観客賞座談会・混声合唱の部 その6

 





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北野天満宮
Photo by sanographix http://photo.sanographix.net/

 

 

 

 

 


観客賞・混声合唱部門で第8位内に入らなかったものの、印象的な演奏をされた団体の感想を出演順に記していきます。


 

 

 




グリーン・ウッド・ハーモニー


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(56名)


 

 

文 課題曲G1は誠実に演奏している印象で。
  楷書というか、教科書、お手本な感じ!

B そうなんですよ、
 何かいじくってはいないけど
 説得力がある。

A お手のもの!

 ですです、良い意味で慣れている。
  今井邦男先生の力もあるし、
  今まで培われてきたものが出ていて。

  自由曲:Paul Hindemith作曲
  「Messe」より「Kyrie」
    「12 Madrigals」より「Kraft fand zu Form」
  (力は形へと)
    「Lieder nach alten Texten(古い詩文による歌)」より
    「Vom Hausregiment(家庭訓)」
  良かったですね。
  発声が純度を増してキレイになった気が。

A 田中豊輝先生のボイトレが功を奏したのかも。
 あとハーモニーの純度を高めるため
 カデンツァの練習をしたり……。
 それがちゃんと3和音をハメる時に
 役立った気がするな。

B いやこの自由曲、
 混沌としている部分が多いから
 3和音がちゃんとしていないと
 「はたしてコレ、合ってるのかな?」

 そうそう(笑)。
  元々こういう曲なのか、
  それとも音を間違えているのか……(笑)。

C 失礼だなぁ(笑)。

A ユニゾンが合っていたり、
 3和音がキチンとハモっていることで
 全体に説得力が出てくる。

 ですね。
  曲の輪郭が前より
  ずっとわかるようになりましたよね。
  「混沌」としている部分も
  よく聴けばスリリングに展開して
  カッコイイんですよ!

B ロングトーンで伸ばすところで
 他と出し方が違ったり、
 いろいろ合唱、いや、
 「音楽としてどんなふうに
  面白くできるか?」
 作曲の狙いを演奏者がちゃんと掬っている。

文 「Kraft fand zu Form」
  軽快に言葉を転がす面白さ。
  音楽のさまざまな効果が、
  歌だったり、無機質な音だったり、
  響きの中の1パートだったり、
  さまざまな声の形として表れていて。

A 最後の「Vom Hausregiment」
 ユニゾンが初めて出てきて!
 「あ、やっとユニゾン出てきた!!」

BC文 (笑)。

 他の曲、ユニゾン無かったかな?(笑)
  でも他と違いユニゾンが多く、
  ホモフォニックに歌い上げてね。
  わかりやすく勢いがある曲。

B ヒンデミットの前2曲と全然違う!
 あ、でも作風似てるって(笑)。

 あれだけ難解な曲を続けて、
  最後はサラリと終わる!
  グリーンウッド、カッケーな!と。

ABC (笑)。



メール、ツイッターの感想です。

 

G1やKyrieは色んな人の声が聞こえるのに音程や音の方向に統一感があるからばらけて聞こえず宗教音楽のサウンドが成立してる 
ヒンデミットの曲ごとの違いを楽しめた

 

GWHはヒンデミットがとても良かったです。
音の硬軟や鋭さで表現に勢いとメリハリが感じられ、作品の面白さが伝わってくる演奏でした。

 

 

 

 

 







鶴岡土曜会混声合唱団
https://twitter.com/tsuruokadoyokai

(56名)

 

 

 

文 課題曲G1、優しい音でしたね。

A こちらの団体、
 凄くテノールが好きなんですよ。
 深いんだけど上へ抜けていく発声が
 本当に好きで。

C サウンドとして美しかったですね。
 あとこの曲、
 途中で三拍子になるんですけど
 それがプロポルツィオという
 技法なんですよね。
 (※ハーモニー春号 188
  那須輝彦先生による
  「名曲シリーズN0.48へのアプローチ」を
  ご参照下さい)
 それで、だいたい速いテンポに
 してしまう団体が多いんですけど、
 鶴岡は楽譜通りに演奏した
 数少ない団体でした。

B 仲間と紡いだのが伝わる、
 温かい音がしましたね。
 染み込むようでした……。

文 自由曲:三善晃
  混声合唱組曲「宇宙への手紙」より「渇き」。
  ピアニッシモが素晴らしかったです。
  合唱の魅力はピアニッシモ!

B 隅々まで考え尽くされている演奏だったと。
 音楽が持続する強さ、
 全体に真摯さが感じられるのも良かったですね。
 やはりピアニッシモの説得力は大きい。

 大声で言いたいね。
  「みなさーん!
   鶴岡土曜会さんから
   ピアニッシモを学んでくださーい!!」(笑)。

A あと言葉が聞こえてきたのも!

C そうそう。
 例えば「渇き」という言葉が刺さってくる。
 言葉がひとつずつ丁寧に歌われているから
 思い入れ深い演奏に聞こえてきて。
 言葉の向こうにある世界を感じました。

A 柔らかい感じで進んでいたけど
 フォルテの部分でピシッ!と。

 そう!
 「水に」の表情も
  ピアニッシモで非常に優れていたけど
  出すときはちゃんと出す!
  続く「何に?」のフォルテが
  生きるんですよね。

C あの世界の先に同じ三善先生の
 「その日 ─August 6 ─」が
 存在していると思って。

 テーマに共通するものが。
  その前には
  原民喜、林光先生の「水ヲ下サイ」があり。

C うん。
 ずっと忘れない強い想いが
 音に込められているのを
 凄く感じました。




メール、ツイッターの感想です。

 

パートの統一感等の精度が高い 
G1も三善も緊張感の持続があった

 

G1を聴いてフレーズ感など色々と納得できたので、評価されたのがある意味嬉しいです。
(全国大会の)混声で何かと人気な気がしますが、編成など含めて「なんでやるんだろう」と思うこともままあるもので…

 

土曜会は、無垢の美しさとでもいうか…作品そのものの音とことばをひたすら忠実に奏でることで、その訴求力を最大限に引き出しているように思います。
聴いているこちらも裸の心で受け止めたくなる、そんな演奏でした。

 

自由曲、課題曲共にとてもまとまって飛んできていました。
特に自由曲は団として一つのまとまりがあり、個より全という印象を受けました。
とても素敵な演奏でした。

 




(混声合唱部門・最終回に続きます)