《観客賞結果発表・同声、混声合唱部門》

《観客賞結果発表・同声合唱部門》

 


第5位VOCI BRILLANTI

第4位カンサォン・ノーヴァ

第3位Mu Project

第2位monosso

そして第1位は…

 


合唱団お江戸コラリアーず

 


でした。おめでとうございます!

 

 

 

 

《観客賞結果発表・混声合唱部門》

 


第5位合唱団ぽっきり

第4位CANTUS ANIMAE

第3位VOCE ARMONICA

第2位Combinir di Corista

そして第1位は…

 


クール シェンヌ

 


でした。おめでとうございます!

 

 

 

《観客大賞結果発表》

 


さらに全48団体から選ばれた『観客大賞』は!

 


合唱団お江戸コラリアーず

 


おめでとうございます!

《観客賞結果発表・大学ユース、室内合唱部門》

《観客賞結果発表・大学ユース部門》

 


第5位東京工業大学混声合唱団コール・クライネス

第4位混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ

第3位福島大学混声合唱団

第2位都留文科大学合唱団

そして第1位は…

 


北海道大学合唱団

 


でした。

おめでとうございます!

 

 

さらに

《観客賞結果発表・室内合唱部門》

 


同率第3位の3団体

合唱団「い〜すたん」

倉敷少年少女合唱団

女声合唱団ソレイユ

 


第2位アンサンブルVine

そして第1位は…

 


合唱団まい

 


でした。

おめでとうございます!

観客賞スポットライト 混声合唱部門 最終回

 







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京都の天気予報。

土曜日 晴時々曇 最低気温10度 最高気温20度
日曜日 曇り   最低気温14度 最高気温21度

・・・だそうです。
まだ数日後なので予報が外れる場合もありますが、倉敷よりあったかいのは有難い。


京都在住(?)の方のこんなツイートも。
情報感謝です!

 

 


月曜から曇時々雨だそうなので、観光される方は傘を忘れずに。



10月30日から21日間に渡って連載してきたこの企画も今回が最終回!
今日は混声合唱部門最後の2団体をご紹介します。



北の地から毎回「癒し」の選曲をされるこの団体です!








15.北海道・北海道支部代表

Baum

(59名・6年連続出場・第64回大会以来8回目の出場)



Baumさんは2009年に札幌で創立。
指揮は同声部門で出場の、HBC少年少女合唱団シニアクラスも指揮される大木秀一先生。
大木先生は札幌の名門合唱部、札幌旭丘高校の指揮者を3年前までされていました。

Baumの団員さんは大木先生のもとに集まった人たちで、完全な札幌旭丘高OB合唱団というわけでは無いそうです。
団名のBaumはドイツ語で「木」の意味。
大「木」先生を慕い集まって作られたことによる団名なのでしょう。


昨年の座談会では


自由曲:ウィテカー「I hide myself」
ウィテカー特有の和音を
整えてちゃんと出していました。

凄く綺麗でした!

男声の響きを高くしようとする気持ちが
見えた演奏でした。
サウンドを持ち上げようとしていた。

地元の団体だけあって、
ホールを鳴らす術をわかってるなという
演奏でしたね。


…という感想がありました。

Baumさんの今年の課題曲は
G2 Ensam i dunkla skogarnas famn(Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲はKim André Arnesen作曲「Infinity」

1980年生、ノルウェーの作曲家、Kim André Arnesenの作品はまさに「Infinity(無限大)」の通り、宇宙の広がりのような神秘的な美しさがあります。




この自由曲の肝であるソプラノソロですが、実際の演奏を聴かれた方の感想では「とても良かった」そうなので期待が持てますね!

今年5月に創団10周年を迎えたというBaumさん。
指揮者の大木先生も11月に札幌芸術賞を受賞されたそう。

ふたつのおめでたいことを弾みに、良い演奏を期待しております!









最後は、名門高校合唱部を母体に知性溢れる演奏の団体です!









16.愛知県・中部支部代表

岡崎混声合唱団

(70名・3年連続の出場・第57回大会以来14回目の出場
 岡崎高校コーラス部OB合唱団も含めると
 第49回大会以来16回目の出場)



母体は今年も全国大会へ出場された岡崎高校コーラス部という実力合唱団。
昨年の座談会では


課題曲G3、
母体の岡崎高校も間宮作品を
演奏されていることもあって
その良さが出ていました。
オーソドックスな中にも
ちょっと民謡っぽさがあって。

4声が合わさった音と響きが
良く考えられているなあと。

男声のサウンドが高い響きだったのは良かったです。

男声…特にベースがデクレッシェンドで
ピアニッシモになるところとか
優しさがあって。
繊細で優れていました。

自由曲:三善晃「嫁ぐ娘に」より
「3.戦いの日日」は
ベースが良かったですね。

「5.かどで」も良かった!

一同 そう! 良かった!など同意。

この曲はテノールが良かった。
「娘よ さようなら」の箇所で
ジーンとしちゃいましたよ。


…という感想がありました。

岡崎混声合唱団さんの演奏曲は
課題曲G2 Ensam i dunkla skogarnas famn (Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲:高田敏子 作詩、三善晃 作曲
合唱組曲「五つの童画」より「4.砂時計」「5.どんぐりのコマ」


団員さんからメッセージをいただきました。

 


今年も我が団をご紹介いただきありがとうございます。
この場をお借りしまして演奏曲についてお話しさせていただきます。

課題曲 シベリウス作曲"Ensam i dunkla skogarnas famn"
私たちが課題曲に外国作品を選ぶのは2010年以来、しかも馴染みのないスウェーデン語という大きな挑戦になりました。
手探り状態での取り組みでしたが、スウェーデン語を学ぶ団員のアドバイスをもらいながら言葉を自分のものにできるよう練習を重ねてきました。
語感や旋律から浮かび上がる北欧の情景に思いを馳せて演奏します。

自由曲 三善晃作曲『五つの童画』より「砂時計」「どんぐりのコマ」
昨年度のコンクール・定期演奏会で高田敏子さんと三善先生による『嫁ぐ娘に』を演奏し、私たちに合っている、共鳴するところがあるという感触を得ました。
同じコンビによる作品を、ということで今年度は『五つの童画』に取り組みました。
『五つの童画』は合唱曲という枠を超えた合唱とピアノの協奏曲のようであるとしばしば評されます。
声だけの部分、ピアノのカデンツァ的部分、そして互いに影響を与え合いながら作品の世界を展開していく部分。
まさに協奏曲の様相を呈しています。
(三善先生は「ピアノ協奏曲」(1962年)も作曲されています。こちらも名作です。三善先生の作品は合唱以外知らないという方はぜひ聴いてみてください)

これまで折に触れ演奏してきた三善先生の作品ですがア・カペラ作品が中心。
声だけでこれだけの世界観を表出できるのかと圧倒されてばかりでした。
今回はピアノ付き作品、しかも三善先生の初期の作品にして傑作との呼び声が高い 『五つの童画』を演奏するということに身が引き締まる思いです。
言葉も、旋律も、ピアノの一音一音でさえも大きなエネルギーを宿しているように感じています。
それらを紐解きながら作詩作曲者の思いを精一杯引き出し、「人間と地球全体をくるむ愛」を歌います。
どうぞお楽しみに!

