観客賞スポットライト 室内合唱部門 その1

 

 



1日目、11月23日土曜日。

 

 

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ロームシアター京都 Photo by 山氏@安芸さん

 

 



昨日までは大学ユース部門に出場の団体をご紹介していました。
13:19から14:15まで約60分の休憩のあと、24名以下の室内合唱部門の始まりです。

こちらの部門は人数が少なめなため、個々の「これがやりたいんだ!」という想いが強く伝わってくる部門です。
だけど客席がいつも寂しめ。
大学生のみなさーん! 
全団体聴いてとは言わないから京都観光前にちょっと聴いていきませんかー?!
卒業して合唱団を作るときの参考になるかもしれないよーー!!


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それでは室内部門へ出場の団体をご紹介しましょう。
今回は3団体。

最初の団体はこの部門で唯一の男声合唱、そして室内部門では初出場になるこちらの団体です。






1.青森県・東北支部代表

みちのく銀行男声合唱団

(男声13名・職場部門から8年ぶりの出場・第30回大会から9回目の出場)


8年前、青森での全国大会:職場部門出場時には14名で木下牧子先生の「祝福」と廣瀬量平先生の「天のベンチ」を演奏されたみちのく銀行さん。
職場部門が無くなってから、室内合唱部門では初めての出場です。

団員さんからメッセージをいただきました。 

 

 

私たちは前身の合唱団である「弘前相互銀行男声合唱団」の設立から数えると結成60周年を迎えております。
普段の主な活動は全日本合唱コンクールや声楽アンサンブルコンテストへの参加、青森県内で開催される各種合唱祭への参加を行っています。
メンバーは青森市内外の支店でバラバラに勤務しており、練習は月1回~2回、1回の練習時間は3時間と限られた時間ですが、密度の濃い音楽づくりを目指しています。
今回幸運にも全日本合唱コンクール全国大会への出場機会をいただきましたが、東北大会の表彰式の際に「全国出場団体」として呼ばれた時は、団員一同うれしさよりも驚きと戸惑いが勝っておりました。

 

 

結成60周年とは凄いですね!
職場合唱団、しかも男声ということで練習回数などは厳しい部分があるようですが、それゆえ全国出場に嬉しさよりも驚いてしまった、ということでしょうか。

みちのく銀行さんの課題曲はM4 物語(「Enfance finie」から) (三好達治 詩/木下牧子 曲)
自由曲はOla Gjeilo「Ubi Caritas」
Joshua B. Himes「Ave Maria」

これらの選曲理由はなんでしょう?

 


今回演奏する課題曲ならびに自由曲2曲はアンサンブルを主体とする私たちの団体に曲調や歌詞の情緒等がぴったりと合うのではないかと考え、これらの曲を磨いていこう!と取り上げたのがきっかけです。

23日の演奏日当日は、全国大会という素晴らしいステージに立って歌うことを楽しみながらも、聞いてくださる皆様に私たちの音楽・想いが届くように心をこめて演奏したいと思います。

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2017年度の東北大会での写真ということ。



ありがとうございました。

「Ubi Caritas」はGjeiloの大変有名な美しい作品。
Joshua B. Himesは1987年生まれのアメリカの作曲家のようですね。
「Ave Maria」は敬虔な信仰心が感じられる作品です。 
(全く別の曲想の混声「Ave Maria」もありましたが、こちらも大変好みの曲でした)

東北支部大会の演奏を聴いた方の感想では


自由曲は2曲とも、弱音の美しさが引き立つ繊細な音楽が印象的でした。
ぴーんと糸の張ったppの静謐な緊張感、そこから曲の盛り上がりに向けても力で押さず音色で聴かせるfが上品で。

その特色は課題曲「物語」でも同様で。
哀切感漂う表現が、この曲の今まで聴いたどの演奏とも異なり、非常に新鮮でした。

 

…とのこと。

課題曲も含めて、現代音楽的な効果を挟まない、全3曲に「歌」がある選曲にみちのく銀行さんの姿勢が現われている気がします。
8年ぶりの全国大会、みちのく銀行さんの音楽と想いが会場に満ちますように。


 




続いて北海道から常連と言っても良い女声合唱団の登場です。








2.北海道・北海道支部代表

ウィスティリア アンサンブル

(女声17名・3年連続の出場・第60回大会から10度目の出場)


藤岡直美先生が指導された枝幸、岩見沢、札幌の中学校OGの合同団体。
今年で結成19年目、以前は「枝幸ジュニア合唱団」という団名でした。
その声は北海道の冬を思わせるクリスタル・ヴォイス。

