ドミトリー・フェイギン&新見フェイギン浩子 チェロとピアノの夕べ


くらしき作陽音楽大学はたびたび無料、あるいは格安で
学内にてコンサートや公開レッスンを開いてくれている。
感想をこのブログへ載せることは滅多に無いのだけど
今回のコンサートは「お!」と思ったので。





ドミトリー・フェイギン&新見フェイギン浩子
チェロとピアノの夕べ
2010年2月26日 くらしき作陽音楽大学「聖徳殿」
開演 18:45


出勤時には雨が降っていたが
退社する頃には止んでいた僥倖。

新倉敷の作陽音楽大学へ。
何度も行っている大学だがふと校門近くの石碑に初めて足が止まる。


・・・暗いのと達筆すぎて読めない。


2行目の
「継続は力なり」は読めるが。(私の出身高校と同じもの)
1行目が・・・うーん



“無頼”は人格を決定す」・・・かなあ?



(※今調べてみると



“念願”は人格を決定す」でした。
人格を無頼で決定させてどーすんだ、俺のバカバカ。


 や、でも、音楽大学としては「無頼は人格を決定す」の方が
 芸術家として独り立ちするのにいいフレーズなのでは?!)




小ホールっぽい聖徳殿へ。キャパ450人。
客席は・・・16人。
(数えました。終り頃には30人近くになっていたけど)
ロシア生まれの笑顔が優しいチェリスト、ドミトリー・フェイギン氏と
日本人の奥様、新見フェイギン浩子さんが登場。


んでも、これがかなーり良い演奏会だったのですよ!
シューベルト(SONATINE OP137 NO.1)が自分が苦手なのは
しょうがないとしても
(すいません、寝ました)
ブラームスのSONATINE Op.38は後半白熱する演奏におおっ!
ヤナーチェクの「おとぎ話」(3曲)は今までのヤナーチェクへの
イメージを覆されたようなイージーリスニングでほっ。


そして今回のメイン、ハチャトリアン「SONATA」
難しすぎない現代音楽を
自分たちの今の音楽として演奏してくれるライブ感とスリリングさ。


最初は感性がやや及ばないのかそれとも自律の意識が高いのか…と
その表現の抑制に疑問を持っていたフェイギン氏のチェロですが
ステージが進むほど、なるほど、これは氏なりの計算なのだな、と。
なにより夫人の新見フェイギン浩子さん、ピアノの呼吸の合わせ方!
お互いに呼吸を読み、出る所は出て、引っ込むところは引っこみ。
そしてお互いに盛り上がるところでは
巨大なハチャトリアンソナタ怪獣へ共闘するように
燃える演奏で観客を魅了してくれました。


こういう現代音楽を突き離すのではなく、
いま、自分たちの音楽として、まるでモダンジャズのように曲と戦い、
世界を見せてくれる姿は素晴らしかったなあ。



もっとハッチャけてもいいような気も少ししましたが
95%の表現で理知的に観客を満足させる、
プロフェッショナルの演奏でした。
チェロの旋律、響きの多彩さにも魅かれたのは当然として
ハチャトリアンの件の曲でピアノの和音と溶け合い、
ホールに響き、しみ込んでいくチェロの単音が、もう。


意図しているかは知りませんが
野放図に響きを撒き散らすのではなく、
空間へ及ぼす音の響きというものに意識的な演奏者、
・・・というのが私のツボのようです。


アンコールは4曲も!
無料であるのが申し訳ないほどの演奏会。
「空間をデザインするのは建築家、時間をデザインするのは音楽家」
…という言葉を思い出すほど、
日常では一定に流れる時間が2人の演奏者によって一瞬に、
あるいは悠久を感じさせるものとなって感じさせられる
貴重な時間でした。