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第30回宝塚国際室内合唱コンクール感想 その2

 

 

<ルネサンス・バロック部門>感想の続きです。

 

 


銀賞は安積合唱協会(福島・15名・混声)
昨年と同じPalestrina 「Missa Papae Marcelli」から
今年は「Credo」。

昨年は「Kyrie」「Gloria」を演奏されていました。
ゆったりとした音楽から
この曲へ充分共感されているのが伝わる演奏。

ただ、練習不足か当日の不調かはわかりませんが
そのゆったりしたテンポに表現が追い付かず
やや雑に感じてしまう部分がいくつか。
音楽の始まりもひとつだけの決め事になっているような。

安積合唱協会さん、次の日の無差別級グランプリ大会では
「これだよ!」という見事な演奏を聴かせてもらっただけに
この日の演奏は期待していた分、少し残念。

しかし銀賞という結果からもわかるように
フレーズの歌い方やアンサンブルは変わらず高度なもの。
この曲を歌う喜びというものが切々と伝わってくる演奏でした。

 

 

もうひとつの銀賞受賞団体は

《EST》シンガーズ(三重・20名・混声)

向井正雄先生の指揮でClaudio Moteverdi

「Messa a 4voci da capella」から「Credo」を演奏。

 

《EST》さん、他部門でそれぞれ

女声、男声のグループで出場されていたんですが

個人的には混声の《EST》シンガーズさんの演奏が一番良かったなあ。

 

まず混声体としての豊かで充実した響きも良かったんですが、

さらに細やかな表情付けで演奏される旋律。

その旋律も自然に流れと空気を感じさせるもの。

 

あと、《EST》さんのいつものイメージとしては主張の激しさ、

決して馴らされない魂のようなものを感じてしまうのですが、

このグループではほとんどそういったものは匂わず。

指揮の向井先生が一歩引いたところで音楽をまあるく作っているような。

それゆえ、作品の本来あるべき形、魅力が浮き出た印象です。

 

「今まで聴いてきた《EST》さんの演奏とは違うぞ?!」と

良い意味で驚きがありました。

 

 

 



金賞はThe Singers Vocal Ensemble(シンガポール・8名・混声)
シンガポールの主な室内合唱団や声楽アンサンブル等から集まり
プラハの音楽国際フェスティバルで
最優秀少人数コーラス賞を受賞したこの団体。

1曲目は
Orlando di Lasso「Carmina Chromatico」から。

 


 

音楽の始まりから驚く。
指揮者がいないアンサンブルの常として
例えばメンバーの一人がテンポを示すため手を振ったり
大きくブレスをするなどの予備動作があるものだが
この団体はほとんどそういうものがない。
8人のメンバーへ全く同時に神の啓示が降りたかのように
自然と音が生まれ、旋律が、音楽が流れていく。


Claudio Moteverdi「Si ch'io vorrei morire」でも
単なるアイコンタクトではなく、
誰が誰へ向かって何を歌っているのか、
そしてそれを誰が聴いているのか、というのが明確だ。

音楽が流れている中、
男性が隣り合う女性へ囁きかけるように歌う。
女性はその歌に答えるため歌を紡ぐ。
そして歌う女性を見つめる男性たち・・・という風に。

指揮者無しのアンサンブルの難しさは
私も少しは理解しているつもりだが、
それでも大きな予備拍や大げさなブレスは
はたして音楽、聴く側の邪魔になっていないか。
演奏中のアイコンタクトが「アイコンタクトのためのアイコンタクト」、
つまり手段が目的化していないだろうか?
音楽の合図をとてもスマートに、最小限に、
何より音楽の一部として演奏する
The Singers Vocal Ensembleから気付かせられた。


この団体、各個人の能力が大変高いのに
それをことさら誇示するのではなく、
ごく自然に聞こえる発声というのもまた凄い。


最後のOrlando Gibbons「O Clap Your Hand」は
この空気、空間、音を感じ、
「今」歌っている!
そんなライブ感が伝わる素敵な演奏でした。
うーん、この団体が聴けて良かった!!


コンクール終了後の交歓会で
審査員の本山秀毅先生へこの団体について尋ねると
やはり個々人の能力の高さについて言及された後、
音楽の始まりについて、空間で音を創っていますねと仰られた。

「空間で音を創る」!

さすが本山先生、的確な表現だなあ…と感心したのでした。


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<ロマン派部門>は国内の3団体が出場。
金賞無しの銀賞1団体、銅賞2団体。

金賞が無いことからも感じられたのだけど、
やはりロマン派の演奏って難しいな…と。

浅く楽譜を読んだだけでは表わせられない、
言葉とリズムの抑揚、フレーズのうねりから生まれる
細やかな感情表現、振幅などを期待してしまうのだけど
音は美しいがその先の深い表現まで今一歩及ばなかったり、
強い想いゆえか一色で塗りつぶされ
表現が陰影として感じられなかったり・・・。

3団体とも技術力が高いだけに、

さらに豊かな表現をどうしても期待してしまいます。



今年の全日本合唱コンクール、
混声の課題曲の一つがMax Reger「Nachtlied」なんですけど
どんな演奏が聴けるんでしょう。
私も及ばずながら勉強しなくちゃなあ。

 

 


ここで休憩。
一緒に聴いていた高三さんとすぐにホールを出て
近くの商店街へ。

 

 

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なんとなく入った定食屋で頼んだ、
はもの天ぷら定食が揚げ立てで
衣はカリッと中はむっちり!
ご飯もつやつや、味噌汁味わい深く、
野菜の炊き合わせも素材の良さが感じられ
アタリ!のお店でした。




(つづきます)