今回は昨年読んで良かったエッセイ集2冊を。
馳星周「喰人魂」
軽井沢に住むノワール作家:馳星周の
日本各地、香港、アメリカ、ヨーロッパのグルメエッセイ。
食べる前と食べた後の感情の振幅の激しさ。
「こんな若い料理人のパスタが旨いわけがない」
→「日本でこんなに旨いパスタ食ったことがない!」とか(笑)。
あざといぐらいのドラマ性が盛りこんであり夢中で読みました。
馳星周の作品は「不夜城」ぐらいしか読んだことがなかったけど、
こんなグルマンだったんだ、と驚き。
しかし世界各地でウマイもん食ってるよな~。
クリントン大統領も絶賛したという
「燻」のオムレツリゾット、一度食べてみたいものだ。
料理本好きにはオススメ!
そういや栗友会の人がバスクに演奏旅行へ行って
「バスクは美味しかった!」と言っていたが馳氏も同じ事を書いていた。
「イタ飯よりバスク飯の方が断然旨い」。
日本人の味覚とバスク人はかなり似通っていて、
バスクの料理人に自分は日本人だと告げると顔が輝くそうな。
「味がわかる奴が来た!」ってホントかいな(笑)。
岸本佐知子「なんらかの事情」
講談社エッセイ賞受賞の「ねにもつタイプ」以来6年ぶりのエッセイ集。
エッセイと言うよりは岸本さんの世界への違和感を、
優れた視点と巧みな文章の技で読者にも共有させる、
「エッセイという名を借りた岸本ワールド」と言っても良いもの。
相変わらず面白い!
最初の「才能」はレジに並ぶといつも遅いという平凡なネタだが
岸本さんにかかると冒頭がこうだ。
「もしもこの世にレジで一番遅い列に並んだ人が優勝する競技があったら、
私は確実に国体レベルで優勝する自信がある。
ひょっとしたらオリンピックでも
メダルを狙えるくらいの才能ではないかと思う。」
「今日も私の才能は炸裂した。」
そして数々のありえないアクシデントで
岸本さんの並ぶレジは順調に遅れていく。
具体的なアクシデントの模写と、
架空のレジ並び遅い競技の対比で平凡なネタが全く異形の物に変わる。
何度も声を上げて笑わせられ、
読み終わった後は世界が少し違って見える良エッセイ集です。
次回は昨年読んで良かったノンフィクションを。
冊数が多いので2回に分けると思います。