栗山文昭先生の世界に浸る(東京混声配信)

 


7月16日に開催された東京混声合唱団演奏会「合唱の輪 Vol.8 栗山文昭の世界」。
配信後も購入可能で何回も聴いていますが、これがとても良い演奏会だったんです。

(アーカイブ配信は7月31日23:59まで!)

 

そもそも栗友会に所属している団体の演奏は、ネットへ動画をそんなに上げていない印象があり。(特に栗山先生指揮の演奏)
東京混声合唱団の演奏だけでは無く、栗友会精鋭メンバーとの協演はとても貴重なもの。

 

 

まず最初の信長貴富先生作曲「詩想の森 -2つのバラッド-」が非常に良い曲で!
合唱、独唱、重唱、そしてピアノと弦楽が織り成す、死を身近なものとし、広がる世界。

長田弘の詩を読みながらじっくりと聴きます。
死を前にした長田氏のつぶやきのような言葉が、自らの内面を深く掘り下げ、同時に森のように世界を広げる感覚があり。

 

弦楽を伴う信長先生の合唱作品の魅力はパナムジカ35周年記念・東京混声合唱団特別演奏会での「弦楽アンサンブルステージ」で知りましたが。

 

この「詩想の森 -2つのバラッド-」も弦の響きが合唱を、合唱が弦楽を引き立たせる魅力に溢れた作品と感じました。


続く三善晃先生「月夜三唱」も14人の女声とピアノとの緻密なアンサンブル。
「路標のうた」も栗友会男声メンバーが加わり、最初のぎこちない出会いから親しさを増し、最後に強固な友情へ至る物語を感じさせます。


萩京子先生の「みるく世がやゆら」は演奏前に演劇(加藤直演出、栗友会?黒テント?)もあり、作品への理解が深まり。
シンプルな音楽ですが、東混の歌唱が随所で光る佳品。
詩の権利を平和祈念資料館が持っていて、営利に関わることには使えないという縛りがあったはずなのですが、解決したのかな?
(知人の話では、入場料を取る演奏会で何回も演奏されているが、楽譜出版は未だされていないそう。

 

↓ 萩京子先生を特集したハーモニー誌について。みるく世がやゆらについても。

 

さらに鶴見幸代先生おひとりでの三線と沖縄民謡も良かったです。
(鶴見幸代先生と言えば、「縞縞」という間に演歌が挟まる衝撃的な合唱曲で記憶にある方……)
そこから繋がる沖縄むかしばなし、寺嶋陸也先生「沖縄のスケッチ」も栗友会との協演で、鳴り物、踊りもあり楽しく。
千葉大学合唱団が演奏された瑞慶覧尚子「うっさくわったい」、同時に栗山先生の「沖縄はテーマパークでは無い」発言も思い出しました。

ラストの圧倒的な盛り上がりは凄かった!!


栗友会団体は「合唱劇」と呼ばれる演奏形態の先駆者。
前述のように、ネットでは観ることがなかなか難しい合唱劇(の片鱗)を、この配信で観ることができたのはとても嬉しかったです。


三善先生の名曲、そして新曲ではありますが、新しさだけではなく過去からずっと蓄積されたものを感じさせる良い演奏会。
オール邦人作品、日本の合唱音楽の豊かさを感じられる演奏会でした。

栗山文昭先生、いつまでもお元気で・・・。