おかあさんコーラス配信から連盟の未来を考える・上

 

8月の23日、24日に全日本おかあさんコーラス全国大会の配信がありまして。

なんとこれが無料の配信だったんです!

会場が札幌・キタラホールということもあり両日とも視聴しました。
私にとっては初めて視聴するおかあさんコーラス全国大会だったのですが、とても面白く、興味深かったですね~。
なんと言っても「敷居の低さ」を感じさせる!


たとえば

1)ゆるやかな賞
厳密に1位から最下位まで決定するのでは無く、グランプリの他は優秀賞にあたるひまわり賞。
全68団体出場で、奨励賞6団体、今回からのオーディエンス賞6団体など、ゆるやかで様々な価値観が反映された賞の設定。
これ、全国大会への選出団体もコンクールだけでは無く、合唱祭や演奏会などの機会で総合的に判断されると面白いかもしれませんね。

 


2)親しみやすい選曲と演出を含めたステージング
グランプリの香良洲自動車学校さんはさすがの実力。
高嶋みどり「からす」の鳴き声と演出もユーモラスでした。
私のお気に入りは地元札幌のピッコロ・ヴェルデさん。
指揮:尾崎あかり先生とピアノ:豊田早苗先生の、北海道大学合唱団さんでも知られる名コンビ。
演奏曲の「走れコータロー」にちなんで尾崎先生は騎手姿、豊田先生は馬のかぶり物!(……鍵盤見えるの?)

出オチだけじゃ無く、熱の入った実況と団員さんの動き、ラスト尾崎先生はステージに倒れ込む演出など「やり切った」印象。すげえ!

加えて全体では余興など、飽きさせない進行も良かったですね。
1団体ごとの丁寧な紹介アナウンス、審査員のお話も各ブロックごとに「8ホメ2チクリ」ぐらいのバランス。
休憩終わりに10分間のリフレッシュタイムで「北海道弁講座」も。(THE GOUGE指揮者:平田先生に拍手!)
極めつけはクロージングの札幌国際情報高校吹奏楽部!
「ダンプレ」という踊って演奏するスタイルで、楽器の演奏だけじゃ無く、歌うわ、司会の女の子は達者だわ、観客を引き込み【ライブ】を感じさせ、思わず唸ってしまうステージでした。

 

コンクールの真剣な雰囲気だけでは無い、これら演奏と企画の醸し出す祝祭感が実に良かったですねえ。

 

3)各団体のYouTubeでの紹介
全日本合唱連盟のYouTubeチャンネルで出演団体のショート動画の公開、演奏曲を記されているのが有り難く。

受賞団体や気に入った団体の練習風景やアピールにすぐ触れられ、出場団体が身近に感じられる点が魅力でした。

スポンサードもキューピー1社で、3分クッキングのテーマが効果的に使われ面白かったです。
全日本合唱コンクールも、企業や個人が○十万円以上出資したら「○○賞」を出せるとか(地方競輪で出資する個人の命名杯のイメージ)。
大相撲の懸賞旗のようにプラカードの後に付いてくるとか盛り上がりそう!(ご当地団体に人気出そう)。

 

そんなわけで面白く、敷居を低く感じさせ、いろいろ考えさせる配信でした。
こういう合唱のイベントで、ガチのコンクールは最近批判されやすいんですけど。
じゃあ合唱祭や、主催者が選んだ複数団体の演奏会が、【全国的に】合唱好きの興味を惹くかは難しいところ。
自分も「東日本合唱祭」

「大学合唱団オンライン合唱祭」

などを記事にしていますが、Nコンや全日本合唱コンクールほど、出場者以外の興味を惹いているとは言い難い。

このおかあさんコーラス全国大会のような

「お祭り要素を多く含む【ゆるやかなコンクール】

は、出場者以外の、広い層の興味を惹き付ける良い方向性だよなと。

「コンクール文化論」

「今のコンクールは選抜というより発表会の要素が強くなっている」のような記述がありましたが、それを実感できるコンクールでしたね。


さて、「いろいろ考えさせる」の「いろいろ」。
合唱連盟の「ハーモニー誌」夏号、長谷川冴子理事長へのインタビュー記事「みんなでインフルエンサーになりましょう!」。
実はこの記事、インタビュアー坂元勇仁さんが、連盟のこれまで、そして進む方向を厳しく問いただす刺激的なもの。

坂元さん「そんな中で連盟は小学校コンクールを始めた。何か勘違いをしている印象を受けます」

……と、合唱連盟のコンクール依存体質へ、大変に厳しい言葉が衝撃だったんです。
そして記事を読み進めるうちに私が思ったのは、このおかあさんコーラス、ゆるやかなコンクールは今後、合唱連盟の未来を示すものなのでは?と。
このような考えに至ったのも、おかあさんコーラス全国大会が示す新しい可能性を見たからです。

 

次回「おかあさんコーラス配信から連盟の未来を考える・下」へ続きます。