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今年3月の定期演奏会ということ。


ありがとうございました。

三善作品を多く演奏されている岡崎混声さんの「五つの童画」、楽しみですね。
この全国大会、各部門で必ず1団体は三善作品を選ばれており、この混声合唱部門では4団体!
亡くなられて6年が経っても、いかに先生の作品が慕われているか。
そしてこの大会の最後が三善先生の作品で締められるというのも良いなぁ、と。

>三善先生は「ピアノ協奏曲」(1962年)も作曲されています。こちらも名作です。三善先生の作品は合唱以外知らないという方はぜひ聴いてみてください

昨年のお江戸コラリアーずさん観客賞座談会でも触れたのですが、三善先生は決して「合唱作曲家」では無いんですね。
そう思いながらピアノ協奏曲を聴いてみると、合唱作品と似た音の使い方が、また違ったように聞こえてとても興味深いです。
個人的にはヴァイオリン・ソナタなども好きなんですよねえ。


さて、「五つの童画」という曲のテキストは「童画」という言葉から、子供を対象とする五つの情景を連想しますが、童話がある面では残酷な影が潜んでいるように、この「童画」も例外ではありません。

1曲目から4曲目の「砂時計」に至る音楽は、童の無邪気さと残酷さを表すように音もリズムも響きもよじれ、進み、立ち止まり、跳ね回り、そして時に永遠と思うほどの静寂を感じさせます。
「砂時計」では決して取り戻すことの出来ない、過ぎてしまった時の哀しさを。
生きることで味わう様々な苦しさ、絶望を音楽と言葉で聴く者へ叩きつける。

そして樫の木の子どもである、どんぐりたちへ託すような最終曲「どんぐりのコマ」。
合唱は、眠りを覚ますようにどんぐりへ柔らかく呼びかけ、新しい世界に沸き立つ細やかなリズムの跳躍。
どんぐりたちを新しい世界へ送り出そうとする強い希望と願いの声の力。


この曲のライナーノーツに三善先生が書かれた一節にはこうあります。

どの詩にも破滅や絶望、失意の相をもたらしたと思いますが、
私は、それらを胎生の糧としない愛を信ずることができません



京都での全国大会の最後となる岡崎混声さんの演奏。

前4曲で描かれた破滅、絶望、失意を糧とした上で生まれた、三善先生の愛がこの「どんぐりのコマ」に満ち溢れますように。





<ありがとうございました>

これで大学ユース、室内合唱、同声合唱、混声合唱部門、全48団体のご紹介を終わります。


今年の審査員、栗山文昭先生のお言葉だったと思うのですが。

「酒造りは合唱と似ている。多くの人間がひとつのものを大事に手をかけて醸していくことが」

一瞬で味わっちゃえるのも同じ!…は私の感想。
いや、例えばこの全国大会のステージ、みなさんどれだけの時間をかけられたのでしょう?
半年?いや1年??委嘱作品だったら年単位かもしれません。
それだけ時間をかけ、磨き上げた作品のステージを、わずか十数分が過ぎたら立ち去らなければいけない。


今回の全国大会で、不思議に多く上がった言葉は「30年前」というものでした。
例えば今年、関西学院グリークラブさんが選ばれたデュオウパを初めて聴いたのもちょうど30年前。
CANTUS ANIMAEさんが選ばれた「田園に死す」を聴いたのも30年前。
同声合唱部門のmonossoさんが選ばれた新実徳英先生の「はくちょう」を聴いたのも30年前。
その指揮者:山本啓之さんが、京都エコーさんの演奏された「地上の平和」をやりたい!と思ったのも30年前。

「よく憶えてますねぇ・・・」と山本さんと私、感心し合いました。
30年前という遥か昔に聴いた演奏が、今になっても鮮やかによみがえる。
「いまから30年後に~♪」と歌い始めても、なかなか名曲にはなりそうもありませんが、十数分の演奏が種から育ち、30年経って、確かに自分の体の一部を形作っている。

30年後、私が生きているのはかなり難しそう。
でも、大学ユース部門に出場される方はまだまだ元気な方がほとんどでしょう。
ステージは十数分で終わりますが、その先の永い未来へ。
たった今聴いたように、30年後にも鮮やかに思い出せる演奏を。

そんな演奏が京都のステージで生まれることを願っています。


そうそう、山本さんは「地上の平和を歌った時の京都エコーの団員さん、会場におるかなぁ・・・」とつぶやいていました。
もしいらっしゃったら、素敵ですね!


* * * * * * * * * * *


今回も本当に多くの方にお世話になりました。
すべての合唱団のみなさまにお礼を申し上げるのはもちろんですが、メッセージをご寄稿して下さった方、団員さんをご紹介して下さった方、写真を送って下さった方・・・などなど。
もう一度この場で、お名前だけを記して、この連載を終わりにしたいと思います。


SHIGEさん、チャッピーさん、福島大学混声合唱団:Aさん、ノブナリさん、渡邉さん、宇髙さん、上月さん、久保さん、石川さん、林さん、中嶌さん、髙田さん、同志社グリークラブ広報担当者さん、北海道大学合唱団中の人さん、カイザーさん、岡田さん、三上さん、神さん、La Merツイッター担当者さん、内田等先生、よこださん、ふじもりさん、合唱団まい:Tさん、合唱団まい:Hさん、難波夕鼓先生、池田さん、いよさん、本田さん、山本啓之さん、はるのさん、久米さん、伊藤さん、山脇卓也先生、エリカさん、宮城さん、西澤さん、きらりんさん、La Pura Fuente:Iさん、らむ姉さん、森さん、青木さん、おのださん、村上信介先生、MODOKIツイッター担当者さん、合唱団ユートライツイッター担当者さん、あい混声合唱団:Oさん、CANTUS ANIMAE:Fさん、Mariさん、MARさん、山氏@安芸さん、縄裕次郎先生、阿部さん、Nodaさん、向井正雄先生、Combinir di Corista:Eさん、黒川和伸先生、岡崎混声合唱団:Hさん、超国家主義の論理と心理さん、Dalimさん、たかさんさん、Ken5さん、細てつさん、鯖くん、ぴかーどさん、全日本合唱連盟中の人さん、合唱倉庫さん。


お名前が漏れた方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません。

他にもこのブログにスターを付けて下さった方、読者になって下さった方、ツイッターで「いいね」やリツイートをして下さったみなさま、Facebookで「いいね!」やシェアして下さったみなさま、感想を寄せて下さったみなさま、そして最後に。

読んで下さったみなさまに心から感謝を申し上げます。

ありがとうございました!


(観客賞スポットライト2019 おわり)

 

 

観客賞スポットライト 混声合唱部門 その6

 

 

 

 

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Photo by たかさんさん






今回は各部門の観客賞の投票について!
※混声合唱部門に限り変更があります!


参加資格:
「大学ユース部門」「室内合唱部門」
「同声合唱部門」「混声合唱の部」、
それぞれ全団体を聴いていること。
(その部門の出演者は投票できません)



投票方法は2つあります。
(必ず各部門の全団体を聴いてくださいね!)



1)ツイッターによる投票

投票方法:ご自分のツイッターアカウントで
各部門に専用のハッシュタグ

#大学ユース19
#室内合唱19
#同声合唱19
#混声合唱19

「ひとつ」を付けて
それぞれの部の終演から審査発表時まで
(大学ユース、室内合唱部門なら18:00まで。
 同声、混声合唱部門なら19:55まで
大学ユース、室内、同声合唱部門は
良かった《2団体》を書いてツイート。

そして

混声合唱部門“だけ”《3団体》を書いて投票してください。

その際、各団体の後に感想を書いていただけると
とても嬉しいです。
大学ユース、室内、同声合唱部門は1団体の投票。
混声合唱部門は2団体、1団体の投票でも結構ですよ。

※昨年、ハッシュタグを間違えた方が
何人かいらっしゃいました。
1文字でも間違うと捕捉できないので
正確にお願いします!


ツイート投票の例:

●●大学合唱団 熱い演奏に燃えました!
 合唱団▲▲ 密なアンサンブルと笑顔が良かったです。

#大学ユース19






合唱団●● 壮麗な混声合唱のお手本!
▲▲ヴォイス 大人数でも繊細な表現が素晴らしかった。
コール■■ この作品の魅力が力いっぱい伝わってきました。

#混声合唱19






ツイッターアカウントを持っていない方は

2)メールによる投票

投票方法:メールアドレス
bungo0618*yahoo.co.jp
(↑ *を@に替えて下さい)

大学ユース、室内、同声合唱部門は良かった《2団体》を書いて送信。
混声合唱部門だけは《3団体》を書いて送信してください。


件名は「観客賞」で。
締め切りの時間は
ツイッターでの投票と同じです。


つまり


1)その部門の出演者じゃない全団体聴いた人

2)大学ユース、室内、同声合唱部門は《2団体》
  混声合唱部門は《3団体》

3)部門終了後すぐに投票


…してくださると、非常に助かります!
繰り返しますが、混声合唱部門“だけ”《3団体》OKです。
他の部門は《2団体》まで!

