おかあさんコーラス配信から連盟の未来を考える・下

 

【※まず前回の記事をお読みください】

おかあさんコーラス全国大会の無料配信がとても良かったです。
その良さは、「ハーモニー誌」夏号、長谷川冴子理事長へのインタビュー記事で問題にされていた、コンクールへ依存し過ぎる合唱連盟改革への一歩、未来なのでは?と。
今回は考えをさらに深めてみたいと思います。

 

「全日本合唱連盟はコンクールにリソースを注ぎ過ぎなのでは?」と長谷川理事長へ疑問を投げかける坂元さん。
「(少子化、部活動地域移行)そんな中で連盟は小学校コンクールを始めた。何か勘違いをしている印象を受けます」

……と、合唱連盟のコンクール依存体質へ、大変に厳しい批判、これまでの活動を総括し、問い直すことをされています。
これを合唱連盟の機関誌であるハーモニー誌が記事にしたことはとても素晴らしいと思ったんですが、その一方で、次のような疑問も浮かんできました。

1)コンクールにリソースを注ぎ過ぎとの批判に対して、「予算や人員をどれくらい削減するべきなのか」という具体的な目標は?

2)コンクールから削減された予算や人員を別に回し、どのような新しい企画に回すのか、その具体的なプランは?

3)立ち上げた企画が合唱界にどのような効果をもたらすのか?また、その効果が期待できる根拠は何か?

・・・という疑問が出てきたんですね。
現場への厳しいご指摘、提案はあるものの、少し抽象的で具体的な内容が見えにくいと感じました。
長く続いている体制や仕組みについて批判的な視点は大切ですが、それと同時に、新しい未来を一緒に築いていくための、具体的なアイデアや協力の姿勢がもう少し見えると、さらに前向きな議論になるのでは。
なんだか少し前、東京都の知事選と印象が似ているかも……、なんて。

少子化、部活地域移行の進展を考えると「小学生にコンクール?!」と疑問を持つのも肌感覚的には理解できます。
しかし、「合唱祭」の「こどもコーラス・フェスティバル(全日本少年少女合唱祭全国大会)」は既に長い歴史があり。
さらに「全日本」と名の付く行事なら、東京や関東、大阪など人口密集地だけへのスポット的な行事では無く、全国的な展開が求められる難しさもあるでしょう。
(もうひとつ、「団員数の増大」に関して、特に若年層には「コンクール」という競争形式が訴求力を持つのではないかという「コンクール文化論」からの疑問もあります。中学校の男子運動部員が助っ人として合唱部によく参加することがあるのも、それが「コンクール」だったからこそかもしれません)


以上を踏まえ、私がおかあさんコーラス配信から出した結論は

「ゆるいコンクールを立ち上げれば良いのでは?」

でした。
「えっ?!結局コンクールかよ??」
ごもっとも!
ただ、おかあさんコーラス全国大会もコンクールですが、その要素を感じさせるものは少なく、やわらかい印象ですよね。

 

「コンクール」ではなく、「女声合唱の祭典」!

 

従来の真剣勝負のコンクールは今まで通りあっても良い。
ガチコンクールの規模縮小かあるいは現状維持でも、並行して「新しいゆるやかなコンクール」を進める方向性はどうでしょう。

おかあさんコーラス配信では「ゆるやかな賞の選定」「親しみやすい選曲と演出、余興を含めたステージング」といった、従来のコンクールとは異なるアプローチが多く取り入れられていました。
これは、合唱祭のコンクール化なのかもしれませんが、合唱に触れてこなかった一般の人々(将来的なスポンサーも含む)へのアピールとしては最適だと思うんです。

 

連盟の「合唱やろうぜ!」にも一致します。


8年前に私が書いたブログ記事、高校生対象の合唱コンクールテレビ番組に絡み「新しい合唱コンクールに望むものは?」

この記事で「一般ウケする新しい合唱コンクール」として、私は「演奏曲を運営側が提示」を答えとしたんですが。

おかあさんコーラス配信では、選曲を含め、賞選定やアトラクションの要素など、違うアプローチで観客へのアピールを行っており、この方向性にとても価値を感じました。


もちろん「コンクール視聴者≒合唱経験者」なので、ゆるいコンクールが強い求心力を持つか? 合唱界の技術向上や、発展に繋がるか?は未知数です。
しかし、繰り返し書きますが、一般層へのアピールや新たなスポンサーの開拓に「ゆるやかなコンクール」は非常に効果的なのでは。


おかあさんコーラス配信が示したこの新しい方向性について、私はもっと多くの人と話し合い、現実的な実現方法を探っていきたいと思ったのです。
合唱の未来を考えるみなさま、いかがでしょうか。