小学6年生・久美子さんが京都のおじさんへ問いかける「人生って本当に素晴らしいの?」という疑問がテーマになっています。

「生きることへの肯定」、大人は、自分は「人生って素晴らしいよ!」と断言できるか。
宮崎駿氏が米津玄師氏との会話で、半ば泣きながら「子どもたちに、この世は生きるに値するということを映画を通して伝え続けていきたい」と語ったそうですが。
自分は「人生って面白いよ」は言えるけど、「素晴らしい」とまでは言えないよなあって。

 

「人生は素晴らしい?」への答えが最終曲「リフレイン」という解釈ができるかも。
始まる前にカーテンを開ける演出。
日野市立七生緑小学校合唱団さんの演奏も素晴らしい。

 


9月になってもリフレインの演奏と、田中信昭先生の「生きる」を繰り返し観てしまいます。

田中信昭先生だったら、「人生は素晴らしい!」と仰るのだろうか、それとも。
いや。
あの「生きる」の指揮と音楽ならきっと。