ご投票よろしくお願いいたします!









今日は3団体をご紹介します。



昨年は素晴らしい委嘱作品の演奏で金賞1位だった団体と言えば?


 

 


12.東京都・東京支部代表

Combinir di Corista

(35名・6年連続出場・第61回大会から11回目の出場)



団HPによると。
多様なレパートリー、すなわち「品揃え」にこだわり、コンビニエンスストアーにちなんで団名を「コンビーニ・ディ・コリスタ」とされた、通称コンビニさん。

昨年の座談会では

信長貴富先生「静寂のスペクトラム」から
「とてつもない秋」、
超絶技巧でしたよね。
そういう高い技術をハイスピードで
次々繰り出すことにまったくハードルが無い、
一番凄い団体だと思います。
素晴らしかった。

課題曲G2は、ここの演奏がほかを圧倒していたと思います。
信長先生の新曲も素晴らしく、
声、音圧、発語、そして音楽全体、素晴らしかった。

コンビニさんは
夏に聴いた東京国際合唱コンクールの
ブラームスやブルックナー演奏も好きでした。

それで今回は「とてつもない秋」でしょう?
この選曲の幅広さと深さと言ったら!
もうコンビニじゃなく総合商社なのでは!!

追い付けないほど疾走感ある音楽、
眩暈がするほどの煌めく情報に翻弄され、
興奮し、圧倒され、最後には
新しい抒情とでも言うべき感情の波にさらわれ、
自分でも説明がつかない涙を流していました。


…という感想がありました。


コンビニさん、今回の演奏曲は
課題曲:G4 雪(「甃のうへ」から)(三好達治 詩/川浦義広 曲)
自由曲:Paul Crabtree「The Valley of Delight」より「Journey」
Ēriks Ešenvalds「Nunc Dimittis」


コンビニ店員さんよりメッセージをいただきました。

 


課題曲:G4 雪(「甃のうへ」から)
かなり早い時期から選曲を決めていたG4、店員の第一印象は、とにかく難しい課題曲!泣。
特に前半の複雑なリズムの絡み合いは、2017年にたっっぷりと取り組んだリゲティのLux Aeternaを彷彿とさせるようで、一部の店員にはトラウマを呼び起こしたようです...笑。
しかしながら練習が進んでくると、サウンドの格好良さ、雪の情景のバリエーション豊かな表現、アンサンブルの妙味に満ちた作品の面白さに、店員一同今ではしっかりハマっております。
今年のG4、お聴き逃し無く…!

自由曲①:The Valley of DelightよりJourney
自由曲1曲目は、カリフォルニア在住でイギリス出身の作曲家ポール・クラブトゥリー(1960-)の作品を選曲しました。
日本ではまだ紹介されたことの無い作曲家でしたが、今年のTokyo Cantatにて、サイモン・キャリントン先生がご提案下さりました。
今回取り上げるJourneyを含む「喜びの谷」は、クエーカー教の一派であるシェーカー教を題材に作曲された全3曲からなる作品で、女性リーダー、アン・リー(1736-1784)のテキストを中心に、アメリカの現代詩人リン・エマニュエル(1949-)のテキストやアメリカ古謡の断片などを交えパッチワーク的に構成されています。
音楽的にもポリフォニックな表現やトリッキーで鳴りにくい配置の和声の扱いが続くかと思えば、はたまた突然シーシャンティー風のテーマが登場する等々、題材・音楽とも色々と詰め込まれた一風変ったユニークな作品です。

自由曲②:Nunc Dimittis   
自由曲2曲目は、エリクス・エシェンバルズ(1977-)の作品を選曲しました。
SSATTBB + solo という編成で、小品ですが、エシェンバルズの静謐で壮麗なハーモニーの魅力に溢れる作品です。
1曲目との対比というところと、あとは2018年の東京国際コンクールで海外団体の力みの無い洗練されたサウンドを目の当たりにし衝撃を受けてから、コンビニが音づくりのひとつの重要課題として掲げていた「ブレンド」に焦点を当てた選曲を、というところで2曲目として決定しました。
ハーモニー重視で精緻に作曲されていて、ブレンドの力が無いと成立しないこの作品を、コンビニのひとつの集大成としてお届けできればと思います!

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合宿での写真ということ。



ありがとうございました。
ポール・クラブトゥリーという作曲家は初めて知ったのですが、リフレインを多用しながらポピュラー的な要素を上手くまとめている非常に美しく聴きやすい作品ですね。
メッセージに記されている楽曲の背景、テキストがとても興味深いです。
「Nunc Dimittis」も、エシェンバルズらしい荘厳な美、後半の合唱とソリストとの絡みが宗教的な法悦を感じさせます。

ポール・クラブトゥリー、エシェンバルズと共に、今年のコンビニさんは比較的シンプルな作品でどれだけ音楽を深められるか?
そんなテーマに挑まれているのかと想像していたのですが、メッセージ中の「ブレンド」という言葉に納得がいきました。
「東京国際コンクールで海外団体の力みの無い洗練されたサウンド」、私が思うに「男声と女声が合わさった響きの理想像」であったり、音楽の流れや和声で柔軟に繊細に響きを変化させることであったり…。
海外の優れた団体を聴き、日本の団体との違いはなんだろう?と考えている自分にとって、その「ブレンド」という言葉は、鋭く言い当てていると感じます。

元々技術的には素晴らしく高度なコンビニさん。
Tokyo Cantatでのサイモン・キャリントン先生によるご指導や、海外団体の「ブレンド」への意識など、更なる進化を目指すコンビニさんの演奏に大注目です!







昨年、「地上の平和」で金賞2位、観客賞2位の団体が登場です!










13.神奈川県・関東支部代表

合唱団やえ山組

(78名・3年連続出場)


指揮者は大学ユース部門で東京工業大学コールクライネスさんを振られる岩本達明先生。

昨年の座談会では

課題曲G2、自由曲共に
歌い手主導の生きた演奏!
音楽が流れていました。

自由曲のシェーンベルク「地上の平和」。
凄く精緻で繊細に
音楽が組み立てられている印象で。

若い歌い手さんが多かったですよね。
なおかつ音楽を専門的に学んでいる団員さんも
多くいることもあって、
非常に精度の高い演奏が聴けました。

音楽を専門に学んでいる方が多いというのは
フレーズ感が一本調子ではなく、
変化をつけようという
意志からも感じられたんですよ。

精度の高さだけではなく、
「この難曲を余すことなく表現してやる」的な
熱さも感じて、
プロの演奏とアマチュアの演奏の
いいとこ取りだと感じました。

ひそやかな入りから感情の爆発までの
表現の幅広さと豊かさ。
この難曲を実に丁寧にフレーズ、
特に和声を精密に創り上げ
説得力ある演奏を聴かせてもらいました。


…という感想がありました。


今年の演奏曲は
課題曲G1 Ave Maria(Tomás Luis de Victoria  曲)
自由曲:Johann Sebastian Bach作曲「Mass in B minor(ロ短調ミサ)」より「Sanctus」「Hosanna」


なんと!バッハのロ短調ミサとは!
しかも管弦楽との協演だというじゃないですか!!

朝日新聞の関東支部大会結果を知らせるやえ山組さんの写真を見ると、確かに。

7団体が全国へ 関東合唱コンクール・大学職場一般部門

この全国大会でバッハを自由曲に選ばれたのは、2011年にharmonia ensembleさんがMotette Nr.3 “Jesu, meine Freude”(イエスよ、わが喜びよ)BWV227を選ばれて以来のはずですし。
管弦楽との協演は第29回大会の福島高校、第47回大会の白河中央中学だけで、おそらく一般の団体では無かったはずです。

やえ山組さんは若い方が多い団だと思うのですが、そういう団体がバッハの超名曲でコンクールに出場というのが凄いですね。
2年前は26名、昨年は60名、今年は78名と人数もどんどん多くなって混声合唱部門で最多人数。
若さと勢いのある団体が管弦楽と共にバッハに挑む!
期待で胸が高鳴ります!








