「大学合唱団の新歓は難しい」を考えてみた

 

この文章は、「大学合唱団の指針を3つの短いテーマにまとめたら、新歓や活動の方針が決めやすくなるんじゃないかな?」という単純な思いつきから書かれています。
言わば「叩き台」で、この拙い文章から「実情に合っていない」「いや、それならこれはどうだろう?」 そんな批判と提案を広く求めるものです。
むやみと長い文章ですが、最後まで読んでいただければ幸いです。

 

まず、岡山大学グリークラブ在団生:なすさんによる「大学合唱団の新歓は難しい」のnoteをお読みください。

 

なすさん、こんにちは。
読み終え、とても興味深い内容と感じました。
コンクールに参加せず、技術系も学生だけの地方大学合唱団で、方向性、モチベーションをどこに置くか。新歓にどう反映させるか?
数十年前から議論されてきた問題ですが、現代でも大変魅力的なテーマだと思います。
「本格的な合唱を指向する勢」と「サークルエンジョイ勢」の対立も昔からありましたしね。

私がなすさんの記事から新しく感じたのは「合唱界全体の要請」という点から、岡山大学グリークラブさんの進むべき方向性を考えている点です。
数十年前には「世間の要望など知ったこっちゃねぇ!俺たちはやりたいことやるぜ!!」そのような反体制の空気が若者の間にあったと思っていたのですが、現在はそういう空気はほとんど残っていないことに少し驚きました。

ただ、なすさんも書かれるように「合唱界全体の要請」は大学の課外活動としばしば衝突しますし、そもそも「合唱界」もかなり広い範囲です。
ですから 「大学から合唱を始める者にとって過ごしやすい合唱団を作り、成功体験を与え、生涯にわたり合唱を楽しむ人口を増やすことに寄与する」 という目標は素晴らしいと思うものの、あまりにも広範囲で、高い理想を求め過ぎな気もしました。
(もちろん賢明ななすさんは「どちらを重視するかはその団体が総合考慮により決するべき」と言及されていますが)


勝手ながらこの目標を「3つの簡単なテーマ」、つまり「技術向上・団員増大・地方の合唱文化に寄与」に分け、さらに各目標への現実的な道筋は、例えばこのようなものがあるのでは?と考えてみました。
加えて繰り返し引用しますが「どちらを重視するかはその団体が総合考慮により決するべき」であり、決して何かを強制するものではありません。
あくまでも叩き台としての提案であることをご理解いただきますようお願いします。


【テーマ1:技術向上】
「岡山大学グリークラブという存在を、優れた演奏によってブランドとなる価値ある団体を目指す」

言わば「本格的な合唱を指向する勢」が中心になる活動ですね。
技術向上に重きを置き、音楽的に価値の高い演奏活動を目指し、演奏水準では岡山・中国地方を代表する団体。
演奏会には日本中からコアな合唱ファンが集まる・・・みたいな。

(違う文脈・必要性からですが) なすさんは「やっぱ神輿で担ぎあげることができる感じの常任指揮者が必要では?」とも書かれていて、それも一つの方法であると思います。
「指揮者は効率良く練習させるための存在」という言葉がありますが、学生指揮者がいくら熱意をもって団員を引っ張ろうとしても、毎年、学生指揮者が変わる団体では限界がある。
ただ、「外部からの "常任” 指揮者を招聘する」までには、A)から C) まで段階があると私は思っていまして。

 A)団体向けレッスン "だけ" をお願いする。
 外部の指揮者に、演奏する予定の曲を指導してもらう。
 実際のステージで指揮するのは学生指揮者。

 この方法でしたら、比較的容易に実現しやすそうです。
 一人だけではなく、お金とスケジュールが合えば、何人もの外部の指導を体験できますし。


 B)客演指揮者を呼ぶ
 レッスンからさらに段階が上がり、演奏会の1ステージで客演指揮をお願いする形です。


 C)常任指揮者をお願いする
 AもしくはBを何回かお願いしてから、「常任」指揮者になっていただく。
 常任と言えども、報酬や練習回数などの契約は毎年、確認し交渉すべきかと思います。
 
 岡山大学グリークラブさんのように学生だけで活動されていた団体は、Aのレッスンだけの指導者、Bの客演指揮者を選ぶのも難しいですね。
 ネームバリューだけでお願いすると、合唱団と相性が合わない場合もあったり・・・。
 岡山県でよく講習会を開かれる山脇卓也先生に指導者をご相談するか、山脇先生ご自身にお願いするのも良いかもしれません。

 

