東京国際合唱コンクール感想:その4(混声合唱部門)





日付が変わって7月29日(日)、9:15から混声合唱部門の開始です。
6団体の出場。
私が格別印象に残った団体の感想を出演順に。
(記された人数は不正確な場合があります)

 

審査結果はこちら ↓ 

 

 

Kammerchor "Hiroshima Kantorei"
女声20名、男声14名。

2曲目のMendelssohn「Zum Abendsegen」は混迷から減衰しながらの解放に祈りが込められ、ソプラノの歌い方も優れていました。
3曲目のMendelssohn「Am karfreitage」はドイツ音楽の香り、深さが感じられ。
和音の精度、音楽の推進力にやや疑問はありましたが、1曲目のPurcellなど名曲に正面から向かう姿勢が素晴らしい。
一番良かったのは最後に演奏した千原英喜先生の課題曲「あかあかや」。
月を愛でるこのテキストに、酒を飲む男ども、遊女?の戯れ(恐怖を感じさせないヴォカリーズが◎)、また相撲では無く歌舞伎を感じさせる足拍子など、日本的な情緒と間が伝わり、とても良かったです。84.9点 銀賞





University of Mindanao Chorale

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昨日の室内合唱部門で金賞1位だったこの団体。
プログラムと曲順が違ったので、感想が間違っている可能性もあります。

Robert Lucas Pearsall「Lay A Garland」 最初から豊かに広がる声、歌にまず魅了されてしまいます。
・・・朝の9時代ですよね?!
Feliciano編曲「PokPok Alimpako」はとても軽やかに跳ね、リズムの面白さを表現。
ミュージックボックスのような機械的な歌唱も優れ。(「パピコパピコ」って言ってなかった?)
テンポアップしても乱れず、そのスピードの爽快さと楽しさ!
Magor Bucz 「A Nap fivérének imája」はまず勢いあるフォルテッシモで充分鳴らし。
そこからのなめらかに静かなフレーズへと別団体のように切り替わる歌唱の鮮やかさ。
最後に演奏した課題曲「あかあかや」は女声の、ホールを広げるような空間を支配する説得力。
日本的情緒とは違いましたが、それはそれで納得させられる完成度高い演奏でした。

室内合唱部門と同じく、高度な発声と魅せることを心得た、余裕さえ感じるステージ。納得の金賞1位 90.6点!

 

 






Chœur Clarté(女声17人、男声11人)
幕張総合高等学校のOBによって昨年発足した団体とのこと。
課題曲「あかあかや」は「ぷしゅー」音を女声に配する面白さ。
良い声が豊かに響きます。
女声のヴォカリーズは他の海外団体と同じくホラーのような。
アタッカで演奏された間宮芳生「おぼこ祝い唄」は力強く、ヴォカリーズのニュアンスが優れて。
Mendelssohn「Psalm 43」は後半の盛り上がりが迫ってきます。
最後のBrahmsなど、全体に曲想が変わっても響きと歌い方が同じ傾向はありましたが、山宮篤子先生という優れた指揮者の元で、若い合唱団がこれからどう成長するか楽しみです。85.4点 金賞3位。


 

 



ベラルーシからのПолифоникаPolifonica 女声17名、男声9名)

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音程など難はありましたが「どんだけ出すの⁈」とベースの低音の深さと響き!
Victoria「Ave Maria」はソリストからずっとひとつの流れで止まらない。
Bortniansky「Te Deum」は味わいあるソリスト含め激しさ、勢いが楽しく。
常に横に流れる音楽にも魅力を感じました。
ロシア音楽、いいな…としみじみ好感を抱く団体。​81.0点 銀賞

 

 



最後に出場された東京のCombinir di Corista(女声18名、男声16名)はやはり素晴らしかった!

入場から音楽が始まっている課題曲「あかあかや」
深く強い男声は扇子を持ち、邪を払い?、舞う様子が目に残ります。
始まりは力強く、かつ音楽の切り替わりが鮮やかなBrahms「Warum op.92-4」。
Lotti「Crucifixus」は緊張感を保った持続音と表現の彫深さ。
そして来て欲しい音と表現が間違いなく来るBruckner「Christus factus est」。
重いストレートを何度も喰らったような力強い演奏。
全体に集中力を切らさず、幅広い表現力に圧倒されました!
88.7点 金賞2位。

 

 

 






混声合唱部門はルネサンス・バロック時代またはロマン派の作品を1曲以上演奏するということで、ヴィクトリア、メンデルスゾーン、ブラームスなどの名曲が聴ける喜びがありました。
あと千原英喜先生の課題曲「あかあかや」のシアターピース的な解釈、その表現にも注目でしたね。




(現代音楽部門に続きます)