混声合唱部門最多人数の後は最少人数。
しかし声楽的にとても練られた、存在感がある実力団体の登場です。





 

 



14.千葉県・東北支部代表

VOCE ARMONICA
https://www.facebook.com/VOCEARMONICA/

(28名・5年連続出場・第64回大会以来7回目の出場)


 

昨年の座談会では


課題曲G1、
底にある情熱と優しさも感じられて。

弾圧されている悲しみが伝わりましたね。

頭が良い演奏だなあと思いました。
最初の女声2声の絡みも
今日演奏された中で1,2を争うぐらい良かった。

フレーズのふくらみや
ソプラノの高音域から降りるところも
ちゃんと美しさを意識していました。

しっかりとした構成で、音色も素晴らしかった。

自由曲のバーバー「Agnus Dei」
最初からフルスロットルだったよね!(笑)
ソプラノの熱演!
ピアニッシモの安定感!

音程がとても良かったです。
発声も非常に練れていて。

あの曲をあの人数で
演奏したというのが素晴らしいですよ。

この作品を選曲したことがまず凄いし
演奏も逃げずに真正面からぶつかったことを
高く評価したいですね。


…という感想がありました。


アルモニカさんの今年の演奏曲は
課題曲G1 Ave Maria(Tomás Luis de Victoria  曲)
自由曲:Edward Bond詞、Hans Werner Henze作曲「Orpeus Behind The Wire(鉄条網の向こうのオルフェウス)」より「I.What was Hell like?(地獄とはどのようなものであったか?)」
Arnold Schönberg作曲「De Profundis(深き淵から)」

指揮者の黒川和伸先生からメッセージをいただいています。

 

 


今年も文吾さんのブログに取り上げていただけることを大変嬉しく思います。

課題曲
Tomás Luis de Victoria
Ave Maria

nobis pecctoribus 罪深き我ら
を課題曲と自由曲2曲をつなぐキーワードと捉えています。

自由曲
2016年のプーランク「人間の顔」、2017年の三善晃「レクィエム」2018年のバーバー「アニュス・デイ」に続き、平和について聴き手に問いかける選曲を行いました。
今年はアウシュビッツに象徴されるナチスによるホロコースト、現代のウイグル、チベット、香港や台湾について深く学び、考える一年になりました。

自由曲のプログラミングには、A.シェーンベルクの「ワルシャワの生き残り A Survivor from Warsaw op. 46」を重ねています。

Hans Werner Henze
「鉄条網の向こうのオルフェウス」
I. 地獄とはどのようなものであったか?
若き日をヒトラー・ユーゲントとして過ごし、戦後は抑圧的な体制と戦う姿勢を貫き通した作曲家、H.ヘンツェの作品。
軍事政権と秘密警察による監視社会に対する批判がモチーフになっています。
無伴奏の混声12部合唱です。

Arnold Schönberg
深き淵から Op 50b(詩編130)
ナチスのユダヤ政策に反対して1933年にユダヤ教に再改宗した作曲家、A.シェーンベルクの作品。
歌詞はヘブライ語で歌われます。
十二音技法が使用されている無伴奏の混声6部合唱です。


2020年4月25日(土)に東京飯田橋のトッパンホールにて、VOCE ARMONICA第10回定期演奏会を開催いたします。
節目となる記念演奏会ということで、これまで以上にお楽しみ頂ける、とてつもないプログラムを計画中です!
ご来場をお待ちしております。

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関東支部大会とのこと。



黒川先生、ありがとうございました。

ヘンツェの「鉄条網の向こうのオルフェウス」はアルゼンチンの軍事政権に抗議するため作曲されたそうです。
テキストも政治的、社会的メッセージを含んだものだそう。
シェーンベルクの「深き淵から」は亡くなる前年に発表された作品。
どちらも非常に重たく、聴く者を地の底へ引きずり込むような力を持つ現代作品です。

「鉄条網の向こうのオルフェウス」、ギリシャ神話のオルフェウスと言えば、亡くなった妻エウリディーケを黄泉の国から連れ出そうとしますが、妻の顔を見ないという約束を破り、エウリディーケは連れ戻されてしまう…という悲話がありました。
「深き淵から」の「詩編130」には「深い淵の底から、主よ、あなたに叫びます。主よ、私の声を聞き入れてください。あなたの耳を傾けてください、嘆き祈る私の声に」と記されています。

どちらも逃れられない運命の中で苦しむ人間の姿を見るようです。
黒川先生が自由曲のプログラミングに重ねられているという「ワルシャワの生き残り」は語り手、男声合唱、オーケストラのための作品で、テーマは「ナチスによるユダヤ人迫害」。
ワルシャワ・ゲットーでガス室へ送られそうになったユダヤ人たちが、最後に突然ユダヤ教の祈祷文「シェマ・イスロエル(聞け、イスラエル)」を合唱する…というテキストです。


極限状態の中で、音楽はどんな意味を持つのか?

芸術家が命を賭けて音にしたものを、いま私たちを取り巻く状況と重ね、演奏することで問いかける。
黒川先生のここ数年の選曲にはそんな気概を感じられます。
今年の東京国際合唱コンクールにもアルモニカさんは出場され、なんと朝9時代の本番にもかかわらず、この2曲を見事に演奏されたのを憶えています。
あれから約4か月、自らに問い、作品に問い続けたであろう演奏が、京都の地でさらに強く伝わることを願って。



(明日の最終回に続きます)


観客賞スポットライト 混声合唱部門 その5

 




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龍吟庵
Photo by sanographix http://photo.sanographix.net/

 



いよいよ来週に迫った全国大会。
京都府合唱連盟さんの「東山」駅から「ロームシアター京都」までの徒歩ルート動画がとても良いのでご紹介します。

 



ちなみに「京都駅からバスで移動」は大混雑になるのでやめたほうがいい、とのこと。
30年ほど前に京都で学生生活を送られ、今年の10月にも京都を訪れたKen5さんによると


今回は早朝に動きましたが、京都は紅葉の季節になり、京都駅はじめ主要な観光地は「物凄い」混雑です。
かつて行ったことがあるとか、住んでいた私も驚愕するほど。
以前の京都とは違う、というのは現・京都人の方達も認めていました。


…だそうです。
観光に行かれる予定の方はご注意を!

 

 


それでは今回も2団体をご紹介します。
東北からまさに誠実な印象というしかない団体の登場です。


 

 




10.山形県・東北支部代表

鶴岡土曜会混声合唱団
https://twitter.com/tsuruokadoyokai

(56名・4年連続出場・第50回大会以来13回目の出場)




合唱団の個性というよりは、「演奏する曲の個性」を大事にする合唱団。
強い印象は無いかもしれませんが、その演奏の誠実さ、真摯さが染みてくるような団体です。

昨年の座談会では


超良かった! 大好きだった!

本当に正統派で
「合唱とはこういうものだ」と!

