観客賞スポットライト 混声合唱部門 最終回

 







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京都の天気予報。

土曜日 晴時々曇 最低気温10度 最高気温20度
日曜日 曇り   最低気温14度 最高気温21度

・・・だそうです。
まだ数日後なので予報が外れる場合もありますが、倉敷よりあったかいのは有難い。


京都在住(?)の方のこんなツイートも。
情報感謝です!

 

 


月曜から曇時々雨だそうなので、観光される方は傘を忘れずに。



10月30日から21日間に渡って連載してきたこの企画も今回が最終回!
今日は混声合唱部門最後の2団体をご紹介します。



北の地から毎回「癒し」の選曲をされるこの団体です!








15.北海道・北海道支部代表

Baum

(59名・6年連続出場・第64回大会以来8回目の出場)



Baumさんは2009年に札幌で創立。
指揮は同声部門で出場の、HBC少年少女合唱団シニアクラスも指揮される大木秀一先生。
大木先生は札幌の名門合唱部、札幌旭丘高校の指揮者を3年前までされていました。

Baumの団員さんは大木先生のもとに集まった人たちで、完全な札幌旭丘高OB合唱団というわけでは無いそうです。
団名のBaumはドイツ語で「木」の意味。
大「木」先生を慕い集まって作られたことによる団名なのでしょう。


昨年の座談会では


自由曲:ウィテカー「I hide myself」
ウィテカー特有の和音を
整えてちゃんと出していました。

凄く綺麗でした!

男声の響きを高くしようとする気持ちが
見えた演奏でした。
サウンドを持ち上げようとしていた。

地元の団体だけあって、
ホールを鳴らす術をわかってるなという
演奏でしたね。


…という感想がありました。

Baumさんの今年の課題曲は
G2 Ensam i dunkla skogarnas famn(Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲はKim André Arnesen作曲「Infinity」

1980年生、ノルウェーの作曲家、Kim André Arnesenの作品はまさに「Infinity(無限大)」の通り、宇宙の広がりのような神秘的な美しさがあります。




この自由曲の肝であるソプラノソロですが、実際の演奏を聴かれた方の感想では「とても良かった」そうなので期待が持てますね!

今年5月に創団10周年を迎えたというBaumさん。
指揮者の大木先生も11月に札幌芸術賞を受賞されたそう。

ふたつのおめでたいことを弾みに、良い演奏を期待しております!









最後は、名門高校合唱部を母体に知性溢れる演奏の団体です!









16.愛知県・中部支部代表

岡崎混声合唱団

(70名・3年連続の出場・第57回大会以来14回目の出場
 岡崎高校コーラス部OB合唱団も含めると
 第49回大会以来16回目の出場)



母体は今年も全国大会へ出場された岡崎高校コーラス部という実力合唱団。
昨年の座談会では


課題曲G3、
母体の岡崎高校も間宮作品を
演奏されていることもあって
その良さが出ていました。
オーソドックスな中にも
ちょっと民謡っぽさがあって。

4声が合わさった音と響きが
良く考えられているなあと。

男声のサウンドが高い響きだったのは良かったです。

男声…特にベースがデクレッシェンドで
ピアニッシモになるところとか
優しさがあって。
繊細で優れていました。

自由曲:三善晃「嫁ぐ娘に」より
「3.戦いの日日」は
ベースが良かったですね。

「5.かどで」も良かった!

一同 そう! 良かった!など同意。

この曲はテノールが良かった。
「娘よ さようなら」の箇所で
ジーンとしちゃいましたよ。


…という感想がありました。

岡崎混声合唱団さんの演奏曲は
課題曲G2 Ensam i dunkla skogarnas famn (Emil von Qvanten 詩/Jean Sibelius 曲)
自由曲:高田敏子 作詩、三善晃 作曲
合唱組曲「五つの童画」より「4.砂時計」「5.どんぐりのコマ」


団員さんからメッセージをいただきました。

 


今年も我が団をご紹介いただきありがとうございます。
この場をお借りしまして演奏曲についてお話しさせていただきます。

課題曲 シベリウス作曲"Ensam i dunkla skogarnas famn"
私たちが課題曲に外国作品を選ぶのは2010年以来、しかも馴染みのないスウェーデン語という大きな挑戦になりました。
手探り状態での取り組みでしたが、スウェーデン語を学ぶ団員のアドバイスをもらいながら言葉を自分のものにできるよう練習を重ねてきました。
語感や旋律から浮かび上がる北欧の情景に思いを馳せて演奏します。

