観客賞座談会:大学ユースの部 最終回

 


観客賞座談会:大学ユースの部、今回で最終回です。

 

 



それでは第1位発表!…の前に
「ほかに良かった団体は?」の問いに



ひかりカレッジクワイア(混声・39名)


を挙げる人が多かったです。




一人3団体なら入れてた!などの声のほか、




課題曲G1メチャクチャ良かった!




自由曲の松下耕先生の「今年」も含めて
本当に一番温かい演奏だったなあ。




そう、親近感がありました。




同世代の人たちが聴いたら「良いね!」って
凄く共感できるのでは。




《文吾の感想》

課題曲G1は男女ともに各フレーズの入りが良く、
このテキストの悲しみを表したような、
やや暗めのトーンが素敵でした。
表現の要所の強調や、
音楽の変化に併せて色合いを変えていたのも◎!
この課題曲を選んだことに
指揮者:縄裕次郎さんの志がうかがえます。

自由曲の「今年」は、
この曲をよくぞここまで!と練り込まれた演奏。
繊細な思いを込めた発語から
この曲に共感しているのがとても伝わりました。
男声のヴォカリーズ、
クライマックスのフォルテッシモ「今年は!」の箇所も
本当に胸に響きました。
私が今までに聴いた「今年」の中で一番良かったです。

うん。今年も、もう終わりますね・・・。



他には


高知大学合唱団のタンバリンがカッコ良かった!


ベスト譜めくり賞は
早稲田大学コール・フリューゲルに差し上げたい!


・・・などの声がありましたよ。


 

 

 

 




さて、それではお待ちかねの大学ユース部門第1位!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


G.U.Choir(混声・30名)


団名を言ったとたん拍手が巻き起こる!




びっくり! 凄かった!




最初から最後まで息を止めてた!




ほんっとに涙が出そうでした!(ねー! と同意の声)



ではまず課題曲
G4「ねむりのもりのはなし」
(長田 弘 詩/山下祐加 曲)について。




楽譜に書いてないことをいろいろやっていたけど
それが凄く説得力がありました。




そう、助詞を弱声にするとかね。




その弱声がメチャクチャ上手かったですね。(一同、同意)




語り口がとても良かった!
日本語の発語に関しては
かなり上位だったんじゃないかな。(同意多数)




中間部のあそこ!
「きのない もりでは / はねをなくした てんしを」
背筋がゾクゾクするほど良かったんだけど、
楽譜ではメゾピアノなのにピアニッシモだったね。




この人数ならフォルテは限界があるわけだから
ダイナミクスの幅を広げるとしたら
この団体のようにピアニッシモにこだわるのが
正解だと思いますよ。




それをやり過ぎるとわざとらしくなるし、
発声がちゃんとしていないと
単に「届かない弱音」になってしまう。
その点G.U.は説得力があった!




そうそう、あのピアニッシモには
確かに説得力がありましたね。




この曲の持つ面白さがちゃんと出ていましたよ。




あと、ピアニストの長尾優里奈さんの伴奏が
合唱を邪魔せず凄く好きでした。




合唱とちゃんとアンサンブルしていましたね。
前も聴いていて思ったんですけど
ピアノが歌い手さんと一緒に歌っているんですよ!




あー、そんな感じ! ピアノ良かった!




団員みなさん、この曲が好きだと思う!




自由曲1曲目
Vytautas Miškinis作曲
Dum medium silentium
(すべてのものが静寂の中にあった時)




この曲もピアニッシモが上手くて。
それと、こう言っちゃなんですけど、
ありがちな和音じゃないですか。




うん、ありがちな和音をありがちに繰り返してる(笑)。




…だけど、あれだけピシーっと揃うと
カッコイイですよね!



一同、同意。
美しかった! メチャメチャ良い音してるなー!って。
などの賞賛の言葉が続く。




遠近法のような・・・。




そうそう! 自分も音の遠近感ってメモしてる!(笑)




バランスだし、声の出し方の良さでもあるよね。




すべてを磨き上げればああも演奏に力が宿るのか、と。





自由曲2曲目
Ēriks Ešenvalds作曲
Nunc dimittis
(いまこそあなたは僕を去らせてくださいます)





課題曲と自由曲1曲目は
弱音の美しさをじっくり聞かせる演奏で。
良いんだけどさぁ、キミたちピアノしかないの~?
…と思うオレを見透かすように!




見透かすように(笑)。




いきなりフォルテッシモで歌い上げる!
やられた~!って思ったね(笑)。




うん、カッコイイ!(笑)




プログラミングが上手かったですね~。




そのフォルテッシモも吠えるのではなく、
上品でした!




男声のハモリの感覚も抜群でしたよ。




いやあ、ユースの団体とは思えないくらいでした。
指揮者も若いんじゃないですか?




1991年生まれの社会人1年目だとか・・・。




えー若い! 凄いね!(と、驚く参加者たち)




指揮者も団員さんも若い人たちだけで
あれほどの演奏を作り上げられたのは凄い。




…やっぱり関西の学生さんは凄いね。




うん、関西の学生さんは本当に熱心で積極的で。
そういう底力を感じましたね。



そうだね、育てるシステム、環境が
関西は他の地域より充実している印象がある。
もちろん今日のG.U.Choirの演奏の素晴らしさは
指揮者や団員さんの
才能や努力あってこそなんだけど!