【テーマ2:団員増大】
「大学から合唱を始める者にとって過ごしやすい合唱団を作り、生涯にわたり合唱を楽しむ人口を増やすことに寄与する」

なすさんが書かれたテーマから「成功体験を与え」だけを抜いてしまいました。すみません。
このテーマなら、やはり団員数の増大。
どーんと大きく、登録団員数200人!オンステージ150人!!を目指すのはいかがでしょう。
岡山大学グリークラブさんを卒団された多くの方々が、既存の団体へ入団されたり、新しく団体を立ち上げたり。
あるいは合唱に好意的な聴衆として「生涯にわたり合唱を楽しむ人口を増やすことに寄与する」に繋がりますよね。

ただ、「大学から合唱を始める者にとって過ごしやすい」のは「技術向上」と相性が良いとは言えないかもしれません。
団員数を増やすためだったら、「(練習参加が)月に1回がやっとの者」も気まずくならないための雰囲気や練習を考えなければならない。
それには負担を減らすため、週3日の練習を週2日にする、定期演奏会のステージ数を減らすなどの方法が考えられます。

さらに団内イベントや楽しい練習や本番の雰囲気も求められるかと。(個人的には、テーマ1の技術向上とも分けられるものでは無いと考えますが)

ここで提案したいのですが、こういう「少ない練習時間で多めの団員を保つ目標を掲げている団体」こそ、「外部指導者の招聘」を検討していただきたいと思います。
前述したように、指揮者とは「効率良く練習させるための存在」と私は考えます。
すなわち、最小の手間と時間で最大の効果を上げる存在ですね。
外部指導者(技術顧問)とよく相談すること。
指導者が不在時の練習プランも、本格的な合唱を目指す技術系団員さんといっしょに考えてもらい、やる気のある団員さんのモチベーションを保つのは、非常に重要と個人的に考えるものです。

 

【テーマ3:地方の合唱文化に寄与する」
→愛唱曲を磨き上げ、外で歌う機会を中心にした活動

学校や老人ホームなどの訪問公演をメインとした活動です。
自分の勝手なイメージとしては、愛唱曲や一般の方に好まれるような15-20曲ほどをレパートリーとして磨き上げ、年ごとにその3分の1ほどの曲が入れ替わるようなものを想定しています。
なすさんの言葉に「毎月コンサートを開催するわけでもない大学合唱団」を(コンサートとまで言えないかもしれませんが)とにかく外で歌う機会を増やす団体を目指す。
定期演奏会では、いわゆる邦人合唱曲は1ステージくらいあるかもしれませんが、プログラムのメインは歌い継がれ、磨き上げられた愛唱曲たち。
三重の一般合唱団うたおにさんの、何年か前までの活動とレパートリーに似ているかもしれません。http://www.utaoni.com/

個人的に「毎年、毎回、すべてのステージで(その団にとっての)新曲を披露することは、【観客にとって】どれほどのメリットがあるのだろう?」という疑問を持っていまして。
歌い継がれた曲は、歌う側が思うよりも観客に響く!……そんな実感があります。
もちろん、合唱に縁が無い観客にウケるためには、演奏の他にも演出や振り付けなどへの厳しい水準が求められます。
それこそそういう演出専門の役職や、外部からの指導者を求めることが必要かもしれません。

 

【まとめとして】

いかがでしょうか?
1)技術向上
2)団員増大
3)地方の合唱文化に寄与する

単純化されたこれら3つのテーマを、なすさんが書かれるように幹事学年がバランスを総合考慮の上でまとめ、活動方針を決定すると良いのでは?という提案です。
もちろんそれぞれのテーマで100%振り切るのは現実的では無いので。
例えば「技術向上60%、団員増大30%、地方の合唱文化10%」のように割り振り(優先順位)を決め、新しくテーマを作成する。
「優れた演奏で多くの方々に認められる合唱団を目指しつつ、共に歩む仲間を増やしていく」。

あるいは「技術向上20%、団員増大50%、地方の合唱文化30%」の場合のテーマは
「初心者が合唱の喜びを知り、生涯にわたり合唱を続け、合唱文化を発展させるため尽力する」などと、決めていくのはいかがでしょうか。

長々と書いてきましたが、この文章は、「大学合唱団の指針を3つの短いテーマにまとめたら、新歓や活動の方針が決めやすくなるんじゃないかな?」という単純なものです。
繰り返しますが「叩き台」で、この拙い文章と考えから「実情に合っていない」「いや、それならこれはどうだろう?」そんな批判と提案を広く求めその結果、実情に合った、有益なものになれば良いと考えています。

現役大学生である、なすさんの真摯な文章を読み、大学合唱団の存続と更なる発展を願いこのような文章を書きました。
長い文章ですがこの文を読まれた、現役大学生、かつて大学生だった方々、みなさまからのご意見を、お待ちしております。


→ 余談として
【大学合唱団の新歓は難しいへの余談】→コンクールと大学合唱団が存続する意味とは

もお読みいただければ幸いです。