「…俺は実直に畑を耕すんだ」。
そういうあったかい音がすると、
本当にほっとするんですよ。

ありきたりだけど「いぶし銀」のような、ね。

自由曲:三善晃「あやつり人形劇場」
奇をてらって何かやるんじゃなく
ナチュラルに演奏してるんだけど伝わってくる。
ある意味、演奏の理想型ですね。

良い意味で
「合唱団の存在感が薄い」んですよ。
キャラクター性がそんなに無い。
「あ〜、この演奏、(団体名)だなぁ」
とかじゃなくて、演奏する曲、
音楽そのものが立ち上がってくる。

市民合唱団的に歴史を重ねてきたんだろうなあ。
そんな雰囲気を感じさせる
「居てくれてありがとう」という
貴重な団体ですね。

続いての三善晃:風見鳥も
緊張感をもって演奏され、
各パートの音色がクリアでバランスも良く、
楽曲の個性が前に出てくる良演奏でした。


…という感想がありました。


鶴岡土曜会さん、今回の選曲は
課題曲:G1 Ave Maria  (Tomás Luis de Victoria  曲)
自由曲:谷川俊太郎詩、三善晃作曲
混声合唱組曲「宇宙への手紙」より「渇き」
今年も自由曲に三善先生の作品ですね。
代表の阿部さんからメッセージをいただきました。

 


今年の選曲パターンも、ここ数年同様に“課題曲はG1自由曲は三善晃作品”となりました。
自由曲の「渇き」は、私たちと同じ東北で活動する青森県の五所川原合唱団の委嘱により作曲され、1994年に初演されました。
鶴岡土曜会としては今回が初めての“挑戦”となります。

“挑戦”はいつも“音取り”に始まりますが、やがて“言葉”に突き当たります。
三善先生の音符に谷川俊太郎氏の詩をうまく乗せることができるかどうか、どのような表現を目指すのか、そもそも私たちの発する音が“日本語”として自然に聞こえるのかどうか、様々な心配事が湧いてきます。

「水に渇く」という言葉は、口語としてはやや不自然な感じもしますが、それも原子爆弾の熱風にさらされたことによる強烈な欲求であることを考えれば、「渇く」に対する目的語としての「水」を一層強く意識するための“詩的な表現”なのかもしれません。
目的語は「思想」「愛」「神」へと移り変わり、そして「何」に…。
どのように歌うのが良いのか、私たちにとってはかなりの難題です。
あと数日ですが「何か」をつかむことができるよう探り続けてみたいと思います。



阿部さん、ありがとうございました。
「宇宙への手紙」の1曲目である「渇き」の詩は、確かに阿部さんが記されるように「口語としてはやや不自然な感じ」があります。

水に渇いているだけではないのです 思想に渇いているのです

「思想」「愛」「神」・・・求めていたはずなのにすぐ「渇いているだけではない」との否定は、まるで逃げ水のよう。
その中に原民喜の「水ヲ下サイ」が挿入されるのが答えのようでもあり。

命を失うような時、本当に求めるものは、突き詰めると何なのか?
読んでいていろいろな解釈が湧いてくる詩だと思います。
最後に「どかんとばくはつ / ちきゅうがきえた」とある2曲目の「あはは」、3曲目に「ふるさとの星」を続けるのも、三善先生の切実な命への問いのように感じられて。

「どのように歌うのが良いのか、私たちにとってはかなりの難題です。」とのことですが。
それでも、作品に自ら語らせるような土曜会さんの演奏がきっと「何か」を掴み、私たちに手渡して下さるような、そんな演奏をされることを信じています。

 

 


さて、私たち鶴岡土曜会では、全国大会から6日後の11月30日(土)に第68回定期演奏会を開催いたします。
今年は11月9日(土)10日(日)に「コロ・フェスタ2019 in 鶴岡」にも参加しましたため、例年以上に恐ろしい日程となってしまいました。
私たちなりの精一杯の演奏をお届けいたしますので、もしもご興味とお時間がございましたら、ぜひおいでください。


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毎年タイトなスケジュール、全国大会と近い日程で定期演奏会を開催される土曜会さんですが、今年はさらにコロ・フェスタも!
コロ・フェスタでの土曜会さんの演奏は大変素晴らしかったと聞きます。
その勢いで京都でのステージ、定期演奏会も充実したものになりますよう!







続いて幅広く、力強い表現力の団体が3年ぶりに!









11.三重県・中部支部代表

Vocal Enesemble《EST》
(44名・3年ぶりの出場・第54大会以来13回目の出場)


3年前の出場時にも「え、ESTさん3年ぶりなの?!」と驚いたのですが、今年も驚いてしまいました。
なぜなら、ESTさんはかなりの実力団体。
前2回の出場時も金賞を受賞されたことから、その実力は本物です。
中部支部の層がいかに厚いかということなのでしょう。


3年前の座談会では

 


最初の1音で「ESTの音だ!」

「この音を待っていた!」という感じですよね(笑)。

「Choir Concerto(合唱協奏曲)」より第2楽章
ダイナミクスの幅の広さ!
あれがESTだな!って。

最初から最後までずっと
「私たちはESTです!」とアピールしている!

なんかEST独自の世界を創っていると言うか、
オーラをまとっている感じ。

まさにそんな感じでしたね。
ESTのオーラ、世界に飲み込まれました。

…という感想がありました。

ESTさんの演奏曲は
課題曲G2 Ensam i dunkla skogarnas famn(Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲:André Jolivet作曲「Epithalame(祝婚歌)」より「I」

団員のNodaさんからメッセージをいただきました。

 


お久しぶりです。
三重県津市で活動するヴォーカルアンサンブル《EST》です。
こうして全国の合唱ファンの皆さんの前で演奏できることをたいへんうれしく思っています。

自由曲はフランスの現代作曲家アンドレ・ジョリヴェの「祝婚歌」を選びました。
私共が大きなコンクールで入賞したのは1996年の東京ヴォーカルアンサンブルコンテストが初めてですが、その時演奏したのはドヴュッシーの「三つのシャンソン」でした。
その後サン=サーンスやフォーレ、デュルフレ、プーランクらの作品をいくつも取り上げてきましたが、近年注目しているのは20世紀フランスの音楽グループ「ジュヌ・フランス(若きフランス)」の作曲家達です。
2017年にはこのグループに属するオリビエ・メシアンの「五つのルシャン」に取り組みましたが、その繋がりで今年はアンドレ・ジョリヴェの「祝婚歌」を自由曲として取り上げることにしました。
この曲はフランスの放送局からの委嘱で1950年に作曲された作品で、自らの結婚20周年を記念して妻に贈ったものです。
詩はジョリベ自身が書き、作曲者自身が「12パートの声楽オーケストラのために」と書いたように、多彩なリズムや声を打楽器的に使用するなど、声の機能を極限まで突き詰めた作品となっています。

さて音楽監督向井からの提案でこの曲に取り組み始めた当初は、正直この曲が演奏できるようになるとはとても思えませんでした。
全体を通して12部に分かれている上、楽譜が1曲目だけで95ページも有り、めくるだけでも大変です。
しかも不協和音連発で、トリッキーなリズムも多く、途中からテンポがものすごく速いのです。
楽譜の所々に速度指定があり、その通り演奏すると8分を切るのですが、指定テンポ通りではとても演奏できません。
当初は9~10分かかっており、とても8分30秒に収まる気がしませんでした。
しかし練習を進めていくと不協和音の間に現れる協和音の美しさ、声を打楽器のように用いる心地良さ、そしてそこここに見え隠れする官能的なメロディーとハーモニーなど、次第にこの曲の面白さがわかり、演奏テンポも上がってきました。
「頑張ればどんな難曲も歌えるようになるものだ」というのが今の団員の正直な感想です。
でも全国大会ではもう一歩突き抜けて「何か難しそうな曲」ではなく、聞いて頂く方に「面白くて美しい曲」と思って頂けるような演奏をしたいと思っています。
祝福の鐘が鳴り響き、愛する人に「愛の扉を開こう」「幸せな一日になさい」と呼びかけるめくるめく愛の世界をお楽しみ下さい。

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昨年のコンサートの写真ということ。



Nodaさんありがとうございました。
さらに指揮者の向井正雄先生から

 


今回のESTの紹介に、「祝婚歌」の紹介文を載せて頂けないでしょうか?
私のFBに投稿したのですが、全国大会でお聴き頂ける皆様に、ぜひ、少しでも内容を分かって楽しんで頂きたいからです。
ご迷惑でなければ、よろしくお願いします。

 


もちろんですとも! …ということでご紹介いたします。
楽曲の解説に加え、歌詞も掲載されている優れた紹介文、ぜひお読みください。

https://www.facebook.com/masao.mukai/posts/2425105600919988?notif_id=1573206604232498¬if_t=feedback_reaction_generic

向井先生の紹介文には

 


ジョリベご夫妻は、新婚旅行でアフリカに行かれ、そこの原始的な宗教に大変感激したようでして、その教えや儀式の興奮がこの作品に込められています。

この作品には、「12人の声楽オーケストラのために」という副題がついています。
合唱団を12のパートに分け、ファンファーレのようなところがあったり、歌詞が、「ドム グロム グラム」といった擬音が使われているなど、声をオーケストラの楽器のように使っています。


このように非常に興味をそそられる言葉が並んでいます。
他にも「官能的」「めくるめく愛の世界」という言葉が並ぶ、この「祝婚歌」という作品。
Nodaさんが書かれるように非常に難しい曲ですが、7月の東京国際合唱コンクールの時点で、生き生きとスケールが大きく、ESTワールド全開!という演奏でした。
表現力が優れたESTさんに、まさにハマった選曲だと思います。

こんな合唱作品もあるんだ…という驚き、そしてその世界を見事に表現し尽すはずのESTさんの演奏に期待です!