《文吾の感想》

いやあ、良かったですねG.U.Choir!
昨年も聴いていたんですが
朝一番の演奏のためか、あまり記憶に残っておらず。
今回は最初、椅子の背もたれに体を預け聴いていて。
しかし、どんどん前のめりになってしまいました!

課題曲は練られた発声による語り口の巧さと繊細さ。
中間部のピアニッシモには本当に背筋がゾクッと。
この曲のふしぎな世界の魅力が
ピアノとの良いアンサンブルで伝わってきました。

自由曲:ミシュキニスは
音の充実にハーモニーのセンスを感じさせ。
リズムも単に繰り返しではない
全体から考えた緊張、切迫感が加味されているようで。

そしてエセンヴァルズ!
あのフォルテッシモの歌い上げには震えましたね!
さらにソプラノのソロが入る箇所には
その美しさに目が潤みました・・・。

音の遠近感、ステレオ効果、つまり音響空間というものに
優れたセンスを持った指揮者なのでは?


プログラミングの上手さ、
若さゆえの繊細なセンス、音楽の説得力と
納得の観客賞1位です!





ツイッターでは


自由曲はもちろん、課題曲の説得力が冴えて聞こえました。



課題曲が部門で1番好きでした♪




などの感想があり、
投票用紙では

 

 

さわやかな声!

 



ピアニッシモでしっかり鳴っていた。
発声も良く、特に自由曲が素晴らしい。




決して砕いて取る事の出来ない、
今そこにある架空の鉱物





などという感想がありましたよ。
(・・・投票者に詩人がいる…!)





大学ユース部門観客賞第1位ということで
指揮者の山口雄人先生から
メッセージをいただきました。


この度は数ある名演の中から
G.U.Choirをお選び頂きありがとうございます。
私達は三年前に数人の仲間と結成し、
翌年からコンクールに出場して以来
幸運にも三年連続で全国大会の舞台に立ち、
今年は念願の金賞を頂く事ができました。

この3年間G.U.が大事にしてきた事は
本当に少ない人数や練習時間の中で
いかに「個人が練習に努力を持ち寄る事」が出来るか、
私の課題はいかにその努力の方法を
具体的に示す事が出来るかでした。

階名唱による音の取り方や
音楽の設計図である楽譜への書き込み方、
音楽の各要素に対するアプローチ方法を
可視化する事で基礎を徹底的に積み上げ、
団員と共に今日のG.U.を築き上げて参りました。

私個人の今後の目標としては、
従来の指導者依存の合唱練習から
「合唱団員にこそ具体的な努力の形を!」という
団員主導の新しい合唱練習の改革に向けて
邁進したいと思っています。
今後ともじーゆーをよろしくお願いします!

 

f:id:bungo618:20151211203825j:plain

 

 


山口先生、ありがとうございました。
音楽、合唱へかける熱い志が伝わる
大変素晴らしいメッセージと思いました。
G.U.さんの具体的な指導内容も知ることができ、
嬉しくなりますね。

また演奏を聴かせてもらう機会を
本当に楽しみにしています!




 

 

 

 

 

 

 

 

 



<大学ユース部門全体を振り返って>





技術的な差は多少あるかもしれないけど
「なんとなくやっている団体」が
どこも無かったのが良かったですね。




そうだね、きちんと曲に向き合っている
団体ばかりだった。




ユース団体がこれだけ素晴らしいと
ひとつ懸念があるんですが・・・。




なに、懸念って?




ユース合唱団の団員さんが
ユース部門の対象年齢28歳以下じゃなくなったら
どうなってしまうのか?ということなんです。
その人は違う団体に移ることができるのか?
それとも・・・




どこかのアイドルグループみたいに卒業?(笑)




うーん、だけど他団体へ移るとか
合唱を止めてしまう可能性も含めて
個人や団体それぞれの話だから難しいよね。

 



大学合唱団の団員さんも卒業したら
新しくユース合唱団を立ち上げるかもしれないから
コンクールに関わろうとしている団体なら
これから大きくなっていく問題かも。




例えばG.U.Choirさんは
指揮者と団員さんが同年代だったら
あと4、5年で決断の時期が来るわけじゃないですか。




でも、あれだけの演奏をするなら
将来のビジョンもあるんじゃないかな。




団体ごと一般部門に自然に移行できれば良いんだけど…。




そこを間違えてしまうと無くなってしまう団体が
いっぱいあるよね・・・。




あ~。(一同、ため息とともに)




就職、転勤、結婚、出産・・・
合唱活動を続ける上で
難しいことはいくらでもあるからね。




今はユース部門かもしれないけど、
将来的には一般部門へ行って欲しいなあ。
勝手な望みかもしれないけど。




今、ユース合唱団に参加しているなら、
どうやって発展させて、
そして、どうやって続けていくか考えて欲しいですね。




自分たちの合唱団も大学生の時に立ち上げて、
今で言えばユース団体だったわけですよ。
それから20年経って、
今もその団体を続けている身からすると
合唱団も続けて欲しいな、と。




あれだけ素晴らしい演奏をした
大学合唱団、ユース合唱団が
数年だけの輝きにならないことを願います。
自分たちは応援することしかできないけど…がんばって!





(観客賞座談会:大学ユース部門 おわり。

 室内合唱部門の座談会へ続きます)