自由曲 三善晃作曲『五つの童画』より「砂時計」「どんぐりのコマ」
昨年度のコンクール・定期演奏会で高田敏子さんと三善先生による『嫁ぐ娘に』を演奏し、私たちに合っている、共鳴するところがあるという感触を得ました。
同じコンビによる作品を、ということで今年度は『五つの童画』に取り組みました。
『五つの童画』は合唱曲という枠を超えた合唱とピアノの協奏曲のようであるとしばしば評されます。
声だけの部分、ピアノのカデンツァ的部分、そして互いに影響を与え合いながら作品の世界を展開していく部分。
まさに協奏曲の様相を呈しています。
(三善先生は「ピアノ協奏曲」(1962年)も作曲されています。こちらも名作です。三善先生の作品は合唱以外知らないという方はぜひ聴いてみてください)

これまで折に触れ演奏してきた三善先生の作品ですがア・カペラ作品が中心。
声だけでこれだけの世界観を表出できるのかと圧倒されてばかりでした。
今回はピアノ付き作品、しかも三善先生の初期の作品にして傑作との呼び声が高い 『五つの童画』を演奏するということに身が引き締まる思いです。
言葉も、旋律も、ピアノの一音一音でさえも大きなエネルギーを宿しているように感じています。
それらを紐解きながら作詩作曲者の思いを精一杯引き出し、「人間と地球全体をくるむ愛」を歌います。
どうぞお楽しみに!

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今年3月の定期演奏会ということ。


ありがとうございました。

三善作品を多く演奏されている岡崎混声さんの「五つの童画」、楽しみですね。
この全国大会、各部門で必ず1団体は三善作品を選ばれており、この混声合唱部門では4団体!
亡くなられて6年が経っても、いかに先生の作品が慕われているか。
そしてこの大会の最後が三善先生の作品で締められるというのも良いなぁ、と。

>三善先生は「ピアノ協奏曲」(1962年)も作曲されています。こちらも名作です。三善先生の作品は合唱以外知らないという方はぜひ聴いてみてください

昨年のお江戸コラリアーずさん観客賞座談会でも触れたのですが、三善先生は決して「合唱作曲家」では無いんですね。
そう思いながらピアノ協奏曲を聴いてみると、合唱作品と似た音の使い方が、また違ったように聞こえてとても興味深いです。
個人的にはヴァイオリン・ソナタなども好きなんですよねえ。


さて、「五つの童画」という曲のテキストは「童画」という言葉から、子供を対象とする五つの情景を連想しますが、童話がある面では残酷な影が潜んでいるように、この「童画」も例外ではありません。

1曲目から4曲目の「砂時計」に至る音楽は、童の無邪気さと残酷さを表すように音もリズムも響きもよじれ、進み、立ち止まり、跳ね回り、そして時に永遠と思うほどの静寂を感じさせます。
「砂時計」では決して取り戻すことの出来ない、過ぎてしまった時の哀しさを。
生きることで味わう様々な苦しさ、絶望を音楽と言葉で聴く者へ叩きつける。

そして樫の木の子どもである、どんぐりたちへ託すような最終曲「どんぐりのコマ」。
合唱は、眠りを覚ますようにどんぐりへ柔らかく呼びかけ、新しい世界に沸き立つ細やかなリズムの跳躍。
どんぐりたちを新しい世界へ送り出そうとする強い希望と願いの声の力。