(明日に続きます)

 

 

観客賞スポットライト 混声合唱部門 その4

 






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永観堂
Photo by sanographix http://photo.sanographix.net/

 

 


京都府合唱連盟さんがこんなツイートをされていました。

 


おお~、来週の今日は大学ユース、室内合唱部門の日なんですね!
京都府合唱連盟さんは連日、京都旅行に役立つツイートをされているので是非フォローを!

そしてみなさま、演奏終了後には観客賞へのご投票をよろしくお願いします。

 


今回も2団体をご紹介します。
コンクールを忘れさせる素晴らしい声と音楽の団体と言えば?

  

 

 

 

 

 


8.奈良県・関西支部代表

クール シェンヌ

(50名・18年連続出場・第50回大会以来19回目の出場)



昨年の座談会では


素晴らしかった!

一同 (口々に)本当にそう! ブラボー!など。

課題曲G1、
その深い発声と響きある歌に
背筋が伸びるほど。
フレーズ、歌というものの美しさを
ひたすら追求しているような音楽でした。

自由曲のブラームス「夜警II」も
心掴まれましたね。
余裕があるんですよ。
大人のたしなみみたいな・・・。
ホント、鼻歌歌ってるみたいに
あんなに余裕がある音が出てくる。
素晴らしい!

自由曲2曲目のレーガー「慰め」も
心に深く染みてきました・・・。

シェンヌのみなさんが
純粋にこの音楽を楽しもうっていう感じが
コンクールうんぬんを抜きにして
とても伝わってきたんです。

わかる。
シェンヌの演奏で
コンクール的な音楽を聴く耳が
ニュートラルに戻ったと言うか。
コンクールだろうとどんな場であろうと、
真摯に音楽へ向かわなきゃいけないよな、って
最後で大事なことに気付かせてくれた演奏だったよね。

…という感想がありました。

 


シェンヌさんの課題曲はG1 Ave Maria(Tomás Luis de Victoria  曲)
自由曲:Robert Schumann作曲
「Vier Doppelchörige Gesänge, Op. 141(4つの二重合唱曲op.141)」より「3.Zuversicht」「4.Talisman」


団員の山氏さんからメッセージをいただいています。

 


奈良市からこんにちは、クール シェンヌです。
昨年創立35周年を迎え会社ならもう中堅の年齢となるシェンヌですが、今回のオンステ者50名中大学生が16名を占め、団に若さと活気をもたらしてくれています♪
シェンヌはいつでも団員大募集中!です♪

それでは早速曲紹介へ。

【自由曲について】
ここ3年は後期ロマン派のブラームス、レーガーの2人の作品を演奏してきましたが、今年は盛期ロマン派のシューマンの「4つの二重合唱曲op.141」から3・4曲を演奏致します。

この作品は1849年シューマンが39歳の時に書かれたもので、スケールの大きな二重合唱曲となっています。
ちょうどこの時期はシューマンが友人ヒラーの指名を受けて男声合唱団「リーダーターフェル」の指揮者となり、翌1848年1月にこの男声合唱団を70名規模の混声合唱団に拡大した頃で、シューマンはこの合唱団で自作発表の場を得たことにより、以降「ロマンスとバラード」を初め、多くの合唱曲を作曲していきます。

【3曲目】は、オーストリア人ゼドリッツの詩「Zuversicht(確かな期待)」によるもので、「まなざしを天へ向けよ、打ちひしがれ傷ついた心よ。」が、ppで1choのSとAから始まり、2choも含め各パートが6小節に渡り徐々にゆったりと加わっていきます。

後半の歌詞「まだ愛が続いている限り、お前が見捨てられたままで有り得ようか?」への曲付けは、二重合唱の特性を生かし、1choと2choが掛け合い、徐々に音域が上行していきます。
fpで[die Liebe]が2回繰り返される箇所は、歌っていても思わずうっとりとしてしまいます♪

【4曲目】は、文豪ゲーテの詩「Talisman(護符)」によるもので、3曲目と曲想ががらっと変わり、fのCのユニゾンでTとBから始まり、その後「東洋は神のもの、西洋もまた神のもの!」という歌詞がホモフォニックに展開されます。

その音楽は91小節まで続いた後一転して中間部では、「妄想が私を混乱させる」の詩に沿った、pでのTから始まる調性が安定しない旋律で1choによりフーガで歌われますが、それを打ち消す様に「しかしあなたは私を混乱から解き放つ」という詩が1choのBからpで歌い出され徐々に各パートに広がり、再び「東洋は神のもの、西洋もまた神のもの!」がffで今度は音価を変えて神を称える様に8声で高らかに歌われ、最後にppの「アーメン」で曲は閉じられます。

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今年5月に開催された第17回演奏会とのこと。


山氏さん、詳細な楽曲分析と解説、ありがとうございました。
4曲目の「Talisman(護符)」も大変優れた曲なのですが、3曲目の「Zuversicht(確かな期待)」には、その美しい旋律に私もうっとり♪です。

ところで、シェンヌHP内に指揮者:上西一郎先生の「指揮者のためいき」というコーナーがありまして。
http://chene.jp/note2/c_note.cgi

最新の「第17回演奏会パンフレット挨拶文」より抜粋させていただきます。

  

 

今回の選曲を悩んでいた時、ふと思い立って私がこれまでに演奏してきた曲の数を数えてみました。もはや正確にはカウントすることは出来ませんでしたが、概ね700から800曲程度だと思います。そのうち半数以上はシェンヌで演奏したものです。しかしその全てを歌った団員は一人も残っていません。演奏する曲の難易度がもたらす技術的な障壁を克服し、その音楽的な高みを目指し続けてこられたのは、単なる年月の堆積の産物などではなく、これまで取り組んだ数百の音楽の力と対峙する演奏姿勢の質によるものだと確信しています。そしてそれは200人を超える団員の入れ替わりの上でも変質することなく根付いてくれました。

 


上西先生の、このお言葉。

「これまで取り組んだ数百の音楽の力と対峙する演奏姿勢の質によるものだと確信しています。」

シェンヌさんの音楽性の高さ、コンクールを忘れさせる演奏は、上西先生のこの演奏姿勢から来ているのだということがわかります。

コンクールというと「難易度」という言葉をよく目にし、私もつい「こんな高難易度の曲を演奏するなんて!」みたいに使ってしまうのですが、今回のシューマンの作品は、音楽ってそんな単純な難易度だけで測れるものじゃないよな…と反省してしまいました。
もちろん技術的な問題は乗り越えなければいけないのでしょうが、それと同時に作品へ対峙し、音楽的な高みを求めることが重要なのだと。
真摯に音楽へ向かうことの大事さ、合唱とは、音楽とはこんなに美しいものだったのだ…とシェンヌさんの演奏で新たに気付けるかもしれません。


そして、24日夜、コンクールを忘れノーサイドの精神で合唱人が集まる「史上かつてない2次会」。
今年はシェンヌさんが幹事団体として開催して下さっています!
https://www.facebook.com/ChoeurChene/posts/2462346153801533?__tn__=-R

  


山氏さんからは、まだ参加は間に合うそう!
「一般参加の方も10名になりましたので、出場していなくても、聴いた感想を直接団の方に話をしてみたい!って方は大歓迎です。」
さらに「明日、日曜日の夜が締め切りでOKですっ!」とも。
まだ参加したい方は、大至急ご連絡ください!