昨年の札幌の全国大会では、委嘱曲の信長貴富「アイヌ民謡による無伴奏女声合唱曲集『神さま、飛び立つよ』」を演奏。
「団員さんの年齢も上がって、音楽性も高くなった」
「室内合唱のアンサンブル感が良く出ていた」など好評でした。


今年の演奏曲は
課題曲F1 Gabriel Archangelus(Francisco Guerrero 曲)
自由曲に瑞慶覧尚子:女声合唱のための「なんと なんと なんしょ」より「1.なんと なんと なんしょ」「4.とほせんぼ」

F1のゲレーロを演奏するのは全部門でウィスティリアさんだけなので聴くのが楽しみですね。
「なんと なんと なんしょ」は「淵上毛銭の熊本弁によるユーモラスな詩を、リズミカルに時に幻想的に表現した作品」だそうです。
なるほど、リズミカルな「なんと なんと なんしょ」と幻想的なヴォカリーズから始まって軽やかなフレーズが交差し、最後は明るいフォルテッシモで終わる「とほせんぼ」という取り合わせ。
昨年のアイヌ民謡を題材にした選曲から一転して南の地の曲ですが、きっと見事に演奏してくださることでしょう。






続いては10年ぶりに出場のこちらの女声合唱団です!

 

 

 





3.埼玉県・関東支部代表

La Mer
https://twitter.com/lamerchorus

(女声24名・10年ぶり・第62回大会から2回目の出場)


La Mer (ラ・メール)さんは、2006年11月、浦和第一女子高等学校音楽部創部60周年の記念演奏会を機に、指導者の大竹教子先生のもと、卒業生OG有志で結成された女声合唱団だそう。

今回の選曲は課題曲F4、自由曲:木下牧子「春二題」より「あけぼの」「春は来ぬ」。
どういう理由で選曲されたのでしょう?

団員さんからメッセージをいただきました。 

 

 

今回、La Merは10年ぶり2度目の出場です。
関東大会では台風のため出場を断念した団体、順番が変更になった団体、思うように練習が出来なかった団体が多くあります。
当たり前だと思っていたことが当たり前ではないことを痛感しました。
そんな中で代表に選んでいただいたことに、いつも以上の感謝の気持ちを込めて、京都の地で全力の歌を届けます!

今回私たちは、課題曲F4「その木々は緑」 自由曲「あけぼの」「春は来ぬ」を演奏します。
課題曲を初めてピアノと合わせた時、全員の頭の上に「?」がついたことは、今ではよい思い出です(リズムが分からなくなってしまった…)。
若さ溢れる曲ですが、言葉を大切に、少し大人になった私たちにしか出せない、鮮やかさや爽やかを表現したいと思います。

自由曲の2曲は2012年にコンクールで演奏したことがある作品です。
その時は曲を掴みきれず、苦しい思いをしたのですが、数年を経て、「今なら分かる気がする!きっとすぐ出来る!」という謎の自信が芽生え、今回2度目の挑戦です。
しかし、やはり一筋縄ではいかず、前回のような苦しさを味わっていました。
前述した謎の自信に、今からタックルしにいきたい。
そんな中で、コンクールには参加しない団員が、曲を研究し、練習中の歌を分析し、毎日熱いレポートで叱咤激励をしてくれたおかげで、今ようやく苦しみが楽しさへと変わってきています。

あけぼのは、静かな夜明けから始まります。
練習の苦しみから一筋の光を見つけられたように、繊細な音程の中に、小さな希望を見つけられるような音楽をお届けしたいです。
春は来ぬは、あけぼのと打って変わって、軽快なリズムに乗せて、春が来た喜びを歌います。
3曲目ということもあり、だいぶ疲れも見えてくるところですがそこはグッと堪え、軽やかに華やかに、そして美しく歌いきって、翔んで埼玉に帰っていきたいと思います。

 

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関東支部大会での写真ということ。

 

 

 ありがとうございました。
「埼玉県民には全国出場でも祝っておけ!」…ですね。(「翔んで埼玉」ネタ)

都留文科大学合唱団さんもそうでしたが、台風19号の影響で、今年の関東支部大会は開催を危ぶまれる事態になりました。
書かれたように「当たり前だと思っていたことが当たり前ではないこと」を大事に思いたいものです。

10年前の全国大会、La Merさんの若い感性で歌われた「ほたるたんじょう」、音楽の歌い分けが鮮やかだった「嗚咽」「野茶坊」が記憶に残っています。
今回の演奏曲も、7年前のコンクール曲ということだそうですが、少し大人になられたことによる作品の捉え方の変化を、楽しくも興味深く読ませていただきました。

全国大会時、京都は冬が訪れ始める頃ですが、「春は来ぬ」…春の訪れの喜びと、La Merさんの10年ぶりの全国出場の喜びを重ね、華やかに会場を染めていただきたいと願っています。





(明日に続きます)