この曲のライナーノーツに三善先生が書かれた一節にはこうあります。

どの詩にも破滅や絶望、失意の相をもたらしたと思いますが、
私は、それらを胎生の糧としない愛を信ずることができません



京都での全国大会の最後となる岡崎混声さんの演奏。

前4曲で描かれた破滅、絶望、失意を糧とした上で生まれた、三善先生の愛がこの「どんぐりのコマ」に満ち溢れますように。





<ありがとうございました>

これで大学ユース、室内合唱、同声合唱、混声合唱部門、全48団体のご紹介を終わります。


今年の審査員、栗山文昭先生のお言葉だったと思うのですが。

「酒造りは合唱と似ている。多くの人間がひとつのものを大事に手をかけて醸していくことが」

一瞬で味わっちゃえるのも同じ!…は私の感想。
いや、例えばこの全国大会のステージ、みなさんどれだけの時間をかけられたのでしょう?
半年?いや1年??委嘱作品だったら年単位かもしれません。
それだけ時間をかけ、磨き上げた作品のステージを、わずか十数分が過ぎたら立ち去らなければいけない。


今回の全国大会で、不思議に多く上がった言葉は「30年前」というものでした。
例えば今年、関西学院グリークラブさんが選ばれたデュオウパを初めて聴いたのもちょうど30年前。
CANTUS ANIMAEさんが選ばれた「田園に死す」を聴いたのも30年前。
同声合唱部門のmonossoさんが選ばれた新実徳英先生の「はくちょう」を聴いたのも30年前。
その指揮者:山本啓之さんが、京都エコーさんの演奏された「地上の平和」をやりたい!と思ったのも30年前。

「よく憶えてますねぇ・・・」と山本さんと私、感心し合いました。
30年前という遥か昔に聴いた演奏が、今になっても鮮やかによみがえる。
「いまから30年後に~♪」と歌い始めても、なかなか名曲にはなりそうもありませんが、十数分の演奏が種から育ち、30年経って、確かに自分の体の一部を形作っている。

30年後、私が生きているのはかなり難しそう。
でも、大学ユース部門に出場される方はまだまだ元気な方がほとんどでしょう。
ステージは十数分で終わりますが、その先の永い未来へ。
たった今聴いたように、30年後にも鮮やかに思い出せる演奏を。

そんな演奏が京都のステージで生まれることを願っています。


そうそう、山本さんは「地上の平和を歌った時の京都エコーの団員さん、会場におるかなぁ・・・」とつぶやいていました。
もしいらっしゃったら、素敵ですね!


* * * * * * * * * * *


今回も本当に多くの方にお世話になりました。
すべての合唱団のみなさまにお礼を申し上げるのはもちろんですが、メッセージをご寄稿して下さった方、団員さんをご紹介して下さった方、写真を送って下さった方・・・などなど。
もう一度この場で、お名前だけを記して、この連載を終わりにしたいと思います。


SHIGEさん、チャッピーさん、福島大学混声合唱団:Aさん、ノブナリさん、渡邉さん、宇髙さん、上月さん、久保さん、石川さん、林さん、中嶌さん、髙田さん、同志社グリークラブ広報担当者さん、北海道大学合唱団中の人さん、カイザーさん、岡田さん、三上さん、神さん、La Merツイッター担当者さん、内田等先生、よこださん、ふじもりさん、合唱団まい:Tさん、合唱団まい:Hさん、難波夕鼓先生、池田さん、いよさん、本田さん、山本啓之さん、はるのさん、久米さん、伊藤さん、山脇卓也先生、エリカさん、宮城さん、西澤さん、きらりんさん、La Pura Fuente:Iさん、らむ姉さん、森さん、青木さん、おのださん、村上信介先生、MODOKIツイッター担当者さん、合唱団ユートライツイッター担当者さん、あい混声合唱団:Oさん、CANTUS ANIMAE:Fさん、Mariさん、MARさん、山氏@安芸さん、縄裕次郎先生、阿部さん、Nodaさん、向井正雄先生、Combinir di Corista:Eさん、黒川和伸先生、岡崎混声合唱団:Hさん、超国家主義の論理と心理さん、Dalimさん、たかさんさん、Ken5さん、細てつさん、鯖くん、ぴかーどさん、全日本合唱連盟中の人さん、合唱倉庫さん。


お名前が漏れた方がいらっしゃいましたら大変申し訳ありません。

他にもこのブログにスターを付けて下さった方、読者になって下さった方、ツイッターで「いいね」やリツイートをして下さったみなさま、Facebookで「いいね!」やシェアして下さったみなさま、感想を寄せて下さったみなさま、そして最後に。

読んで下さったみなさまに心から感謝を申し上げます。

ありがとうございました!


(観客賞スポットライト2019 おわり)