全5ステージ、どれも熱と力と気合が
目一杯こもった演奏会だった。
第4ステージの邦人合唱曲のステージでは
さすがにソプラノの疲れを感じたが、
それでも委嘱初演ステージでは持ち直したのが凄い。
どの曲も演奏に抜けが無く、
選曲も息をつくひまが無いものなので
「ここまで目一杯じゃなくていいから、
次の演奏会は10年後じゃなく、
せめて5年後にやってくれ!」なんて声も。
南は沖縄、北は東京など日本各地から
多くの観客が集まったこの演奏会、
その期待に応えようとした結果の
目一杯の選曲、演奏だったのだろう。
この日の打ち上げでゲストの方から
「MODOKI演奏会のチケットは1500円だが
交通費を含めると
ミラノ・スカラ座のチケットが余裕で買える!」
という発言が笑いを取っていた。
自分も笑いながら(…でも確かにそうだ)と考えていた。
前日に選りすぐりのプロフェッショナルによる
素晴らしいオペラを聴いていただけに、
アマチュアでは日本有数の団体だが
佐賀までMODOKIの演奏会へ行く意味は何だろう?
打ち上げの場、ビールでほろ酔いの頭で
この日の演奏会の終わりを思い返していた。
ステージ上へ呼ばれ
指揮の山本さんと力強い握手を交わす北川先生。
北川先生はそのまま合唱の中へ入り、
山本さんからアンコールに北川先生の「ここから始まる」をと。
私には夢がある
どこまでもどこまでも
世界の続く限り、あなたと二人で探してみたい夢が
優しく、慰撫するような歌が会場を包んでゆく。
そうだ、この曲は4年前のコーラスガーデン佐賀で
自分も歌った思い出の曲だ。
歌は自分を記憶の旅に引き込む。
抑えられた照明の中、指揮をする山本さんや
一心に歌うMODOKIの人たちを見ながら、
コーラスガーデンや他の場所、
他の歌の記憶の数々を反芻し、
そして、こんなことを思っていた。
(アマチュアの演奏はプロには及ばないかもしれない。
真のプロが到達する芸術的な感動も与えられないかもしれない。
しかし足りない、至らないかもしれないが、
それでも一心に高みを目指すことで
アマチュアならではのそれぞれの人となり、
生きてきた道のようなものが演奏から滲み出てくるのではないか。
それは音楽の本質としては夾雑物かもしれない。
だが、自分も持っているその夾雑物と通じ合い、
響き合うものが確かにここに存在するのだ・・・)
夢を見ること、歌を歌うことで
私とあなたが共にいることを
思いをそっと胸の裡へしまうように
照明が消され、この日の演奏会は終わった。
明かりがつくわずかな間に
目に溜まった涙をぬぐった。
会場の外へ出ると通り雨があったようだ。
今までMODOKIと歌を通じて、つながっていた人たちとの昨日。
同時に未来を感じさせるような、そんな風景。
「ここから始まる」
この日のMODOKIは、まさに題のような演奏会だった。
(MODOKI演奏会感想 おわり)