ではみなさま、幹事団体への感謝の気持ちを込めて、シェンヌさん入場時には盛大な拍手をおくりましょう!
(演奏後は何も言わずともみなさん精一杯拍手しちゃうから、言いません!)







中国地方から2年ぶりに出場、人数が倍増した伸び盛りの団体です。








9.広島県・中国支部代表

合唱団ぽっきり


(69名・2年ぶりの出場・第66回大会から3回目の出場)


『一回一回の本番をその一回ぽっきりのように大切に演奏していこう』
という願いから名付けられた合唱団ぽっきりさん。
2年前の出場時は39名だったのですが、今年は何と69名!

当時の座談会では

 


課題曲G1、熱さがありました。

ホモフォニックの部分から格段に良くなった!

自由曲、三善先生の「生きる」、
こちらも熱演でしたね。

「気持ち、入ってるなー」って。

最後の「海はとどろくということ」から
じーんとしてしまいました。

借り物じゃない、
団員さんの芯から出た言葉と歌という気がしたな。

…という感想がありました。

ぽっきりさんの今年の課題曲はG1 Ave Maria(Tomás Luis de Victoria  曲)
自由曲は白石かずこ 詩、三善­晃 作曲:二群の合唱団とピアノのための「蜜蜂­と鯨たちに捧げる譚詩」より「さまよえるエ­ストニア人」。

指揮者の縄裕次郎先生からメッセージをいただいています。

 


白石かずこさんの詩は、実在するエストニア­人の詩人”ヤーン・カプリンスキ”のことが­書かれています。
彼は、1941年、ポーランド人の父、エス­トニア人の母のもとに生まれました。
生まれ­てから3歳近くまで広い公園と庭に囲まれた­祖父の家に住んでいたヤーン。
彼の幼いころ­の記憶は、祖父が蜜蜂の巣箱を持っていたこ­とでした。
そのようなパラダイスから、彼は19­43年の夏、離れなくては行けなくなりまし­た。
ドイツ軍が彼らの家を没収したのです。
また、彼は5ヵ月の時、父を失いました。
父­親は大学でポーランド語を教えていたのです­が、ソヴィエトの秘密警察に捉えられ、強制­労働収容所で消されたのです。

三善先生は、この作品を20世紀から21世­紀の橋渡しに書かれました(初演は2001­年12月2日)。
巻­頭序文には次のように書か­れています。

地球上の人間同士の共存、人間と自然の共存­を念ずる21世紀への祈りを、この二編の詩­に託した。詩はしなやかに立つ「祈りの樹」­であり、詩語は豊かに輝く「祈りの果実」だ­った。二つの譚詩は9月6日に書きあがった­。
5日後にアメリカで同時多発テロが起きた。­ひび割れた地球に、この「祈りの樹」は黙す­るのか。「祈りの果実」はかくれるのか。1­2月2日の初演で、演奏者はこの問いに向き­合った。詩は、さまよえる人に呼びかけた。­「帆をたたんじゃいけない。今こそ」。

今の社会の分断、自国ファースト主義、不­寛容、そして何よりも、諦観が支配する世の­中にあって、「帆をたたんじゃいけない。今­こそ」と言うこと、まだそのことを歌うこと­ができるということに、未来への可能性を信­じたい。
「俺たち、フライング・ダッチマンって唄が­きこえてくるじゃない ヤンよ」と力強く歌­い、ひとりひとりがフライング・ダッチマン­として、ヤンを通して世界と繋がっていきた­い、いかなければならない(だからこそのユ­ニゾン!)。
このメッセージは、三善先生から21世紀に­生きる私たちへの遺言なのじゃないかと、私­は思っています。
そう、「今こそ」、この曲­が歌われないといけないときです。

この曲の持つメッセージと音楽が、会場で­聴いてくださる皆さんに伝われば、幸いです­。

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中国支部大会後とのこと。



縄先生、ありがとうございました。
この作品は明るく弾けるリズム、輝く和声、終盤は大きな盛り上がりで終わるのですが、縄先生が書かれるように、白石かず子さんの詩は非常に重い問題を扱っています。
ワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人(フライング・ダッチマン­)」になぞらえ、さまざまに迫害され、漂泊するエストニア人を表題にすることで、現代も直面する問題に通じています。

私がテキストの内容も知らず最初に聴いた時は、この曲は単に明るい印象だったのですが、エストニアの歴史を知り、テキストを読み直し、ふたたび音楽を聴くことで印象は変わりました。
ヤーン・カプリンスキに対してだけではなく、過ちを繰り返す人類全体への三善先生の優しいまなざしと、絶望を体験した上で、それでも力強い祈りと励ましが存在している作品だということに。

ぽっきりさんの感想には「借り物じゃない、団員さんの芯から出た言葉と歌」というものがありました。
2重合唱で、かなりの難度を要する作品のため、テキストに込め­られたメッセージをしっかり伝えるのは難し­いとは思いますが。

 

縄先生、ぽっきりのみな­さんなら「帆をたたんじゃいけない。今こそ­」という言葉を、現在に生きる自分たちの言葉として、強い想いで歌ってくださると­信じております。



(明日に続きます)

 

 

 

 

観客賞スポットライト 混声合唱部門 その3

 




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智積院
Photo by sanographix 
http://photo.sanographix.net/

 

 

 

 

今回も2団体をご紹介します。
常に観客賞では上位の団体が、あい混声さんと同じ2台ピアノで!






6.東京都・東京支部代表

CANTUS ANIMAE

(56名・9年連続出場・第52回大会以来16回目の出場)


指揮者は雨森文也先生。
室内部門の合唱団まいさん、同声部門のMu Projectさん、VOCI BRILLANTIさんも指揮されます。

昨年で8年連続金賞受賞、そして観客賞では1位。
座談会では


課題曲G1、凄く好きでした!
敬虔さとでも言うか・・・。

おそらくは、声楽全般に関して
時代や様式をよく知っていて、
それを土台にした
音楽作りをしているんじゃないかな。
良い意味で「歳を重ねたマニア」の歌い方。

CAの課題曲だけ教会にワープしたような錯覚に陥りました。

自由曲:松本望「夜ノ祈リ」
何回も演奏されているし聴いているけど
やっぱりCAの演奏が一番恐かったです。
音楽を聴いて追体験しているような…
手に汗握るところと
血の気が引くところがありました。

まさに魂を揺さぶられる演奏でした。
激しい怒りと諦念の中に
かすかな希望の光が差し込むような。
すごく重厚で密度の高い演奏だったと思います。


…という感想がありました。


CANTUS ANIMAEさん、通称CA(シーエー)さんの今年の演奏曲は
課題曲G4 雪(「甃のうへ」から)(三好達治 詩/川浦義広 曲)
自由曲:混声合唱と二台のピアノのための「歌集 田園に死す」(作詩:寺山修司・作曲:三善晃)

団員さんからメッセージをいただきました。

 


コンクールに出る理由は合唱団ごとに様々だと思いますが、CAの場合の理由は2つです。
一つは「コンクールならではの練習ができるから」。
一度に多くの曲を扱う演奏会と比べ、コンクールでは作品にじっくり向き合えます。
例えば11月某日の課題曲「雪」の練習風景。
「こんな解釈もありかも。歌ってみよう」「意外といいね」
「都大会聴いた︎︎〇〇さんが『墨絵みたいできれいだった』って」「CAの得意分野は油絵では!?笑」
こうして雨森先生・仲間と考える時間は、実に幸せなものです。

もう一つの理由は「多くの方に聴いていただける機会だから」。
今年の自由曲は、演奏機会の少ない名曲に光を当てたいと「歌集 田園に死す」(作詩:寺山修司・作曲:三善晃)を選びました。
「この作品は、私の中では、寺山さんに捧げられている」。
楽譜の前書きの一節です。
"寺山さん"と三善先生、二人の人生はどこで交差したのでしょうか。

