全国大会:一般の部感想 <その5>


東京都(東京支部代表)
混声合唱団鈴優会(混声21名)


課題曲G1。
やや細めながら芯のある旋律。
とても練習を積んだことが分かりサウンドもクリア。


自由曲1曲目はスヴィデル「Requiem aeternam」。
バスのリズムの面白さが印象的な曲。
2曲目はチョピ「Pie Jesu」。
優しいだけではなく、その裡にある力強さも伝える、
大変良い雰囲気の演奏。


あ、「あれこれ」で「手を切りそうな緊張感」
…などと書きましたが、
今回の演奏はそういう緊張感は感じさせず、
それでもしっかり「鈴優会ワールド」を作っていましたよ。
出場し続けることで、
緊張感を感じさせなくなる何かがあったのでしょうか?





東京都(東京支部代表)
Combinir di Corista (混声29人)


初出場おめでとうございます。
男声が黒いシャツに赤ネクタイというのが面白い(笑)。
課題曲はG3「全身」。
最初の音でぶっとびました「声がいいな!」。
それがいわゆる「美声」の人たちが集まっているのではなく、
優れた合唱表現へ向けて、声を磨き上げたという印象。
音圧がありすぎるのでもなくクセがあるのでもなく、
発語も含めて大変好み。


そして音楽がこれまた素晴らしかった。
この課題曲は高校生や一般で散々聴きましたが、
コンビニの課題曲が私の中で一番です。


音楽の主と従をしっかり理解し
フレーズ起点の繊細さと巧さ。
暗から明へのグラデーション。
どれをとっても高度な完成度だったと思います。


聴きながら「うんうん、わかるわかる」と心で頷きながら聴き、
チェリスト:ミッシャ・マイスキーの演奏を
聴いた時のことを思い出していました。
その演奏が「わかるわかる!」と思うときは、
演奏者がその音楽の狙いを充分に理解し、
そして自分たちの能力を客観的に把握し、
さらに音楽を聴衆へ伝える方法を具体的にし、曖昧さを全く無くさないと、
「わかるわかる!」には決してならないはずなのです。


そういうところに指揮者:松村先生の音楽性、知性等の
能力の高さを実感しました。
もちろん、その要求に
しっかり応えられた団員のみなさんの努力も褒められるべきでしょう。


自由曲はミシュキニス「Ave Maria Nr.3」から
「2.Adoamus」「3.Regina Coeli」。
そのサウンドへの高い意識、音の充実、
弱音での繊細なニュアンスの表現、
一瞬で雰囲気を変える見事さ、とこちらも素晴らしいもの。
男声が特に良かった!


今年はいくつか初出場の団体が出ましたが、
間違いなくコンビニは
「最優秀新人賞!」でしょう。
それも近年稀に見る期待の大型新人です。


結果は金賞。しかもシード2位!凄いですねえ。
来年もコンビニの演奏を期待し、楽しみにしています。
(団名「コンビニ」だから、
 品揃え…選曲の幅の多いところ、見せて下さいね♪)





東京都(東京支部代表)
CANTUS ANIMAE(混声32名)


課題曲G2。
なんて優しい音楽なんだろう!
旋律の細やかさも含めて
楽曲へ対する愛情がひしひしと伝わってくる演奏。
…ただ、ハーモニーがやや崩れていたり
響きの充実という面では足りないところもあったりで、
なかなかその世界へ没入させてくれないのが残念なところ。


しかし、この課題曲の演奏で
他団体は「音を置いていく」という
ある意味一本調子な曲想だったのに対し
CAは中間部から音楽を変化させ、
自在なシューベルトの世界を作り上げていました。
指揮者:雨森先生の力を感じるとともに
歌い上げる団員さんたちの能力の高さにも感心。


自由曲はジョリヴェ「Epithalame(祝婚歌)」からII。
一聴しただけで
この曲の世界観を掴めたとは到底言えませんが、
まず単純に声、歌、というだけではなく
どこか“妖しい”空気、雰囲気を作りだしていること。
効果のような表現でも、効果じゃない。
ちゃんと、どこまでも“歌”になっている。それが素晴らしい。


その不思議な雰囲気から、「どこが祝婚歌?」という疑問も湧いて。
(詩も後で読ませてもらったところ、
 妻を賛美する内容、なんだけど…
 その言葉が到底実在しないような崇高な対象に値するもので。
 ・・・ジョリヴェの奥さんって女神か2次元だったんじゃね?
 などと話したのは全くの余談ですスイマセン)


テナー早口のフランス語もがんばってました!
あとソプラノが弱声から強い音まで
繊細な表現から大胆なものまで幅広い表現の巧さを感じさせました。
“声”そのものだけでは無く、
表現としてはCAのソプラノが
一般の部では一番良かったんじゃないかな。


全体では残念ながら傷がところどころにある演奏で、
コンクール的にシェンヌやコンビニが
上位へ位置するのは納得だけど
演奏全てにおいて無機質に感じられる音がひとつも無い。
音すべてに“歌”が入っている、という演奏でした。
それはやはり「魂の歌」という団名に恥じない演奏だったのです。




(続きます)