言葉の錬金術師・寺山修司。
1935年に生まれ、歌人、映画監督、作詞家、評論家と活躍した鬼才。
母との確執など人生の影の部分が、奇抜な作風に影響を与えたと言われています。
二人の出会いは1964年、制作に悩んだ三善先生が寺山氏に相談したことに始まります。
翌年、寺山氏は三善先生に自らの歌集「田園に死す」を贈りました。
強烈な寺山ワールドが広がる短歌集です。

寺山氏の死の翌年、1984年に曲は初演されます。
冒頭で広がる田園風景。
修司青年が逃げ出した故郷です。
曲は、ある時は舞台装置のように、ある時は映画のカメラワークのように、ある時は修司の激動の人生のように、進行していきます。
最後に村祭のお囃子が物悲しく響きます。
逃げ出した故郷、でも本当は愛したかった。
二人ともそのことを分かっていたのかもしれません。


この曲は寺山修司という男が生きた証であり、その魂を包む三善先生のレクイエムです。
平林知子先生・野間春美先生の素晴らしいピアノと共に、精一杯お届けします。

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ありがとうございました。

「田園に死す」、1984年初演、東京混声合唱団の委嘱作品なんですが、私は約30年前にラジオから流れてきた全国大会の演奏で初めて聴きました。
https://www.brain-shop.net/shop/g/gG988701/


栗山文昭先生指揮の千葉大学合唱団による「田園に死す」はとにかく衝撃的でした。
当時、三善先生の作品は「地球へのバラード」や「五つの童画」は聴いていたものの、他の曲はあまり知らず。

 

音楽はメッセージの「ある時は舞台装置のように、ある時は映画のカメラワークのように、ある時は修司の激動の人生のように、進行していきます。」
要所にくさびが打ち込まれるような寺山修司の短歌。
また聞こえる言葉の断片が、非常に恐ろしい。

縊られて村を出てゆくものが見ゆ鶏の血いろにスカーフを巻き

薄目を開けてホラー映画を観るように聴き、それでもその苛烈な世界に惹かれ、寺山修司の歌集から、歌に当てはまる5首を探し…。
その後、おなじ栗山先生の指揮で合唱団OMP(現在団名・響)が1991年に演奏されたのが、おそらく全国大会では最後だったと思います。

血の繋がり以上に、離れられない絆、逃れられない呪縛としての故郷。
愛憎半ばする故郷への想いが、寺山修司の人生をたどるような音楽として完成しています。


前回のあい混声合唱団さんの記事で、委嘱曲「立ちつくす」はCAさん委嘱の「二つの祈りの音楽」が契機という話がありました。
CAさんの第20回演奏会でも「二つの祈りの音楽」初演時には、松本望先生と三善晃先生の作品を並べ「つながる魂の歌」と演奏会の副題にされています。
「立ちつくす」作曲者の土田豊貴先生の師は鈴木輝昭先生。
そして鈴木輝昭先生の師は、三善晃先生という繋がり。

あい混声さんと同じ東京支部、同じ課題曲「雪」、そして自由曲に同じ2台ピアノとの協奏作品…こんなにも共通する箇所がありながら、きっとまるで違った印象の演奏になることでしょう。
それでもきっと、どこかで繋がる魂があるはずだと確信しています。

CAさんの「田園に死す」の演奏によって、この名曲の価値が、また広まりますように。


かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭




 

 




25分の休憩後、現代音楽の演奏に定評があるこの団体です!





7.宮城県・東北支部代表

グリーン・ウッド・ハーモニー

(56名・21年連続出場・第2回大会以来37回目の出場)



グリーン・ウッド・ハーモニー(以下GWH)さん。
観客賞の票としてはあまり…なんですが、座談会では毎回盛り上がる稀有な団体です。
昨年の座談会では

自由曲:ヒンデミット「Sanctus」
ものっすごく良かったです!
課題曲で泣いてSanctusで笑ったッ!!

いや、「Sanctus」、
あんな難曲をサラリと形にした佇まいに
笑ってしまいました!

ちゃんと不協和音を意図して
作っていたことがわかる演奏でした!
あと3和音で綺麗にハモるところを
きっちり押さえていたから
不協和音がしっかり聞こえてきたんですよね。

指揮者の今井邦男先生があの現代曲を
率先して毎年ご自分からやられているから。

それも中途半端じゃなく
バチッと本気でやっている。
求道者みたいだよね。

今井先生に付いていく
団員さんたちも本当に凄い!


…という感想がありました。


今年のGWHさんの演奏曲は
課題曲G1 Ave Maria  (Tomás Luis de Victoria曲)
自由曲:Paul Hindemith作曲
「Messe」より「Kyrie」
「12 Madrigals」より「Kraft fand zu Form」
「Lieder nach alten Texten」より「Vom Hausregiment」
昨年に続き、20世紀前半に名を成したドイツの現代作曲家、パウル・ヒンデミットだけの選曲。

団員のMARさんからメッセージをいただきました。

 

 

 

 課題曲G1は、もはやデフォルト?といったところで省略します(笑)

今年も自由曲はオールヒンデミットプログラムです。
まず1曲目の「Kyrie」は一昨年、昨年に続いて「ミサ」から。
2つの対照的な主題に始まり、最後のKyrieのセクションにより、父なる神と神の子の一体像として示されています。

2曲目は「12のマドリガル」より「Kraft fand zu Form(力は形へと)」。
当時ウィーンで有名だったワインへーバーの詩から悲観的なものを選んでおり、ハーモニーの色彩がざらざらとした感じで詩の憂鬱な姿を保持しています。
悲しみや死から次の世界への移り変わりは人々の勇気や力によって創られる、ということが表現されている曲です。

※この曲については個人的にツボなハーモニーが結構あります。
とくに後半のゆったりした部分。
それとこれまた個人的な感想ですが、曲の出だしの部分(テナーのパートソロ)がちょっとホルストの惑星を思わせるような宇宙的な感じがします。


3曲目は「古い詩文による歌 op.33」より「Vom Hausregiment(家庭訓)」。
ヒンデミットの合唱作品の中でも最も初期の作品で、詩は宗教改革で有名なマルティン・ルターによるもの。
家庭における夫と妻の心得や役割を説いた歌詞が綴られています。
詩と音楽との組み合わせが興味深く、軽快さもありながらユニゾンの重厚さも感じられる曲です。


今井先生と創る音楽って、コンクールが最終地点ではないんです。
演奏の方向を決めて進めるのではなく、常にいろんな方法を試しながら新しい音楽を作っていくのが今井先生のやり方で。
「この前の練習では〇〇ということでしたけど…」「あーそれはもう過去のものだから」
だから本番当日に変更があるなんてよくある話で。
で、本番で歌い終わると「あーもうこの曲歌えないんだねー」という会話が団員のあちらこちらから聞かれます。

 

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東北大会リハーサル時ということ。

 


MARさん、ありがとうございました。

>で、本番で歌い終わると「あーもうこの曲歌えないんだねー」という会話が団員のあちらこちらから聞かれます。

これは歌い終わることと同時に、「今井先生と一緒に、曲を創造していくことが終わってしまったことの残念さ」と捉えたのですがどうでしょう?
現代音楽を演奏する団体はいくつもありますが、GWHさんには特別に能動的な印象があるのはこのためか!と納得してしまいました。

そしてGWHさんは今年でなんと70周年!

 




この大会で1、2を競われるご年齢の指揮者:今井先生と、歴史あるGWHさんが、鋭い現代曲を演奏するというのが面白いですよね。

過去に演奏されたヒンデミットにウェーベルン、クルターグにシュニトケ…。
GWHさんの演奏をきっかけに合唱作品はもちろん、その作曲家の器楽作品を聴き始めた自分がいます。
今回のステージでも、GWHさんの演奏で
「あれ・・・現代音楽、イイかも?」と新しい扉が開く人がいるかもしれません。



(続きます)